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スレ4>>323 二人の静かな図書館

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lycaon

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スレ4>>323 二人の静かな図書館


それは、何かに例えるとしたら、小鳥の囀りの様な小ささだった。

「大丈夫?」

心配そうに顔を覗き込んだ織田は、右手を比取のおでこに添え、左手を自分の額に当てた。

「だ、大丈夫です。風邪じゃないです。誰かが噂したんですよ、きっと。」

頬が赤くなるのを感じながら、比取は慌てて離れ、元気である事を見せようとその場で軽く何度か飛び跳ねた。
本人が元気と言うのなら深く追求しない織田だが、どうしても比取だけは追求しそうになるのであった。

当たり前だが、学生はいつも学生服を着ている。比取もちゃんと着ている。ただし、上着だけ。
尺、と言うより身体の構造上の理由で、ごく一部の生徒は、上着しか着ていない。
その所為か、織田はそういう生徒を見ると、心配をしてしまうのである。

本人から見れば少し迷惑な行為になるので、織田は意識にしない様にしていたが、
今回の件でとうとうやってしまった。
一度やってしまうと歯止めが利かなくなるので、織田は長年の疑問を口する事にした。

「比取君。上着だけで寒くないの?」
「え?寒くないですよ。逆にちょっと暑いくらいです。」

それを聞いて織田は、目からウロコが落ちるかと思った。
今までの悩みは何だったのかさえ思えてきた。

「比取君は……やっぱり冬が好き?」
「はい、大好きです。逆に夏は苦手です。」

織田は、改めて種族の違いについて認識をした。
因みに織田が好きな季節は、秋である。


それは、何かに例えるとしたら、バイクの空吹かしの様な爆音だった。

「うるさい。」

所変わって学校門番前。
和賀は、今すぐにでも逃げ出したいくらい恥ずかしくなっていた。
その原因は、隣にいた。

「す、すびまべん。」

言葉にならない様な声で、原因の張本人……羽場は謝った。
羽場は、正真正銘、風邪を引いていた。

一応マスクを付けてはいるが、先程のくしゃみではマスクを付けている意味は、あまりない。
羽場がくしゃみをする度に、近くにいた生徒は離れ、元々遠くにいる生徒は何事かと視線と向けてくる。
羽場を家まで連れて帰るため離れられない和賀は、二重も三重も恥ずかしい思いをするのであった。

「たく、いつも家でゴロゴロしてるから風邪引くんだよ。少しは運動しろ。」
「ぐ、ぐんどうばずこじ……ぐわっくしょん!」

また羽場のくしゃみが辺りに響いた。
翌日、和賀が風邪をうつされるのは言うまでもなかった。




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