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現実と戦った。
理想と戦った。
宿命と戦った。

そして手に入れたのは、たった一つの孤独。
それでも迷いは無かった。後悔なんてする筈が無いと思っていた。

でも今は、少しだけ後悔している。その後悔は、きっと俺がしてはいけない事で
…もう変えられない現実なんだ。
それでも俺は、あいつらと居る事をあの時望んでいれば、と思うと…後悔が生ま
れてくる。

もう、後悔も懺悔もしたくない。誰かが死ぬ姿も、悲しい声で俺の名前を呼ぶ姿も。
これは身勝手な願望だ。だからこそ、俺は戦わなきゃいけない。

戦いたくないけど、戦わなければならない理由がある。
矛盾は承知だ。負け戦も分かってる。

でも約束がある。
俺はもう、大切な家族を失いたくないんだ。


- The Second Fate -

- First Rebeliions Anthem -





足音が、階段に響いている。俺は床を踏みしめて、自分が生きている実感を噛み
締めていた。

「後戻りは出来ない、か」

階段の先から伝わる僅かな魔力。一歩上がるだけで、段々と強くなっていく。
胸が苦しい。身体が熱い。きっと、緊張しているんだろう。

この感覚は、前にも味わったことがある。
似たようなステージで、俺と踊る《戦う》相手も同じだ。

後はただ、自分を信じるだけ。

「これで何度目だ、お前と戦うのも」
「さてな。だがよく来た、とだけは言っておこう」

屋上は、薄暗かった。
少ない灯りと、星の光だけが視界を保っている。
床にアポカリプスの魔法陣は無い、今は…ただ決着をつけたいということか。

「さっさと始めよう。こんな場所、長居はしたくない」
「同感だ。では始めよう」

アンサラーが機動した。
今日、ここで全てが終わる。いや…終わらせないといけない。

「フルンティング」

さあ始めよう。
俺とお前の、戦争の続きだ。

「行くぞ!」

同時に走り、剣を交えた。
重い。剣術だけならば俺もアンヘルも達人の域に達しているが、やはりこちらに
分がある。

せめてもの救いが、まだアンヘルがジュエルシードを解放していないということ
だ。

「氷天一閃!」
「炎陣、一式!」

炎が床を溶かしていく。
足場が歪めば、不利になるのはこちらだ。

ならば──!!

「リロードだフルンティング!!」
『Explosion!』
「ガーンディーヴァ!」
「なに…!?」

屋上が一瞬にして、零度の世界になった。
まだ終りじゃない。ガーンディーヴァは二段式の俺が編み出した魔法だ。

「バニッシュ!!」

絶対零度の世界が、砕けた。
周囲を一瞬にして凍結させ、魔法で凍った範囲を爆発させる。

「まあ…そう簡単にやられるわけがないか」
「…ふん。氷は熱で溶ける、常識だぞヴィア」
「そんなことは分かってる! まだ終りだと思うな!」

俺が得意とする氷結魔法が効かないなら、破壊力のあるやつを撃ち込めばいい。

「フレースヴェルグ!!」
「やはり、こんなものなのか…」

悲しそうな表情のまま、アンヘルはデバイスで俺の魔法を振り払った。
ただ振り払っただけなのに、軌道はずれて、アンヘルの横を通り過ぎていく。

「モード2nd、アイリスランス…!」
「ジュエルシード解放か…」
「そうだ。ジュエルシードの魔力回路の半分をデバイスを直結させることで、デ
バイス自体に魔力が宿る」

ジュエルシードを解放されたからには、もう勝ち目は無い。
でも…退けないんだ。

「氷天──」
「遅い!」
「なに──!?」

デバイスがカートリッジリロードをする前に、アンヘルのデバイスがフルンティ
ングを弾いて俺の腹部を突き刺した。
すぐに抜かれるが、この状況で深手を負うのはかなり不味い。

「ぐッ…!」
「…こんなにも、弱いものなのか」
「黙れ…見下すんじゃねえ…!!」
「ならばこい、お前の力を見せてみろ」
「…アブソリュート・ゼロ!」
「まだだ」
「氷天一閃!」
「まだ足りない…!」

俺の力は、こんなにも弱いものだったのか…? 撃ち出す魔法は全て掻き消され
てしまう。

「…終わりにしよう」

こんなにも、簡単なものだったのか。ランスが俺の腹を突き刺している。

「ぐ、…はッ…!」
「………」

肩、腹部、足、次々に身体が貫かれていく。
立てなくなった俺を、アンヘルが胸ぐらを掴んで引き寄せた。

「…何か言えよ、ヴィア」
「な、にを…だ」
「お前を殺すのは簡単だった。いつでも殺しに行けた、でも行かなかった。何故
だか分かるか?」
「………」
「お前が夜天を失ったと分かった時、お前なら俺を倒す為に何か力を手に入れる
と思っていた。だがなんだ? この脆いお前は。まるで人間だぞ」

人間、か。嬉しいようで…悲しい言葉だ。
だが今の俺はそんなにも弱いことを痛感する。でもまた力を求めれば、俺はお前
と同じになってしまう。

「ほう…まだ俺の腕を握る力があるか。いやいや、そうでなければつまらない」
「お…まえだけは…! 許しちゃいけないんだ…!」

ずっと、あいつらが憎いから人間を滅ぼそうとしていたのかと思っていた。
だがお前は…そんなあいつらと同じことをした。

許さない、絶対にこれだけは認められない。
お前が人間を憎くて滅ぼすのなら俺は認めよう、それを正面から食い止めればい
いだけなのだから。

だがお前があの科学者たちと同じことをしたのは、お前自身が自分を裏切る行為だ。

「ぐあ…ッ!」

また、腹部を貫ぬかれた。
力が抜け、俺の腕は下ろされる。

「なぜ夜天を無くした」
「俺は…自分…、から、捨てたんだ」
「なぜだ」
「あいつらは…幸せになる権利がある。俺と居たら…それが駄目になるから…」
「失望だよ、ヴィア」

アンヘルが俺を投げ捨てた。
立ち上がることも受け身をとることも出来ずに、俺は地面に転がった。
負けたんだ。俺は。

「…ぢぐ、…しょう…!!」

悔しいのか、俺はただその言葉を漏らした。
約束を守れない。あいつらは、どんな顔をするだろうか。

「じきにガーディアンと言えども死に至る。さらばだ、我が旧友よ」

アンヘルが背を向けて立ち去ろうとした時、俺の薄れていく視界に赤い何かが横
切った。

「てめぇはヴィアに、何しやがったんだぁああああ!!!」
「お前は…!?」

不意打ちのせいか、アンヘルが吹っ飛ぶ。

「ヴィータ…?」
「うぉおおおお!!!」

ヴィータが、居た。
俺を助けに来たのだろうか。いや、それよりも…目が覚めて良かったと喜ぶべきか。
どちらにしよ、喋るだけの力が残っていない。

「健気だな。自分の主の危機に参上したということか」
「うるせえ! お前なんかにヴィアは! ヴィアは!」

不意打ちの一撃以外は、全て捌かれている。やはりヴィータでは…奴にはかなわ
ないようだ。

「気に入らねぇ! 気に入らねぇんだ!」
「………」
「あたしたちを捨てて偽善者ぶってるヴィアも! あたしの大切な人を傷付けた
お前も!」
「それで?」
「全部気に入らねぇんだよ!」
「遅いな」

アンヘルのカウンターで、ヴィータが吹っ飛ぶ。
俺はヴィータに駆け寄ってやることすら出来ない。

「やめろアンヘル…!」
「やめないよ、どうせ滅ぶ存在だ。今殺したところで、大差は無い」
「まだまだぁあああ!!!」
「ふん。気合いだけはあるな…!」
「ぐあッ…!」
「ヴィータ!」

何も出来ない。何も出来ないのか…?
アンヘルが倒れているヴィータに近寄っていく。

「やめろ」
「お前が止められる力は無い」
「ヴィータは関係無いだろ!」
「400年前の関係者だ」
「やめろぉおおおお!!!」

ダメだ。俺には叫ぶことしか出来ない。

──逃げろ

ヴィータを見捨てて、逃げることだって出来る。

──逃げろ!

逃げるな。戦うんだ。身体を動かせ。

──逃げるんだ。この辛い世界から。

痛い。もう、立てない。なんで俺がここまてしなければいけないんだろうか。
化け物として生まれたかった訳じゃないのに、どうしてこんな辛い思いまでして
戦わなきゃいけないんだ。

──名を

ああ、また聴こえる。

──私を

世界の時間が、止まった。
アンヘルも、風も…俺とお前以外の時間が止まっている。
倒れている俺の目の前に、女が立っていた。
風さえ止まっていたはずなのに、女に気付いた瞬間から、どこか落ち着く…優し
い風が吹いていた。

俺はこれを憶えている。

「お前が…」

ずっと、一緒に居てくれたのか…? 400年前の、あの夜天を手に入れた日から。

「お父様、私は…」
「これ以上俺に、何をしろって言うんだ」
「戦って下さい」
「みんなそうだ…俺には戦うことしか望まない。俺がこんな素性だから利用する」
「戦いは、貴方が望んだことです。貴方が差し出した事です。自分が戦えば、勝
てば、みんなが幸せになる。それはお父様が…お望みになったことでは?」

でも俺には、昔みたいな力は無い。アンヘルと互角に戦える力が無いんだ。
それでもお前は、世界は、俺に戦えと言うのだろうか。

「俺には…力が無いんだ…」
「力ならあります。貴方の目の前に───」
「…俺にまた、夜天を手に入れる資格があるというのか」
「夜天《私》が望んだ事です。そして今度こそ、皆が望む平和を…貴方が掴むの
です」
「………」

優しい風が吹いている。
アンヘルは、世界を滅ぼすという絶対的な自信を込めた剣《アンサラー》を振り
降ろそうとしている。
俺はこいつに勝たなきゃいけない。皆に、自分に約束した。
自分の苦痛や悲しみ、絶望さえ許されない。

「俺は…勝てるのか?」
「我らが夜天の王は、あんな奴には負けません」
「………」

本当に、俺があと一歩踏み出すだけの勇気《言葉》を、お前たちは軽々と言って
くれるよ。
それが俺の苦しみを理解してくれた上での言葉だってことは知ってる。

だから俺はまた───

「頑張らなきゃ、いけないのかな」
「はい」
「勝たなきゃ、いけないのかな」
「はい」
「俺は、幸せを掴む権利があるのかな」
「はい…!」

行くしか、ない。
だったら…今一度お前の力を手に入れよう。夜天の書の力を。

「決まりましたか?」
「ああ。色々と積み重ねてしまったものが多すぎる。今さら、崩す訳にはいかない」
「───」
「戦うよ、俺が…夜天の王である限り」
「では、共に行きましょう」

“今一度、敗戦を許されぬ王の力を───”

世界が、動きだす。

“我が名は───”

さあ、行こう。

「…リィンフォース!!」





「待てアンヘル、俺はまだ…負けてない」
「…お前」

夜天の書が、俺の前にある。
それを手に取って、開く。

「目覚めた夜天は、赤く照らす晴天さえも染める」
「ようやくか…!」
「今再び、夜天の力を──」

またシュベルトクロイツを握るとは思わなかった。
この第2の夜天の書を手に入れたことによって、俺は400年前と同じ力を持った。

傷は癒えた。
あとは、アンヘルを倒すだけだ。

「さあ、始めようぜ」
「アイリスランス!」
「シュベルトクロイツ!」

デバイス同士のぶつかる金属音。
競り負けていた力も、今は俺が押している。

「ぐぅッ…!!」
「氷天一閃!」
「ちぃっ…!!」
「まだだ! アブソリュートゼロ!」
「ぐああッ!」

違う。圧倒的に違う。
魔力も、力も、視界が完全に冴えて、思考は相手の動きを読むまでに至る。
ここまで違うものなのか…心の中に、リィンフォースの存在を感じる。

「氷鎧天──」
「…お前、その魔法は…」
「絶対零域」

俺の周囲が、完全に凍り始める。
俺から2メートルの範囲に入った瞬間、全ては凍る。
それが氷鎧天・絶対零域だ。

「ジュエルシード!」
「…まだ先があるのか!?」
「アポカリプス発動!」
「なに…!?」

禍禍しい黒い魔力は、身体から滲み出て周囲を汚染していく。
そしてなによりも──

「お前、アポカリプスの魔法陣を自分に刻み込んだのか」
「そうだ、懐かしいだろう? 紅く染まる終焉だよヴィア」
「させるか!」

アポカリプスは完全じゃない、以前のように収縮した状態で放ってくるとしか思
えない。

「くそっ…近付けねぇ…!」
「お父様」
「リィンフォース…やれるか?」
「はい。その為の、魔法です」
「ヴィア!」
「はやて!? なんでここにいる!」

階段から、はやてとザフィーラが来た。
逃げろと言ったはずだが、きっとヴィータを連れ戻しに来たんだろう。

「八神、はやて…」
「リィンフォース、どうした」
「いえ…なんでもありません」
「ヴィータはどこや!」
「そこで倒れてる! さっさと行け」

ザフィーラがヴィータを運びだして、はやてが何か俺に向かって叫んでいた。

「ヴィアー!」
「聞こえねえよ! いいから早く行け!」

まだ、何か叫んでいる。
一瞬だが、少しだけ何か聴こえた。

「うちもヴィアの事諦めへんから! 絶対戻ってきてな!」
「…リィンフォース!」
「はい!」

はやてが脱出した。
後はお前と、俺だけだ。

「アンヘル!」
「ヴィアァアアアア!!」

閃光が、包む。
互い尽くす全ての魔力で、互いの命を削り合う。

「アムニペテント・アルヴィリオン!!」
「アポカリプス!!」

超えてみせる。400年…ずっとずっと想い続けた彼女たちの為に、俺は頑張っ
てきたんだ。

「アンヘル…!!」
「うぉおおおお!!!」

爆発は、施設を吸い込み広がっていく。森を蝕み、山を消し去り、更に拡大して
いく。
震える手に力を込めて、ぶれないように調整する。

「オーバードライブ!」
「モード3rd!」

俺達は、ずっと一人で戦い続けてきた。
辛かった、何かが崩れそうで…必死に守り続けてきたそれぞれの道。

「それも全部、終りにするんだ!!」
「お前を倒す! そして全てを、俺を苦しめる全ての原因を壊す!」

閃光の中心、最大魔法がぶつかるその間に誰かが居た。

「お前は…!?」
「貴様は…!?」

見覚えがある。
お前はこの戦いに、水を差すというのか。なんでだ…なんでお前は邪魔をする…!

これさえ終われば楽になれるのに、やっと全部終わらせられたのに。

「ファッカ…!」
「邪魔をするなファッカ! 貴様と俺の契約を忘れたか!」
「分かってますよ、ですが私にも目的がある」
「貴様ぁあああ…!!」
「後は任せて下さい。私の歴史に、貴方達の名は刻みましょう」

なんだあいつの力は…俺達の最大魔法の中心に立っておいて無事なはずが無いのに。

「お父様!」
「リィンフォース、お前は逃げろ!」

このままでは、俺達まで巻き込まれてしまう。
閃光はファッカ以外の全てを巻き込んでいく。

「なりません!」
「仕方ない…! ユニゾン緊急解除!」
「お父様…!?」
「はやての所へ行け、そうすればお前が帰る場所はある」
「またなのですか…?」

爆発が近くなってきた。
アンヘルは既に巻き込まれ、閃光はシュベルトクロイツの先端まで来ている。

「言ったはずだ、俺は勝手な奴なんだって…」
「お父様、泣かないで下さい」
「くそ…! なんでこんなことになった…」
「必ず戻ります。私は、貴方の元へ帰ります」
「分かったから早く行け! 絶対見付けてくれよ、まだまだやり残したことがあ
るんだからな!」
「分かりました、必ず、約束ですからね!?」

閃光が俺を包む。
最後に見えたのは、ファッカの薄ら笑いだった。

「全ての始まりはここからです」

ああそうさ。分かってるよそんなことは。
必ず仕返しに来てやるからな、絶対にだ。

夜天が染まる、閃光と共に、意識が途絶えた。



第十三話 リィンフォース End

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