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今から400年前───

ベルカと呼ばれた世界で一つの戦いがあった。
〜戦争とか名付けられるような代物ではなく、静かに世界を巻き込んだ、個人の
戦い。

大まかに含めて八人。
そんな少人数の争いが、誰も知らずに世界を脅かしたのだ。

ヴィアトリクス・フロストリア
アンヘル

その二人が、その戦いの主になった人物。
強大な魔力を持つその魔剣士達の戦いは、その時は誰も報われずに幕を閉じた。

ヴィアトリクスという世界を救おうとした魔剣士は、誰も知らない未開の地で眠
りにつく。
アンヘルという世界を滅ぼそうとした魔剣士も、同じ場所で眠りについた。

互いは、いつかまた再会する誓いを立てて。
そして時を超えて、400年後───

今は人々から忘却された、二人の私闘が、再び始まる────


─The Redeliions of Anthem─

─The First Of Fates─





400年前───私はこの地に眠った。
奴との戦いに負け、逃げるように自分で自分を封印したのだ。


───アルハザード───


それが、この空間の名前。
別名を失楽園と呼ばれているが、そちらはもう使われていないのだろう。

光りも射さない闇の世界。
音も無く、視界も見えない。

ある意味、地獄と言った所だ。
それを耐えに耐え抜き400年──ようやく、私は起きる事が出来る。

「人が再び過ちを侵せば、俺はまた現れる。人間に終焉をもたらす為に───」

そう、敗者は勝者に告げた。
私の事を深く、その心に刻み付ける為に。恐らく、あの戦いの後奴は死んだろう
から…もう、私の邪魔をする奴はいない。

今度こそ───今度こそ忌まわしき我が運命へ終止符を打ってやろう…。

既に終焉へ導く鐘は鳴らされた。
我は夜天の炎帝。
不滅を穿つ、心無き晴天の剣。





眩しすぎる日差しの中で、俺は目を覚ました。
そこは動植物が茂る純粋な森で、小鳥と風に煽られて鳴く葉鳴りの音しかなかっ
た。

たったそれだけの場所なのに、なんて気分なんだろうか。

400年振りに目を開けた俺にとって、太陽の光は拷問でしかない。

「シグナム、状況はどうなっている」

そう呟いたものの、誰の声もしない。
ああ──と、ため息とともに涙が出てくる。

これが、結果か。
これが、末路か。

そう、頭に言い聞かせる。
今は…独りなんだと。

「女々しいな。今までと同じだけなのに」

漏れた言葉に後悔は無い。
俺がやったことにも後悔はない。

なんという矛盾だろうか。
こんなにも清々しいのに、俺には孤独感が纏わりつく。

もう過ぎたことだ。
俺は頬を叩くと、懐から青い球体のデバイスを取り出した。

「お前に触れるのも、久しぶりだなフルンティング」

懐かしき相棒を、優しく握る。
仄かに感じる魔力の鼓動が、400年前の自分を思い出させる。

「それにしても…ここは一体どこだ…?」

ベルカではないのは確かだし、アルハザードではないのも確かなようだ。
あそこは自然は無いし、ベルカに戻ってきたとも考えられない。

ならば、目覚めると同時に他世界に飛ばされたと推測するのが妥当だろう。

「まずは、この世界の状況を知らないとな」

そう、初めは歩くことから始まる。
倒れていた場所からようやく一歩踏み出すと、俺は何処かも分からない森をさ迷
いはじめた。

歩いても歩いても、聞こえてくるのはやはり森の声。

猟銃の音も、人の足跡も、焼け付いたキャラバンの跡すら…何もない。
いやはや、さすがにここまで未開の地だとは思わなかった。

「人の跡は無いんだが…目障りな羽虫がいるな」

一瞬で後ろを向き、自分の背後1mの低空で飛んでいる何かを掴む。
生物だったら潰れてしまうので、優しく、壊さないように。

「…これは…」

機械の虫だった。
手の平でもがくそれは、単独や群れで行動する観察用の機械蟲に見えなくもない


「微かにする魔力の気配。囲まれたか」

その蟲を握り潰すと同時に、木の陰や空から同じ蟲が大量に遅いかかってくる。

「ちっ…いつのまにこれ程の量が…」

近付いてくる気配は無かった。
ならば、何らかの方法で転移してきたのは間違いないだろう。

ならば、この近く“誰か”が居る。
味方なら良し。
敵ならば斬る。

俺は、フルンティングを機動させて走り出した。

「この先か…」

森を駆け抜け、出口らしき場所に差し掛かると、やはりそこには人がいた。

「女? 子供か…」
「貴方は、誰?」

紫色の長髪に、黒いドレスを着こなす少女は、その深い瞳を光らせこちらを見て
くる。

「対異世界対抗勢力組織カーディナルに所属するヴィアトリクス・フロストリア
だ…と言っても分からんか」
「分からない…敵なの?」
「そちらから危害を加えなければ攻撃はしない。無論…力の差は分かっているよ
な?」

少女は頷くと、魔法陣を展開してその中に先程の蟲たちを封じ込めた。

「私はルーテシア・アルピーノ…。この第34無人世界マークラン第一区画に済
んでるの」
「マークラン? 聞いたことがないな…ちなみにルーテシア、ベルカという世界に
行く方法はあるか?」

ルーテシアは首を横に振った。
どうやら、ベルカへの行き道は分からないらしい。

「ベルカには、絶対に行けない」
「何故だ。封印でもされているのか?」
「ベルカは、300年前に滅びた」

300年前───?
そうか、俺は300年以上も眠り続けていたのか。

それだけあれば、世界が崩壊する何かが起こっても仕方ない。

「…そうか。ベルカは滅びたか…」
「貴方は、何者?」
「俺は、しがない魔剣士だよ。そう…ただの、な」

俺達が守った世界は、無い。
ならば、ベルカに帰ることはやめだ。
一刻も早く、奴を探し出さなければ…。

「ここは無人世界だったな。文明に栄えた世界は知ってるか?」
「ミッドチルダという世界は、異世界を纏める時空管理局という組織があるの…
そこなら、ベルカについて色々と調べられるわ」
「そうか。案内してくれないか?」

ルーテシアは、森を抜けた更に奥に歩いていった。
仕方なく、着いていくことにするが、いまいち表情が掴めない子だ…。

「…フロストリアさん」
「ヴィアでいい。長いからな」
「…ヴィアさんは、ベルカの人なの?」
「ああ、ベルカは…俺の故郷なんだ」

たわいもない話をしている内に、小さな家に着いた。
中に入ると、また紫色の長髪の女性が現れた。

「ただいま、お母さん」
「おかえりなさいルーテシア。そちらの方は?」
「森で倒れてたの。インゼクトに偵察に行かせてたんだけど…悪い人じゃないみ
たい」
「そう…何故、倒れていたか憶えていますか?」

俺は、淹れてもらった紅茶を飲みながら状況を説明した。
神妙に俺の話を聞く彼女は、そこそこの知識はあるらしい。

「では、そのアンヘルという魔剣士の復活と同時に貴方が目覚めたとするならば
、既にその人は違う世界に居る可能性が高いわね」
「ああ。奴が復活しているならば、すぐにでも追いたい」
「…分かりました。アンヘルを放っておいたら、世界が危ない、と…」
「勿論だ。奴はあらゆるロストロギアを駆使して、世界に対して復讐するだろう

「ルーテシア。今の話を聖王教会のカリムさんに」
「…分かった」

ルーテシアが通信機器でメールを打っている。
先程の内容を、聖王教会とやらに送る気だろうか。

「すぐに連絡が来るでしょう。今日はもう遅いですから、泊まってくださいね」
「分かった…すまないな、迷惑を掛ける」
「私は色んな方のお世話になりました。だからこんな私でも、誰かの役に立ちた
いんですよ、ヴィアトリクスさん」
「ヴィアでいい。アルピーノ」
「私も、メガーヌでいいですよ」

異世界に飛ばされて不安だったが、親切な人に出会えて良かった。
魔力もあまり使用できない状況なのに、戦いになりたくはなかったからな。

「お部屋は…どうしましょう」
「私と同じ部屋でいい」
「いいのか?」
「うん…そのかわり、ヴィア兄さんって呼ばせて」
「構わない…昔にも、お前みたいな子がいたよ。その子は明るくて口が分かるか
ったけどな」

話が一段落着いたところで、疲れているのか眠たくなってきた。

「兄さん…眠いの?」
「でしたら、二階にルーテシアの部屋があるので、寝てて構いませんよ」

部屋まで案内してもらうと、すぐに就寝した。
ベットはルーテシアが使うから、床に倒れるかたちになる。

明日からはまた忙しくなりそうだ。
もう、あの闇の中にはいたくない。何も無くて、何も聴こえなくて…独りぼっち
のあの世界には。

「おやすみ。ヴィア兄さん…」

その一言を最後に、俺は深い眠りに落ちた。





「お久しぶりですメガーヌさん。先日のメールの件でしたら、私も少々気になる
ことがあります」
「予言…ですか?」
「はい。しかも二つ。予言につきましてはそちらに資料を送りましたので後ほど
見てください」
「分かりました。彼の方は?」

モニターに写し出された金髪の女性は、焦ったような表情でその言葉を口にする


それは災厄か、希望か。

「彼は、我ら聖王教会に一時的に保護します。その後のことは…まだ分かりませ
ん」
「では、彼は迎えがくるまでこちらで保護します」
「そちらにはシスターシャッハが行きます。くれぐれも、彼を炎帝に接触させな
いで下さい。…彼には、まだ炎帝に勝つ力はありませんから」
「分かりました。では、後ほど…」

まだ早朝。
これから起きる災厄を予期していたかのように、世界が動き始めた。

彼は…一体何者なのだろうか?

そんな疑問が浮かぶ。
話しによれば、古代ベルカに在った組織の人間であり、世界を滅ぼそうとしたア
ンヘルという人間と戦ったことだけ。

あんな省略した説明では、彼が本当に味方なのか分からない。
もしかしたら、彼がアンヘルなのではないのだろうか…。

そんな事さえも、頭を横切る。

「いけない。朝食を用意しないと…」

今は、そんな事を考える暇はない。
スカリエッティ事件を終えてすぐなのに、またこんな大きな事件が来るなんて…
どうも、ミッドチルダはあまり静かな時はないようだ。
特に、彼女たちは。





またも、鳥のさえずりで目を覚ました。
身体には、身動きが取れないように何かがくっついている。

鎖か? 手錠か? 魔法拘束か? いや…俺の身体にくっついているのは、ベットで
寝ているはずのルーテシアだった。

「兄さん…」
「…しょうがない、剥がすか」

抱き付いているルーテシアを無理矢理剥がすと、俺は下へ降りていった。
昨日は早く寝過ぎた為か、まだ日が登って間もないにも関わらず寝覚めは良かっ
た。

「おはようございますヴィアさん」
「おはようメガーヌ」
「聖王教会と連絡が取れました。午前中に教会の騎士シャッハが迎えに来るとの
ことです」
「分かった。短い間だが世話になった」
「いいんですよ。貴方は、ルーテシアの大切な義兄ですから」
「まだ会って一日も経ってないのに義兄、か…」

ルーテシアを見たとき、俺は自分に近いものを感じた。
近い、とは言いにくいが…彼女には、少しながら闇を感じた。

だがそれと同時に、何か暖かいものも感じる。
無表情ながら、心だけは色んな顔を持つ少女だと、俺は感じていた。

「それほど貴方の事が気に入ったんでしょうね。あんな子ですが、本当の妹だと
思って接してあげて下さいね」
「そうだな…」

それから、朝食を食べメガーヌと雑談を楽しんだ。
400年前のベルカは、まるで昨日のことのように思いだしてくる。
聖王教会から来ましたシャッハ・ヌエラです。メガーヌさん、いますか?」
「ええ。入って下さい」

ドアをゆっくりと開けて入ってきたシャッハは、俺の顔を見るなり頭を下げてき
た。

「僭越ながら不肖このシャッハ、ヴィアトリクス様の御迎えにあがりました!」
「ああ…ご苦労様。それより頭を上げろ、俺はお前の上司でもないんだぞ」
「聖王教会は古代ベルカの意思を継いで創られたようなもの。ですから貴方様は
我々の御先祖様に当たるものなのです」
「…まあ、400年以上生きてるしな…。だが御先祖様って…」

びしっ、と直立し、その瞳を反らすことなく見てくる。
まあ、神様みたいなものなんだろうなぁ…俺って。

「じゃあ…行くか」
「はっ! ミッドチルダ、聖王教会へは転送機器を使えばすぐですので」
「メガーヌ、世話になった。ルーテシアにも…よろしく伝えといてくれ」
「ええ。分かりました」

身支度をして、外に向かう。
二階を見上げると、窓際にはルーテシアの姿があった。
手を振って、見送ってくれるルーテシアに別れを告げる。

ミッドチルダ、か。
きっと、ベルカより更に文明が発達した場所なんだろう。

なにせ“古代ベルカ”より300年以上の後の世界だからな。

「ヴィアトリクス様。教会に着いたら、騎士カリムに会ってもらいます」
「カリム?」
「はい。聖王教会の最高責任者といいますか…」
「分かった。それより、あんた煙草持ってないか?」
「煙草? いえ…持ってませんが…」
「そうか…」
「煙草は身体に毒ですよ、ヴィアトリクス様」

そうは言われてもね。
ベルカに居た頃は吸っていたが、事件が起きてからは全く吸えなくなってしまっ
たから、一刻も早く吸いたい。

「まあ、そんなことよりも…俺はこれからどうなる?」
「それは…カリム様が直接伝えます」

ミッドチルダ、聖王教会、時空管理局…俺にとってはどれも見知らぬ存在であり
、敵か味方かも分からない。
ベルカの意思を継いだとか言っていたが…そのベルカさえ、俺にとっては敵だっ
たんだ。

俺は…一体誰を信じて、何をすればいいのだろうか。

400年間、ずっと考えてきたことだ。
初めの100年は、アンヘルのこと。
200年目は、守護騎士たちのこと。
300年目は、ベルカのこと。
400年目は、もう何もわからなかった。

まだ分からない…だから、これからの状況を見て決める。

転送装置の前まで来た。
ここを潜れば、俺の400年前の続きが始まる。

シグナル、ヴィータ…俺は、一体どうすればいいかまだ分からない。
でも…お前たちに繋いだ想いは、俺が守り通してみせる。

俺は俺の使命を果たす。
だからお前たちは、俺の願いを叶えてくれ。

お前たちは今───幸せにしているのか?


一話 始まりの鐘 To Be Next...