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第七章」(2008/10/18 (土) 22:07:53) の最新版変更点

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「……ねえ、旬香?」  村井が言った。私は村井の方を向くと、答えた。 「何?ユッキー」  村井は綺麗な黒い髪を整えると、眼鏡をなおした。言いにくそうな顔をした後、咳払いをして、言った。 「人の庭でその、て、テントとかさ、張るのやめて……くれる?」 「え?ダメなの?こんなに広いのに!」  私は手を広げて村井家の庭の広さを表した。広すぎ、この庭。学校建てれそう。なに?この家考えた人。脳みそついてるの?アホじゃないの? 「……い、家の中……でね?」 「エエッ?ユッキーの家って、家の中でテント建てて良いの?スゲー!」  村井は苦笑いをする。 「……いや、そうじゃなくって……家の中で、暮らすって言う……ことなんだけど」 「一週間以上も寝泊まりさせてもらったんだから、もう充分デスヨッ」  私はテントの杭を打ちながら親指を立てて見せた。村井はいっそう苦笑いが増す。 「……そ、そっちの方が迷惑だから……ね?」 「ええ?そうなの?」 「……うん」  村井は私を純粋な子供を見るような目で見ている。まるで「こいつは三歳児」と言い聞かせているようだ。むう、その視線は痛い。痛すぎる。  私は深々と刺さった杭を雑草でも抜くかのようにひょいひょい、と抜くと、テントを折り畳んで、専用のバッグになおした。 「よし、じゃあ、上がりますか」  私は図々しくも堂々としながら家の中に入った。 「おい、雪那、いるのかい?」  遠くの方から、老いた男の声がした。相当年齢はいってるだろう。 「ウギョエッ」  ユッキーはあの、「つめたい、けど、それがイイ」と男子の間で騒がれている氷の女王(男子達がつかう村井への俗称)の発する声なのか?『ウギョエッ』っていった!いった。絶対今言った。間違いない。神に誓って。あの氷の女王様が、あ、あの女王様が『ウギョエッ』と言った! 「こっちにいるのか?おや?友達かね?」  そこには髪の毛全体が殆ど白髪で、髭も随分と長く蓄えられた老人がいた。 「そ、そうなの。おじいちゃん。か、彼女、宝生旬香って言うのよ。ちょっと、家が全焼しちゃって、止めてあげることになったの」 「へえ。そうかい」  村井のおじいちゃんは顎を撫でながら言った。その瞳は私の目を明確に掴むと、捕らえてはなさなかった。 「私は村井平幸という。いちおう、村井研究所の創設者。しかし今はタダのお荷物」  平幸はニヤッと笑って、付け加えた。 「笑うところだぞ?」 「……初めまして。宝生旬香……と、いいます。えっと、お孫さんには……えっと、その」  平幸はまたにやりと笑う。 「私のような仕事をしているとな?アームヘッド乗りに見込みのある人間とそうでない人間が……わかる」  平幸は人差し指を出し、私の右目にゆっくりと近づけたゆっくりと指は近づいてきた。 「君に才能はないが……きっと、嫌、もうすぐ君の予期せぬ出来事が起こるはずだよ。そして、私にも」  平幸は私の真横を通ろうとした瞬間、ささやいた。小さな、けれども威圧的な声で。 「オーディンに選ばれたんだね?」  私の背筋はぞっと凍るような感覚がした。 「旬香?」  平幸が去った後も、この、凍るような感覚はぬぐえなかった。恐怖に、私が……? 「……ああ、ウン、大丈夫……」  言いかけた瞬間、チャイムが鳴った。 「あ、ちょっと出てくるね」 「うん」  私は、背後にはまた、いないはずの平幸の気配があった。 「……」  振り返って、いないだろう。やっぱりな。疲れているんだ。と再認識しよう。と思い、振り返った。  しかし、そこには平幸でも何でもなく、童顔の女性だった。 「……!」

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