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スレ8>>270-275 リオとミサコとお姉さま

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silvervine222

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リオとミサコとお姉さま


「ミサミサ、頼みがある……。わたしを救うために聞いてくれ」
「はい!因幡先輩のためなら、番場道産子(バンバ・ミサコ)は身を粉にする覚悟です!」
きょうもまた一日の疲れを癒そうと地上の寝床へ太陽が傾き始めた頃、ウサギとウマの少女のシルエットが紅の空に浮かび上がっていた。
佳望学園の中庭にて、ウサギの風紀委員長・因幡リオは寒風に長い耳を揺らしながら、汚れの無い後輩に相談を申し立てた。
風紀委員の後輩であるウマの番場道産子、通称「ミサミサ」は、敬愛なる先輩から呼び止められると脚をそろえて背筋を伸ばし、
濁り無くも清々しくもある声で明朗活発に先輩へ返事する。肩から掛けた武道用具を入れたバッグは、彼女を凛々しく見せる立役者。
褐色の肌のミサコは風紀委員として学園の乱れを正すと共に、なぎなた部の副部長として活躍する文武両道を地で行く少女。
2m近い身の丈は、他の生徒を圧倒する存在感を示し、高等部女子たちの憧れの存在でもあった。漆黒の長い髪が実に誇らしい。
相反して、背丈もそれほどでもなく、どちらかと言えば地味な子のリオは、いちおう『委員長』として小さな胸を張ってきた。

ミサコの武道仕込みの姿勢の正しさは、寸分のゆがみを許さない風紀委員としての誇りでもあり、先輩への尊敬のかたちであった。
風はミサコの滝のように流れる尻尾をいたずらにくすぐり、リオのスカートをふわりと揺らす。
「頼む……」
リオは普段、学園では『真面目のまー子』で通っている。
制服もキチンと着こなし、靴もきれいに磨き、スカートもほどほどの丈で止め、生徒たちの風紀を守ってきたつもりだった。
ミサコももちろん、そんなリオを目標に彼女を支えてきた。武道で鍛え上げられた心身は、ミサコを裏切ることは無い、はずだ。

「因幡先輩、わたしでよろしければ力になります」
「そう…ね」
光の影になったリオの横顔が、少女を美しく見せる。それは、何故か。光のまやかしなのか。
深く沈黙を溜めたリオは、そろえたばかりの髪の毛を揺らしてミサコの真正面に言葉を叩いた。
「わたしの先輩に会ってくれないかっ」
「因幡先輩の先輩ですか?!」
理由はリオにしか分からないが、何故かリオの両手はぐっと握り締められていた。

何かを隠しているかのように俯いたリオは、実の姉のようにミサコへと優しく言葉をかける。
「そう、わたしの憧れだった人。成績は優秀、『学園の白百合』とも謳われた風紀委員長・石見月子先輩。
わたしが風紀委員に参加することを決意させた、恩人でもあるの。わたしと同じウサギの石見先輩は、わたしの目標だった。
運命的な出会いを通じて、わたしは5つ上の石見先輩に追いつこうと必死に生徒たちに、正しい風紀を啓蒙してきたの。
そして、石見先輩はこの学園を卒業し、伝説から神話にへとかわったのね……。
だけど……かなわない人物は、誰にだっていることをわたしは忘れていたのね……。そんな先輩の頼みを叶えなければ、ね」
「わかりました。この番場、委員会活動の名にかけて!」
夕日を反射するリオのメガネの底は、ミサコには見えなかった。

詳しいことは、後日伝えるとリオはミサコに先輩との邂逅の約束をして、この日は学園から帰宅することに。
「そうだ。因幡先輩、わたしはちょっと部室に」と、ミサコは言葉を残すと、重い武道用具のバッグを軽々と肩にかけて走り去った。

―――「ちょ、ちょ!月子先輩ってば、こんなところで才能の無駄遣いしないでよ!麦茶噴いたー!」
その晩、因幡家の一室では奇妙なやりとりがPCを通じて行われていた。
実際にはキーボードやモニタには、麦茶なんぞかかっていない。それでも、彼女は「麦茶、麦茶」と呪文のように呟く。
ウサギの少女は、PCに映し出される2、3行の文を読んでは、怒ったり、笑ったり、リンク先の落書きに腹筋崩壊したり、そして一人で悶えていた。
感情のエネルギーは、少女の指先の動きに蓄えられた後に、同じくモニタ上の文字羅列に反映される。
「ふう、全く……。だから先輩の関わる作品は、ニ○厨からいじりコンニャクにされるんだよ。草生やしてやる!!」

だらしなく足を伸ばして、髪の良く言って無造作ヘア。大人し目なセーター姿のリオは、マウスを操作してウィンドウを動かす。
ニ○動から拾った、名作MADを鑑賞しようとFLVプレイヤーを立ち上げると同時に、フォローしていた相手から返事が来る。
ウサギ向けのヘッドフォンをモニタに繋げながると、メガネに短い文章が反射する。

『@megane_usagi 日曜日なら、もしかしてわたしは大丈夫だ!ミサコたんによろしくな!!
あと、わたしが原画を描いた作品がニ○動でいじりコンニャクにされていて、玄米茶噴いた』

画面を睨みつけながら、リオは返事を打つ。音楽をヘッドフォンから漏れる。そして、麦茶をごくりと口に含んだ。
その頃、ミサコは自宅一階にある、教室のように広い和室で静かに抹茶を嗜んでいた。

―――「申し訳ございません!その日はなぎなた部の朝錬がありまして!」
リオがミサコとの約束の日を伝えると、顔を曇らせたウマの少女がいなないた。
天を突くほどの背のお辞儀は、間近から見ると驚くほど迫力がある。そんな呑気なことを言っている場合ではない。
委員会が始まると言うのに、後輩を気落ちさせてしまうのは、先輩としてかたじけない。これでは話し合いが進まなくなってしまう。
廊下で真剣に頭を下げられても、どうしたものかと勘違いされまいかと、リオは冷や汗をかくことしかできなかったのだ。
何とかこの場を乗り切ろうと、胸に資料を抱いているリオは「とにかく、教室に入ろう、ね!」と猫なで声でミサコをなだめた。

「石見先輩だって忙しいんだって。でも、武道少女の姿を見たら、石見先輩だって喜ぶよ。『こんな頼もしい子が、風紀委員を支えているんだ』って」
「さようですか……」
「それに、その日一日なら石見先輩も大丈夫だって言ってたし。わたしの目を信じて!」
一瞬、リオはミサコの瞳に吸い込まれそうになった。どうして、わたしはミサコの瞳と違っているのだろう、と。
ミサコの澄んだ瞳は、リオの仕舞い込んだ隠し物を見透かそうとしている、と、リオは目を背けた。

「さ!委員会、始めるよ。きょうは『尻尾美化強化週間』の詰めだから、張り切っていくよ!小田くん!学年アンケートのCD-R!」
きれいに整えられたリオの尻尾をミサコは、優しい瞳でじっと見つめていた。

―――約束の日が来た。
「朝10時に正門前」と昨日の昼、石見月子からメールを受けて、リオは制服姿でのんびりした日曜日の街を歩く。
当たり前だが人通りが少ない。お日さまが間違って夜中に昇ってしまったのではないかという、無理な錯覚にリオは陥る。
いつもとは違う空気にも慣れないが、学園はいつものように丘の上に建っていた。

リオが一人で学園へと続く坂道を登っている頃、ミサコは学園の武道場でなぎなた部のかかり稽古をしていた。
相手は同級生のネコの女子・紫(ゆかり)。お互い、独特な袴から尻尾を伸ばし、相手に悟られないように無の境地に立つ。
体格に恵まれたミサコの持つなぎなたは、他の生徒のものよりも短く見えるが、これでもゆうに2メートルはある。
さらに、ミサコが振るなぎなたから受けたすねは、防具を通じても骨にしびれが届き、紫の動きを鈍らせる。
ミサコが床と垂直になぎなたを素早く振り上げると、怯んだ紫は一歩すり足で退く。相手が二歩目を出す前に、
自分のすねが痺れていることに気付いた。何故なら、ミサコのなぎなたの先は、床すれすれかすめて振り落とされた後だったからだ。

「これまでー!かかり稽古やめー!!」
主将の号令で、一同はかかり稽古を止めて、それぞれ防具を外していた。ミサコが面の紐を緩めると、冬の空気に
暖かい吐く息が上昇する。下世話なお話だが、ウマ専用の面は、他のものよりも特殊で、お値段もちょっとお高い。
「ミサコのすねは、ホント激痛だよー」
「……稽古とは言え、わたしはいつでも真剣勝負。手加減はしない主義なのでね」
ミサコの相手をするときは、相当の覚悟が要る。は、なぎなた部員の合言葉だ。ミサコと相手をしていた紫は、
音を立てずに相手に近寄る戦法を得意としていたのだが、ミサコの力にはどうしてもねじ伏せられてしまうのだった。
悔しさ反面、ミサコとなぎなたを合わせることが出来て、紫はちょっと嬉しかった。

休日の早朝から続いていた朝錬を終えると、彼女らは元の女子高生へと変身する。ミサコも言うまでも無い。
厳つい防具を部室の棚に仕舞いながら、お年頃にお似合いな甘いクレープの話で花咲かせる。
「ミサコも帰りに寄って行こうよ!佳望新聞に割引券が付いてたっけ」
「申し訳ない。この後わたしは、因幡先輩と約束があって……」
「そうなんだ。ミサコって、ここと風紀委員の掛け持ちだもんね」
「うん。ここでは、心身ともに鍛えられるし、委員の仕事もやりがいもあるし、因幡先輩も頼りになるし」
一足早く制服に着替えたミサコは、持参している武道用具のバッグを肩にかけて、扉の方へ踵を返すと、
漆黒の自慢の髪がふわりと宙を舞う。見とれて手を止めていた部員たちは、ミサコにまた明日と、挨拶をしていた。

ぱたん、と扉が閉まると一瞬水を張ったばかりのプールのように静まり、その後、子どもたちが飛び込むようにざわつき始める。
「ミサコったら!もう、カッコいいよねえ!!」
「こんな子に尊敬されてる因幡さんに嫉妬しちゃうぞ!」
袴からスカートに履き替えた少女たちは、百合の花の香りがした。

―――「きゃあああ!わたしの、わたしの嫁がぁぁ!!これはもう『公式は病気シリーズ』決定だね!」
学園中庭のベンチにて、PSPを両手でくいるように画面の2次元な幼女にのめり込むウサギがいた。
長い耳から伸びたコードにつながれたPSPは、彼女が拾った動画で蓄積されていたのだ。
「むっはー!これで勝つる!百合ゆりしろー!!なにこれ、かわいい」
じたばたと脚をばたつかせ、ぶんぶんと髪の毛を振りかざすリオは、正直言って休みの学園にはいらない子だ。
静かな空に、リオの奇声が響く。PSPで再生されていた動画は、エンディングを迎え、クレジットが流れる。

「あー出た出た!!『原画/スタジオ・サラブレッド 石見月子・天馬……』キタコレ!!原画マンかあ!」
アニメ制作で始めに元になる絵を描く『原画』。アニメーターは、まずここから第一歩を歩き始めると言う。
リオの携帯電話は空気が読めるのか、ちょうどPSPから『石見月子』の名前が消えた頃、携帯の液晶に『石見月子』の名前が浮かび上がった。
携帯電話の誘いを断ることの出来ないリオは、PSPを傍らに置いて通話ボタンに指をかけると、そのままのテンションで堰を切る。
「はいよ!『真面目のまー子』の因幡ですっ。月子先輩!これ以上、神作品創って、わたしたちをどうする気なんですの!
月子先輩の仕事は、全国のお子たちからお兄さまお姉さままで見てるんですよ。全国民が注目する仕事って何なの?」
「ご挨拶だね、リオ。実は……」
リオにとって、非常に耐えがたき知らせを月子先輩は、これから伝えなくてはならなかった。
その知らせを聞いたリオは、すっくと立ち上がりローファーで地面をたん!と鳴らした。

「この時間をどうしてくれるんです!時給にして何円何銭何厘なんですか!わたしの日曜朝のお楽しみをぐっと堪えて、
録画予約をして、弟に『予約を消してやろっか?』って、バカにされながらここに来たわたしは、いらない子なんですか!」
「だって、作監(作画監督)がね、きのう一日かかって描いた幼女を見てね『お前は専門学校に入り直せ』って言ってボツにしたんだから!
ちくしょう、わたしの毛並みが鉛筆で真っ黒だよ!だから、きょうはリテイク。サーセン!多分、次回は止め絵が増えると思うけどね」
「働け!悔しかったら、今度大人の財政力で豪華ランチを奢って下さいよ!支払いは任せろー!バリバリ!やめて!」
「原画マンは、出来高制って知ってて言いやがるな」

とにかく、きょうは月子先輩、佳望学園に現れない……と、月子先輩は言った。
ミサコとの約束を果たせなかったリオは、気を落として少し弱気になった。さっきまでの喧騒はどこへやら。
「月子先輩も、デッサンしたかったんですよね」
「うん……。ウチのプロダクション、ひ弱なウサギとかネコとかばっかだから、生のウマの子がじっくり見たくてね」
「でも、『スタジオ・サラブレッド』って、スタッフの9割がウマの……」
「あそこは、辞めた。ムダにわたしをちやほやするんだから」
月子先輩の更なる飛躍を願いつつ、電話を切ろうとしたときのこと。

「って、わたしの描いた動画でどうせ、また『公式は病気』とかタグ付けるんでしょ?あー!付けて御覧なさい!うpして御覧なさい!」
「う……。ネタにして貰えるだけ勲章だよ!ちくしょう、こみけっとで二次創作買い漁ってやる!」
リオのメガネに、褐色の立派なウマの姿が目に入ると、暴走していたはずのCPUが落ち着いた。
大きな武道用具のバッグを肩にかけたその姿は、見紛うことは無い。ゆっくりゆっくり近づく彼女の姿は、
まるで戦国の世を走る『武田の騎馬隊』を思い起こさせる雰囲気を放っていた。

「はい。石見先輩もお仕事お疲れさまです!わたし、先輩にどれだけ近づこうかと……。枕を涙で濡らす日もありました!」
「何よ。いきなり?」

電話越しにキャラが急に変わったリオに月子先輩は面くらい、次の一手を忘れてしまう。打とうと思った駒が手元に無いのだ。
と言うか、相手の棋士は駒を将棋板に置くどころか、月子先輩のおでこ目掛けて投げつけてきたのだから驚くのも無理は無い。
どこかのお嬢さま学校の生徒のような口調で返答するリオは、丁寧に両手で携帯電話を持って一礼した。
「わたしも、石見先輩の声を聞いてとても安心していた所です!お姉さま!またいつの日にか、ごきげんよう!」
「ちょ、リオ!今度さ、リオのコス姿が見たいんだけど!きっと、東方のいなば……」

いつの間にかミサコがリオの側に近づくと、リオは何か話したげな月子先輩を無視して電話を閉じた。
シリアスな顔つきでミサコにことの一部始終を伝えたリオは、ミサコだけの先輩に戻る。
「残念なお話だが、石見先輩は急用でお起こしできなくなった」
「さようですか。残念です」
「大人の世界だ。わたしたちにはどうしようも出来ない。折角だから、帰りにクレープでも奢ってあげようね」

クレープと聞いて、ミサコは内面では頬を緩めたが、表向きにはなぎなたを握ったときのように、顔を引き締めていた。
それは、風紀委員としての誇りがミサコを奮起させていたのだが、リオの方は子どものようにあっけらかんとしたものだ。
呑気に長い耳を揺らし、ミサコに見つからないように後ろ手でこっそりとPSPを自分のカバンに仕舞う。
「きょうは日曜日だし、学校は関係ないの。寄り道にはならないと思うよ!」

ミサコは長い脚でリオを追い抜かぬように、歩みの速さを合わせて一緒に校門へ向う姿は、何故かほほえましい。
その間、ミサコの方からリオに話しかけることは無かったが、リオは相変わらず言葉をまくし立てていた。
ミサコが言うには「因幡先輩と一緒にいるだけで安心します」と。リオは「むっはー!」と叫びたいのを我慢して、
溢れ湧き出る感情をぐっと手を握り締めることで、なんとか押しとめた。しかし、冷静さは続かない。

学園の校門にスケッチブックと画材を抱えて伸びをしている、一人のウサギの女性をリオは発見すると急に言葉を詰まらせ始めたからだ。
その姿は何処と無く、リオをそのまま大人にしたような雰囲気を漂わせている。
「つ、月子……。石見先輩ですか!!」
「リオは中等部の頃から変わらないね」

垢抜けない古着に身を包み、程よく使い古されたブーツは、田舎から出てきたばかりの美大生と言う感じでもある。
学園OGがやって来たということもあり、ミサコは改まって深々とお辞儀を月子先輩にしていた。長い髪のキューティクルが美しい。

「やっぱり、かっこいいなあ。うん」
「石見先輩は……どうして、佳望学園にいらっしゃったんですか?」
「実は、美術系の仕事をしていてね。デッサンのモデルが欲しいなあ、って思ってリオに連絡したら。ほら!美術系の仕事って、
肌で感じて、目で養って、腕を磨くべしってね。流行を先取らなきゃって。でも、ミサコさん。いいなあ……。イイヨ、イイヨ」
やたらと『美術系の仕事』を強調する月子先輩に眉を密かに吊り上げるリオは、ミサコに見つからないように月子先輩の脚にバッグをぶつけた。
「本当にお忙しいところ、申し訳ございません!時間を割いてまで、ここまで足を運んで頂いて……。
(何がリテイクで来れないだ。どうせ、ワンセグでお笑い見ながら原画描いてたから、しくじったんだろ)
番場さん、石見先輩からモデルを頼まれることは光栄なことだよ」
「は、はいっ」

校門をなぎなた部の仲間たちが通り過ぎる。ミサコに手を振る紫は、ぱたぱたとバッグを揺らしてミサコに駆け寄る。
その間、月子先輩はリオをこっそりミサコから遠ざけると、リオの両肩を掴んでぐらぐらと揺らしていた。

「ああ!!ミサコたん、いいよ!いいよ!あー!尻尾をもふもふしたいお!!リオの嫁にはもったいない!日曜はスタジオが休みでよかった!」
「何だってー?月子先輩は、ウソばっかりつくんだから!どうせ『いい作品を作るには、ウソが……』って逃げるんでしょ?
それに、わたしの嫁はもう決まってますの!って、わたしをどっぷりと同人漬けにした月子先輩は悪人です!」
「あれは、わたしが教室に置きっぱなしにしてた同人をリオが勝手に拾ったからだろ。人のものを」
「わたしが拾わなかったら、月子先輩は学校中から笑われ者で人生オワタ!今だったら『ハム○ター速報』にピックアップされますね。
ちょ……。想像したら噴いた!!『教室の机の上に同人置き忘れたwwwwwwww』ってスレ題ついて」

ミサコが紫と別れると、長い脚でリオと月子先輩の元に駆け寄ってきた。リオと月子先輩は長い耳を天高く伸ばして息を飲む。
お待たせして申し訳ございませんと、大きく一礼をするミサコに月子先輩がお気楽にと手を振って、何でもないことをさりげなくアピール。
「まさに文武両道って感じだね。リオもこんな子が後輩で果報者だ」
「わたしだって、石見先輩みたいな人がいてくれたから、くじけずに風紀委員続けられたんですよ。やだなあ」
さっきまでの会話をミサコに聞かれていたら、末代までどう弁明しようかと不安をよぎらせた二人の間に、まだまだ冷たい冬風が吹きぬけた。


おしまい。
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