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俺達のチキンレースは、遂に延長戦まで延びた。
戦って、裏切られて、裏切って、殺して…。

幾度となる罪を重ね、幾度となる業を背負い、俺は今に辿り着く。

今となっては、復讐心すら薄れていっている。
だが憎しみは消えない。人間と、ヴィアへの憎しみは増すばかりだ。
だからもうこれは復讐ではなく、ただの私闘と変わった。
見た目こそ同じかもしれないが、中身が違う。

この罪と業を惑わすには、俺が一人になるしかない。
だが、自害するのもプライドが許さない。ならば、俺以外が消えてなくなればいい。

だからヴィア、お前は必ず殺さなければならない。
俺が生きる為に、俺が俺である為に。





「ここが、フリージア本部」
「覚悟はいいな?」

施設の正面に到着したが、敵は出てこない。
入り口が二つあり、俺とリンは別行動となる。だがありがたいことにドアは開い
ていた。

「舐められたものだな」
「全くだ。派手にいくぞ」
「私は左へ行く」
「なら俺は右だ」

待ってろ。今すぐ行ってやる。
俺達が400年も望み続けた舞台だ、終幕には丁度いい。

入り口に入ると、長い廊下に出た。かなり長いのか、奥は霞んで見える。

「職員はいないのか?」

人の気配はしない。魔力反応も無い。中に入った途端、鉛弾の歓迎かと思ったが
、違うようだ。
逆にここまで何もないと気味が悪い。それとも、これはフリージアの挑発なのか。
もう入り口が霞んで見える。
かなり歩いたが、防衛システムも迎撃部隊も何も無かった。

「…これは」

扉の向こうから、微かだが魔力を感じる。それもかなりの数だ。

「お前たちは…!!」

扉を入ると、かなり広い部屋に出た。
そこに居たのは───

「ガーディアン…」
「そうです。中々どうして良い出来でしょう? これは様々な世界に保存されて
いたガーディアンたちなんだ」
「お前は、ファッカ…」
「憶えていてくれて嬉しいよ」

無数のガーディアンの奥に、ファッカは居た。
こいつらは他世界から眠りを解かれたガーディアンだというのなら、かなり厄介だ。

「感動の再会ですね」
「…そうだな」

全員があの頃のままだというのか、ガーディアンの戦闘服を着た動かぬ守護者た
ちは、目を開けたまま俺を睨む。
きっと、こいつらはまだ“機動”していないんだろう。

「400年前の戦争の話しは聞ききましたか?」
「ああ。“俺かアンヘル”の話しだろ」
「そうです。そしてこの子たちはどちらだと思いますか?」
「さあな。どちらにせよ、こいつらは敵でしかない」

かつては俺の意志を継いで戦った者たちでも、フリージアに捕獲されたのならも
はや味方は無いだろう。
こいつらを見る限り、全員同じデバイスを持ってるみたいだ。

「まあそうですね、貴方が正解を当てようと戦うのは必然です」
「…フルンティング」
「では、お客様に歓迎を」

ファッカが指を鳴らすと、すぐに変化が起きた。
見渡す限りざっと百人は居るだろうガーディアンたちは、一斉に目に光が籠る。

「お互い死にぞこないだ。そんな姿になってまで、未練はないよな」
「目標確認」

一番先頭のガーディアンが言う言葉に反応して、全員が復唱する。

「俺は先に行かなくちゃいけないんだ。いくら元部下とはいえ、手加減はできん
ぞ…!」
「デバイス、セットアップ」
『Set Up』

ガーディアンが持っているデバイスは、全て剣だ。
そしてあれだけ束になって動いていたら、いくら広いこの部屋でも身動きは取り
づらいだろう。

そして──

「忠告だ。俺が一番得意なのはな、“広域魔法”なんだぜ。いくぞ!」

詠唱を唱え、敵陣に突っ走る。こんな雑魚たちに構っている暇は無い。
早く、奴の元へ行かなければ。





「ふん。久しいなキャメル」
「また会えたねリベリオン。この前の仕返しというわけじゃないけど、今日こそ
は殺してあげるよ」
「お前が私を殺れるのか? 所詮、お前は劣化品だ」

入り口からすぐの部屋に待ち構えていたのは、キャメルだった。
敵は彼女一人らしく、他に敵影は見えない。

それはそれで有難いことだ。いくら元は下級ガーディアンとはいえ、キャメルた
ちは私同様にジュエルシードの魔力をある程度吸収した個体であることに違いは
ない。
この前のように油断すれば痛い目を見るのはこちらだ。

「ボクは劣化品なんかじゃない!」
「なら劣化品という言葉、お前の力で覆してみろ」
「いいよ、どうせ勝つのはボクだし…そうだね、負け惜しみとして受け取ってお
くよ」
「御託はいい。──いくぞ…!」

私とカラドボルグが、首を貫こうと突進する。この一撃は必ず防がれる。
だがキャメルはまだギアを出していない。
前はリザのギアの第2能力しか拝めなかったからな、キャメルが何をしてくるか
分からない。
それに、ロストロギアが埋め込まれているならば、相当な戦闘能力だろう。

「もらった…!」

最後までギアを発動させていない。むしろ天ノ羽々斬《アマノハバキリ》さえ出
していなかった。
カラドボルグが、奴の首を跳ねる。

「え──?」
「ギア2nd、タナトスの結界は既に発動しているんだ」

カラドボルグが無い…?
いや、確実に私はカラドボルグを持ち、走った。
だが首を突き刺そうとした時には、私の手に黄金のデバイスは無い。

「貴様、一体なにを!?」
「君のデバイスなら、そこに落ちてるよ」
「一体なにをした」

カラドボルグは私が走り始めてすぐの場所に落ちている。
後退して、すぐにカラドボルグを拾い構える。

「ほら、ちゃんと拾わないと」
「なに?」

確かにカラドボルグを拾い構えた。構えた筈だ…じゃあなんで、カラドボルグは
まだ床に転がったままでいる。

「もう一回試す?」
「…………」

拾い、構えるまではいい。
だが私はちゃんと拾って構えたと“意識”した筈なのに、実際は何も出来ていない。

『リン、素手で戦うのです』
「…それしかないのか。奴が武器を持たせない能力ならば、デバイス使いには天
敵だな」
「ギア、天ノ羽々斬!」
「能力の説明ぐらいしたらどうだ? 対処のしようがないぞ」
「ふん。今回はリザがいないからな、ボクが負ける要因は無い!」
「拳はちときついが…致し方がない」

私はリザに殴るためまた走った。
相手はデバイス同様武器を持っている。素手で戦うには手強いと言う他ない。

「はぁあっ!」
「何処を殴ってるんだい?」
「またか…!」

一体どうなっている。デバイスも素手でも奴にダメージを与えられていない。
おかしい。私は確かに奴の懐まで入り込み、そして確実に当たったと確信する。
だが実際は私の拳は空を切っている。

「羽々斬!」
「くっ…!?」

肩を斬られた。素手のままでは、すぐに殺られてしまう。
打開しなければ、ヴィアに会わせる顔が無い。

「カラドボルグ! 何か対策はないのか!」
『分かりません。彼女が使う魔法の能力が分からなければ…』
「ふん。無駄なことさ、ボクのタナトスの結界には隙なんてない」

何も出来ないまま、ただ逃げるしかない。
だが疑問はある。身体に何か異常をもたらしたのは分かるが、何故持てないのか。

持った事を意識したが、実際は持てていない。

「まさか…」
「終りだよ!」
「…賭けにしては勝目が無さすぎるが、やるしかあるまい…!!」

天ノ羽々斬が、私の首に向かって降ろされる。

「雷鳴、我に仇なす愚者に迅雷の轟きを──!!」
「詠唱魔法…?!」
「──雷光壁!」

羽々斬が私の首を落とす寸前、リザは雷の魔法壁に直撃して吹き飛ばされる。
やはりキャメル、お前の能力は──

「感覚を消すのか」
「くそ…どうして」
「人間は何かをする時には、必ずその行動を意識する。私がカラドボルグを拾おうと
した時も拾うと“意識”して武器を構えた」
「………」
「意識の次は“感覚”だ。手に持つ意識をした次は持っているという感覚を持つ
。それが無い。お前は…感覚を奪う能力なんだな」
「…ほとんど正解、と言っておくよ」
「だったら確実に当たる魔法を喰らわせればいい」
「やってみなよ。ボクは…お前何かに負けない」
「広域魔法は得意じゃないんだがな…」

意識を集中する。
私が出来る数少ない広域魔法だが、キャメルを倒すにはこれしかない。

「雷波召雲!」

何も、起きない。
確かに私は魔法を使った筈だが…。

「…馬鹿か私は」
「全くだね。魔法を使ったという感覚を奪えば、使えないだろうに」
「…なんだ、それじゃあ私に勝ち目は無いのか?」
「そうなるね。まぁさっきは偶然だよ、まさか能力がバレるとは思わなかった」
「むぅ。一体どうすれば」

全く。笑う気も失せる。
今の私では奴の能力を打開するのは難しい。
だがこちらにも、今は退けない理由がある。

「ヴィアと約束したからな。お前は意地でも倒す」
「ヴィアトリクス様はどうせアンヘル様に負けるよ。勝ち目なんて無い」
「確かに負けるかもな」
「だったら、なんであいつの味方なんてするんだ。元はこっち側のガーディアン
だろう!?」
「やはり敗けられない。私は私を赦《ゆる》した。この運命を、この罪を、私が
私を赦す方法をヴィアが教えてくれたんだ」

キャメルからしたら私はただの逆賊に過ぎないだろう。
私にとっては、これは大切な戦いなんだ。ヴィアの願いを叶える、私が出来る唯
一の恩返し。

世界なんてどうでもいい。
誰かが苦しむのなんてどうでもいい。ただ私は、あいつの為に戦うだけだ。

「負け戦が好きなんだね」
「少し違うな。不利から逆転するのが、私はたまらなく好きなんだ」
「負け惜しみを言うね。だったらボクがすぐに黙らせてあげるよ!」

逆転、か。出来るなら、してやりたいものだ。
でも私には出来ない。力が足りないんだ。

羽々斬が私を刻むと同時に、私のプライドも刻んでいく。
どうしても退けない。勝てないなら、少しでも長く時間を稼がなければ。

『リン』
「……なんだ? 私は避けるので必死なんだぞ」
『裏切るつもりですか?』
「…何を」
『自分の気持ちを、貴女は裏切るのですか?』
「…状況を見ろ」
『目を逸らさないで下さい。前を見なさい。貴女が倒すべき敵がいます』
「───」

キャメルがいる。
天ノ羽々斬で、私を斬っている。
だからなんだ? 私に何が出来る。カラドボルグも持てない、魔法も使えない。
殴ることすら出来ない。
ねぇカラドボルグ、お前は私に何を期待しているんだ。

『戦いなさい、貴女の出来ることは、それしかない』
「どう、やって…戦、うんだ」

呼吸が荒い。血も流し過ぎた。
もう…まともにお前の声も聴こえないというのに。

『何を死のうとしているんですか。貴女は化け物です。そして数多くの“人間”
の命を奪ってきた。なのに何故こんな敵に殺されるという真っ当な死を認めるん
ですか』
「真っ…当な、死…?」
『貴女は化け物。こんな軽い苦しみを認めて死ぬ事は許さない。そう──貴女を
殺すことが許されるのは、ヴィアトリクスだけです』
「………」

ヴィアの事を考えると、血が熱くなる。動悸が早くなり、脳が活性していく。
長く忘れていた気がする。いくら人として生きようが所詮私は化け物だ。
誰かと何かの血が混じった、混血種にしか過ぎない。
人として生きるのは平和な時だけだ。私は、そのことを忘れていた。

「私は…リベリオンだ」
「なんだ、これ…。リベリオンは何をしようとしているんだ」

もう一つの血を、目覚めさせる。
“もう一つ”の自分を受け入れたガーディアンだけが使える、禁術より生まれた
最後の力。

「リベリオンの髪が、金色に…」
「私を見ろキャメル、これが、本当の私たちの姿だ」
「タナトスの結界も効かない…!? なんだよこれ…!?」
「これが私の混血、雷帝の姿だ!」

全身に雷を纏い、髪は金に色を変わった。
この力こそ、ガーディアンという化け物が出せる最高の能力だ。
カラドボルグを拾う。今度こそ、ちゃんと掴めているようだ。

『リン』
「ああ」
「…お前は一体なんなんだ!!」
「お前と同じだよ。同じ化け物の一端だ」
「くそぉおおおお!!」
「カラドボルグ!!」

デバイスがぶつかるごとに、部屋に金属音が響く。
怒りと動揺に満ちたリザの剣の軌跡は、剣士としては失格なほど見えやすい。

「カラドボルグ、終わらせるぞ!」

早く終わらせなければ、また感覚を奪われる。やはりキャメルのロストロギアは
かなり上等な物なのだろう。
気を抜けばすぐにでもカラドボルグを掴めなくなりそうなほど強力だ。

「見せてやろう。カラドボルグの力を…400年間封印していた最強の形だ!」

金色の光と共に、長剣のカラドボルグが変わっていく。
その大きさ故に多大な魔力を喰う上に扱いが難しいこの型は、やはりこの混血を
発動させなければ使えない。

「モード、サイス!」
「なに・・・!? うわっ!」

デバイスに吹き飛ばされて、キャメルが壁に叩き付けられた。

「はは、懐かしいじゃないか、そのデバイス」
「そうだな。それよりも幾つか質問がある」
「…ボクが答えられる範囲ならいいよ」
「一つ、お前は“どちら”の味方なんだ?」
「…ボクは、アンヘル様の味方でありたかった」
「どういう意味だ」
「自分で考えなよ」

意味合い的には、結局キャメルはフリージアの味方なんだろう。

「二つ、フリージアの目的はなんだ」
「完全なる世界を創ること」
「完全なる世界?」
「悪いけど、ボクはこれ以上知らないよ」
「そうか。では最後の質問だ。…ガーディアンは、四人だけか?」
「機密事項に触れる為話すことが出来ない。質問を変えろ」
「……キャメル」

最後の質問をしたとき、NGワードに触れたのかキャメルの喋り方はまるで機械のようだった。
やはりお前たちは既に──

「哀れな」

この言葉しか、与えてやれない私を許してくれ…元同志よ。
そしてお前に私がしてやれることは、これしかない。

「安心して逝け、キャメル」

カラドボルグを振りおろそうとした瞬間、キャメルに黒い霧が覆った。
確かこれはリザの──

「……お前か」
「今、キャメルを失うことは許されないので」
「リザ、降ろしてよ…ボクは…」
「プランDに変更です。ヴィアトリクス様が予想以上に強い。それに、六課も攻
めてきた」
「ボクも行くよ」
「…少し休んでいなさい。私が部隊を引き連れ迎撃します」
「それでも」
「眠りなさい。私はもう…何も失いたくない」
「分かった。すぐに…助けに行く」

全く、追撃したいのはやまやまだが…さすがに長期戦は私もきつい。というか、
既に歩けないぐらい魔力と体力を消費している。
私はここで休憩するとしよう。ヴィアには申し訳ないが…私はお前みたいに強く
ないんでな。

「…くっ、…」

せめて壁際には行きたいが…もう、意識すら危うい。

「私も…すぐに助太刀に行くからな…」

だから少しだけ、休ませてくれ──





「ティアナ! 敵はっ!?」
「分かりません! とりあえず物凄い数です!」

六課が施設に突撃してすぐ、長い長い通路には数えきれない程のガーディアンが
押し寄せていた。

「なのはさん達はヴィアさんの後を追ったから、ここはあたしたちが食い止めな
いと!」
「分かってるわよスバル! いい、二人一組《ツーマンセル》でいくのよ!」
「フリードじゃさすがに狭いかな…キャロ! ボクが先攻する!」

なのは、フェイト、はやてを抜いた六課メンバーが、400年前の精鋭達相手に
奮闘していた。
ここで敗れれば、このガーディアンはなのは達を殲滅《せんめつ》しに行くだろ
う。なんとしてもそれば阻止しなければならなかった。

「いくよ、マッハキャリバー」
『All.right!』
「ここはあたし達が抑えてみせる!」





とても、寂しかった。
今更…あたしはそう感じてしまっている。
もっと悲しむべきなのに、もっと後悔すべきなのに…あたしは何もかも忘れて今
まで生きてきた。

辛かったこともたくさんある。
逃げたくなったこともたくさんある。
それでも生き続けた結果が“八神はやて”という幸せだった。

大好きで、大好きで…はやてが居ないことなんて考えられないくらいだ。
でも、ヴィアの事を思いだした時…あたしが生きてきた思い出全てが反転した。

「守らなきゃ」

あたしが…全部守らなきゃ…


「───」

ここは、・・・医務室?

「起きたか、ヴィータ」
「ザフィーラ、あたしは…どうなったの?」
「ヴィアトリクスを連れ戻す途中、お前は倒れたんだ」
「あたしは…」
「…本当は連れて行くなって言われてるんだがな」
「ザフィーラ…?」
「行くのだろう? 安心しろ、シグナムや主は俺が言いくるめてやる」
「性格、悪くなったな」
「仕方ないさ…大切な、家族の為だ」





「はぁ…、はぁ…!」

あらかた、片付いたな。
俺の周りには、血と死体が埋めつくされていた。
ざっと百人ぐらいガーディアンを倒し、先に進んでいる。

『次は、光闇《こうあん》の間です』
「…光と闇の間、か」

光闇の間とやらには、何も無かった。
ガーディアンも、ファッカも、誰も居ない。
休憩場のつもりだろうか。舐めているにも程がある。

「それにしても…」

光闇の間とは、よく言ったものだ。
この広い部屋は、丁度白い床と黒い床でくっきりと分けられていた。

「ヴィータ…」
『未練がおありで?』
「未練が無いといえば嘘になるな。ただ出来るなら、俺は──」
「ヴィア!」
「お前ら…!」

──なんで、ここにいるんだ。
…俺のだだ漏れの魔力が仇となったか。まあリンとかも俺が残した魔力残留を追
って来たらしいし、可能と言えば可能なのか。

「色々と聞きたいことあんねん! なんで一人で行ったんや!?」
「そうだよ、どうして!」
「ヴィアさんが悩んでるのは分かるけど、その時の為の私達でしょ…?」
「………」
「なんとか、言ってよ…」
「…なあ知ってるか? ここ、光闇《こうあん》の間って言うらしい」
「それがどうしたんや」
「足下見ろよ」
「足下…?」

床は、くっきりと光と闇で分けられている。

「眩しいんだ、お前たちが」
「眩しい?」
「ああ。これ以上、俺の決意《闇》を照らさないでくれ。本当に、鈍ってしまう」

お前たちの強さが、俺を苦しめる。俺を甘やかす。だから一人で来たのに…どう
してお前たちは…。

「そんなの、関係ないよヴィアさん…」
「優しいな、お前達は」
「そんなの、ヴィアだって」
「お前達は優しすぎるんだ。それが俺には、眩し過ぎる」
「…どうしても、一人で行くんか?」
「ああ。これは、俺の戦いだからな」
「なら、行ってええよ」
「はやて…!?」
「…はやて」
「でもな、これだけは約束して欲しいねん」

約束、か。
もう誰と何度約束しただろうか。そして俺は、そのいくつを守っただろう。

「もうこれ以上、誰も悲しませんといて。後…ちゃんと帰ってくることや」
「そうだね、それを約束してもらわないと…行かせられないよ」
「でも、でもヴィアが…!」
「いいんだフェイト。俺は、一人でも平気だから」
「でも…!!」
「俺は行くよ、必ず戻る」
「ヴィア…」

少しづつ、みんなの気配が遠ざかる。この先にきっと…アンヘルが居るはずだ。
覚悟は出来ている。絶対に、勝たなきゃいけない戦いなんだ。

「ヴィア!」
「…どうしたフェイト、まだ何かあるのか?」
「…えと、その…私ね、ヴィアの事好きだよ!」
「………」
「返事は帰ってきたら聞くから、絶対に帰ってきて…」
「…ああ、必ず」

だから、待っていてくれ。
全部清算して、俺は戻ってくる。…かなり驚いたけど、そういう気持ちには、ち
ゃんと返事しなきゃな。

「じゃあな」
「こういう時は、行ってきますだよ、ヴィアさん」
「…ああ、行ってきます」

全く。優しんだけど厳しいな高町は。
三人に別れを告げ、光闇を抜けた先は、ただただ広がる漆黒の空があった。


第十二話 約束 Fin

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