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スレ2>>603-605  祭りの日



学園祭初日は大忙し。
サン先生の上映会での挨拶にお付き合いしたのちに、クラスの喫茶店に舞い戻るという
スケジュールをこなし、クラスもとい喫茶店に帰ってきた泊瀬谷先生は、生徒たちがたくさん入っているのを目の当たりにする。
「泊瀬谷先生ー。お客さんですよ」
実行委員の犬飼さんもばたばたとスカートを翻しながら接客に張り切り、一晩で現れた小さなお店を切り盛りする。その姿は、もはやプロ。
学校一堂を会して行われるこの学園祭では、初等・中等・高等部全ての生徒が祭りを盛り上げようと、お互い刺激しあう。
「まさか、牛沢先生のとこもやってるとはねえ」
犬飼さんの予想を上回る牛沢先生の行動に尻尾、いや舌を巻くばかりだ。さて、お仕事お仕事と、ぐっと手を握り締める。

「い、いらっしゃませ!」
「えっと、ミルクティをひとつッス」
席には海賊姿の子が一人、別に出し物というわけでもなく、いつもこの格好なので誰も気に止めることが無い様子。
傍から見れば、『メイドさんに海賊』とよくわからないカオスな店であった。
トンとミルクティが入った紙コップが机に置かれ、彼だか彼女だかわからない海賊さんは、
ふんふんふんと祭りの雰囲気を楽しみ、
そして急な救護活動が起きやしないのかと、内心ドキドキとしているのであった。これもいわゆるひとつの職業病か。

一息つき、『喫茶・泊瀬谷』を後にした保健委員の子は、自分も何か出店でも出せばよかった、と後悔しながら
校内をゆっくり見回り。もちろん、パトロールを兼ねて。
「水鉄砲のおにいちゃんだ!」
と、いきなり後ろから抱きつく感覚がする。小さな幼稚園ぐらいの男の子。
その後ろには、若い女性とイノシシの女の子の姿。その女の子は慌てるように男の子を引き剥がそうとする。
「ゆう!その人はサン先生じゃありません!!」
「ちがうもん!」
とにかく、自分は水鉄砲など知らないと焦りながら戸惑うと、脇にいた女性がペコリと頭を下げる。
イノシシの女の子は女性の袖を引っ張りながら、こう聞いた。
「ねえ…おかあさん、おとうさんは?」
「さあ…、学校の中にいるのは聞いているんだけど…」
そう言いながら、親子はその場を後にした。


保健委員の子が中庭に出てみると、池の側で鎌田くんのヒーローショーが開催されていた。
「で、出たな!恐怖・携帯電話男め」
「はっはっはっ!必殺・赤外線アドレス交換ビーム攻撃!!」
ダンボールで作られた巨大な携帯電話のきぐるみの中の人は、猪田先生だった。
きぐるみは、鎌田が徹夜で作ってきたというので驚きだ。もっとも、誰もこの企画に参加したがらなかったのだが。
ビームが出る(という設定の)頭の上の丸いレンズは、100均で買ってきたプラスチックのザラダボールというお手製。
そのレンズを鎌田にむけようと前のめりになった携帯電話男。バランスを崩して、うつ伏せんに倒れた。
じたばたさせている携帯電話男に、観客である学芸会を終えた初等部のお子たちはどっと笑う。

「ちょ、ちょっと…スタッフのみなさーん!!」
自力で立てない中の人、もとい猪田先生はきぐるみの中でもごもごと暴れまわる。それをすればするほど、笑いが起こるので
いのりん、ちょっとまんざらではない様子。もともとスタッフなんかいないので、誰も助けに来ない。
仕方なく鎌田は携帯電話男を起こそうとしてあげた。力の限りの腕力で、巨体を起こしながら叫ぶ鎌田。
「うぬっ!なかなかしぶといな!携帯電話男め」

保健委員は「なんだ、出番なしッスか」と中庭を後にし、一階のPC教室の側を通りかかると、何故かレトロゲー喫茶が開かれていた。
PCに飲み物は厳禁なので、現在使用中の最新式マシンは隅に片付けられそのかわり、初代の某ゲーム機が繋がれた
天井から吊り下げられたプラズマTVを使って、懐かしの『けっきょく北極大作戦』がプレイされている。
リザードマンの龍ヶ谷猛とその幼馴染みのネコっ子が、必死に画面上の小さなシロクマを操る。

おっとシロクマくん、クレバスに引っかかってずっこける。
保健委員は性なのか、ドット絵で描かれたCGのシロクマくんの救護活動をしそうになった。
「ちょ、ちょっと!たけし!!このゲーム超むずいんだけど!!」
このゲーム、古文の帆崎先生が実家から持ってきた20年以上前のゲームなのだが、グラフィックのクオリティはさておき、
結構単純なゲーム内容なのに熱くなってしまうから不思議だ。これこそレトロゲーの魅力でもある。
ネコっ子はブンブンといかついコントローラーを振り回し、コードを蛇口全開のゴムホースのように暴れさせている。
そして、横でコーラをちびちびと飲んでいる猛がポツリ。
「こんなゲームにまじになっちゃってどうするの」


ふと、保健委員は気がついた。
無意識のうちに保健室前の廊下にいるではないか。日ごろの習慣とは恐ろしい。
祭りの日なのに、ついつい職業意識が働いてしまうとは…と、少し頭を抱えながら仕方ないので保健室に向かうと、
何故か大行列ができているを目撃する。こんな行列は保健室、開びゃく以来初めて。

「…し、知らないうちにこんなに急患がっ!いそぐスッ!!」
しかし、おかしい。並んでいる生徒は誰もが活きのいい男子生徒ばかり。
救護活動なんぞ必要とはしない子がこんなに並んで、どうしたことか。
「いったい、何事か!」
保健室の扉がいきなり開く。シロ先生だ。
先頭にいるのは中等部のおき楽三人組み。その一人アキラがシロ先生に不思議そうに尋ねる。
「あの…ここって聞いたんですけど、ほら…」
「誰だ、こんなことしたのは!!」
シロ先生が扉のほうに振り向く。そこには『ドクター・シロ。愛のお説教部屋(もちろんタダよ)』と張り紙が。
犯人は言うまでも無かろう。ソイツを連れてこいとシロ先生は、オキシドールの瓶を持って逆上した。

そのころ、張本人は美術室でTV画面のアニメキャラでの自分の声を聞きながら、ポツンと一人で椅子に座っていた。
美術部制作のアニメの上映会が行われていたのだが、開会のご挨拶以後、泊瀬谷先生がいなくなってしまったので、
美術室はかなり華のない光景が広がっているのは否めなかった。
「お客さん、野郎ばっかりだ!せっかくメイドさんもいるのに!!」
身にまとったメイド服のスカートを足でバタバタさせながら、サン先生は逆上した。


おしまい。