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「急に呼び出して、何かあったん?」
「あったとも。カリムの預言に、また新しい危険因子が見つかった」
「なんや、いい話しではなさそうやね」
「今回出た二つの預言には、二人の人物について記されている。ヴィアトリクス
・フロストリアと、アンヘルについてだ」

教会のカリムのオフィスにて、密やかに密談が行われていた。
それは、ヴィアが意識を取り戻す一日前のこと。

「彼らは約400年前の古代ベルカの人物であり、400年前に起きた事件を…
また掘り起こす人物でもある」
「400年? どこかで、封印されてたとか?」
「そうだ。400年前に決着が着かなかった彼らの戦いは、再び目覚める時に持ち
越されたんだが、アンヘルという男がやろうとしていることが問題なんだ」
「つまり、敵と味方に分かれるんか」
「そうだ。味方はヴィアトリクス、敵はアンヘルだ。ちなみにアンヘルの目的は
、世界滅亡とかいう無茶苦茶なものらしい」

確かに、今のご時世なにをやったところで世界を滅ぼすことなんてほぼ不可能だ。
ましてや、その計画を目論む者はアンヘルしかいない。

「無理、ちゃうかな。時空管理局がある限り、それだけには…」
「ですが私の預言にはそう書かれています。それに、アンヘルは400年前に滅
ぼす手前まで上り詰めたとききます」
「…でも、うちだけじゃ対処できへんよ」
「分かっている。今回のキーは、アンヘルがその計画を遂行するためにある物を
使うということだ」
「なんや、その物って」

モニターに映し出された画像には、青く光る一つの石があった。
神が生み出し災厄の種。

「…ジュエルシードだ」
「スカリエッティの時もそうやったけど、それはもう管理局が封印しとるはずやろ?」
「管理局にあるのは、元々のジュエルシードの半分しかないらしい。残りを持っ
てるのは、アンヘルだ」

管理局にジュエルシードを保管してあることを知れば、アンヘルは必ず管理局と
接触を図る。
その襲撃を回避すべく、八神はやては呼び出された。

「ジュエルシード…強力なロストロギアが関わった重大な事件だ。お前を呼び出した理
由は、分かるな」
「…また、機動六課を設立するんか」
「それしかない。やれるのは、お前たちしかいないんだ」
「私からもお願いします。たった一人の人間と戦う為に組まれた組織では、破壊
は止められません…」
「よく分かります。せやけど、今から集めたとしても…すぐには皆が集まるとは
…」
「今の所は呼べる奴だけでいい。既にフェイトとなのはには連絡を取った。すぐ
に来れるのは、なのはだけだ」
「分かった。皆にはうちから声をかける。六課の手続きやらなんやらはそっちに
任せるとして…他にも、連れてきたい人たちがおるんやけど」
「面子ははやてに任せる。早期から入る者と遅れてくる者のリストは、必ず寄越
すようにな」
「それで、ヴィアトリクス様のことだけど…」

今は病室で眠っているヴィアの処遇について、最後に話し会わなければならなか
った。
ヴィアを放置しておけば、ジュエルシードを持っているアンヘルに返り討ちにな
るかもしれない…ということを想定して、クロノたちはヴィアを機動六課に入
れることを提案した。

「ヴィアさんはなんて?」
「まだ分からないわ。でも、シャッハの話しによると、きっとこの話しを断るっ
て」
「そか。人には他人に譲れないプライドがあるんは確かや…でも、それを曲げても
らわなくちゃいけない時もある」
「だが、彼の能力ははやてやなのはたちより上だ。彼は…きっと一人で戦うと思
うよ」
「せや! うちに良い考えがあるんやけど」

万が一ヴィアがこの提案を受け入れなかった場合、前に起こした戦闘を口実に、
無理矢理六課に引き込むというものだった。

だが、その為には彼を納得させる必要がある。

「問題はそこや。話し合いはほぼ不可。なら、実力で通すしかない」
「その役目、私がやるよ」

オフィスに、また一人の人物が入ってきた。
それは、クロノに呼び出されたうちの一人。
茶髪に、長い髪をサイドポニーで纏めた少女は、入口で敬礼した。

「高町なのは一等空尉。ただいま到着しました」
「話しは聞いたな、やれるのか?」
「うん。説得も含め、ヴィアトリクスさんとの戦闘は私が一番いいと思うの」
「そうだな。実力的にはなのはかフェイトにしか頼めないことだからな…よし、
頼んだぞ」
「まかせて。それよりはやてちゃん、機動六課をまたやるってほんと?」
「せや。また色々と手間が掛かりそうな事件になりそうやな。J.S.事件が終わっ
て間もないけど、また頼めるか?」
「水臭いなぁ〜。言ったでしょ? 私たちは友達なんだから、困った時はいつでも
声を掛けてね? って」
「ありがとうなのはちゃん。じゃあ、うちはこれで」

仕事が一気に増えたはやては退室し、機動六課設立への準備に取り掛かった。
残ったなのはは、詳しい事件の詳細を聞く。

「ジュエルシード、か。最近よく見るなぁ…」
「因果だな。まったく、あまり思い出したくないんだがね」
「そうも言ってられません。皆様には…頑張ってもらわなければなりませんから」
「分かってますよカリムさん♪ こういうのは、私たちの仕事ですから」
「ありがとうございます。では、彼が起きたら連絡しますので」
「わかりました。じゃあ、わたしもこれで」
「資料は送っておく。じゃあ、気をつけてな」

古代遺物管理部機動六課が設立され、一年前に終わったJ.S.事件《ジェイル・スカリエッティ事件》という事件以来から解散された組織。
本当ならばもう二度とその組織に集まることのない者たちが集まるとき、今はまだ見えぬ先
の闇を打ち払うため・・・。

今、歴戦の勇者たちが動き始めた。





それから一日後、思い通りに作戦は実行された。

「アクセルシュート!!」
「甘い・・・! 氷天一閃!!」

無数に飛んでくる魔力弾をフルンティングで消し去る。
高町に襲撃された俺は“破壊しても大丈夫”な場所に移動した。

魔道師の訓練所らしく、廃墟ビルなどが多く見られる。

「なんで協力してくれないんですか!」
「・・・管理局だかなんだか知らないが、邪魔なんだ」

高町が撃っては消すというあまりにも無駄な事を繰り返しながら、高町は説得を続けていた。
なんてしつこいのだろうか。
彼女は、なぜそこまでしてまで俺なんかを仲間に引き入れたいのか・・・

「みんなで協力すれば、できない事もできるんだよ!?」
「俺は仲間なんていらない、俺が居たらだめだ」

みんなが不幸になる。
避けようのない戦いに、見ず知らずのお前たちを巻き込むわけにはいかないんだ。

「俺は、一人でも大丈夫だから・・・。一人でも、戦えるから」
「だめだよ。ヴィアさんを一人になんかさせない」
「お前は・・・お前たちは、自分たちの戦いをしろ」
「わかってくれないんなら、力ずくでも・・・」

高町のデバイスが、煙を上げて何かをリロードする。
いつか見た、黄金のデバイスのように。

「フルンティング、お前もあれできるか?」

『Nachladen!』

フルンティングは呼びかけに答えると、同じくカートリッジをリロードする。
自分が使ってみると、効力がすぐに分かる。
リロードすると、弾に入っている魔力が俺の中に漂い、デバイスに送られる。
弾は貰ってないから、初期で入っている六発だけだろう。

「ディバイン――」
「彼の者、黒き力を持って殲滅せよ、クライズ――」

互いの魔力が、互いを威圧する。
あの砲撃は直撃を喰らえばまずいことになる。

だが、魔力量も実力も、俺の方が上だ・・・!!

「バスターーー!!!」
「ヴェイン!!!」

高町の砲撃と、俺の砲撃が衝突する。
爆発音と爆風の中、俺は高町の方を見た。

「くっ・・・それだけの力があれば、たしかに一人で平気かもしれません。でも・・・」
「優しいな、お前は・・・」
「お人好しなんです。それは、貴方も一緒ですよね」

フレースヴェルグは、ディバインバスターを超え高町に直撃した筈だ。
防御魔法を使ったとしても、かなりのダメージは負わせたはず。

「一緒に、戦いませんか?」
「お前たちを巻き込むわけにはいかない」
「もう、巻き込まれてるんですよ? ヴィアさんと話して、戦って・・・貴方の優しさを知ったから、私はヴィアさんと手を取り合いたいの」

高町は、近づいてくると手を差し出した。
これを取れば、俺はまた誰かを苦しめる。
だが、とても暖かい・・・
高町と話していると、本当に味方なんだと、認識させてしまう。

「手は取らん。だが、協力はしてやる。もしも邪魔をしたら、すぐに出て行くからな」
「えーと、結局は・・・?」
「行くんだろ? 機動六課にさ」

地上に降り、歩き出す。
その隣を、高町が歩く。

「お前の馬鹿さと優しさに完敗だ」
「あはは、結構毒舌だね・・・」

一旦、教会に向かうことになった。
カリムたちにあれだけ大口叩いといて、今更戻るのは気が引けるが、仕方ない。





「信じていましたよ、ヴィア様」
「ふん。それより、様付けはなんとならないのか?」
「貴方は我々にとって御先祖様も一緒。だから、様は付けますよ」
「ほえー。ヴィアさんって、ベルカの偉い人だったの?」
「ただのジジイだ。カリムが大袈裟なだけな」

本当にハメられた。
カリムは俺が六課に入ることを確信してか、入隊許可を申請し、六課が完全に機能するまで教会の部屋を貸す用意までしていた。
なんか色々と文句が言いたいが、世話になる身としては言うに言えない。

「一応貴方は空曹長で、戦技教官として六課に配属されます」
「なんでもいいさ。だが、ある程度自分の意思で行動できるのならな」
「そこは八神はやてに聞いてくださいね」

ほぼ六課入りが確定した俺は、総隊長である八神はやてと、分隊長になるフェイトという女に会わなければいけない。

「部屋に戻る。何かあったら呼んでくれ」
「分かりました。よく休んでくださいね」
「またね、ヴィアさん」

外に出て、煙草を買わなければ。
あれ? 俺、金なんて持ってたっけ?

「ああ、こちらでしたか」
「シャッハか。どうした?」
「銘柄はよく分からなかったので、適当なのを3カートン・・・? 買ってきましたよ」

シスターは、煙草が詰まった夢の箱を三つくれた。
これだけのライフラインがあれば、当分は持つ。

「すまないなシャッハ。だがいいのか? お前はシスターだろ?」
「皆さんには内緒ですよ? 吸う時は外で見つからないようにお願いしますね」
「分かった。じゃあ、また」
「はい。夕食の時間に」

神よありがとう。
400年前頑張ったから、その報酬として神は俺に恵んでくれたのだろう。





「フェイト・T・ハラオウンです。よろしく」
「ああ。よろしくな」

夕食の時間、カリムのオフィスに呼び出されると、見知らぬ女性が居た。
再設立する時の隊長となるフェイトという魔道師らしい。

オフィスにはなのはの姿は無く、カリムとフェイトで三人だけだった。

「あの、年齢は? 私と同じぐらいに見えますけど・・・」
「年齢? あー、えーと、419歳ぐらいかな」
「ええ!? え、えと・・・その、私たちの大先輩にあたる方でしたか! すみません!」
「いや、いいよ。普通に敬語なんか使わなくても」
「えと、はい・・・分かりました」

肉体的に歳は食ってないが、どうやら精神面は中々爺臭くなっているようだ。
まあ、これだけ歳が離れていれば必然的にこうなるわけだが・・・
ちくしょう! 俺も「ええ!? 819歳!? 大先輩じゃないですか!」とか言ってみたい。
どこかに800越えの人はいないのだろうか。

それより、400年も生きていれば自分が人じゃないことぐらい分かってくるものだな。
これも、人生経験というものなのだろうか。

「ふふ。先輩通り越してご先祖様ですよフェイトさん」
「でも、さすがに失礼じゃないかと・・・」

ああ、帰りたい。
ベルカじゃなくてもいいから自室に帰りたい。
俺は自分の腕の皮膚を軽く引っ張った。
うん、まだ19だな。

「高町、フェイト、八神。隊長陣はしっかりしているようだな」
「うん、でも副隊長陣もすごいですよ。特にシグナムなんて、アギトとユニゾンするともうすごくって・・・えと、ヴィア? 平気?」
「あ、ああ・・・平気だ。そんなことより、俺は誰の下に付くんだ?」

平気だ・・・落ち着け・・・。
さっきのシグナムとかいう名前はきっと間違いだ。
管理局なんかに、居るわけがない。
きっと、きっとあいつらは何処か平和な場所で暮らしているに違いない。

「ヴィアは、隊長だってはやてが言ってたよ」
「隊長、か。部下は?」
「一年前に起きた事件のことで最近まで更正所に入っていた子たちなんだ」
「そうか。まあ、なんでもいいさ」

もう、食べ物が喉を通らない。
俺は食器を置くと、立ち上がった。

「すまない。残してしまった」
「平気ですよ。それよりお部屋にもどられるのですか?」
「ああ。もう、眠くてな」
「わかりました。おやすみなさい」
「おやすみヴィア」

二人はまだ雑談を続けるらしく、俺はすぐに部屋に向かった。

「はあ、疲れた」

窓際で一服しながら、忙しかった今日を振り返る。
高町襲撃、カリム達の作戦、フェイトの口から漏れたシグナムという名前。

「はあ、酷い一日だった」

漏れる溜め息は何度目か。
数える気力も無く、ただただ疲れた今日に終わりを告げた。





深い深い闇の中。
ただひたすら、一人で俺はそこにいた。
そして目覚めてからも、それは変わることは無いと思っていた。

だがどうにも、今現在俺が知り合ったこの世界の住人は、お人好しが多いようだ。
それは客観的な意見であり、俺はその善意の中に居る。

なかなか不愉快で、怖くて、でもそこに居たい。高町が掛けてくれた言葉には正直驚いた。

怖い、怖いんだ・・・その優しさを、壊してしまいそうな俺に。
だから一人が良かったのかもしれない。
でも、今更俺を放置しておくようなやつらでもない。
だから俺が変わるしかない。

俺が関わった全ての物に。
俺が関わった全ての者に。

降りかかる災厄は、俺が盾となり薙ぎ払おう。





「起きて、ヴィア!」
「だめだ、眠い」
「もうお昼だよ? ほら、起きて!」

フェイトによって布団を剥がされた俺は、その勢いで床に転がる。
仕方なく起き上がると、一服をするために窓際へ向かった。

「煙草、吸うんだ。未成年・・・じゃないもんね。399年前に成人になったんだもんね」
「あの、俺の幸せを奪う気ですかなフェイトさんや」
「ううん。もうおじいちゃんなのに煙草は体に毒かなーって思っただけ。別にいいんだよ吸ってもね? でも歳が歳だから・・・あ、ごめんね気にしてるのに。じゃあ私もう行くから、すぐにオフィスに来てね」

ああ、なんだろうかこの敗北感と虚しさは。
399年、か。なんてリアルな数字なんだろうか。

煙草を吸う気分でもなくなった俺は、消してすぐにオフィスへ向かった。





そういえば、今日は八神が来るらしい。
正確には、もう来ているんだが。あと一人、六課の副隊長になる魔道師も来ているとか。
扉をノックして、中に入る。

入った俺は、中に居た人物を見て動けないでいる。

「え・・・?」
「あなたがヴィアさん? うちは八神はやて、よろしゅうな!」

扉が閉まった。
ここはどこだ? なぜ、お前が居る?

「なにを、しているんだお前は」
「えと、昼食やけど・・・何か変かな? もしかしてベルカには昼食食べちゃいけませんみたいな規則があったりするんか?」
「主、そのような習慣はありませんよ。変な空気をつくらないでください」

目眩がする。頭痛も激しい。
血液が沸騰するように熱い。
思考がうまく回らない。
俺は目の前に居るシグナムを見て、ただ一言、こんなことを言っていた。

「シグナム、お前たちは今――幸せか?」


第三話 孤独な魔剣士 fin

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