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「お疲れさまでした」  菊谷がそういうと、武藏は答えず手だけを挙げた。  部屋には言左右衛門の写真が一枚だけ立てかけてあった。 「お前の仇は……必ず……」  武藏は部屋から出ると、車に乗り、まっすぐ北の方に向かった。それを、誰か黒色のものがついていった。  車から降りると、武藏はボタンのようなものを押した。そして、後を振り向いた。  そこにいたのは一人の男だった。黒いコートを羽織ったそいつは黄色いお面を付けていた。 「懐かしくないかな?このお面。」 「月の形をしたお面なんかしらんね。」 「……率直に言うぜ、ベイビー‘ルーンズ’は何処だ?」 「彼女らを何に使うつもりだ?」  そいつは一本の瓶を手渡した。  ひんやりする、つめたいペットボトルだ。 「まあ、飲みながら話そうぜ。父上殿」 「炭酸は嫌いなんだ。」  武藏がそういうと、そいつはけらけらと笑った。 「そうか。ビールの方がよかったか?」 「……早く用件を言えよ。月光仮面」 「いいね。それ。けど、俺の今の名前はそんな名前じゃない。そうだな、ミスタールーンって呼んでくれると幸いだな」 「それで、用件は何だ?」  ミスタールーンはペットボトルを開け、それを飲んだ。 「簡単なことだよ。ルーンズは何処だ?それだけで良い」 「……彼女らは誰の言うことも聞かない。ウインドを砕くために存在する我が娘達だ。」 「愛されてるねえ。お父様。」  武藏はペットボトルを開けた。 「そういう風に呼ぶのはやめろ。俺にも昔、そんな風に呼ぶファントムがいたよ」  ミスタールーンの目つきが変わった。 「今はファントムをり力で押さえつける部隊を作ってるじゃねえか。」 「お前等がヘヴンに近づかなければ良いだけじゃないのか?そうだろ? ――」 「――ラグナロク」  ミスタールーンはまたけらけらと笑う。 「ばれていたのか?」 「まだヘヴンを諦めていないのか?ユグドラシル」  ミスタールーンはペットボトルを地面に叩きつけた。ペットボトルは破裂し、その周りに液体が飛び散った。 「俺を、その名で呼ぶな!ムサァシ!」 「一つ言っておこう、ウインドやルーンズを利用するのはやめておけ。彼女ら、そして彼は貴様のような者に従いはしない。じゃじゃ馬だが……みんな自分のプライドを持っている。お前のような支配欲に目がくらんだ奴に屈服はしないだろう。いや……逆に結束するかもしれん。」 「……そうなるといいな。武藏」 「そうなるよ。ラグナロク」

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