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鎌田のマザーズデイ


ライダーの携帯にメールが届いた。
怖い叔父を持つ馬男、塚本からだった。
『母の日に贈るハナって何だか知ってっか?芥子だっけ』
ボケているのだろうか。
ライダーは『コスモスだよ』と簡単に返信し、そういえば母の日だったな、と思った。
警官を目指す鎌田は体力試験に備えてジョギングを日課としている。
その日課のついでに、文字通り、通り一遍の儀式として、母親にカーネーションを買う事にした。
母の日に花を贈るなんていつぶりだろう。
花屋の店先に並んだ綺麗なウェーブを持つカーネーションを見て、鎌田は思った。
(狩り難そう)
カーネーションはコロネーション(戴冠式)をもじった名だと言われるくらい、花が先端に突出している。
花が突出していていると言う事は、カマキリが待ち構え擬態化するべき茎や葉から花が遠いことを意味する。
野生のカーネーションは葉が柔らかいためアブラムシもたかり易く、蟻が多数護衛に付いているだろう事は想像に難くない。
きっとこの花を狩り場に選んだカマキリは相当苦労するに違いない。
夜の街灯に居て蛾でも捕まえたほうがよほど効率がいい。
もっと花が下葉に近い位置で咲くほうが狩りはしやすいだろう。
「何本お包みしますか」
「え? あ、はい、じゃあ五本くらい」
花屋の店員に話しかけられ、鎌田は頭のお花畑でのサバイバルをやめた。

「はい。母の日だから花、買って来たよ」
「あらあら」
鎌田がお母さんに花を渡すと、お母さんは笑顔満面に。
「……」
ならなかった。
母の微妙な表情を見て、鎌田は聞いた。
「あれ?母さんて花嫌い?」
「そんなわけでもないけど」
鎌田の母は言った。
「親戚にそっくりで。花カマキリの」
母の顔は、微妙な、から、明らかに苦り切った表情へ。
「すっごいナルシストで、嫌な奴でねぇ」
「……ふーん」
こののち、鎌田家で2~3日飾られた花は誰に愛でられるでも無く早々に処分された。
鎌田は母の日に花を贈らなくなった理由を再認識したのだった。

GW明けの学校にて。
塚本が鎌田に話しかけた。
「母ちゃんにコスモス買ったらよー、花屋に微妙な顔されたんだぜ?
花屋っつーのは母の日も知らねーんだな。マジ馬鹿だ」
「……へー」
マジ馬鹿はどっちだよ、とは言えない鎌田だった。