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老狐の釣り


静かな流れの小川のそばで、一匹の老狐が釣りをしていた。
「そこで何をしてるの?」
「釣りだよ、猫の坊や。」
いつの間にか見ていた、真っ白な猫の子供に、狐は身動きをしないで答えた。
「でも、釣り針がついてないように見えるよ。」
それほど長くない釣竿には、確かに針も餌もついてないようだった。
「ほほっ。坊や、ワシの釣りには針も餌もいらんのだよ。」
長い髭を撫でながら、老狐は少し愉快そうに笑った。

しばらくは猫の子も、本当にこれで魚が釣れるものかと、興味津々だったが、しばらくすると飽きてきてしまった。
「・・・ねえ、狐さん。」
「なんだい、坊や。」
「狐の一族は、年をとると化けることができるって本当?」
「うーん、本当は秘密なんだが・・・」
老狐はちょっともったいぶって答えた。
「化けることができるよ。」
その瞬間、猫の子が驚いたように飛び起きた。
「本当! やってみせてよ!」
「やって見せてもいいが、何を見たいんだい?」
それを聞いて、猫の子は頭をひねって考えた。
いったい、一番難しいのは何に化けることだろう?
狐以外になること? そんなの簡単だろう。
女の人になること? でも、お婆さんの姿を見ても面白くないや。
そうだ! 父さんに化けてもらおう。父さんなら散々見ているから、きっと僕でも見破られるはずだ!
「じゃあ、僕の父さんに化けてよ、狐さん!」
「ああ、お安い御用さ。そういえば、君の名前を聞いてなかったね。君の名前は?」
「シロだよ。」
「わかったよ、シロ。10分くらい待っていてくれないか。」

川辺にシロを待たせて、木陰に隠れた老狐は、近くの道に誰かが通るのを待った。
2分くらいすると、農作業帰りの猪が通りかかったので、慌てた演技をしながら、その猪に駆け寄った。
「あんた! あんた! ちょっと待ってくれ!」
「なんだ、爺さん。そんなに慌てて・・・落ち着いてくんな。」
「これが落ち着けるか! そこの川で、猫のシロがおぼれかけている! 早く人を呼んでくれ!」
「なんだって? じゃぁ、俺が今すぐ飛び込んで助けてやる!」
「いや! それはワシがやろう。あんたは、今すぐこの子の親を呼んできてくれ!」
「ああ、走って呼びに行くなら、確かに俺の方がいいな。なんたって真直ぐ走」
「早くしてくれ!」
いつのまにか始まった猪の自慢話を打ち切って、急いでシロの親を呼びに行かせた。

10分後、シロの前には確かに父親が現れた。
・・・大勢の大人を引き連れて。
シロは最後まで、それが自分の父親だとは信じなかったという。
そんな騒ぎから離れたところで、老狐は「また今日も一匹連れた。ほほっ」と、上機嫌で家路についたとさ。