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若頭は12歳(幼女)外伝 隻眼の獅子編 【承】
「はぁ……結局、一晩世話になる事になってしまった……」それから幾数時の時間が流れ、日も完全に沈みきった頃。私は屋敷のやたらと長い縁側で独り座り、すっかり雨の止んだ星空を恨みがましく睨みつつ愚痴を漏らした。結局、雨は空が完全に暗くなるまで降り続け、それ以降はその土砂降りが嘘のような綺麗な星空を見せた。――だが、私は帰れなかった。今から2時間ほど前、土砂崩れが起きたと言う報せがあったのだ。――そう、私が濃霧に遭遇した後、この街に入る時に通って行ったあの峠道に。話によると、土砂崩れは小規模ながらも峠道の複数箇所に起きたとの事で。少なくとも、安全が確認できるまでの間は完全に通行止め、との事だそうだ。つまり、私は帰り道を塞がれてしまった訳だ。(無論、峠道に行ったからといって、帰れると言う保証は何処にもない訳だが……)無論の事ながら、ここは峠道を使わず別のルートを使って帰る、と言う事も考えたのだが、居場所すらも定かで無いこの状況の中で、当てずっぽうに見知らぬ道を行こう物なら、ほぼ確実に道に迷う事になる。そうなれば余計に面倒な事態にもなりかねず、下手すればこの場に二度と戻ってこれない可能性だって出てくる。――そう、二度と帰ってこれなくなるのだ。冗談でも何でもなく、実際に起こり得る話として。私だってこんな事は考えたくないのだが、今居るこの場所は、私が知る世界とは異なる世界だと私は見ている。そう考えるその理由、それは唯鶴に地図を見せてもらった時。地名もそうであったが、鉄道路線に河川の名前、少しは耳にしている筈のチェーン展開しているコンビニ等の各種店舗。そのいずれもが、私にとっては全く持って初耳の物ばかりだった。それだけではなく、屋敷に置かれた食品や電化製品を始めとした様々な物品でさえも、どれ一つとして、私の見知ったメーカーや商品名である物は、何一つとして見つからなかった。いや、中には私の知る名に似ている物も幾つかあったのだが、そのどれもが似ているだけで"その物"ではなかった。そして極め付けは、TVや新聞と言ったメディア関係。TV放送局や新聞社の名前もそうなのだが、其処に出てくる人物や物品はどれもが私の知らない名前ばかりで、知る物は何一つとして確認できない。単に居る地方が違うだけならば、普通ならば知っている有名人の名前の一つ位は出て来てもおかしくは無いのだが、それすらも全くもって無いのだ。どれもが似ているが違う名前ばかり。無論、TV欄の番組名だって同じ。ここまで来れば、ある程度の知性と常識を持っているケモノならば嫌でも気づいてしまう筈だ。今、自分は元居た世界と似ている様で違う世界に居るのだ、と。だから当然、違う世界の道を幾ら行こうがそもそも別世界にある私の家に帰り付ける筈も無く、それどころか余計に迷う事にもなりかねず、最悪、二度と帰ってこれなくなる可能性がでる、と言う事である。……何ともはちゃめちゃかつ荒唐無稽な結論だが、それ以外に、この状況を納得出来る解釈があるかと言うと、殆ど無いのだから仕方が無い。……やれやれ、少しガラにも無く小難しく考えた所為で頭が痛くなって来た。ここは一先ず、何も考えずもう一本煙草を吸って落ち付くとしよう。「獅子宮せ―んせ」ポケットから煙草を取り出し、口に咥えてジッポーで火を付けようとした矢先――横合いからの声が私の耳を震わせた。声の方へ視線を向けると、其処に居たのは煙管片手にニヤニヤと笑みを浮かべた綾近。はてさて、私へ一体何の用だ? 余り面倒な事でなければ良いのだが……?「あんた、お嬢の温情のお陰でここに泊めさせて貰えてるけど、あんまり図に乗るんじゃね―ぜ?朝、気が付いて見たらコンクリ詰めで海の底でした、なんて事も充分に有り得るから、態度には気を付けるこった」なんだ……それを言いに来ただけか。確かに綾近の言う通り、私は帰り道の峠道が開通するまでの間だけ、この森三一家で寝泊まりする事となった。……本当は、私はここの世話にならず、近場のホテルか旅館で泊まるつもりであり、彼らにもその事を伝えたのだが、其処に待ったの声を掛けたのが、他ならぬ森三一家の若頭、森三ゆみみ。彼女は私が帰れなくなった事を知るや、『だったらうち(この屋敷)で泊まれば良いよ』と言い出したのだ。当然ながら一家の衆(特に平次と綾近)は、森三一家屋敷への私という異分子の逗留に猛反対するのだが、結局は、ゆみみの『困っている人を見捨てるのは仁義に反する!』との鶴の一声によって強行採決となった。綾近が私に言いたくなる気持ちも分かる。むしろ、私も泊まるつもりなんて更々も無かったんだよ。だけど、渋っている所へゆみみに涙目で頼みこまれちゃ、首を縦に振らざるえないだろう?……まぁ、其処が女子供に甘い所だとか言われたら、私も否定は出来ないのだが……。「そもそもな、俺、あんたが教師だって言うの? あれも信じちゃいないんだわ。堅気だって話もな」私へ煙管の先を向けながら、何処か不機嫌そうに言う綾近。どうも、彼にとっては異分子である私が、相当気に入らないようである。「俺のみる限り、あんたは少なくとも修羅場を一度か二度は経験している。それも、そんじょそこいらの連中が味わった物とは比べ物にならない、それこそ凄惨な――」ビュッ!「――っ!?」突如、目の前を何かが高速で通り過ぎた事に綾近は毛を逆立てて驚き、言葉を途中で止まる。それは私が前動作無しに振るった左の貫き手。ようやくそれに気付いた彼は驚きの表情から引きつった笑顔へ変えて、「お、おいおい、何のつもりかわかんねーが、いきなり危ねーじゃねーか?」「……蚊だ。もう出るようになったんだな?……これから刺されぬ様に気を付けねば」「――な、に?」その眼前に差し出された、私の人差し指の爪に刺さっている蚊の死骸を前に、再び絶句する綾近。それから数秒の間を置いて響く、ぷちんと言う音。同時に綾近はやおら含み笑いをもらし始め。「くくくく、良い度胸じゃねえか、獅子宮センセ。そのつもりならやってやるよ!」言って、懐から取り出した短ドスを抜き放つ! ……やれやれ、やっぱりこうなってしまったか。余り触れられたくない話に入りそうだったから、つい咄嗟に話を止めようとやったのが拙かったか。なるべく戦いたくない相手ではあるが、逆にこれをこの場から逃げる機会と捉えるのも悪くない。そう思った私は、うっかり殺されない為に静かに戦闘体勢へと入る。「さぁ、何処から刻んで―――」「止めろ綾近、何しているんだ!」「――っ! 秋水、お前か……」綾近が狂気地味た笑み浮かべ、短ドスで私に切り掛かろうと――突如横合いから割って入る声。動きを止めた私と綾近、ほぼ同時に振り向いてみると、其処にいたのは何故か蚊とり豚片手の秋水。「何があったか知らんが客人に手を出すとは何事だ。良いから下がってろ 綾近」「……ちっ、分かったよ……さがりゃ良いんだろ、クソ……」秋水に促され、短ドス収めた綾近は、酷く渋々と尻尾をくねらせながらも素直に立ち去って行く。その後ろ姿が尻尾の先まで見えなくなったのを確認した後、秋水は私へ歩み寄り、聞く。「大丈夫か? 怜子さんよ。綾近に何かされなかったかい?」「……礼は言わんぞ? 別に誰にも助けを求めてはいないからな」「その減らず口を叩く辺り、まだ大丈夫そうだな」私の言葉を強がりと受け取ったのか、苦笑して言う秋水。むぅ……こう言った手合いは何となく苦手だ。年上の余裕と言うべきか。それになんだか子供扱いされている気がして少し気に食わない。揺れる尻尾も心なしか憎い。「それで、私へ何の用だ? さっきの綾近みたいに何か言いに来たのか?」「いいや、俺の目的はこれだ」「……?」つっけんどんに言い放つ私に向けて、秋水が差し出したのは手にした蚊とり豚。当然ながら私は言っている意味が掴めず、思わず訝しげに眉根を寄せて、房付き尻尾を左右に振らせる。そんな私の態度が余程可笑しかったのか、秋水は口から笑い声を漏らしつつ「そろそろ蚊が出てくる時期だからとお嬢に言われて、屋敷のあちこちにこれを置いて周ってたんだ。んで、この一個がここに置く奴で、かつ最後の一個って訳だ。ほら、煙いけど我慢しな」言って、私の直ぐ横へかとり豚を置く。途端に鼻腔に感じる蚊取り線香特有の煙の臭い。何時も煙草を吸っている私でも、この独特の臭いはあまり好きでは無く、思わず咳き込んでしまう。しかし、それの何処が面白かったのか、秋水は遂に笑い出していう「はは、やっぱ煙草吸ってるあんたでもこの臭いは慣れないもんか。まぁ、他の奴からいい加減、液状蚊取りにした方が良いって言われてたからな、これを良い機会に一度、液状蚊取りを試してみる様に言っておくか」「……他にやる事が無いなら他行ってくれないか? 不愉快だ」「おっと、すまんな」其処でようやく私の不機嫌な眼差しに気付き、秋水は何処か軽いノリで謝って見せる。うーむ、和服に仮面と少し怪しい見た目の割に、意外と物腰が柔らかい性格と言うべきか……だが、それでも子供扱いされていると言うのはやはり気に食わない。と言うか、そもそも何しに来たんだこいつ。蚊取り豚を置きに来た、だけならばわざわざ私をからかう必要も無いのだが……「いやなに、ちょいと怜子さん、あんたに興味があってな。蚊取り豚置くついでに話を聞こうかと」「……その仮面を外してくれたら、話くらいはしてやる」「ええっと……それって遠回しに話をする気は無い、と捉えて宜しいので?」「無論だ」つっけんどんにきっぱりと言い放つ私。見ず知らずのケモノに自分の事をホイホイと話す程、私は甘ちゃんではない。しかし、秋水は怒り出す所か、むしろ上機嫌な調子で私へ言う。「いや、中々面白いな。あんたは堅気だって言う割に、俺達を全然恐れちゃいない。むしろ肝が据わりきってる。普通の堅気なら、こんな状況に放り出されたら今頃、心底震えあがっててとても煙草なんて吸ってる場合じゃない筈だ。なのにあんたは、落ち付いてるばかりか綾近の脅しすら何処吹く風で、おまけに助けた俺に減らず口を叩く始末だ」「……何が言いたい? くだらん前置きは要らんからとっとと用件を言ってくれ」私の一言に、彼の仮面の向こうの瞳が笑みの形へ歪む、「ふっ、なら単刀直入に問おう、あんたは何者だ?」――やはりそう来たか。「うちに内偵に来たサツや、他の組のスパイしちゃあ行動も堂々としている。その上、何か調べている様子すらない。かといって他の組からの流れ者にしては、あんた位の度量のケモノなら既に名と顔が知れてても良い筈だ。なのにそれも無い。……だからこそ気になったのさ、獅子宮 怜子と言う女は何者か、ってな」「……」あの時に答えた通りだ――と言おうとして、私は思い直す。そして、一瞬ほどの間を置いて、私は空を見上げ、星空へ向けるように言う。「……私は只の不良教師さ。そう、ちょっとだけ他人(ひと)とは違う道を歩んできただけの、な」「おや? 話す気はなかったのでは?」少し意外そうに言う秋水、私は秋水から顔を背けつつ返す。「……一応だが、助けられた以上はカリを返さなきゃならん。それが私のスタイルなんでな」「なるほど、スジが通ってるな。……それじゃあ、聞きたい事は聞けたので、俺もそろそろお暇するか」「む? 私の話、信用するのか?」「嘘を言っている様な感じはしないんでな。とりあえずって奴だ。それじゃ、良い夜を」私へにやりと笑って見せ、秋水は満足した様に尻尾を揺らしながら去っていった。……あの狐め、最後まで私を子供扱いしていたな。やっぱり気に入らない。「まぁ良い、今度こそゆっくりと煙草を……」「よう、お客人。ちょいと良いかい?」私が再度、煙草に火を点けるべくジッポーを手にした所で――またも横合いから掛かる声。また誰だと尻尾くねらせつつ声の方へ目を向けると、其処には柱を背に佇む銀虎の姿。しかしその手には何故か、お盆に乗せられたハンバーグを中心とした料理が……。今度はまた何だ?「まぁ、そんな変な顔されても仕方ないな。厳つい顔した俺がこんなもん持ってこりゃ誰だって不思議がるさ」どうやら表情と尻尾の動きから、今の私の感情を読み取られた様で、銀虎は少し困った様に――自分の後ろ頭を掻きながら、持っていたお盆の料理を私の横へ置いて寄越す。「お客人、あんた今日の晩飯を食ってないんだろ? それでさっきお嬢に頼まれたんだよ、怜子さんがおなか空かせてるかもしれないから、これ渡してきてって」……なるほど、そう言う事か。――確かに私は晩飯を食わずに居た。そもそも森三一家の屋敷に泊まるつもりも無かった以上、晩飯も世話になる事はないと夕食は食わずに居たのだ。実を言えば、私のような大型ネコ科は、一度満腹になれば三日間くらいは何も食わずとも平気な身体構造をしている。その上、嘗ての私は数週間も何も食わずに居た事が何度かあったので、食事を一回抜かすくらいは如何って事は無かった。――のだが、如何もゆみみにはそれが分からなかったらしく、余計に気を使わせてしまったようで。やはり、こう言うことは一言言っておくべきかもしれんな……?「まぁ、本当は食いたかねぇ奴に持っていく必要は無いって断る所だが、お嬢からの直々の頼みなのもあるし、ついでに俺もあんたにちょっと興味があったんでな」……銀虎よ、お前もか。如何も私は、この手の人の興味を惹いてしまう運命にあるらしい。何と言う嫌な運命だ。これからもこんな事が続く様なら、いっその事スタイルを……いや、無理だな。そんなの私自身が許さん。そんな若干うんざりとした物を感じつつ、私は銀虎へ聞き返す。「興味って何だ?……私が何者かなんて、『ただの堅気の不良教師です』としか答え様が無いのだがな?」「いやいや、そう言うもんじゃねえよ。安心しな。さっき秋水に話してたのも聞いたしな」銀虎の否定に思わず眉をひそめる私。……というか、実は立ち聞きしていたのか、この男。流石は森三一家でワンバーワンと言われるだけあって、抜け目が無いというか何と言うか。「俺が感じたあんたへの興味ってのはよ、あんたが『何処から来たのか』って事だ」この時、私の表情は確かに驚きの物へと変わっていた事だろう。それも当然だ。何せ私が別の世界から来てしまった可能性を、彼はあっさりと看破してのけたのだ。無論の事、私自身、別世界云々なんて荒唐無稽な話と思っており、誰にも話していないにも関わらずだ。「夕方頃、あんたは自分が堅気の教師だって証明の為に、俺達へ運転免許とかいろんな証書を見せたりしただろ?」そう言えば確かに、外が暗くなり始める頃にそんな事をしたような覚えはある。その時、ゆみみを始め、他の一家の衆は偽造かどうか確かめただけで、余り書面へは目を通していなかった。しかし、その中で銀虎だけは、免許に記載された住所などをメモに取っていた事を思い出す。「それでな、ちょっと気になってな。後でその免許に書かれている住所とかをインターネットで調べてみたんだ」言ってパソコンのキーボードを打つ仕草をして見せる銀虎。最近のヤクザもIT化が進んでいるようだ。「――そしたら、何一つとして該当する物は無し。しかも全てが全てだ。その結果に一瞬、あんたの免許その他諸々は全部偽造かと思ったんだが、それにしちゃあ良く出来ている。ただ偽造するにしても、普通は俺達が知っている地名を書きゃあ良い物だ、それの方が偽造と疑われるリスクも少ねぇしな。だが、あんたの見せた免許には、偽造と疑われるリスクを犯してまで、わざわざ存在しない架空の地名が書かれている。一体こりゃなんだ? 俺達を騙すにしても幾ら何でも手が込み過ぎだ。ちょいと納得出来る説明が欲しい所なんだが」言って、ずいと顔を近づけさせる銀虎。……やれやれ、この場合、何処から如何説明すれば良いのやら。あまり荒唐無稽過ぎる話をしよう物なら、下手すりゃ理解しきれずブチ切れてドスを持ち出す事になりかねないしな……。――仕方あるまい。こうなれば、ここは私の身に降りかかった事を、嘘偽り無く話すとしよう。もしそれで彼が信じない様なら、その時はその時だ。「そうだな、先ずは私が何処からどうやって、この街に来たかを話すとしようか――」胸中で覚悟を決めた私は、銀虎へ事の経緯を話し始めた……。* * *「――と言うことだ。……まぁ、かく言う私自身でさえ、この事はまだ半信半疑なんだがな」数分後、自身に起きた事の経緯の全てを説明し終えた私は、疲れたとばかりに一息付いた。話の最中、銀虎は何度か私へ質問をして来た物の、それ以外は口を挟む事無く黙って私の話を聞いていた。「……」そして今、銀虎は何やら考えこむ様に腕組をしながら顔を俯かせ、小さく唸り声を漏らしていた。その尻尾は時折左右に振られ、そしてもどかしそうにうねうねとくねる。明らかに何か考え込んでいる様子だった。この時の私はと言うと、ただ何も言わず、考えこむ銀虎の横顔を眺めるしか他がない。はてさてこれからどうなる事か……と、私が独り不安に駆られた所で、銀虎が私の方へ向き直り、口を開く。「……何と言えば良いんだろうな、この場合。お客人、あんたの話は、はっきり言って、嘘八百と取られても仕方のねぇ話だ」「……だろうな。私自身、もし同じ事を他の奴から聞かされたら、多分同じ事を思うだろうよ」案の上の銀虎の言葉に、私が半ば諦め混じりに返した所で、銀虎は「まあ待て」と言って話を続ける。「長年こう言う稼業をやっているとな、時には相手の言っている事の真偽を見極める必要に迫られる事が多いもんでな、そう言う事を何度かしている内に、如何しても必然的に『人を見る目』ってのが養われてくるもんなんだ。無論、若ぇ頃に親からこの役目を受け継いだ俺もまた、『人を見る目』を養われた口でな」言いながらグラサン越しに自分の目を指した後、その指先を私へ向け。「俺が見る限り、如何もあんたは嘘を言っている様な感じはしない。むしろ本当の様にも聞こえる。しかし、だからと言ってあんたの話の全てが全てを信じる訳にも行かない。だが、同時に信用できないって訳でもない」「……つまり、如何言うことだ?」言っている事の意が掴めず思わず聞き返す私へ、銀虎は困った様に後ろ頭を掻きながら、「まぁ……つまりはだな。お客人、俺はあんたの話の半分ほどは信用してやるって事だよ」「良いのか? こんな荒唐無稽な話、信じろと言うのがどだい無理な話だと思うのだが……」思いもよらぬ言葉に私が思わず難色を示した所で、銀虎に背中をばんと軽く叩かれ「良いんだよ。あんたは俺達の知らない何処か遠くからやってきた、つまりはそう言う事なんだろ?同じ獅子のよしみで一先ずは信じてやるさ。……それよりとっとと晩飯を食ってくれないか? 折角俺が作ってやったのが冷めちまう」「む、むぅ……」なんだか腑に落ちない物を感じつつ、私は銀虎に促されるまま仕方なく晩飯に出されたハンバーグを口へ運ぶ。味付けは和風らしく、掛かっているしょうゆ風味ソースと大根おろしが良い按配。「味は如何だ? あんたの口に合うと良いんだがよ」「……悪くは無い、といった所だな」「はは、そうかい?」厳ついヤクザの男が作ったと言う手料理の割に、意外に美味しいのが何だか女として悔しい。それもあって、つい正直に美味しいとは言わなかったのだが。多分、彼のあの態度からしてそれはバレているのだろう。えぇい、ニヤニヤしながら私の食う様子を眺めるな。こう言う時、馬鹿正直な自分の尻尾が恨めしく思えてしまう。 「おい、何をこんなとこで躊躇してるんだ、平次。早く行けって」「分かってるよ唯鶴、でも心の準備ってのがあってなぁ…――ってピアスを思いっきり引っ張るなって、痛ぇっての!」若干不機嫌に私が食事を取ってる最中、こちらへ向かってくる足音二つと騒ぎ声が私の耳を震わす。ほぼ同じタイミングで私と銀虎が振り向いてみると、其処には妙に恥かしがる平次を連れた唯鶴の姿。無論の事ながら、私と同じく事情の飲み込めない銀虎が尻尾をくねらせつつ、二人へ問う。「……お前ら、何しに来たんだ?」「いや、ちょっとな……ほら平次。ここまで来たんだから、いい加減覚悟決めろ」「分かってるって…あの、怜子さん!」「……?」いきなり平次に話しかけられ、思わず食事をしていた手を止めてきょとんとする私。ピンと跳ねる尻尾。それは銀虎も同じらしく、口を半開きにして平次の様子を見ていた。「その、なんだ……昼間、あんたを同業者と勘違いした挙句、胸を揉んで悪かった。この通りだ、謝る!」「……」更には頭を下げて謝る平次を前に、私と銀虎は遂にお互いに顔を見合わせ、目をぱちくりとさせた。その様子が居た堪れなかったのか、平次はもぞもぞと口篭もらせつつ説明を始める。「えっと…それで……何でいきなりこんな事言い出したかってぇ言うと、ついさっき俺、お嬢に説教されちまってな……。怜子さんは詫びは要らないと言ってたけど、やっぱ女の人の胸を揉んだならきちんと謝った方が良い、ってさ」なるほど、そう言う事か……。ゆみみもあの若さの割にしっかりしているのだな。感心。「それで、だったら今直ぐ謝ってきた方が良いんじゃないかって、もう唯鶴に無理やり……」「そうそう、俺は平次が逃げ出さない為の付き添いって奴だ」「ぶっ、お前、人の家の窓ガラスを割って、先生に謝りに行かされる悪ガキかよ?」「う、うっせぇ!! それ言うなって! 俺、気にしてるんだから!」更にもぞもぞと言った所での唯鶴の言葉に銀虎に笑われ、思わず鬣を逆立てて恥かしがる平次。ここまで恥かしがる辺り、銀虎の指摘は平次にとって図星だったのだろう。「銀虎、実は言うとな。こいつ、今の今まで何してたかって言うと、謝るのを嫌がって逃げ回ってたんだぜ?」「おいおい、まるでガキじゃねえか。そう言う覚悟くらい直ぐに決めろよな平次? ぷぷっ」「ちょ、おい! 何さらっと言いふらしてるんだよ唯鶴! それは俺の黒歴史にしてくれよ!? つか笑うな銀虎!」「しかもなこいつ、トイレに逃げ込んだ挙句に、怒ったお嬢に引き摺り出されてやがるんだわ、情けないにも程があるだろ?」「へぇ、そうなんだ。後で秋水と綾近にもこの事教えておくか、くくっ」「いやぁぁぁぁぁぁっ!? 唯鶴、それも言わないでぇぇぇぇっ!! 銀虎も言いふらすの止めてぇぇ!?」……そして結局、私が食事を終えるまでの間中、三人はまるで昼休みの中学生の男子生徒たちの様に、わいのわいのと仲良く騒いでいたのであった。「……ふぅ、やっと静かになった……」それからややあって、再び静けさを取り戻した屋敷の縁側で、私は独り、雲一つ無くなった空に煌く星々を眺めながら、静かに煙草の味を楽しんでいた。あれから私が食事を終えた後、銀虎は私が食事に使っていた食器を洗うべく台所へと行き、そして唯鶴と平次の二人もまた、私への用も済んだ上に騒ぎ疲れたのもあって、早々に自分の部屋へと戻っていった。やれやれ、これでようやく静かに煙草を味わう事が出来る。何と言うか、この一家の連中は騒がしくて溜まらん――と言うか、何故私に構って来るんだ?こんなろくでなしの私なんかに関わった所で、良い事は何一つない上に下手すれば不幸になるだけだと言うのに。それにどうせ別れる事になるから、余計な感情を持たない様になるべくここの者とは関わりを持たない様にしていると言うのに、如何言う訳か次から次へと私の元にやってきて、結局一家の衆の全員と何かしらの関わりを持ってしまった。何と言うか、まるでそれを望む誰かが、そうなる様に仕向けたとしか……。「……」ある結論に思い当たった私は、まだ吸いきっていない煙草を携帯灰皿へと押しやった後。ゆっくりと視線を巡らせ、同時に周囲を探る様に両の耳を動かして、その気配を探る。――そして思っていた通り、縁側の一番端の角の辺り。息を潜めてじっとこちらを伺う気配を私は感じ取った。「……居るんだろう。こそこそ隠れていないで出て来い」私は迷う事無く、隠れている気配へ向けて声を掛ける。すると、どうやら気配の主は声を掛けられる思って無かったらしく、若干動揺の動きが見え、そして……「……え、えーっと、気付かれちゃった、かな?」おずおずと姿をあらわしたのは、森三一家の若頭、森三ゆみみ。彼女はまるで悪戯がばれた子供の様な照れ笑いを浮かべつつ、私の隣に来て座る「うーん、上手く隠れてたつもりなんだけど……」「ケモノの感覚を甘く見ちゃいかん、隠れたつもりでもモロバレだったぞ?」「って事は、かくれんぼの時も銀虎たち、わざと見つからない振りをしてたのかな?」「さぁな、それは如何だか分からんよ。本人に聞いて見ない事にはな」新たな煙草を咥えなおした私は、敢えてゆみみと目を合わせない様に受け答えした後、頃合を見計らって彼女の方へ向き直り、本題を切り出す。「それより、舎弟たちがここへ来る様に仕向けたの、ゆみみ少女、お前だろ?」「――う゛…な、何の事…かなぁ?」呻き声と共にビクリと震えるゆみみ、そして視線を私から逸らしつつ震えた声で誤魔化す。……もう言うまでもなく完全なまでにクロである。まさかここまで分かりやすいとは……。内心呆れ返りつつも、私はゆみみへむけて更に言う。「よくよく連中の話を思い出してみたらな。あいつらが私の元に来たの、綾近を除けば全部ゆみみ少女の差し金じゃないか」――そうである。私が思い当たった結論と言うのも、私の元に一家の衆が訪れる様、ゆみみが仕向けたのではないかと言う事であった。最初の綾近は如何だか分からんが、その次の秋水は蚊取り豚を置く様に言われ、そして銀虎は食事を持ってくる様に言われ、更には平次と唯鶴の二人が来たのも、そもそもはゆみみが謝りに行く様に平次へ言った事が発端である。……まぁ、普通ここまで考えれば、この結論に至るのはごく当然の結果と言うべきか。「え、えーっと……実は言うと、その、綾近の方も、様子を見てきてって頼んでたんだよねー……?」と、苦笑いを浮かべて言うゆみみ――と言うことは全員、彼女の差し金だったと言うことか。何と言うか、怒りを通り越して呆れるやら何とやらである。なんだってこんな事を……?「それで、如何してそんな事をしたのか、少し聞きたいんだがな?」「う~ん、何と言うか……なんか、あなたが寂しそうに見えたから、かな?」「……寂しそう?」ゆみみからの思わぬ返答に、私は思わず眉をひそめ、オウム返しに問う。「怜子さんって、普通の人と違って皆とはほぼ対等に話すけど……なんと言うか、皆とは一歩距離を置いている感じがするの。それもただ人付き合いが苦手だとかそう言う感じじゃなくて、敢えて距離を置いているというか……」「……そりゃそもそもは他人の家だからな。何れは出ていく以上、余計な感情は残さないに越した事はないだろ?ほら、良く言うじゃないか、立つ鳥後を濁さず、とかな」「ううん、そうじゃない!」少し投げやり気味に返した所でゆみみに強い言葉で否定され、私は思わずはっと振り向く。「怜子さんは何処かで恐れてる、誰かと関わり合いになることを恐がってる。それが如何してかは私には良くわからないけど……でも、私は見てたよ。怜子さんがここで独り寂しそうに煙草吸ってる姿を。本当は誰かと仲良くなりたい、けど、それが恐いからわざと距離を離してる、私には怜子さんがそう見えるのよ」「…………」う、うぅむ……これだから子供と言うのは、変な所に観察眼が優れているというか……。まさか、私がダチの織田以外には誰にも言ってなかった心奥の事を、こうも見事に言い当ててくれるとは。しかも、会ってまだ一日と経っていないというのにだ。流石は一家を背負って立つ若頭だけはある、か。「……だから、お前の舎弟達を私の所へ行かせた訳か?」「う、ゴメンナサイ……本当は私が直接行けば良かったんだけど、変に気を使わせちゃマズイと思ったから……」私の呆れ混じりの問いに、本当に申し訳なさそうに謝るゆみみ。「その、怜子さん……やっぱ、怒ってるかな?」「……怒ってはいない。だが……」言って、私は溜息一つ漏らして項垂れているゆみみの頭へポンと手を置き、その掌の肉球で思いっきり頭をワシワシしつつ、まくし立てる様に続ける。「よくもまぁ、こんな余計な気使いを思いつくものだな? しかも会って一日も経ってないケモノの事なのにだ。流石は一家の若頭だ、大した洞察力だよ。私は怒りを通り越して呆れかえったよ」「ちょ、痛い、痛いって怜子さん、髪がぐしゃぐしゃになっちゃうよ!」ある程度ワシワシしてゆみみが嫌がり始めた所で、手を止め、其処から一転、母親がやるそれの様に優しく撫でる動きへ変え、私は言う。「――まぁ、とはいえ、おかげで退屈はしなかったな。その点は感謝しよう……ありがとう」「……え? いまなんて?」「二度は言わんぞ?」言って、私はぷいと顔を背ける。ガラにも無い事は二度は言わない主義なのだ、私は。増してや他人への「ありがとう」を二度も言うなんて、それこそ私のスタイルに反するでは無いか。ゆみみも私の尻尾の動きで何となくそれを察したのか、しつこくせがむ事はしなかった。それからお互いに何も語らう事無く、夜空に瞬く星々を眺めた後。ふと何かを思い立った様にゆみみがこちらへ振り向き、少しおずおずといった感じで言う「ねえ、ところで……怜子さんに一つお願いしても良いかな?」「……ん? お願いとは何だ?」はて、私へのお願い? ……一体、何を頼むつもりやら。その疑問を表す様に左右にくねる尻尾。「お願いってのは、その……これから怜子さんの事を、怜子先生って呼んでも良いかなって」「……む? なぜ私の事を先生と?」あまりに意外なお願いに、思わず隻眼の目を丸くして聞き返す私。「怜子さんって、その…学校の先生をしているでしょ?」「ああ、そうだな? 確かに私は、佳望学園と言う学校で、中等部、高等部の現代社会の教科を担当している」「それでね、私の通っている学校に、怜子さんみたいな先生がいたら良いなーって思ったの……」「……如何言うことだ?」更に聞き返す私へ、ゆみみは顔を俯かせ、声のトーンを落して話す。「私の家ってさ…こう言う所じゃない? それに、私自身も若頭でしょう?だからそれで学校の先生の殆どが、決して分かり易い形じゃないけれど、一方的に私を怖がったり避けたりしているの……。でも、それでも一応、学校に友達が何人か居るんだけどね、それ以外の子も皆、先生と同じ。一方的に私の事を恐れているの。銀虎達は『気にする事は無い』って言ってくれるけど、それでもやっぱり……気にしちゃう」「…………」「なんで私、森三一家の娘に生まれちゃったのかな……?」もし私の家が森三一家じゃなかったら……こんな想い、する事は無いのかな?」表情こそは笑っている物の、彼女のその横顔は言い様に無いくらいに悲しい色を湛え、そして辛そうに見えた。……表面上は気丈に振舞っているけど、やっぱり、この子は歳相応の少女なのだな……。名のあるヤクザの家に生まれたと言うだけで、人並みの少女らしい生活は、幾ら望めど決してかなう事は無い。この小さな身体に、一体どれだけの辛さや苦しみを抱えこんでいるのか、所詮は他人である私には知る事は出来ないだろう。「ゴメン、ちょっと話がずれちゃったね?」「いや、構わん。続けてくれ」「ありがと……それで、怜子さんってさ、堅気の人じゃない。けど、それでも、うちの舎弟相手でも一歩も引いて無いというか、むしろ対等に対応しているでしょ?だから、そんな怜子さんの姿を見ている内に、うちの学校にこんな先生が居たら良いなーって思っちゃって……」「それで、それが無理ならせめて、私の事を先生と呼びたい、と。そう言う事か?」私の問いに、ゆみみは肯定の意味か、こちらを向いてこくんと頷く。しかし、其処で何か思い直したのか、彼女は視線をさっと逸らし、「……でも、やっぱり無理かな? まだ、怜子さんと会ってから一日しか経ってないし……」「…………」私は何も言わず、じっとゆみみの顔を見つめる。彼女の表情に写るは、期待と不安の二つの感情を入り混じらせた物。私の様なケモノと違って、感情を表す尻尾やケモ耳のない人間は、大体の感情を顔の表情で表す。特に彼女の様な多感な年頃は、その表情をまるで秋の空の様に、喜怒哀楽様々な色へと変えて魅せる。そんな彼女の表情を、果たして大人の勝手な都合だけで曇らせて良い物か。私は暫し考えた後――ぷいとそっぽを向いて言う。「好きにすれば良いさ」「え?」「私の事を先生と呼んでも構わん、と言うことだ」「――ほ、本当!? ありがとう! 怜子さん、じゃなくて怜子先生!」今の私はそっぽ向いてる為、その表情こそは判らないが、声の調子からして、今のゆみみはそれこそ、長らく続いた雨の後に見せる太陽の様な笑顔を見せている事だろう。……私とした事が何ともガラにもない事を。もしこの様子をあのとっつあんぼうやが見ていたら、何と言って笑う事か。そんなこそばゆい物を尻尾の先に感じていた矢先、ゆみみは明るい調子で言ってのける。「うん、思った通りだった。怜子先生ってやっぱり優しい人なんだね」「――ばっ!? 馬鹿を言え、何を根拠にそんな事を思うんだ?」思わぬ言葉に驚き振り向く私、ケモ耳がカアッと熱くなるのを感じる!ヤサシイヒト――常日頃からアウトローを貫く私にとって、最も似合わぬ言葉である。無論の事ながら、私は耳の内側を紅くしながら慌てて否定するのだが、ゆみみはその反応も予想していた様で、「だって怜子先生はあの時、私が居ると気付いたら、直ぐに煙草を吸うのを止めたじゃない。あれって、煙草の煙で私が煙たくならない様に気を使ってくれたのよね?」「いや、アレはもう吸い切ったからであって……」「ふーん、まだ半分以上残ってたように見えたけど?」「ぐっ……」ゆみみのスルドイ指摘に、思わず呻き声を漏らす私。しかし、それでも私は、指摘されたからと言って『はいそうです』と簡単には認めはしない。私は誇り高い獅子なのだ、故に他人(ひと)に弱みを見せる訳には行かない。「とにかく、ゆみみ少女。私はお前が思っているような優しい人なんかじゃないんだ。其処を勘違いしないで欲しい」「でも……怜子先生の尻尾はそうは言っていないけど?」「……っ!?」が、無意識の内にパタパタと動きまわっていた尻尾の事をゆみみに指摘され、私は慌てて自分の尻の間に尻尾を隠した。くッ、馬鹿正直な尻尾め! 知らぬ間に私の感情をこうも見事にだだ漏れにしているとは……!うーむ、如何もこの街に来てからと言う物、ずっと調子を乱されっぱなしだ。「ああもう、こんなステキ過ぎる展開を用意してくれた巡り合わせの神がもし目の前に居たら、今直ぐ半殺しにしてやりたい気分だ……」「ゴ、ゴメンゴメン、ちょっとからかいすぎたみたい。怜子先生と話すのが楽しくてつい……」「"つい"じゃないだろ"つい"じゃ……」私は呆れ混じりにふぅ、と溜息を付いた後――ふっと笑みを浮かべ、「まぁ、だが悪い気はしない。なんだかんだ言って、私もゆみみ少女と話のが楽しかったからな」「せ、先生……ありがとう!」喜びの声を上げてぼふっと抱きつく少女の頭へ、私はそっと手を乗せて、髪に沿う様に優しく撫でる。鼻腔に感じるは、彼女の使って居る物だろうシャンプーの優しい香り。その香りに心なしか心も穏やかになりそうな気がする。そしてふと思う、もし私に娘がいたなら、こう言う事もしていたのだろうかと。それから暫くたって、そろそろ彼方此方の家庭では就寝に入る者も出始める頃。私の身体へ寄り添う様にして座るゆみみが、私の顔を見上げて言う。「ねぇ、先生……もう一つだけ、お願いしても良いかな?」「……ん? なんだ? 言ってみろ」「んっと、それはね――」ゆみみが言いかけた所で――不意に塀の向こうから響く、改造車と思しき車のやたらと大きなエンジン音。その音に私とゆみみが動きを止めた所で、塀の向こうの車の止まった辺りから唐突に何かが飛び込み、目の前に落ちる。子供の握り拳より少し大きめのそれは――手榴弾!?「――くっ! ゆみみ少女、耳を塞いでろ!」「え? 怜子せんs――」それに気付いた私は咄嗟にゆみみを抱え、なるべく手榴弾から離れるべく横へ跳ぶ!更に跳んだ先で、私は自分の身体を盾にするべくゆみみの身体へ覆い被さり――ゴ ゥ ン ! !――刹那、耳を劈く(つんざく)ような激しい音と衝撃が、夜の屋敷を揺るがした……。――――――――――――【転】へ続く―――――――――――――
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