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サン・ミナ『そよ風のすいか』


 久し振りにサン先生の職場に寄ってみたものの、厄介なお土産を抱え込んでしまったミナは笑うしかなかった。
 小玉とは言え自宅に持って帰るには難しい。バイクの後部シートにあれやこれやと載せることを試みるけれど、ネットだけでは
不安定なので無事にすいかを持ち帰る自信はミナにはなかった。断ればよかったかもしれないけれど、旧知の腐れ縁だから仕方なしに
引き取ったと、自分に対して口上を垂れればよかろう。ミナの愛車はご主人さまの命令を素直に待ち続けていた。

 「アイツもアイツだよね。こうなることを知っててさ」

 小脇にすいかを抱えて夏の日差しを反射するフェンダーの光りに気を取られていると、すいかよりも小さな球がミナのバイクの
前輪に引き寄せられるように転がってくる。球の行方を追いかけるようにカッターシャツ姿の男子たちが足並み揃えて駆け寄った。
 真っ白なシャツが青空に良く似合う。グラウンドを駆け回るイヌ、ネコの少年もそれまた似合う。あまりにもナイスキャストなので
ミナはくすっと白い歯を見せて、少年たちに手を振った。思春期まっしぐらの彼らの匂いは今しかない。

 「君たち、いつも球拾いだね」

 白球を拾い上げたミナは少年たちを手にしたボールのように扱う。 

 「そんなことありません!アキラのばかっ」
 「タスクがしっかり取らないからだろ!な!ナガレ!」

 こうやってばかを言い合える仲、ばかを言い合えるお年頃をミナは遥か遠くの記憶に仕舞っていたことを思い出した。確かすいかの
贈り主とそうやって、毎日学び舎の元で過ごしていた日々。たった数年なのに、たった幾つか夏を越しただけなのに、遠い昔のようだ。

 「はい!はい!みんなばかだよ!いいじゃん、いっしょにばかでで」

 イヌの少年のちっぽけな言い合いを静視していたネコの少年に、ミナは彼の腕信じてすいかをぽいっとスルー。
 ネコの少年は見せなかった驚きの顔をこの場で初めてミナに見せた。

 「そこで黙っていた君も一緒だね!連帯責任でそのすいかをわたしの家まで運びなさい!見事にミッションクリアしたら
  わたしの家でそのすいかをご馳走してあげよ……かなぁ。特典はわたしと一緒に食べられること。君たちさ、ウチ、分かるよね?」
 「ぼくが行きます!ぼくに行かせてください!タスクはすっこんでろ」
 「い、いや……ぼくが」

 さっきまで白球を追いかけていた少年たちが瑞々しいすいかを奪い合う。滑稽な光景にミナは一笑し、静視していたネコの少年に
 「はい!ナガレくんも奪い合う!」とけしかけてみた。