獣人スレ @ ウィキ

スレ4>>600-601 ロールちゃん

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lycaon

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ロールちゃん


「あの…、跳月先生。これ見て下さい」
「なんだね。因幡くんがわたしに質問とは珍しいね。どうしたかね、PCの画面を見つめて」
「この、ヤ○ザキのロールちゃんスペシャルサイトなんですけど」
「ほほう、なにやら楽しげなサイトじゃないか」

理科準備室にはPC画面をしげしげと見つめるうさぎの風紀委員長・因幡リオ、その横の机では
お気に入りのこぶし大の重い磁石を付けたり離したりしながら、
物理遊びに耽る同じくうさぎの物理教師・跳月十五の二人がいた。
因幡リオはロールちゃんを齧りながら、画面の明かりで自分のメガネを光らせていた。

最近、学園内で流行のヤ○ザキのロールちゃん。
うさぎの耳のように長くそして雪のような柔らかな食感が女生徒を中心に人気を博している。
なんでも学園下のコンビニでは放課後の時間になると
『ロールちゃん争奪戦』が女生徒たちで繰り広げているということらしい。

特に『濃厚ミルククリーム』は発育に有効なミルクが豊富に含まれているということで、
少年のような胸の女生徒には飛び抜けての人気を誇るというから驚きだ。
彼女らの魅力的な身体への追求心はロールちゃんをも巻き込む。
この噂はとある現社教師の一言がきっかけで広まっていったのこと。
そして、この因幡リオも例外ではなかった。

「タダで長時間PCが使える」ということと「人目につかないから」という理由で、因幡リオは
理科準備室のPCをネットに繋ぎ、熱心にロールちゃんの製品情報を見ていたのだ。
呆れた跳月十五は「PC教室で見れば?」と話しかけたが、因幡リオは「うるさい」と突き返した。
ところが、PC画面を見ながらマウスのホイールを転がす因幡リオはそのサイトで、
どうしても気になることが出来てしまった。

「見てください。わたし…考え出したら気になってしょうがないんです!!」
「え?どこがだい。ホイップにイチゴに濃厚ミルククリーム…、
 疲労を吹き飛ばすには最適な甘味類は世の女性たちに人気だ。
 そう言えば獅子宮先生も気に入っていたようだけどな。男勝りとは言えやはり獅子宮先生も女の子だな。ははは」

「何言っているんですか、跳月先生。ほら…下の方に画面を動かすと…」

製品情報サイトの画面下には二人仲良く並んで縄跳びをする、うさぎのキャラクターが描かれている。
彼らは「クロールちゃん」「シロールちゃん」という双子のうさぎ、彼らはロールちゃんのように長い耳を持つ。
その耳は彼らの身の丈よりもはるかに長く、因幡リオや跳月十五の耳と比べると比較にならないほどの長さであった。

また二人が持つ縄跳びも耳が縄を潜り抜けることが出来るように、
我々が普段使う縄跳びの縄と言うより、長縄跳びのものと同じくらいであった。
双子ということもあって、ジャンプの息もピッタリ。
「クロールちゃん」と「シロールちゃん」は楽しげに縄跳びに興じる。
しかし、因幡リオのメガネはこの何でもない光景が引っかかると言うのだ。


「ほら…縄がちょうど頭上に来ているところじゃないですか。
 で、このあと縄は慣性の法則に従ってくるりと二人の前方へ回ります」

「そうだね。それは自然の法則に実に正しい。で、どうしたんだ?」
「ここからが問題なんです!彼らの前方に回った縄はこのままだと縄の大部分を地面に打ち付けてしまうんです」
「なるほど、縄の回転軸の高さから考えるとその仮設は正しいね。しかし、それじゃあ縄跳びとは言えないね。
 縄跳びとは継続して飛び続けてこそ『縄跳び』と言うんだ。きみもやったことがあるだろう。それで?」

「そうなんです!跳び続けるには縄の頂点を足の下を通過させて、一回以上縄を回転させ続け、
 背後を経由して元の頭上に戻す必要があります。
 しかし、彼らの持つ長さの縄をあの回転軸の高さで一回転以上させることは不可能です。
 ところが…、そんなことお構いなしに笑ってる二人の顔を見てください!
 実は…彼らはわたしたちの想像を超える縄跳びを見せるのです」

「なんだって…」

跳月十五は手にしていた磁石を机のふちに置き、因幡リオの話に垂れた耳を傾けていた。

「そうです!二人そろって物凄い跳躍を見せるんですよ!その高さは彼らの身長以上に跳びあがるんです!!」
「まさか…そんなことできるわけないだろっ」
「まさかじゃないです!でなければ、継続して縄を回転させることが出来ないじゃないですか!物理的に!!
 しかも、彼らは普通に跳び続けて顔をけっして崩すことはありません!御覧なさい、この無邪気な顔を!」

「う…。確かにこの顔は何の苦痛も疲労も感じているように見えないな。
 乳酸は彼らの脚に溜まっているのだろうか?」
「さらに驚いたことに、何度も何度も金メダル級のジャンプを子どもの頃から繰り返しているんですよ!」

因幡リオはロールちゃんを握り締めたまま話を続ける。

「彼らの暮らす村のうさぎは皆、同じような耳を持ちます。このことはこのサイトで確認することが出来ます。
 ということは…彼らは代々あのような超人的ジャンプを軽々とこなす。
 そう、かれらは神の領域を超えたうさぎ…」

「なんだと、そんな…ばかな!」

跳月十五が立ち上がったはずみで、机のふちに置かれていた重い磁石が跳月の足に落ちた。
が、クロールちゃんたちのような跳躍をすることは出来なかった。


おしまい。



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