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秘訣


放課後、特に部活の無い生徒達は既に家路に就き、運動系の部活の生徒達は練習に励み始める位の時刻。
職員室にて、獅子宮教師が他の教師達に混じって、咥え煙草をしつつ今日の報告書をPCに打ちこんでいた。

この報告書の製作、ひたすら面倒臭い作業ではあるが。これをやらずにいると英教師に口煩く説教される事になる為、
彼女は半ば嫌々、半ば仕方なしといった感じに報告書を仕上げていた。
――と、そんな時、ばたばたとこちらへ駆け寄る数人分の足音が聞こえた。

「……ん? お前らは……?」

獅子宮教師が何気に振り向いて見ると、其処にいたのは芹沢モエを筆頭とする高等部の女生徒数人。
彼女らが向ける真剣な眼差しに、何事かと獅子宮教師が考える間も無く、1歩前に出た芹沢が声高に言う。

「獅子宮先生! 唐突で悪いですけど、聞きたい事があります」

聞きたい事? 自分に?
突然の問い掛けに対し、獅子宮教師の頭に疑問符が浮かぶ。
しかし、彼女がそれを問い掛ける間も無く、芹沢が更に続けて問い掛ける。

「先生のそのナイスバディはどうやって成しえた物なのですか? 良ければその秘訣を教えてください!」
「…………」

余りにも単刀直入過ぎる問い掛けに、
呆気に取られた獅子宮教師は思わず口から咥え煙草を落としてしまう。
それにあっ、と気付いた時には既に遅く、零れ落ちた煙草は机と机の隙間へ消えていた。
そして、彼女は手を額に当てつつ、後悔混じりにうめく。

「……何てことだ。貴重な煙草をまた、無駄にしてしまった……」

恐らく、今更拾いに行ったとしても埃塗れで酷い有様であろう。 
年末にも同じ失敗をし、反省したにも関わらず、これである。彼女は自分の迂闊さに激しく後悔した。
そして、怒りのやり所を探す様に視線を巡らせた獅子宮教師は、その隻眼の瞳で芹沢達を見る。

「………」

彼女らは獅子宮教師の悔恨なんぞつゆ知らず、
期待の眼差しを獅子宮教師に向け、その返答を今か今かと尻尾を振りながら待っていた。
其処で、彼女らに一杯食わせる手段を思いついた獅子宮教師は、それを迷う事無く実行に移した。

「そうだな……ある事にはあるが、そう簡単には教えたくないな?」
「え? そんなぁ! 其処を何とか!」

すぐさま食い付いた芹沢達を前に、獅子宮教師は内心ほくそ笑む。
そう、『教えたくない』と言ったのは、嘘を真実と思い込ませる為の前段階みたいな物である。
無論、そんな事を芹沢達が知る筈も無く、眼前に手を合わせて懇願する様に言う。

「先生、お願いですからどうか、この可愛い生徒達に秘訣をお教えください!」
「ふふ……其処まで言うなら、少しだけ教えてやっても良いのだがな?」
「え? 本当ですか!?」

同時に、わぁ!――と他の女生徒から歓声を上がる。
獅子宮教師は芹沢達に耳を寄せる様に言った後、小声で言い始める。

「私のこのプロポーションの秘訣はな……ずばり、ノーインナー健康法にあると言って良い」
「ノー…インナー健康法? それって、如何言う……?」
「簡単に言えばそうだな……下着を着けずに過ごす健康法って奴だ」
「な、なるほど……」

芹沢が上げた物なのだろうか、ごくり――と喉を鳴らす音が聞こえる。
既に彼女の尻尾の振りは最高潮だ。振る動きがブルンブルンと回転する動きに変わっている。


その様子を前に、その場で笑い出したいのを堪えつつ、獅子宮教師は自分の胸を指差して言う。

「ブラとパンツを着けないでいると、バストとヒップが弛んでしまいそうになるだろ?
だが、それを意識して引き締める事で、シェイプアップと同時にサイズの増大を行う事が出来るのだ」

無論、彼女の言っている事は全くの嘘である。
しかし、そんな獅子宮教師の嘘八百を芹沢は信じたのか、懐から取り出したメモに内容を書き写し、
そして他の女生徒達もまた、獅子宮教師の言葉の一字一句を聞き逃さぬ様、耳を傾けている。

「ああ、それと言っておくが、この健康法を始めたならば最期まで下着を着けずにやり通す事だ。
下手に下着を着けてしまったら最期、やった事が全て無駄に終わるから気を付けろ」

その言葉に、芹沢達女生徒は互いに顔を見合わせ、ひそひそと相談し合う。
どうやら下着を常に着けないでいる事に対して、少なからず抵抗を感じている様だ。
その抵抗を打ち崩すべく、獅子宮教師はもう一押しとばかりに付け加える。

「現に、私は今も下着を着けてはいない。 とまあ、それは見れば分かると思うがな?」

言って、彼女は自分の乳房を両手で軽く持ち上げ、芹沢達に見せつける。
その見せ付けた乳房の頂点の辺り、服の生地越しに浮き出た小さな膨らみを彼女達はじっと見入った後。
どうやら獅子宮教師の嘘を完全に信じこんだらしく、うんうんと頭を頷かせた。

「ま、これを信じるか信じないかは……お前達の自由だ」

そして、獅子宮教師はダメ押しの台詞を言って、にやりと笑って見せた。

「せ、先生、忙しい所をお教え頂き、有り難うございます!」

感極まって、獅子宮教師の手を取ってブンブンと振りつつ言う芹沢。
よほど嬉しかったのだろう。もう彼女の尻尾の動きは飛行機のプロペラの様に凄まじく回転している。 
彼女らに自分の嘘を上手く信じこませた事に、獅子宮教師は心の内で会心の笑みを浮かべた。
嘘をつく事に何ら抵抗はなかった、悪いのはいきなりヘンな事を聞いて煙草を無駄にさせた彼女らの方だ。
彼女がそう考えているとは知らず、芹沢達は職員室からの去り際に頭を下げて言う。

「それでは、先生、忙しい所失礼しました」
「ああ、風邪には気を付けろよ?」

と、白々しいまでに言って見せる獅子宮教師。 
そして、事実を何も知らぬまま嘘を信じこんだ彼女らの背を見送った後。
彼女はついに笑いを堪え切れなくなり、肩を震わせて一人含み笑いを漏らす。

「く…くくくっ、最高だ。 あの様子から見て、あいつら、私の嘘を完全に信じこんでたな…くくっ…。
まあ、せいぜい男子生徒達の目を楽しませてやってくれ、くくっ」

そうやって彼女が一人悦に浸っていた所で、
何時の間にか彼女の後にいたヨハンが、何処か信じられない調子で問いかけてくる。

「下着をつけてないと言う事は……まさか、下もはいて―――」

 ご っ !

その台詞を言い切る間も無く、ヨハンは獅子宮教師が無言で放った裏拳によって沈黙した。


その後、嘘に気付いた芹沢ら女生徒達の手によって獅子宮教師がけしからん事をされるまでの約一週間の間。
佳望学園の教師、生徒を問わず、男性達は皆、世の春を満喫したのであった。

――――――――――――――――――――おわれ――――――――――――――――――――