恐怖の梟教師
「吹雪の中 遠く 海を見た。 海は荒れていた。 そして海が荒れているわけが 僕には……」
小春日和の日差しが何処か温かい昼前時
教科書に掲載されている詩文を音読する犬の男子生徒の声に混じり、何処からか寝息が一つ。
音の元を辿ってみれば、腕を枕にして、意識を夢の内へ旅立たせている利里の姿があった。
教科書に掲載されている詩文を音読する犬の男子生徒の声に混じり、何処からか寝息が一つ。
音の元を辿ってみれば、腕を枕にして、意識を夢の内へ旅立たせている利里の姿があった。
「おい、起きろ……利里、早く起きろ」
それに気付いた隣の席の卓が、絶賛睡眠中の親友を起こすべく小声で声を掛ける。
だが、生憎、木枯らしが吹く日々が続いた後の久々な暖かな日差しに眠気を催した利里はそう簡単に目覚めず。
卓の焦りをより深めるだけしかなかった。
だが、生憎、木枯らしが吹く日々が続いた後の久々な暖かな日差しに眠気を催した利里はそう簡単に目覚めず。
卓の焦りをより深めるだけしかなかった。
「おいおい、早く起きないと先生に気付かれるぞ、おい」
それでも、卓はちらりちらりと教壇の方を気にしながら利里を起こそうと努力する。
卓は必死だった。利里が早く目覚めないと確実に利里が酷い事になる事を分かっていたから。
そして、彼が焦るその理由は、今は男子生徒の音読に聞き入っている国語の教師にあった。
卓は必死だった。利里が早く目覚めないと確実に利里が酷い事になる事を分かっていたから。
そして、彼が焦るその理由は、今は男子生徒の音読に聞き入っている国語の教師にあった。
「はい、座っていいわよ。
えー、この詩は吉野 広の詩集『消息』に掲載されている『冬の海』という題の詩で……」
えー、この詩は吉野 広の詩集『消息』に掲載されている『冬の海』という題の詩で……」
全身を覆う羽毛の所為か何処かぽっちゃりとした印象を感じさせる、
メンフクロウの女性の国語教師、佐藤 光代(さとう みつよ)が男子生徒に座るように促した後、
解説しながら翼の先の羽を指の様に使い、流麗な字で先程男子生徒が音読していた詩の内容を黒板に書いてゆく。
どうやら、彼女は利里が寝ているのにまだ気付いていない様だ。
メンフクロウの女性の国語教師、佐藤 光代(さとう みつよ)が男子生徒に座るように促した後、
解説しながら翼の先の羽を指の様に使い、流麗な字で先程男子生徒が音読していた詩の内容を黒板に書いてゆく。
どうやら、彼女は利里が寝ているのにまだ気付いていない様だ。
「おい、早く起きろって、早く起きないと本当にマズイ事になるぞ、利里」
だが、危急的状況なのには変わりは無く。
焦れた卓は、こうなればとばかりにシャーペンの先で利里の頬を突ついて起こそうと試みる。
後の方の席にいる朱美も何処か心配そうだ。
焦れた卓は、こうなればとばかりにシャーペンの先で利里の頬を突ついて起こそうと試みる。
後の方の席にいる朱美も何処か心配そうだ。
「う~ん……もうそんなに食べられない……」
「おいおいおい、何をそんな在り来たりな夢を見てるんだよ……早く起きないと本気で……」
「おいおいおい、何をそんな在り来たりな夢を見てるんだよ……早く起きないと本気で……」
だが、卓の必死の努力も空しく。利里は在り来たりな寝言を言ってもぞもぞと動くだけ。
そんな親友に困り果て、遂には頭を抱えた所で、卓は刺すような視線に気が付いた。
そんな親友に困り果て、遂には頭を抱えた所で、卓は刺すような視線に気が付いた。
「…………」
卓が恐る恐る振り返って見ると、。
其処には黒板に字を書いている姿勢はそのままにして、頭だけを卓達の方へ向けた教壇に立つ光代の姿。
彼女はフクロウ系のケモノ特有の自由度の高い首間接を生かして、
生徒が黒板の字を書き写しているかどうかを確認しようとしている所で、利里が寝ている事に気付いたのだろう。
その大きめな彼女の双眸は、確実に睡眠中の利里へロックオンしていた。
其処には黒板に字を書いている姿勢はそのままにして、頭だけを卓達の方へ向けた教壇に立つ光代の姿。
彼女はフクロウ系のケモノ特有の自由度の高い首間接を生かして、
生徒が黒板の字を書き写しているかどうかを確認しようとしている所で、利里が寝ている事に気付いたのだろう。
その大きめな彼女の双眸は、確実に睡眠中の利里へロックオンしていた。
「……あ~あ、終わったな……もう、俺は知らんぞ」
この時点で、卓は利里を起こすのを素直に諦め。朱美も沈痛な面持ちで顔を背ける。
……起こそうとしたのに起きなかったお前が悪いんだぞ、と卓は心の内で愚痴を漏らす。
そして、それと同時に―――彼女が動いた。
……起こそうとしたのに起きなかったお前が悪いんだぞ、と卓は心の内で愚痴を漏らす。
そして、それと同時に―――彼女が動いた。
「授業中に寝る不届きな子は―――」
彼女は手にしたチョークをチョーク入れに置き、言いながら翼を広げて音も無くフワリと飛び立つ。
その降り立つ先は、未だに寝息を立てる利里の頭の上。
その降り立つ先は、未だに寝息を立てる利里の頭の上。
「……ふえ?」
唐突に重みを頭に感じ、間の抜けた声を漏らしつつ目を覚ます利里。
この時、利里はこのまま眠ってさえいれば、もう少しは苦痛を感じる事も無かっただろう。
なにせ……
この時、利里はこのまま眠ってさえいれば、もう少しは苦痛を感じる事も無かっただろう。
なにせ……
「―――――――――――――――――っっい!?!?!?」
その次の瞬間には、光代の足の爪によるアイアンクローが利里の頭に食い込んでいたからだ。
アイアンクローを食らった利里の声にならぬ悲鳴が教室に木霊し、何人かの生徒は思わず耳をふさぎ、目を背ける。
それだけ彼女のお仕置きは強烈極まる代物だった。
アイアンクローを食らった利里の声にならぬ悲鳴が教室に木霊し、何人かの生徒は思わず耳をふさぎ、目を背ける。
それだけ彼女のお仕置きは強烈極まる代物だった。
「こうなりますから気をつけましょうね?」
そして、彼女は利里が完全に気を失った事を確認した後、
ひらりと床へ降り立ち、机に突っ伏した利里を羽先で指差しながらウインクして見せる。
それと同時に、授業の終了を知らせるチャイムが鳴り響いた。
ひらりと床へ降り立ち、机に突っ伏した利里を羽先で指差しながらウインクして見せる。
それと同時に、授業の終了を知らせるチャイムが鳴り響いた。
佐藤 光代(32)
本当はスマートな体型をしているのだが、全身を覆う羽毛の所為で太って見られる事を気にしている女性教師。
彼女の授業中に不真面目な行動をとる事、即ち、保健室送りとなる事を覚悟するべし。
本当はスマートな体型をしているのだが、全身を覆う羽毛の所為で太って見られる事を気にしている女性教師。
彼女の授業中に不真面目な行動をとる事、即ち、保健室送りとなる事を覚悟するべし。