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スレ2>>495,500-502 馬耳東風


495 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2008/11/11(火) 22:10:18 ID:FDB+DQke
「よし、次だ次!」
泣かれてあんだけ焦ったくせにまだやるのかよ」

懲りない馬に鹿が呆れた声を出した。

「俺はガン飛ばしを、チーム鹿馬ロの名が売れるまで止めない!」
「ガン飛ばして名前が売れるとは思えないが……」

「ちょっとそこの馬、待つにゃ」

次なる標的を探す馬を、黒い毛並みも美しい子猫が呼び止めた。

「ああ?なんだ、ガキんちょ」

馬が凄んで脅かす。が、子猫は全く怯まない。

「コレッタ泣かしたのあんた達かにゃ?」
「コレッタぁ?誰だそりゃ?」
「髪の長い小学生にゃ」

馬くんと鹿くんは顔を見合わせ、さっきの子かな?多分な、と目で会話。
馬くんはしゃがみ、子猫と目線を合わせて言った。

「ああ、確かに泣かしたぜ。なんか文句あっかゴルァ?」

黒い毛並みの子猫はニヤリと微笑んだ。
ターゲットロックオン、にゃ。

「んーん、私あの子のこと大っ嫌いにゃ。お兄さん達と友達になりたいくらいにゃ。握手して欲しいにゃ」
「え?あ、握手?」

思いがけない反応に戸惑いつつ馬くんは手を差し出した。迂闊だった。

「キャーーーー!誰か助けてーーーー!チーカーンーー!!」

突如黒い毛並みの子猫が裂帛の悲鳴をあげ、隠れていた三毛猫が飛び出して、

「もしもし!警察ですかにゃ?!友達が痴漢に触られてマワされて猫鍋にされそうにゃ!
 はやく助けて欲しいにゃ!!」

と、持っていた携帯に叫んだ。
「ちょっ、まっ、えっ、なななな何ですとぉぉぉ??!べ、弁護してくれ鹿!……鹿?」

焦った馬くんが鹿くんに助けを求めようとするも、
既に50メートル以上遠くを駈けて行く鹿くんの後ろ姿がみえるだけだった。

「し、しかぁぁぁ!!!(泣)」

コレッタは気に入らないけど、小学生全部ひっくるめて舐められるのは気に食わないにゃ。
ヤンキーより怖い小学生が居た。


500 名前: 通りすがり ◆/zsiCmwdl. [sage] 投稿日: 2008/11/12(水) 00:39:21 ID:s6HG6NUM
「ったく……酷い目にあった。最近の小学生も油断ならねぇな……」

通り過ぎゆく市電のモーター音が鳴り響く町の歩道を、
若干鬣をぼさぼさにした塚本が肩で風を切って歩きつつ愚痴を漏らす。
あの時、彼は三毛と黒の美人局によって警察に捕まりそうになった物の、何とか逃げおおせる事が出来た。
彼はこの時ほど、自分の脚の早さに感謝した事はないだろう

「にしても、来栖の奴、友人を置いて逃げ出すなんて酷いにも程があるぞ!
くっそー、後で絶対にコーヒーセットを奢らせちゃる」

と、自分を置いて逃げ出した友人の来栖に対しての怒りをあらわにする塚本。
先ほど自分が振り撒いた種が元で美人局に遭った事は、この時にはもう既に彼の頭の中から消え去っている。
言ってしまえば、彼は良く言えば楽天的な、悪く言えば懲りないタイプの獣人なのだ。

「……お? お前は……」

憂さ晴らしにゲーセンで遊ぼうか、と塚本が考えていた矢先、彼の前に立ちふさがる大きな影。
その影は同じクラスのリザードマンの利里であった。

「……利里じゃないか。如何したんだよ、いきなり」
「…………」

彼の問い掛けに対し、利里は何も答えないばかりか、その身体に怒気を纏わせていた。
その怒気に気圧された塚本も黙らざるをえず、重苦しい沈黙がその場を支配する。
そして、そのまま数秒ほど、だが塚本にとって永遠に等しい時間が流れた後、利里がゆっくりと口を開く。

「お前さん……俺の妹を泣かせただろ?」
「……え゛?」

塚本は思わず間の抜けた言葉を漏らしつつ、今まで自分のやった事を思い返してみる。
そう言えば、コレッタとか言う子猫を泣かせる前に、緑色の鱗のチビリザードマンも泣かせたような……?
それを思い返した彼は確かに、自分の頭からざぁっ、と血の気が引いてゆく音を聞いたような気がした。
狼狽する塚本のその様子から、彼が妹を虐めた事を確信した利里は纏っている怒気をより濃くして塚本に詰め寄る。

「やっぱりか……やっぱりお前さんだったんだな!?」
「いや、あの……アレはちょっとした冗談みたいな物で、別に泣かせようとは思ってなかったんですよ? マジで。
それに、泣かせたといってもちゃんとその後で飴を上げてなぐさめてあげたんだし……」

後退りしつつ、身振り手振りをして必死な弁明をする塚本。
だが、必死な彼の願いもむなしく、双眸を怒りに染めた利里が叫ぶ。

「結果的に泣かせたのは同じだーっ! 許さんぞぉーっ!!」

この時、彼には利里の口から黒煙を巻き上げている様に見えた気がした。

「……やっぱりこうなるか! くそっ!」

無論のこと、即座に逃走を選択した彼は、
己に振りかかった運命に対して文句を漏らしながらその場から逃げ出す。
大丈夫、さっきと同じ様に自慢の逃げ足で振りきれば! と塚本はそう考えた。
だが、逃げる彼の背を追う様に聞こえ始めた地響きのような音に、嫌な物を感じた彼は思わず振り向く。


「ぴぎゃあぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
「ど、どどどどどひぃぃぃっ! お、追いかけてきてる! しかもこいつ、意外に足早ぇぇぇぇ!!」

彼の見た物、それは牙を剥き出しにした鬼気迫る表情?でこちらを追う利里の姿だった。
此方を追いかける利里の足は思いの外速く、徐々に塚本に追いつこうとしていた。
この時、彼の脳裏に今、自分が今夢中になっている携帯ゲームで見た
怒り狂った飛竜の突進から必死に逃れるハンターの情景が写ったのは無理も無いだろう

(そういえば、こいつは一旦走り出すとほぼ真っ直ぐにしか進めなかった筈、ならば!)

ふと思い立った塚本は、横道にすばやく入る事で怒り狂った利里をやり過ごす事にした。
横道に入りさえすれば、真っ直ぐにしか走れない利里から逃げ切る事が出来る、と、安易に考えたのだ。
そして、ある程度走った所でビルとビルの間にある適当な横道を見つけ、其処へ飛び込む様にして逃げ込む。

「……ふう、一時はどうなる事かと思ったぜ……」

と、思わず安堵の息を漏らす塚本。
彼は予想していた、自分が急に横道に入った事に対応できず、利里が通り過ぎてゆく様を。
だが、残念ながらこの世の中、全てが思い通りに行く様には出来てはいなかった。

「あれ?……いきなり立ち止まって……こっちに向かってきたっ!?」

走ってきた利里が塚本の逃げ込んだ横道の前で急停止すると、その場で横道の方へ90度旋回、
そして先ほどの勢いのまま塚本の方へ向かってきたのだ。

「ぎゃおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
「ちょ、話せば分か……ヘブシッ!」

そして、説得する間も無く跳ね飛ばされた塚本が最後に見た光景は、
怒り狂って突進する利里の顔のドアップであった。

                               * * *

「おーい、いきてるかー?」
「……んあ? 俺は……?」
「あ、生きてたか……何気に通りかかった道でお前が倒れてるのを見た時は本気でビックリしたぞ?」

目が覚めると、此方を覗きこむ友人の来栖の顔があった。
頭を動かして時計を見ると、あれから三十分ほど過ぎた所であった。
そして、彼はかぶりを振りつつ身を起こし、やれやれなポーズをしている友人へ問い掛ける。

「な、なぁ……来栖、利里の奴は何処行った?」
「利里?……俺が来た時には無様に寝転がるお前だけしか居なかったが……?
まあ、お前の事だから大方、利里の奴を怒らせて酷い目に遭わされたって所だろうな」

的を居た友人の言葉に、塚本は思わずぐっ、とうめきを漏らす。

「それより、塚本、自分の顔を見ろよ。 酷い様だぞ?」
「……何?……ってなんだこりゃ!?」

来栖に言われ、塚本が思わずカバンの中から鏡を取り出して見れば
其処には横っ面にリザードマンの物とおぼしき見事な足跡が残る自分の顔が写っていた。
その際、自分の身体を調べてみて分かった事だが、顔面に足跡を残した以外に何もされていない事から
どうやら、利里は突進を食らって倒れた彼の顔を踏んづけてそのまま走り去っていったのだろう。

(あいつ、怒りの余り、俺を追いかける以外の事を考えてなかったんだな?……お陰で助かったというか何と言うか……)

そう思った塚本は、今度こそ安堵の溜息を大きく漏らした。
そして、塚本は服についた塵を払い落としつつ立ちあがると、思い立った様に来栖へ言う。

「ああ、そうだ、来栖、お前は俺を置いて逃げたんだから、お詫びとしてコーヒーセットくらい奢れよ?」
「げ、そういう所はしっかりしてるな……分かった、後で奢ってやるよ。……金が出来たらだけどな」
「へへっ、コーヒーセット儲けた」

やるべき事はしっかりと憶えていた塚本、だが、どうやら来栖が最後にボソッと言った言葉に気付かなかったようだ。
そして、二人は秋の夕日の光によって黄昏色に染まった道を歩き始める。

「さーて、鹿馬ロの名を広める為、明日もガン飛ばしを頑張るとするか!」
「おいおい……まだやるのかよ……」
「当然だ! あんな程度でへこたれてたら不良の名折れだぜ!」

あれほど酷い目に遭いながらちっとも懲りてない様子の友人の横顔を眺めつつ、来栖は思った。

そういや、馬耳東風、って四字熟語があるが……こいつはまさにその言葉の通りだな、と。

【馬耳東風】
馬は耳をなでる春風に何も感じないという意味で、
他人の意見を聞き入れず、心に留めようともしないことの例え。