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「雨、降るといいんだが…」



今日の降水確率は0。振るわけがないか。
それよりも、休みの間に大量に出された宿題と、試験のために勉強をしなくては。
高杉の件もあるし、月曜に備えておこう。



山のように出された宿題に手をつけようとしたと同時に、玄関のチャイムが鳴らされた。
来客か。面倒くさいから早めに済ませよう。宗教の勧誘とかだったら即刻扉閉めてやる。



「何だ、花音か。何の用だ?用が無いならすぐに帰ってくれ」
「あら、不機嫌ね。でも、そんな事言っていいのかなー?折角忘れ物を届けに来てあげたのに。」



そう言って、花音が懐から取り出したのは、携帯電話。
…あれ、何故俺の携帯を持っている。昨日学校に忘れてたか。



「すまないな。…勝手に中身を見たりしてないよな。」
「さあ、どうだろうね。それじゃ、用はそれだけだから。月曜日にまた会いましょう。」



否定はしないのか。まあ、見られて困るようなものはないし別に良いんだが。
花音も去った事だし、これで安心して宿題に取り掛かれる…って…



「メールか…」



ついさっき受け取ったばかりの携帯からエリーゼのためにが流れる。
どうやらメールが届いたようだ。というか着信音変えたいのに変え方分からないからエリーゼのためにのままで困る。
昔観ていた怪談もののアニメでこの曲を題材にしたものがあったから今でもトラウマだ…って話が脱線してしまった。
画面を見て確認すると、差出人不明。件名は無い。



「どうせスパムメールだろ」



そう呟いて、画面を閉じる。さて、今度こそ勉強に取り掛かろう…数秒後、またもエリーゼのためにが流れる。
もう一度画面を開いて確認すると差出人不明。無視しよう。数秒後、またまたエリーゼのためにが流れる。



「仕方ない。開くか。」



メールの差出人は分からないが、本文に書かれた内容はこのような物であった。




【眠兎君。メールはちゃんと確認しようね】



花音か。仕方ない、一応アドレス張に記録しておくか。菅原花音‥っと。さて、返信するか。



【忙しいから今はメールできない。また今度にしてくれ】



そう書いて返信。よし、これでもう邪魔者は来ないはずだ。
携帯を閉じようとしたその時、ある文字が目に飛び込んできた。
それは携帯の下を流れるニュース欄の文字。そのニュース欄に、俺の通っている高校の名前が載っている。
何があったのだろうと思いつつ文字を読んでいくと…



「…教師が‥殺されただと」



ニュースによると今日の早朝、宿直の教師の刺殺体が見つかったらしい。
そういえば今日はテレビを点けてなかったからニュースも観ていない。
もっと詳しい情報が欲しいからテレビを点けてみるか。



『…職員室には物色した後があり、犯人が何かを盗んでいった可能性もあります。おそらく、その教師は犯人の姿を偶然目撃し
てしまい、殺されてしまったのだと思われます。』



テレビから聞こえてきた声が告げたのは、誰かが職員室のものを盗んでいった可能性があるということ。
教師が殺されたのは犯人の姿を目撃したからかもしれないということ。
…職員室のものを盗むという事を聞いたら、どうしても昨日の事が思い浮かぶ。
もしかしたら、花音はこれを伝えたいがためメールを送ったのではないか。聞いてみるか。



【さっきはいきなり切って悪かった。そのことは置いといて、ニュースを観たか?大事件になっているようだが。】

こんな文面のメールを送信した。少し経って、

【うん。大変な騒ぎになってるね。この分だと月曜日は多分休みだろうね】

まあ、普通休校だろう。殺された教師が親しい教師ならともかく、
他の学年の学科を担当をする教師だったから顔すら覚えていない。
いや、こんな事考えたら失礼か。それより、俺が気になるのは、昨日の騒ぎ。昨日の騒ぎがあった場所も職員室だ。
関係があるとは思いたくないが…まあ、俺が考えても仕方ない。警察が何とかしてくれるだろう。


少し時間が経つと、ニュースの事件の情報が増えてきた。
殺された教師は刺殺体と言っても、一撃や二撃で殺された訳ではない。
体中を全身滅多刺し。しかも、殺傷能力の低いナイフでだ。
何度も刺されて痛い思いをするくらいなら一思いに殺された方がまだいいだろう。
こういう事に経験が浅い素人が殺したのか、それとも、痛がる姿を楽しんでやった熟練者の犯行なのか。
人殺しの心情というものは、同じ人殺しにしか分からないだろう。
生憎、俺は普通の高校生だから判るわけが無いが。普通の、高校生。

「…俺は普通だ。親父なんかと一緒じゃない」

何で、何で今あんな最低の親父の事を思い出した…あの男の姿を思い出すだけで、
体中に流れる血を捨てたくなるほどだというのに。親父のことを忘れようと思っても、忘れられない。
俺の右目は、あの男と同じ赤のオッドアイ。その色を隠すために今もカラーコンタクトを付けて隠しているが、
毎朝コンタクトを付けるたびにあの男を思い出す。

「…こんな事考える前に早く宿題を終わらせなくてはな」

シャープペンを持ち、今考えていたことを無理に忘れさせようとする。
人殺しは法により裁かれる。こんな事件を俺が気にかける必要もない。ただ、殺人事件が身近に起きた。
それだけの事だ。宿題に三たび取り掛かろうとした、そのとき、また玄関のインターフォンが鳴った。

…俺の家には監視カメラでも付いているのか?
玄関を開けると、そこには昨日知り合ったばかりのクラスメイトが立っていた。

「何だ、高杉か。何の用だ?」
「……」

返ってきたのは、数秒の沈黙。何かあったのか?…長い話なのかもしれないな。

「とりあえず、入れ。何か話があるのなら中で聞くから。」

何も話そうとしない高杉を部屋に招きいれ、棚にあった適当な紅茶を淹れて持っていく。
話があるなら早く話してほしいんだが‥
沈黙が痛い、痛すぎる。そう思いながら、俺も黙っていると彼は重い口を開いた。

「今日のニュース‥見た?」
「ああ、昨日の夜学校の教師が殺されたらしいな。」

紅茶に砂糖を入れながらそう答える。彼がこんな話を切り出してきたと言うことは、
この事件は昨日の事と関係あるのかもしれない。
たかがテストの回答ごときに殺人までするような奴は居ないだろうが。

「実は昨日俺が職員室から取ろうとした用紙、テストの解答用紙じゃなかったんだ…」
「…え?」

テストの解答用紙では、無いだって?テストの期間が近いから俺はテストの解答用紙だと考えたが、
外れていたのか。テストの解答用紙では無いと言うのなら、一体…

「俺も詳しくは伝えられていないからよく分からないけど…何かの暗号の様な紙だった。昨日は説明するのも難しかったし、
君たちを巻き込みたくなかったから言わなかったけど…」

まあ、テストの解答用紙だろうが別の用紙だろうが職員室に入った事には変わりないからどちらでも良いが、
気になるのはその暗号のような紙というものだ。ただの不良が脅してテストの解答を欲したというのならまだ分かる。
だが、その紙を欲しがるものはどんな理由で、そして何故わざわざ高杉を使って取ろうとしたのだろうか。

「‥今日の殺人が、それと関係があるのかもしれないのか?」
「‥分からないけど、もしそうだったら昨日失敗した俺のせいだ…失敗しなければ殺人は起こらなかったかもしれないし、
眠兎君たちを巻き込むことも無かった…」

泣きそうな声で彼はそう言った。確かに、昨日のことと事件は関係あるかもしれない。だが、

「その仮定に意味は無いな。お前はもう俺たちと関わった。今更、無関係で過ごすような事、俺にはできないな。
それに、殺人を起こしたのはお前ではない。昨日の事と関係があったとしても、お前とその殺人は何の関係も無い。」

そう言って、少しぬるくなった紅茶を飲み干す。砂糖の甘みは、心を落ち着かせると同時に、頭が回るようになる。
少しでもいいから、手がかりを見つける。脅した相手に直接問いただすのも良いかもしれないが、
もしそいつが犯人なら危険だ。もう少し考えるか。

昨日、俺は花音に生徒指導室に呼び出され、戻ってきたら放送室の鍵が無くなっていた。
そして、放送室から予定より早い下校の音楽が流れ出し、放送室に向かった。
扉を壊し飛び込んだ放送室は無人で、遠くでガラスの割れた音がした。
その音で職員室に居た教師たちはすべてそちらの方に向かった…そしてその隙に高杉は何かの用紙を取りに行った。
…うーむこれだけでは情報が少ない。

ただ、この状況から察するに高杉も危ないかもしれないということだ。
もし脅した奴が犯人、もしくは首謀者だったら失敗した高杉の口を塞ぐため殺しにくる可能性がある。
簡単に殺人を起こす奴だったらその可能性は高くなり、
一時の感情に流されて犯人が教師を殺したのならその可能性は低くなる。
犯人がどんな奴か分からないのだから慎重に動いたほうがいいな。
色々と考えて、この後どう動こうかを考えているとき、またも玄関のチャイムが鳴らされた。
やれやれ、来客の多い日だ。

「…出ないといけないか。高杉、自由にくつろいでいていいから少し待っていてくれ。」
「う‥うん」

部屋を出て、玄関に向かい扉を開ける。宅配便でも来たのかと思ったが、
立っていた相手はダンボールを持ってはいないし、何か荷物を持っているわけでもない。
強いて言うなら、何かを布に包んで持っているということだけだ。

「えっと…どちら様ですか?」

「いや、怪しい者ではないさ。柊眠兎君。」

何で俺の名前を知っている?俺はこんな奴知らないぞ。
鴉に似た羽を持つ鳥の獣人の男なんて、一度も見たことがないはずだが…
何か見覚えがある。けどやっぱ怪しい。一応警戒しとこう。

「何の用ですか?用件があるなら早く…」

そこまで言ったところで俺は言葉を止めた。男が布に包んでいたものの中身は…

「そこに高杉という奴がいるだろう?そいつを大人しく差し出して、今後一切そいつと関わるな。」

そう言って、男は銃を俺の胸に突きつけた。
…何か見覚えのある奴だと思ったら、こいつも同じ高校生だ。俺とクラスは違うが、
同じ学年なので時々姿を見かけていたんだ。

「今日の事件の犯人もお前か?」
「その通り。まさか教師に見つかるとは思わなくて、つい殺してしまったけど騒ぎになってしまったな。」

まさか同じ高校生が事件の犯人だったとは。
その考えが無かったとは言わないが、目の前に事件の犯人が現れたとなれば動揺してしまう。
それに、銃を突きつけられたという事は俺を殺す意思もあるということか…

「で、こんな騒ぎになってしまったから、お前と関わりがあった高杉を殺してしまうという考えか?」
「まあ、平たく言えばそうなるな。俺の言うことを聞くか、それとも断るか。断ったら迷わずお前を撃つがな。」

冷たい鉄の感触が服の上からも伝わってくる。それでも、俺は何とか冷静でいられる。何故なら、

「撃てるものなら撃ってみな。ここは住宅街だ。銃声がすればすぐに誰か来るだろう。」

この近くには家が沢山ある。もし俺を殺せたとしても誰かが警察を呼んで、
警察が駆けつけてくればこいつは捕まってしまうだろう。
そうすれば、教師を殺したことも明らかになり、高杉を殺す意味もなくなる。

「それに、銃声だけではない。もしその銃で撃ったりしたら、現場近くに居たお前は硝煙反応が出て確実に捕まる。だから、これ
は高杉を誘き出すための只の脅し。違うか?」

「やれやれ、そんな事までお見通しか。中々頭が切れるようだな。」

そう言って、男は銃の引き金を引いた。カチッと音がしただけで何も起こらない。
どうやら、最初から弾は入っていなかったようだ。
ふう…流石にちょっと驚いた。もし俺の考えが外れていたら多分殺されてたな。

「今日のところは大人しく帰らせてもらうが、覚えておけ。お前がこれ以上この問題に首を突っ込むというのなら、殺してし
まうかもしれない。今のとこは殺すほどの理由がないので殺しはしないがな。」

「待て。お前は、何者だ。」

少しだけ声を荒げてそう尋ねると男は冷笑を浮かべてこう言った。

「お前と同じ、ただの高校生だよ。オッドアイの兎君。」
「っ!?貴様、何故それを‥うわっ!」

何だこの煙!煙幕か!?

「…もう居ない‥か」

煙が晴れたとき、男の姿はもう無かった。
残されたのは足元に散らばった漆黒の羽と、何かが喉の奥に詰まっているような重く苦しい感覚。
…何故俺のことを知っている。
オッドアイのことは、黒のカラーコンタクトを付けているため誰にも知られるわけが無い。

「…考えたって仕方ないか。」

とりあえず、奴が高杉を狙っていることは分かったから、彼を一人にするのは危険だろう。
あと、巻き込みたくは無いが花音にも事情を説明しなくては。俺一人で守りきる自身も無いし。

「とりあえず、色々としなければならないことが山積みだな…」

高杉は、家族が居るならその家族から離れないように指示すればよい。
もし家族が居ないというのなら俺の家に泊めればいいだろう。
人の命がかかっているんだ。これくらいはしなくては。
俺の存在は知られていたが、運がよければ花音は協力者だということがまだ知られていないかもしれない。
流虎は…巻き込む訳にはいかないか。

「‥もしかしたら、高杉だけではなくて、俺も何か奴らと関係してるのか…?」

俺の名前は同じ高校の者なら知っていてもおかしくはない。
だが、オッドアイの事は誰にも言っていないはずだ。
もしかしたら、最初からこうなる事を誰かが仕組んで…

「…そんな事があるはずない。ただの偶然だ…偶然…」

あの持ち物検査が無ければ高杉と出会うことも無かった。
持ち物検査は偶然行われたものだし、携帯だって偶然持っていったものだ。
それより今は、これからどうするかを考えるべきか。
あの男が教師を殺した証拠をつかみ警察に差し出すことができれば、一先ずは安全になるはずだ。
きっと、何とかすることができる。絶対に…