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日曜、月曜日は嵐のように過ぎて火曜日。火曜日は通常通りの登校となり、殺人事件があったのが嘘のようにいつもの日常が
始まった。山のようにあった宿題は徹夜して何とか処理することができ、テスト勉強もそれなりにすることができた。午前中
は丸々テストだったので、少し目が疲れているようだ。肩も痛い。昼休みの間ゆっくりと眠っていたいと思うが、そうは言っ
てられない。昼休みの間にあの烏の男に接触して名前くらいは聞き出さないと。廊下をつかつかと歩き出し、別のクラスにあ
の烏の姿は居ないかと余所見をしながら歩いていると、何かにぶつかって勢いよく倒れてしまった。

「うわっ・・・ご、ごめん」

何がぶつかったのかと思えば、犬族の女の子。しかも物凄く小さい。小さくて見えなかったとはいえ、俺の不注意だ。謝っ
て立ち上がると、その女の子も勢いよく立ち上がり

「ごめんなさい!急いでたので・・・!」

風のように去っていった。昼休みとはいえパンを咥えながら歩く女の子なんて初めて見たな・・・何だか人の視線が痛いので早く
この場から立ち去らねば・・・・って誰だ笑ってるのは・・・!

「何やってんだよ馬鹿」

笑いながら俺に話しかけてきたのは探していた烏の男。ああ、よりによってこいつにこんな所見られるなんて最悪だ。と、と
にかくこいつを見つけることができたんだから良しとしよう。

「話がある。何の話かは・・・分かるな?」
「ああ、別に構わないぜ。場所を変えるならな。」

確かに人の多い廊下でするような話ではないな。場所を屋上に移すことにした。俺を殺そうとした奴と話すのは嫌だが、少し
でもこいつの事を知らないと打つ手が無いからな。

「お前も変な奴だな。俺はお前を殺そうとしたってのに普通に話そうとするなんて」
「本当はお前の顔見てるだけで胃が痛くなりそうなんだがな。それはともかく、色々聞きたいことがある。全て話してもらお
うか。」





「・・・まあ、少しぐらいなら話してやってもいいぞ。どうせお前はもうすぐ死ぬんだからな」
「冥土の土産って事か。洒落にならないな。俺は意外としぶといから、やられるのはお前のほうかもしれないぞ?」

この男はまた俺を殺す気でいるだろうが、流石に学校内じゃ凶器を持ち歩くわけにもいかないから今は安全だろう。

「まず聞きたいことは、お前は職員室から何を取ったかということだ。関係ない教師を殺してまで手に入れたいものなんてあ
るのか?」

俺がそう言うと、烏の男は懐から何かの紙を2枚取り出して黙って俺の前に差し出した。一枚目の紙にはシャープペンで書かれ
た数字がいくつか並んでいた。

【43,21,54,23,54゛,31,23,34】

そして、2枚目の紙に書かれていたものは・・・・

【五十音を左から並べ、十の位は縦として、一の位は横として考え進む。ただし文字からはスタートしない。】

「・・・・何だこれは?全く意味が分からないんだが・・・」

「それを俺は職員室から盗ってきたんだよ。その紙には俺たちが必要とする物の在り処が示されてるらしいが、俺にもさっぱり
分からないんだよな。仕方ないからとある奴に頼んで解読してもらおうと思っているんだが、もしお前がこの暗号解けるという
のなら教えてもらおうかな。まあ、無理だと思うが。」

烏の男は俺〝たち〟と言った。この事件はこいつだけが関係してるわけではなさそうだ。とある奴というのも気になるが、それ
以上にこの暗号とやらが気になる。前に高杉が言っていた暗号のような紙とはこの事だろう。もし俺にこの暗号が解けたとして
もこいつに教える気はないが、この紙にこいつらが必要とする物の在り処とやらが示されているのなら、こいつらの目的を知る
事ができるかもしれない。この紙に書かれた文字をメモしておこう。





「お前が何かを手に入れるために職員室からこの紙を盗ったというのは理解できた。だが、何故そんな紙が職員室にあるんだ?
あと、何故わざわざ高杉にその紙を盗らせようとした?」

先ほど見せられた紙の内容をこっそりメモし終わった後、俺は一番聞きたかったことを聞いた。すると、烏の男は俺に背を向けて、

「そいつはノーコメントだ。下手に話したら俺の身が危ない。」

そう言った。そして、屋上から出て行こうとしたので、俺は慌てて呼び止める。

「待て!お前の名前くらいは聞かせてもらおうか。」
「・・・関村 影斗だ。次こそはお前らまとめて殺してやるから、覚悟しとけよ」

そう言って、彼は屋上から去った。

「関村か・・・覚えておこう。」

名前を知ることができたのはいいが、それよりも暗号の書かれた紙が気になって仕方が無い。これは一体どう解けばいいのだろう。
おそらく、二枚目の紙が暗号を解く鍵なんだろうがその二枚目の紙にかかれた文字の意味さえよく分からない。五十音を左・・・・
・・・・・まあいい、後でじっくり考えよう。

「あ、さっきの狼さん」
「・・・・ん?」

突然、後ろから声がしたので振り返ってみたらさっき廊下でぶつかった女の子が立っていた。パンを大量に持っている所を見ると
屋上で昼食を食べるつもりなのだろう。

「さっきはごめんなさい!」
「い・・・いや、あれは余所見してた俺が悪かったんだし君が謝らなくても・・・・」

頭まで下げなくても・・・・ボディーランゲージが派手な子だな。校章の色を見る限りでは俺と同じ高校二年生なんだろうが、どうみ
ても小学生にしか見えない。





「それはともかく、見たことない顔だね。前から居たっけ?」
「いやー今日転校してきたばかりなんですよ。転校したはいいものの、事件が起こったりテストが始まるわで大変ですよー」

・・・・姿だけでなく声や話し方まで小学生みたいだ。見たことのない子だと思ったら、今日転校してきたばかりなのか。

「でも、色々準備とか、テスト期間中だという事もあってまだクラスの人とも会ってないんですよ。多分午後から紹介されると思いますー」
「そうなのか。で、何組になる予定なんだ?」

同じ高校二年なら同じクラスになるかもしれないな。

「えっと、確か二組だったと思います!」
「・・・・なら俺と同じクラスだな。」
「そうなんですかー!それじゃあ、これからよろしくお願いしますね!」

また勢いよく頭を下げたかと思えば彼女が大量に持っていたパンがドサーっと音を立てて地面に落ちた。何というドジな子。
まあ、袋に入っているから汚れる心配はないだろうが。

「あわわわっ!」
「ほらほら慌てない。また落とすぞ。」

その子は慌ててパンを拾おうとしたがこの調子だとまた落としそうで怖いな。結局、俺が地面に落ちたパンを拾い上げ彼女に手渡
すハメになった。

「あうぅ・・・狼さん本当にごめんなさい!」
「気にするな。それより、早く食べないと昼休みが終わるぞ?」

昼休みが終わるまであと三分ほど。彼女が時間内に食べ終わることはできるのだろうか。

「邪魔しちゃ悪いから俺はそろそろ教室に戻るよ。あ、そういえばまだ名前を聞いてなかったな。」
「私の名前ですか?樫村 琉海です。狼さんの名前は?」





るい・・・女の子の名前にしては珍しいな。名前を聞かれたからには俺も答えないとな。

「柊 眠兎だ。」
「いい名前ですねー!それじゃ、またお話しましょう!狼さん」

ガクッ・・・名前教えた意味ないじゃないか・・・とりあえず、早く教室に戻ろう。屋上から下へつながる階段を降りようとしたとき、そ
こに見覚えのある人物が笑顔で立っていた。

「眠兎君?確か烏の人と話す予定だったよね?なのに何で女の子と楽しそうにお喋りしてるのかな?」

花音・・・・いつからここに!?高杉と流虎も居るし・・・

「私たちが眠兎君の心配をしてここに来たっていうのに、小さな女の子と二人っきりで一体何をしてたのかな?」
「ご・・・誤解だ!俺はただ・・・」
「問答無用!」

次の瞬間、俺の鳩尾に花音の拳がめり込んだ。最近殴られてばかりのような・・・

「だ・・・大丈夫?」

高杉が心配そうにそう言ったが、返事ができないぐらい苦しい。ああ、お花畑が見えてきた。

「眠兎。小さな女の子に手を出すのは犯罪だからやめた方がいいぞ」

何?もしかして俺ロリコンだと思われた?そもそも手を出していないし。ああ、みんなの視線が痛い。

「ご・・・誤解だって!と・・ともかく、烏の奴とは話すこともできたし少しだけ情報を手に入れることもできた。あの女の子とは普通に話
してただけだ!だからそんな目で俺を見ないでくれー!」

俺の叫びは、昼休みの終わりを告げるチャイムの音で空しく消えた。ああ、もうどうにでもなれ。





あらぬ疑惑をかけられたものの、何事もなく時間が過ぎて下校時間となった。転校生の女の子は午後の授業が始まる前に紹介されて、ク
ラスの一員となった訳だが・・・・珍しい紹介の仕方だな。午前中ではなく午後からクラスの中に入るなんて。午前中は小さなテストをやっ
ていたからそれの邪魔にならないよう配慮されたのかな。今日も色々あったけど、何事もなく帰れそうだ。

「あの女の子、転校生だったんだな。」
「ああ。・・・・・言っておくが手は出してないぞ。」

流虎が勘違いしたままだと困るので一応釘は刺しておく。全く、小さな女の子に手を出すわけないだろう。でも一応同じ年だから犯罪では
ないが。いやいや手は出してないぞ。可愛いとは思うけど。色々と考えながらも俺は家にたどり着いた。あの烏の男・・・・関村から襲われたら
困るので、高杉は花音、俺は流虎と一緒に下校した。高杉と花音の帰り道の方角が一緒で良かった。

「さて、これをどうするか。」

家に帰り、ポケットの中に丸めたメモ用紙を取り出す。何かの暗号らしきものが記された紙。これは一体何を示しているのだろう。

「五十音を左から並べ、十の位は縦として、その後一の位を横にして進め。ただし文字からはスタートしない。」

五十音を左から・・・・あいうえお表を左から書けばいいのだろうか。とりあえず書いてみる。そして十の位は縦、一の位は横というものは多分
一枚目の紙の43,21,54,23,54゛,31,23,34を解く鍵となるだろう。文字からスタートしないというのも気になる。もしかしたらこの数字
は何かの文字になるのかもしれない。数字ではない何か・・・・

「数字ではないとすると、やっぱりこの五十音が何か関係してるのかもな・・・」

数字としてみるのではなく、ひらがなとしてみよう。この数字をひらがなにするにはどうすればよいか。元々、や行はやいゆえよとなってい
たが“い”と“え”はすでにあいうえおで使われているので除外できるかも。まあ、読みが当たっていればの話だが。不確定要素が多いからな。
十の位は縦として一の位を横・・・・この五十音の縦と横・・・・5つの文字が10個並んでいるので全部で縦5、横10として考えればいいのか?そう考えると・・・・

「縦を4・・・横を3」

俺の考え方が正しければ文字からはスタートしないという所はあ行から始まると考えてしまわぬための予防線だろう。そう考えて最初に出てき
たのは〝せ〟という文字。この解き方で次々と解き進めていくと・・・・

「せいとしどうしつ・・・・生徒指導室だと?」

俺の考えは正しかったのか?正しいとすればこの暗号が示す場所は生徒指導室ということになる。関村が欲するものは生徒指導室にあるのか?
・・・明日、確かめてみようかな。いや、もしかしたらあいつも今頃この暗号を解いているかもしれない。もし生徒指導室に何か手がかりがあるの
ならそれをとられる前に行ったほうがいい。今すぐ行くべきか・・・準備をして、玄関を飛び出す!俺の考えが、当たっていますように。