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**続・穴があったら 「そういや親父、保証書は…あれ?」 さっきまでそこにいたはずの親父の姿がない。大した用事ではないのだが、何か気になって俺は腰を上げた。 靴はあるから外に出たわけではない。家中を探してみたのだが、親父の姿は見えない。 他に探してないのはさっきまでいた段ボールの部屋だけだが… ドアを少し開けると、そこに親父はいた。こちらには気付いていない。 何をしているかといえば、見ている。椅子に前のめりに座って、段ボールの中をじっと見つめている。それだけ。 おい親父、と声をかけようとして……やめた。 親父は基本的にいつも同じような仏頂面。しかし微妙な機微はある。…あと尻尾もあるし。 俺とて付き合いは長いのだ。義母さん程ではないが、ある程度の感情は掴める。で、今の親父。 こんなに幸せそうな親父を見たのは久し振りだ。 見つめる段ボールの中身を、心の底から愛しく思っている、そんな様子だった。 音を立てないように、俺はドアを閉めた。 義母さんはそそっかしい部分もあるが、どこまでも優しく、しっかりもので美人。 普通はとっつきにくいだろう親父のサポートを完璧にこなしている。親父は幸せ者だ。 一方で、親父。生み出す小説は確かに素晴らしく、多くのファンを魅了するのもわかる。 だが、一緒に暮らしている親父は不精者で、コミュニケーション能力はほぼ皆無。 半分引きこもりのような生活をしながら、家事もろくにこなせない。 言ってしまえば、割と駄目な大人の部類に入るんじゃないだろうか。 でも。それでも。 義母さんもまた、幸せなんだと思う。あの親父に、こんなにも大切に思われているんだから。 親父の不器用な愛情を、義母さんは敏感に感じとっているんだろう。 俺もいつか結婚して、家族を持つんだろう。 そのときは、あの両親のように。いつまでもあんな風にありたいと、俺は思うのだ。 一瞬、誰かの顔が浮かんで…俺は苦笑した。 クシュッ 段ボールで眠る妻の、小さなくしゃみ。 健太郎は慌てて立ち上がる。何かないか、おろおろと周囲を見回す。 ここにはないと判断しドアを開けると、目の前の廊下に畳んだ毛布が置いてあった。 起こさないよう慎重に、ふわりと毛布をかける。静かに寝息を立てる妻を見て、健太郎はホッと息を吐いた。 しかし何故あんなところに毛布が? 健太郎はひとり、無言で首を傾げるのだった。

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