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家族も、友達も、仲間も。

たった一つの真実によって引き裂かれた想い。

何を見ればいいのか。
何を探せばいいのか。

其々の力を信じて歩むのみ。

動かなければ、何も分からない。

たとえ見つけた物が紛い物でも、本物を目指して歩きだせ。

その禍禍しい運命に別れを告げて、その血肉で隠してしまおう。

そう、たとえ仲間が居なくなっても、忘れても…想いの欠片はその胸に。


夜天に舞う曉、今日も一段と耀きを増して。



──The Second Of Fetas──



泣いているのは誰?
探してみろ、その胸に。

きっと答えはすぐそこだから。

「今…日は…お、れの、敗け…だな」

ごふ、と吐血しながら武器を手放す少年。
黄昏に啼く少年が、倒れた少年に駆け寄る頃にはもう手遅れ。

大人たちがやってきて、いつの間にかに二人を囲む。


「お前がやったのか」


そればかり。
少年は嘆きながら、搬送される友達を見送った。

後悔の連続。
自分を締め殺したくなるような程の過ち。


「なに泣いてるんだよ、お前」


夜中、満月が余計に光り耀いていた日。
一ヶ月振りに聞いた友の声。
何事もなかったように、彼は笑っていた。

夜天に浮かぶ少年は、いつものように大鎌を抱えて、此方に向ける。


「あのゲーム、もうやっちゃだめだってさ」

「え───?あ、分かった」

「分かった、じゃない。どうせ出来ねぇなら、らすとげーむといこうぜ」


大人から駄目と言われているのに、第一病み上がりのくせに、リターンマッチを
仕掛けてきた。

全く、とんだ笑い話しである。


「分かった。お互い本気で」

「じょうとう。行くぜ、アンヘル」

「行くよ…ヴィア」


その後、近くの森が焼け野原と凍りの国と化してしまい、こっぴり叱られたのだ
った。







「あれ───あたし、生きてる?」


朝。
日光の暖かさによって目を覚ますヴィータ。
ギシギシと今にも壊れそうなスプリングベッドを降りて、辺りを見渡す。

ここは何処だろう?
いくら考えても、何も分からなかった。
暫く悶々としていると、見知らぬ女が入ってくる。


「む…起きたか」


くしゃくしゃとあたしの頭を撫でて、カーテンを開いた。
不思議と嫌な感じはしない。

女の容姿は、スタイルがよく、目立つピンクの髪。
それをポニーテールと言われる結び方をしていた。

所謂、絶世の美女である。


「あんたは?」

「シグナムだ」

「名前じゃない」

「私は主ヴィアの守護騎士だ。お前と同じな」


きっと夢でも見ているんだろう。
そう思って、あたしは硬いベッドにまた寝転ぶ。


って。


「違う!」


何を暢気に寝ているんだあたしは!
殺されたんだぞ?あのムカつく男に!


「ヴィアは?ヴィアはいるのか?!」

「主なら下だ。行ってこい」

「分かった!」


あたしはベッドを跳びはね、直ぐに階段を走って降りていく。







新たな決意を胸に決めてから、俺は丸一日寝続けたらしい。
起きたのは眠ってから翌日の昼だった。

狭い居間に行くと、シグナム、シャマル、ザフィーラの姿があった。
きっとヴィータは起きていないのだろう。


「ヴィア、私たち…どうなったの?」

「あぁ、まずはそれから聞かせてもらおう」

「お前たちは───」


俺はロッズの研究室を侵入した所から、瀕死の状態だった三人を死なせない為に
夜天の魔道書の守護騎士プログラムに生まれ変わらした事を鮮明に話した。


「では、俺たちはデバイスのプログラムになったのか?」

「あぁ、そういう事になる。勝手にしてすまなかったな」

「気にしないで。私たちは貴方に助けられたんだから」


シグナムがヴィータの様子を見に行ってから十分、二階が騒がしくなったと思っ
たら、ヴィータが急いで階段を降りてくる。


「ヴィア!」

「おはよう、ヴィータ」


ヴィータに喋らさないで椅子に座らせ、俺はヴィータにも説明する。


「───ということだ。」

「じゃあ、あたし…人間じゃないんだ」

「あぁ…」

「いいんだ。あたし、ヴィアを護る騎士なんだろ?」


俺は頷くと、ヴィータは嬉しそうな顔で話を始めた。


「あたし、ヴィアと初めて話した時、夜天の氷帝だって知ってただろ?あれさ
、昔…ヴィアの任務の報告書拾って知ったんだ」

「報告書?」

「うん。ヴィアトリクス・フロストリアが敵部隊を全滅させたってやつ、それ見
て憧れてたんだ」


やがてシグナムも降りてきて、全員が揃った。


「そうだったのか、また変な物拾ったな」


ヴィータの髪をくしゃくしゃと撫でて、作った朝食を置く。
スープ以外は少し冷めていた。


「よろしくね、ヴィータちゃん」

「あぁ、よろしく」


みんな腹が減っていたのか朝食を直ぐに平らげると、シャマルがヴィータにデバ
イスを渡していた。


「それは?」

「私たちはこれから戦う事になるんだから、ヴィータちゃんも武器を持たなきゃ


「貰っていいのか?」

「もちろん」


守護騎士の四人は、元々の魔力に俺から供給される膨大な魔力を加算される。
ヴィータも十分に戦えるだろう。

これで全員戦えるようになったわけだが、それでもまだ心配だった。
ザフィーラもシャマルもヴィータも、戦闘が出来るとはいえ、敵はカーディナル
とアンヘル達だ。

怪我だけではすまないだろう。
だからこそ、俺の魔力に掛かっている。
俺の魔力が尽きれば、全滅だ。


「これからどうするんだ?」

「アンヘル達を探す」

「どこへ?」

「それは、本部に決まっているだろう」


腹ごしらえも済み、互いの状態も完璧なので、俺達はカーディナル本部にあるア
ンヘルの任務履歴やディメンターが皆持たされる発信機を表示するモニタールー
ムまで行く事になった。

恐らく、監視カメラに映った俺とアンヘル達を見れば、此処にいるメンバーは全
員反逆者だ。

幸い、人避けの結界があった為に直接見られてはいないが、罪状は大量殺人とい
ったところだ。


「行こう、カーディナルへ」


全員頷き、俺達は廃屋を後にする。
飛行が馴れていないヴィータはシグナムに抱えられていた。







目の前に、蒼銀に輝く魔石がある。
誰もが手に入れたがるような、圧倒的な力。

俺はコレを手に入れて“失楽園”を開く。

失楽園とは、今より昔に生まれた魔力が充満した小世界らしい。
世界とも呼ぶには狭すぎるが、元々其処は文明に栄えた世界だった。

だが、ある日一つの魔法が生まれる。
超広範囲空間消滅魔法、アポカリプス。
たった一つの魔法により、そこは永遠に閉ざされた異界となった。

耀きを失った世界。


ジュエルシードの魔力を取り込めば、俺は誰にも負けない力を手にいれる。
あいつにも負けない、最強の魔力。


「彼女は何処へ行ったのかわかるかい?」


ロッズ・カルンが、気味の悪い笑みを浮かべて歩いている。
早々に殺したいのだが、今はこいつを失うのはきつい。


「リベリオンなら、カーディナル本部の俺達の資料を抹消しに行っている。──
─多分、もう帰ってこないだろう」


それを言うと、ロッズはまた書庫の奥に引っ込んでしまった。


「───人間なんか、消えればいいのに」


蒼い光りを否定するような真紅の瞳が、虚ろに闇を飲み込む。
怒りもなく、悲しみもない。

ただ在るのは、虚無感。

どうしようもない運命を無理矢理曲げるには、全てを飲み込まなければいけない
んだ。

光、闇、夢、希望。
全てを打ち砕き、己の幸福へ。

薄暗い部屋で、ただひたすらに涙を流す魔剣士がいた────。







「シャマルとヴィータ、シグナムは待機。俺とザフィーラで突入だ」


フルンティングを構えながら、俺とザフィーラでカーディナル本部へ侵入した。
自棄に静かな廊下を、ゆっくりと進んでいく。

やがて、他の部屋とは違う作りの扉が見えてくる。
ここが、“監視室”である。


「そこまでだ、夜天の氷帝」


監視室には、AC(アンヘルコピー)が約二十人程、剣を構えて立ち尽くしている

その中心には、リベリオンの姿があった。


「アン…ヘル?」

「惑わされるなザフィーラ、所詮こいつらはコピーだ」


動揺しながらも、しっかりと戦闘体制を取るザフィーラ。
リベリオンはそれを見て嘲笑うと、奴が放った火が報告書の山を燃やしていく。


「お前ッ!」

「安心しろ。私達は逃げることなどしない、ただ此処にある私達のデータはカー
ディナルの奴等には不要なもの…」

「ふん。大方また人避けの結界か。いいだろう、戦ってやるよ」

「焦るなよヴィアトリクス。私はお前にしか用はない」

「ザフィーラ!」


数人のACがザフィーラを取り囲む。
俺はフルンティングをACに向けると、ザフィーラは拳を俺に突き立ててきた。


「な、おいザフィーラ」

「お前はアイツの相手だ。俺はこいつらを倒す」

「大丈夫なのか?」

「愚問だな。紛い物に遅れを取るほど弱くはない」

「大した根性だな犬。さてヴィアトリクス、貴様はこちらだ」


リベリオンは俺を誘導するように、室外へ歩いていった。


「ヴィータたちを念話で呼んだ。直ぐにくるから、それまで頼んだ」


ザフィーラを監視室に残して、俺はリベリオンを追って後にした。







「そろそろ知りたくはないか?私達がカーディナルを裏切った理由をな」


本部の屋上で、二つの影が対峙する。
こんな険悪な雰囲気にも関わらず、空はぞっとするようなまでの青だった。


「それを聞いて、お前は答えてくれるのか?」

「前にアンヘルが言っただろう。お前にも知る権利がある、と」

「じゃあ教えてもらおうか、その理由を」


リベリオンは鼻で笑うと、ゆっくりと何も無い青空を見上げて話しだした。


「昔。カーディナルが創設される前から戦争が続いていたのは知っているだろう
?」

「あぁ。世界を相手にするんだ、状況が厳しくなってきたから俺達の組織が組ま
れたんだろ?」

「そうだ。だがな、高々人間の群れを訓練しただけで他世界の魔法兵器、物理兵
器には及ぶわけもない。だから、とある禁術をルーカスは使ったんだ」

「───禁術?」

「Cross Samners Weapon(クロスサマナーズウェポン)。通称CSWと呼ばれる禁
術だ。大昔に封印されていたんだがな、状況が状況だから開封したんだ」


穏やかに空を見上げていたリベリオンは、唇を噛み締めて俺を見た。
憎悪と嫌悪しか持たないその漆黒の瞳で。


「キメラ(合成生物)なんだよ、私達ガーディアンは」

「な──に?」

「全く、呆れるな。自分達を護る守護者として有力な魔獣や魔道士のDNAを生
まれてもいない子供に移植する。そうして生まれたのが、生まれた時から力を植
え付けられた化け物。ガーディアンだ」


クロスサマナーズウェポン?
聞いた事もなかった、そんな言葉。
昔から自分達は街に住む市民とは特別な家系に生まれたものだと信じていた。

なのに、俺達は誰かも分からない化け物や魔道士の血を交ぜられて生まれてきた
───化け物。


「さぞかしショックだろうなぁ…夜天の氷帝。両親は誰?生まれる前に担当に
なった科学者だろう?ふふ…良いわその顔。良い歪みだ」

「───くそ…!」

「だからこそ、何も知らない仲間の為に、私達はこの世界ごとガーディアンの存
在を消す」

「…なんだと」

「憎いんだよ。ルーカスが、科学者が、人間がッ!その溢れ出す欲の過ちに気付
かずに己の身を滅ぼす、だから───皆死ねばいい」


確かに俺達をこんな化け物として創り出したのは人間かもしれない。
でも、俺は今まで“人”として生きてきた。
部下も、仲間も、家族も。

全部、人として関わりあってきた。

だから、俺は──────


「────違う」

「なに?」

「人はただ、生きる術を見い出しただけだ」

「人間がッ!どれだけの罪を侵したか分かっているのか?!」

「違う!確かに俺達を創り出したのは人間だ!だけど、今まで俺が過ごした“人
”としての時間は、そんな醜いものじゃなかった!!」

「つまりは───お前は真実を知りながらも、人間を味方するというのか。その
人間にさえ、見捨てられているというのに」

「あぁ───世界を救う為に、この世界に反逆する。そう、決めたから」


俺はフルンティングを構えた。
無論、リベリオンも己の武器を構える。
金色に耀く、太陽の大鎌。


「お前の事は好きだったんだがな…ヴィアトリクス」

「俺もお前の事は好きだった。殺したい程にな」

「───貴様は此処で消えるんだ。夜天の氷帝」

「俺はアンヘルに会わなきゃいけない。悪いが───死ぬのはお前だ」


疾走する。
リベリオンも軽く笑いながら、こちらに向かってくる。


「はぁあッ!」


一撃。
振られた大鎌をガードして、反撃する。
リベリオンは軽いステップで後退すると、また斬撃を加えてくる。

一、二、三と華奢な身体で身の丈程ある大鎌を振り回してくる。

俺は氷壁を作りだして盾にして、斬撃を防ぐとリベリオンに足払いをして投げ飛
ばす。


「雷颯(ライソウ)、その罪を貪り糧とする。汝の名は嫉妬。不滅を穿つ、金色の
一閃───」


リベリオンのデバイスが槍に変わった。
そして、夥しい程の魔力が刀身に纏わりついていく。

やがて膨大な魔力は紫電を持ち始めた。

一目で分かる。
奴は本気だ。恐らく、あの一撃を喰らえば俺は死ぬだろう。

すかさず俺もフルンティングに魔力を集中させるが、身体が重い。
きっと、シグナム達が全員同時に戦ってるから魔力消費が激しいんだ。





「カラド───ボルグッ!!!(真実を穿つ金色の槍)」





一閃。
地面を砕きながら一瞬で突き進む魔槍が、俺に向かってくる。

間に、合わない。

そう思った直後、俺の前に現れたのは─────




「シグナムッ!!!」

「主!ここは私が───!」


咄嗟に、横からレヴァンティンを突き出して俺を庇うシグナム。
リベリオンの一閃を受け止めきれなかったシグナムが、俺の横に吹っ飛んでいく



今なら、シグナムが相殺した状態のリベリオンの魔力量なら、今の俺でも越えら
れる───!


「ふざけるなよ、貴様ぁぁあ!」


「祖は永遠に君臨する孤独の王。祐玄に連なる断罪の闇。
その孤独の夜天に示すのならば、我が問いに応えよ───!



俺は魔力を刀身に集中させた。
すると、フルンティングが黒いオーラを纏う。
この剱は、夜天を切り裂く王の剱。


「───ヴァリアントダークネス!!!(夜天を貫く変格する闇)」

「───カラドボルグ!!!!」


両者の刃が触れ合った。
こんなすがすがしい青空の下、私達は自分の存在を掛けて争いあっている。

こんな戦いは嫌だから、だからこそ剣を交えなければいけない。
逃げてしまえば楽なのだけど、そうしてしまえば…私はこの歩んで来た人生に、
傷を付けてしまう。


「───あ、───」



まるで、石につまづいたような声。
黒いドレス、白い腕。
その全てが真っ赤に染まった頃、ようやく気付いた。

人がガーディアンを創り出したのも、自分達が生きる為。
私が人々を抹消しようとしているのも、自分が生きる為。

ただ、やる事が違うだけ。

先程まで青かった空は、一転して紅くなっていた。
段々と薄れていく意識。

疲れて動かない華奢な腕。

そして───粉々になった私のデバイス。


「───アン、ヘルは……神、種…実験所だ」

「───すまない」


戦いに勝ったヴィアが、私を見ながら言ってくる。
そして私は、気にするな、とだけ言って見送った。

去り行く背中。
元々死ぬ事は分かってて此処に来たんだ。後悔は無い。
狂ってしまいそうな心を押し殺して、ゆっくりと瞼を閉じた。



その時───私は初めて、死ぬ暖かさを知った。


中編2 fin