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多くの裏切りから見つけ出した自分の正義。
多くの戒めから生まれた憎しみ。

一人の魔剣士は自分の為に。

もう一人の魔剣士はみんなの為に。

例え見い出した道が違くても、自分の進む道が正しき正義であるように。

祈りながら、戦いながら、互いに剣を交えて探してく。

何かの為に────


リリカルなのは~夜天に舞う反逆者~









なのは達がはやて達と出逢う400年前、今はまだ、はやてと出逢っていない夜天の
書の守護者たちの物語。

その昔、ルーカスと言う世界は全世界の頂点に君臨する科学力を誇っていた。
物理形の兵器から魔法まで、様々な武器、人々が楽に生活する為の道具など、あ
りとあらゆる物を生み出す程の技術。

だが、その魅力的過ぎる力はやがて全世界から妬まれ、奪われようとしていた。

天多にある世界を的に戦争が勃発したのだ。

手に負えないルーカスは、魔法兵器も物理兵器でもなく…他の技術を編み出した


古来より禁忌とされていた技術、キメラ(合成生物)である。

ルーカスの科学者たちは様々な魔物、有力な魔法使いなどの遺伝子を複合させて
、まだ産まれてない人間の子に移植する。

そうして産み出されたのが“ディメンター”(魂狩者)である。
彼等は人間の姿をしているものの、その潜在能力は計り知れない。

そのキメラの技術を使ってから二十年、漸くして誕生した最高峰のディメンター
“ヴィアトリクス”、“アンヘル”。

この二人の誕生により、築かれてきた歴史は終末を迎える。








~ルーカス/フォニムタウン~

蒼い瞳に、巨大な鎌を担ぎながら、静かに下水道を走る。


「こちらはCODE/V、NO/666、ヴィアトリクス・フロストリア。目標到達ポイント
まで一分で着く。今回の任務は目標の全滅、捕虜は無し…で、いいな?」

『了解。セカンドフェイズ以降の連絡は緊急事態以外は拒否をする。CODE/Vは作
戦通りに遂行』

「…分かった。通信を切る」

通信がブツ、と切れる。
下水道は生臭くて嫌だが、任務の為なら仕方がない。

「…いくか」

ぴたりと止まって、上を見る。
マンホールも無くただの天井に過ぎないが、この上には今回の目標のアジトがあ
る。

そこを下水の壁ごと切り裂いて侵入、後は一人残らず抹殺すればいい。

大鎌を持ち、上に向かって大きく振る。
下水のコンクリートはバターのようにバラバラになって、今度は違う素材のコン
クリートが表れる。

「…フロスト・バニッシュ!」

俺が最も得意とする氷結系魔法。

というか、それ以外はほぼ使えない。

コンクリートを凍らして、その氷をまた魔法で砕く。
穴が空き、光が見えると同時に突っ込む。

「動くな。ディメンターだ」

周りを見ると、此処は小さい倉庫らしい。
他に繋がっている部屋は見当たらないから、恐らくここに居るので全員だろう。

明らかに動揺している他世界のスパイは、逃げ惑う。
それを見て、近い奴から殺していく。

命請いする奴もいれば、銃を乱射してくる奴もいる。
まあ…金を出そうが何をしようが殺すことには変わりはないのだが。

「こちらCODE/V。本日の目標、他世界スパイ七人の死亡を確認。死体の処理を頼
む」

『お疲れ様です。本部に帰還して下さい』

「迎えは?」

『無いです』

溜め息を付いて通信を切り、辺りを見回す。

「…帰るか」

部屋のドアを開く直前、何かが揺れる音がした。

「誰だ?」

ガタガタと揺れる音は木箱の中からする。
蓋を壊すと、大きめのアタッシュケースがある。

「人…じゃない?」

手で持ち上げてみても、かなりの振動がくる。

「………」

魔力を両手に溜めながら、ケースを開ける。

「これは…魔道書か」

中から出てきたのは古びた魔道書だった。
強い魔力を秘めた…どことなく不吉な本。

「名を…喚べ…」

「ん?」

「名を…喚べ」

「なに?!」

突如光り出した魔道書。
それを投げ棄てて、倉庫を避難しようとするが時遅く…光りに捲き込まれながら
意識を失った。







「あのバカはこの病室か?」

殺風景な白い廊下に、これまた白いコートと、長過ぎる程の剣を持った男が扉を
警備している二人に問い掛けた。

「はっ…。それで、バカ…といいますと?」

「全く真面目な奴等だ。ヴィアのことだ。此処か?」

「はい。ですが今は…」

「構わん。下がっていいぞ。もう夕飯の時間だしな」

二人の警備員は敬礼をして、和気あいあいと喋りながらこの場を去っていく。
ロックを解除して中に入ると、退屈そうな顔で寝転がる男が一人。

「ん、アンヘル?」

「ああそうだ。全く、手間を掛けさせるなよ」

ベッドの横にある椅子に腰掛けて、軽く頭を小突く。

「あそこでガタガタ揺れる木箱があるなら詮索するのがディメンターの役目だろ
?」

「ふん。口だけは達者だな」

「お前は無関心過ぎるんだよ。堅物が」

「…あの魔道書の事、何か分かったか?」

「さぁな。上は隠し事ばかりだ。まぁ、何かあれば連絡がくるだろう」

「だな」

ヴィアはA型の輸血パックをダンボールから取り出すと、そのまま一気に飲み干す


「どうした、いつもよりペースが早いじゃないか」

「あぁ…何故か、喉が渇いて…全身の力が無くなってく感覚がするんだ」

「おいおい…間違って俺の血を飲むなよな吸血鬼さんよ」

「はっ。誰がお前の氷みたいに冷たい血なんか飲むか」

ピピピ。
携帯の着信音は二人同時に鳴った。
ヴィアはそのまま一方的に切り、どうせ新たな任務の話しだろうからこちらに任
せてきた。

「はい。CODE/A、アンヘル。今CODE/Vと共にいるので私から任務の内容は伝えて
おく」

『了解した。ルーカス南東にあるジュエルシード(神種)実験所に危険なエネルギ
ーを持つ生命体を発見。直ちにCODE/V、CODE/Aは現場に急行し殲滅、もしくは捕
獲作戦に移れ』

通話が切れ、二人して溜め息を漏らしながら病室を出る。

「こっちは怪我人だってのにな…」

「我が儘を言うな。先に出てるぞ」

直ぐに窓から浮游術で飛び出し、現場の神種実験所に向かう。

ジュエルシードとは、古よりこの世界を流れる魔力ラインの中心に在った石で、
何千年もの間力を吸収してきた危険度SS+のロストロギアだ。

万が一そのジュエルシードが誰かの手に渡れば、そいつは無限に近い魔力を得る
事になる。

それで、その石を中心に実験施設が作られたわけだ。

「ヴィア!こっちだ!」

少し進むと、綺麗な円形の焼け跡の中心に人影がある。

「人…?いや、違う」

「ふん…どうせ魔力ラインに堕ちて力を得た魔物だろう」

そのまま急降下して下にいる魔物に剣を振りかざすアンヘル。

「待てアンヘル!」

「なに…?!」

そのまま素手で弾き返されたアンヘルが森の奥に吹き飛ばされた。

「ちぃ…!バカがっ!」

後を追うように森に向かう魔物に向かって氷結魔法を放つ。

「小賢しい人間め…」

「喋っただと…?!」

「消えろ!」

4、5と金属音がぶつかり合う音がする。
魔法は炎を操り、俺は氷を操る。

「ふ、はっ!はぁあ!!」

両手両足を氷結させて、そのまま腕と首を跳ねる。

噴水のように血を吹き出しているが、もう動かなくなり、地面に倒れ込んだ。

「ちっ…ヴィア、やったのか?」

「あぁ…それより、コイツは何なんだ。人間、でもない。少し、俺達と似てる気
がする」

『CODE/A.CODE/V応答して下さい。』

焼け野原に、通信機から綺麗な女性の声がする。

「シャマルか…。目標の捕獲は無理だった。一応…腕と首以外は残ってる。性別
は女、言葉を話せるようだ。主に炎系の魔法と金属化した爪での近接戦闘が主体
らしいな」

『ご苦労様。引き続きアンヘルは実験所とその周辺の調査、ヴィアは戻ってきて


「「分かった」」

シャマル、と言う女性はディメンターに行動指示をする現場監督のような奴で、
俺等二人とは親しい中にある。


「では俺はこれから神殿の中に調査しにいく。さっきは無茶してすまなかったな


「あぁ。じゃあ俺もこの死体を凍結させて本部に持っていくよ」

一時解散となり、アンヘルは実験所へ、ヴィアは本部に戻る事になった。





「ヴィア…無事でしたか?」

「あぁ、俺は軽い火傷程度だが…アンヘルが少し喰らってな」

氷らせた死体をシャマルに引き渡し、俺も解剖をする部屋まで着いていく事にし
た。

「そいつ、何か分かるのか?」

「まで見ていないから分からないけど…見る限り、人だけど人じゃないみたい」

「どういう事だ?」

「キメラ、みたいな感じ」

氷結を解き、部屋には血の匂いが充満した。
シャマルはマスクと手袋を装着し、少しづつ死体を観察していく。

「…………」

「一ヶ月前…五人のディメンターが行方不明になったわ」

「それがどうかしたのか?」

「その五人の一人が、さっき貴方が殺した人なの」

「なに…?そいつが、行方不明のディメンターなのか?」

死体を再び氷結させ、部屋を出ると一段と明るく見える。
隣りを歩くシャマルは、深刻そうな顔をして喋っている。

「反逆者…なのか?」

「どうかしら…戦ってみて、何か言ってなかった?」

「小賢しい人間め…みたいな事は言ってたな」



「まるで、自分が人間じゃないみたいな言い方ね」

なんて、自室に入る前に笑顔で言いながら去っていった。


「さて、血でも飲みにいきますか」





「なんだこれは…」

ヴィアと別れた後、直ぐに実験所に入ったアンヘルだが、その光景を見て愕然と
する。

「障気だと…?」

実験所内部は、紫色の空気で覆われていた。
恐らく魔力ラインから溢れだした障気だが、それにしては量が多すぎる。

「ちっ…何処だここは」

実験所はルーカスの上層部以外はエントランス以上先には行けないのだが、この
障気のせいで警備システムが全てダウンしている。

エントランスの奥の奥に進むと、書庫のような場所に辿り着いた。
そして中心には大規模で複雑な魔法陣が描かれている。

中には…蒼銀に耀く一つの石。

「これが…ジュエルシード…」

ジュエルシードの周りから障気が発生している。

「流石にこのままだとマズいな…退くか」

ジュエルシードが保管してある書庫を抜け、一気に外へ脱出する。

「くそ…胸が痛む…。何なんだ、この感覚は…」






~二週間後、ルーカス、カーディナル本部~

「ヴィア、今戻った」

「ん?ザフィーラか、久しぶりだな」

ザフィーラ、と言う筋肉質の男はディメンターの中でもAAクラスのエリートで、
俺とは仕事がよく一緒になる仲間だ。

因みに、シャマル、ザフィーラ、アンヘル、俺のメンバーはSS+クラスの事件に一
時結成される“夜天”と呼ばれるチームだ。

ザフィーラはディメンターの中でも異例で、人と獣の姿を自在に操れる特殊な能
力を持っている事でよくスパイ任務や、危険物処理班として色々な場所に借り出
されている。
俺と同じく氷結系の魔法を使う。

「話しは聞いた。この二週間で何か変わった事は?」

「神種実験所の障気は収まったが…例の魔物がまた現れてな。今度はアンヘルが
塵一つ残らず火葬した。それ以外は特にないな」

「そうか…分かった」

CODE/Zのザフィーラはルーカス北西にあるスパイの密集基地を壊滅させた後、夜
天のメンバーと合流し直ぐに出動出来るように待機せよ、と言われていたらしく
、さっさと自室に戻って寝ていた。

シャマルとザフィーラを除く俺とアンヘルは一時的にあるモノを摂取しないと禁
断症状が出てしまう。

それは“血”である。
定期的に支給される人工血液を飲むことで身心の状態を常に正常に保つ。

筈なのだが…どうも最近調子が悪いらしい、幾ら血を飲んでも“渇き”が収まら
ない。
シャマルに言ったが、まだ身体検査の報告書は出来ていないらしい。

件の反逆者、及び行方不明になっていたディメンターの内四人は既に死亡。
解剖の結果は分からず、シャマルも管轄から外されてしまったらしい。

「ん…?」

窓の外を見ると、小さな女の子がこちらを見ていた。
長い赤髪を下ろし、兎の人形を抱きながら。

「子供…?こんな場所にか」

カーディナル(聖なる真紅)と呼ばれるディメンターに任務を与え、その生活の面
倒を見る組織。

その中核であるこの本部には子供は立ち寄れない筈。

「上司が子供でも連れてきたか?」

少しして、その少女はディメンター四人に囲まれた。
なにやら説得しているようだが、子供は耳を貸さずこちらを見続けている。

「ほら!来い!」

「うるせぇよ!放せ!」

あどけない少女だったが、キレたディメンターが無理矢理連れて行こうと手首を
掴んだら、逆ギレしてディメンターを蹴った。

「この…!」

ディメンターの一人が武器である銃を突き出して、少女に発砲した。

「お前、自分が今何をしたか分かっているのか?」

俺は大鎌を少女の盾に使い銃撃から守った。

「こ、CODE/V…?!なんで此処に!」

四人は後退り、逃げようとする。

「まるで、俺が此処にいてはいけないような言い草だな…丁度いい、喉が渇いて
いた。上司に敬語も使えないお前等に罰を与える」

武器は使わず、素手で下級ディメンター四人を気絶させて、血を吸う。

その光景を見ながら、少女が口を開けた。

「あ、あんたが…夜天の魔剣士…」

「なんだ、俺を知ってるのか?」

「と、とにかくっ!こっち来て話そうぜっ!」

焦りながら俺を連れていく少女。
中央広場には痙攣する四人のディメンターだけが残った。

「ほら、食え」

俺は自販機のアイスを少女に渡し、ベンチの横に座る。

「さっきは助けてくれてありがとな」

「気にするな。口には気をつけろよ」

人差し指で少女の口を指摘する。

「名前、あたしの名前はヴィータ」

「あぁ…俺はヴィアトリクスだ。ヴィアでいい」

「女みたいな名前だな」

この少女…ヴィータは足をバタバタ動かし、嬉しそうにアイスを食べている。

「そんなに美味いか?」

「…アイス、食べたの初めてだからさ。こんな味なんだなぁって思うと嬉しくて


「食べた事がないのか?親とかは…?」

「いないよ、産まれた時から…ずっとここにいる」

「そうか、悪い事を言ったな。詫びにもう一つ買ってやる」

「ほんとか?!」

新しいアイスを買おうとベンチを立ち上がると、携帯の着信音が鳴る。

「はい、こちらCODE/V」

『ヴィア?シャマルだけど、少し手伝って欲しい事があるから研究室まで来て』

「ったく。ザフィーラ使えってのに…了~解。直ぐに行く」

「行くのか?」

「あぁ。ほら、アイス代だ。好きなの買って食べろ」

代金を渡して、その場から立ち去ろうとすると、裾を掴まれた。

「また、会えるよな?な?」

「あぁ。また広場にでも居たら、見つけたら話し掛けてやるよ。そしたらもっと
良いの喰わせてやるからな」

「わ、分かった!また広場に居るからな!」

ヴィアの背中が見えなくなってから、新しいアイスを買ってまた食べる。

「こんな所に居たのか、モルモットめ」

「?!は、博士…」

嬉しそうにアイスを食べていたヴィータは絶句し、うつ向く。

「誰が余計な物を…。捨てろ、ちゃんと食料は与えているだろうが!」

アイスを手で払い、落ちたアイスを蹴る。

「て、てめぇ!ヴィアが折角買ってくれたのに!」

「ヴィア?ヴィアトリクス・フロストリアの事か。ちっ…また厄介な。身分的に
…奴の方が上か」

地団駄を踏みながら、ブツブツ何かを言いながら思案する“博士”と呼ばれた若
い男。

「まぁいい…。モルモット、来い。」

逆らえないのか、睨みながらも無言で付いていくヴィータ。

その後、研究室の奥にある隠れ部屋に、少女の悲鳴が木霊した。




夜。誰もが眠り付いたであろう時に、それを壊す防犯ブザーが鳴った。
ヴィアやシャマルなどの特別扱いの部隊は部屋に個別のブザーがある。
周りを起こさずに、一定の人物を呼び出す為である。

対SS+事件専用対応特別組織“夜天”。

CODE/V ヴィアトリクス・フロストリア。
CODE/A  アンヘル。
CODE/Z  ザフィーラ。
任務伝達、及び戦闘員への任務情報指示 シャマル

真夜中に起こされた四人。

「このフォニムタウンから西にあるルーグス渓谷でリベリオンが発見されたわ。
戦闘員のザフィーラとヴィアは目標への監視、場合によっては殲滅よ。アンヘル
は私と一緒に待機」

行方不明になっていたディメンター五人はルーカスへの反逆者と見なされ、リベ
リオン(反逆)と呼ばれるようになった。

「何故、たった一人の相手に夜天が集結させられるんだ?」

ルーグス渓谷まで飛んでいる途中、ザフィーラが俺に話し掛けてくる。

「俺たちが起こされる前に、上級ディメンター二十人が目標の殲滅に駆り出され
た。だが、戻ってきたのは二十人の遺体だ。」

「ばかな?!リベリオンは全員下級ディメンターだろう!上級ディメンターを二十人
も…」

「そんなことは分かってる。だから俺達が呼ばれたんだ」

そんな話しをしていると、直ぐにルーグス渓谷が見えてくる。

「通信機は切るなよ。俺は右、ザフィーラは左から目標を監視。気付かれたら二
人掛かりで殲滅する」

「…分かった」

ザフィーラは狼のような姿になると、渓谷の頂上まで駆け上がっていった。

「こちらヴィア…目標を肉眼で確認。現在ルーグス渓谷の中央路を徒歩で進行中
。手には…何も持っていないな」

『ザフィーラだ。こちらも何も分からない。ただ、魔力だけは本物のようだな』

奴が歩く度に、身体がぴりぴりと静電気を感じるように痺れる。

魔力では俺の方が断然上だが…何故か“強い”という気配を放っている。

『ヴィア、ザフィーラ。今本部に居るロッズ・カルン博士から目標の殲滅を直ぐ
にするよう命令が来たわ』

「ロッズ・カルン?誰だそれは」

『生物専門科の…ほら、あの変人よ』

生物専門科の変人と言われたら、奴しかいない。
歴代の生物科学者の中でも最高の知恵を持ち、自分の実験の為なら何をしても平
気な変人である。

新しい薬の実験、とかで偶居合わせたザフィーラの食事に薬を混ぜてボコボコに
された博士。

『ちっ。奴にどんな権利があって我々に命令出来るか知らんが、やるしかあるま
い』

「分かってる。行くぞ!」

俺は大鎌を、ザフィーラは己の拳。
それぞれの武器を持って、目標を左右から挟み討ちにする。

「はぁあ!!!」

ザフィーラが目標の頬を殴る。
回避行動もせずにただ殴られた目標はそのまま岩壁に直撃し、そこに瓦礫が落ち
る。

「ザフィーラ、やったか?」

「手応えはあった。だが…性別が分からんな、フードを被っていて…」

落ちた瓦礫後に近付くザフィーラ。
何か異変に気付いたヴィアが、直ぐに静止の言葉を掛ける。

「よせ!それ以上近付くなザフィーラ!!」

瓦礫は勢いよく吹き飛び、そこから目標である敵が飛び出してくる。

「行くぞケルベロス!!」

雄叫びと供に、敵は大剣を取り出す。

「な、んだ…アレは…」

「ちぃ…!!」

一瞬で蹴飛ばされたザフィーラ。

敵は大剣…だが、機械的な柄に、刃は黄色い光を放つ…見た事もない代物だった


「ザフィーラ!!」

『ヴィア!?今すぐザフィーラを連れて逃げて!』

「あいつの武器、なんなんだあれは!」

『アレは“デバイス”よ!』

「だから!何だよそれ!」

『説明は後、早く撤退よ!』

「無理だ…逃げても追い付かれる…ザフィーラ、お前だけでも逃げろ」

後ろからよろよろとヴィアに近付いていくザフィーラ、かろうじて逃げられるだ
ろうと判断したザフィーラは、ヴィアの指示に従い撤退する。

「逃がさん!!」

ザフィーラを追おうとする敵の剣を、大鎌で受け止める。

「行かせん…!!」

肉眼では見えない程の速い剣撃。
それをガードしては剣を交える。
長い攻防の後、次第に魔法も含む大規模な戦闘になっている。

辺りはヴィアの魔法で凍りついているが、それを全く動揺せずにデバイスと呼ば
れた大剣で相殺する。

「はぁ…はぁ…くそ、何だってんだ…」

「もう終わりだ。死ね、哀れな人形」

ガチャン!!ガチャンガチャン!!

三回、大剣の柄の近くにあるリボルバーが煙りをあげて回転する。

「リボルバー…!?銃か!」

「ふん。銃、か。全く、無知は良いな」

「なにっ?!」

刹那───

銃?そんなものではなかった。
俺の腹部は、黄金の刃に貫かれていた。
ごふ、と吐血する。

大剣は、一瞬で大鎌に変わった。

「バカ…な」

「さよなら」

敵はとどめを刺そうとした時、辺りは炎に包まれる。

「無事かヴィア!!」

「また来たか、ルーカスの人形め。」

「なんだと?」

ヴィアを庇うように前に立つアンヘル。

「お前達は、自分の母親を見たことがあるか?」

「…俺の両親は、本部とは別の研究所で働いている」

「違う、そんな偽物ではない。遺伝子の元が誰だか分かるか?」

「なん、だと───?」

「我々ディメンターはな、ルーカスという世界の科学者が創り出した化け物さ。
誰かと何かの遺伝子を生まれてすらいない受精卵に癒着させる。そうして生まれ
てくるのが…元々化け物の力を持った子供、我々だ」

「でまかせを!」

「何故だ、何故でまかせと分かる?考えた事はないのか?何故街で暮らしている“
普通”の人間とは違い強力な魔法が使える?何故街に出掛けるのに許可が必要だ?
何故上層部は隠し事ばかりする?それは我々が自分の出生を知り、反逆を起こさな
い為だ」

「それ以上喋るな!!!」

アンヘルが剣を構えて突進する。
「私を相手にするのは構わんが…速くしないとそいつが死ぬぞ」

「くそっ…」

ヴィアを担ぎ、直ぐに本部へ帰還するアンヘル。
ルーグス渓谷には、冷めた眼で満月を見上げる、女の姿があった―――。



前編  fin