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1998年10月13日。




そろそろ長袖を着なければ寒さに当てられる季節が近付いてきたというのに、半
袖で俺の隣りでタマゴサンドを食べ続けるクラスメートの姿があった。


「なあ樹、お前、この前の事件知ってるか?」

「なにが?」

「だから、あの人殺しのやつ」


樹、と慣れ慣れしくも出会った初日から名前で呼び続ける悪友の正貴。
“正しい”に“貴族の貴”と書いて正貴(まさき)と読むが、名前とは違い、こい
つの学校での行動は問題児扱いだった。

出会いは───思い出したくはないが、入学早々俺を体育館裏に呼んだことだっ
た。
この辺じゃ、かなりの実力者だったらしいのだが…結果は俺の圧勝。

以来、何を血迷ったのかこいつはしつこく俺に話し掛けるようになり、今では数
少ない親友とも呼べる一人に成り上がったのだ。


「人殺し───?」

「お前、血生臭い話し好きだろ?だから、詳しいかなって思ってさ」


今日は一段と冷えていた。
屋上で昼食を取る変わり者は俺たちだけ。
最近巷で起きている殺人事件があるとは小耳に挟んだが、でまかせだと思って信
じていなかった。


「へぇ。死体の状態は?犠牲者は何人?」

「乗ってきやがったな?犠牲者は俺の知るかぎりだと四人。どれも“喰われてい
た”らしい」

「は───?」


喰われた?人間が?
まさか、ありえない。
野犬とかがやったんじゃないのだろうか。


「野犬…なのか?」

「いや、違うらしい。歯形も、殺し方も…全部人間の仕業らしいぜ」


風が吹く。
俺は少し驚いて、食べ掛けだったホットドックを落としてしまった。
人間が、人間を喰らう。

どう考えても、普通じゃない。

俺は───いつか見た路地裏での記憶が蘇った。
忘れられない、過去の出来事。

暗闇の路地裏、滴る血、そして───全感覚が麻痺する程の、美し過ぎた紅い瞳



「お~い、季咲 樹く~ん?」

「───?なんだよ、気持ち悪い喋り方するな」

「いやはや、予想以上の反応だったもんでね」

「───ふん」


ホットドックを屋上から外に蹴って、俺は屋上を後にした。
行き交う生徒たちは、和気相々と話しながら走り回っている。

そんな蟻の群れのような人間達を、俺は冷めた目でみていた。

俺が生徒たちより身分が上、というわけではないが、決定的に違うものがある。
それは、“今まで体験してきこと”だ。

普通の人は、人間の姿をした“何か”が人を喰らうところを見たりしないし、身
近に人間のような人形がいることさえ見たことがないだろう。

俺は普通の人間とは違う。これは明確な事実だ。
思考とか行動や能力が普通と違うからといって、俺は自分が嫌いなわけじゃなかった。

暇の時は正貴と話せばいいし、勉強が出来ないわけではない。
他人から見たら孤立はしているが、決して孤独ではなかった。

故に、俺は他人を知らない。
いや、知ろうとしないだけ。

他人との接触を拒み、気を許した奴以外には完全な境界を創る。
人には他人に触れてほしくない心の領域がある。

俺はその95%ぐらいが踏み込まれたくない領域だった。


「───サボるか」


俺はよく、気分で学校を無断で脱け出す。
だが、教員は俺に一切文句を言うやつはいなかった。

理由は単純だ。
俺が季咲財閥の息子だから。

俺が入学するに当たって、親が援助金を出したことから、校長でさえ俺に敬語を
使う。

くだらない…全くもって呆れる。
教師は文句を言ってこないのは嬉しいが、生徒でいつも邪魔してくるやつがいた



「あ、先輩」

「………ちっ」


予想通り、奴は待ち伏せしていた。
一年の冬夏 沙織(とうか さおり)だ。

趣味は裁縫に料理と、ごく普通の女子高生なのだが…特技が、俺のサボって帰る
時間が分かる、というなんとも迷惑な自称予知能力の持ち主だった。

当の予知?は外れたことはなく、毎回毎回待ち伏せしては説得をされるのであっ
た。


「どこに行くんですか?」

「さあ。どこかな」

「サボりはいけませんよ」

「知るか」


もう何百とこの会話を続けてきた。
だが、今日だけは違かった。
沙織は俺の腕を掴み、外に出るのを拒もうとする。


「なんの…つもりだ?」

「嫌な、予感がします。先輩は今日帰っちゃダメです」

「───ふん。学校に今日一日居ろって言ってるのか?」


俺は睨み、沙織は少し怯えたような眼をしていた。
脆弱な腕は、どうやっても俺の歩みを止められることは出来ずに引き摺られてい
く。


「先輩!!」

「また明日な、冬夏」

「先、輩…」


最後まで俺の歩みを止められなかった沙織が、小さく呟いていた。
それを無視して、俺は歩きだす。

家に帰ることはなく、俺は家とは真逆の方向へ向かっていた。
学校終わってからは必ず寄る、俺の師匠の事務所だ。

人形師である俺の師匠───那張 禾(なばり のぎ)は、誰も寄り付かないような
気味の悪い路地裏の奥に事務所を設けていた。

古びた鉄製の扉を開けて、中に入る。
一階は工場、二階が事務室、三階は師匠の住まいとなっている。


「禾、居るか?」

「ん…?入っていいぞ~」


了承を得たところで俺は事務室の中へ入った。
風を嫌う禾は、常に窓を閉めきっている。
夏だろうが冬だろうが、埃も溜まらないし、匂いが臭いわけでもない。

なんとも、主婦万歳な部屋を一望して、師の姿を目で捜す。
いつもは椅子に座りながら雑務をしている筈なのだが、今日に限っては居なかっ
た。

返事は聞こえたので、居るのは確かだ。
俺は、視界の死角にあるソファーに移動する。


「なにをしてる?」

「見てわからないか?昼寝だよ、昼寝」


黒い長髪に、翠の眼。おまけに黒いドレスを着た、なんとも可愛らしい我が師が居た。
大して仕事も無いくせに、疲れ果てたような顔でこちらを見ている。

17歳である俺の師匠は、なんとも言えない…丁度思春期に入るぐらいの女の子
の外見だった。



「お疲れのようで」



俺は冷蔵庫から缶コーヒーのエスプレッソを二つ取り出して、一つは禾に投げて
飲み始める。

俺が来たことで、禾は寝てられなくなったのか、もそもそとゾンビのように椅子
に座った。


「サボりか、樹」

「それ以外に何かある?」

「ま、いいけどな」


腰まである長い黒髪をなびかせて、禾は缶コーヒーを飲んでいた。
普段、人形師という名目の元に依頼を受け、人形を造って発送する。
その人形はどれも、フリルのたくさん付いた服を身に纏ったアンティークドール
だった。

創造主自体がその人形のような美しさを持っているのに、その小さい手で人形を
造っている様は微笑ましい。

まるで、自分で自分を創りだすかのように、彼女はいつも真剣な眼差しで、その
手を泥で染めていたのだから。


「なあ、禾って400年も生きてる魔法使いなんだろ?」

「まあ、そのようなものだな」

「人間が人を喰うって場面は見たことある?」

「人喰い?鬼の事か?」

「いや、ただの精神発狂者として」


くくく、と笑い、禾は新聞のトップ記事を俺に見せてくる。
タイトルは、“人喰い”というものだった。



「この話しの前に、発狂者で人喰いはいたのか?」

「いるぞ、勿論。だがな、全うな人間が飢餓に苦しみ同種である人間を喰うよう
になったらそれは既に“異能”の類だぞ」

「異能?」

「そうだ。人間は“普通の”精神状態、まあ一週間何も胃にいれなくても、人は
人を喰らう事は出来ない。だって、人の精神が完全に組み換えられない限り、人
間を食べようなんて気さえ起きないのだから」

「じゃあ現に、人を食べているこの事件は一体なんだ」


どの新聞を捲っても、この人喰いの話しで持ちきりだった。
だが、その中に一つだけ気になる記事があった。

争った形跡は無く、いきなり腹部を鋭利な刃物で引き裂かれた犠牲者は、そのま
ま臓器を喰われ、全身の血液さえも全て飲み干すという。

「吸血鬼って、本当に居るのか?」

「あぁ。居るよ」

不可解な事を一瞬で答えた。
まぁ、今更吸血鬼やフランケンシュタインが現れた!!なんて記事が出ても動じな
いが…。
現に魔法使いとかいうありえない存在が俺の隣りにいるからだ。


「人間が勝手な想像で生み出した架空だと思ってたんだがな」

「吸血鬼なんてのは、人間の祖とも言えるイヴが至上最古の吸血鬼だと謳われて
いるが、まぁ所詮はどう言う形であろうと吸血鬼は存在する。現にこうして事を
起こしているからな」

「へぇ…じゃあ神様も居るって事か?」

「さぁな。一般人から見ては居ないだろうが…吸血鬼なんてのも人間にとって存
在しえるモノならば、それは神と認識されてもおかしくないだろう。まぁ私達か
ら見れば、吸血鬼に襲われた…なんて事を聞いても、そうなんだ、ぐらいにしか
感じないさ」

「いまいちよく分からないんだが…」

「一々話すのは面倒だから結論だけ言ってやる。神様も吸血鬼も、人が“居る”
と思えば何にでも成りうる存在なんだ。要は人の数だけ真実があるって事だな。
人の数だけ見方が違うんだよ樹」

「あぁ、なんとなく理解出来たよ、ご苦労様」


缶コーヒーをゴミ箱に投げ捨てると、禾は一枚の写真を俺に手渡してきた。
その写真は、二人目の犠牲者である女性の遺体写真だった。

拓いた腹部に、干からびて白眼を向きながら死に至っている。
死人を見馴れていないやつが見たら一発で生気を根こそぎ奪いとるような写真は
、無理矢理俺の懐に仕舞われた。


「では我が弟子よ。これからそなたに任務を命ずる」


いつの時代か分からない口調で、禾は俺に問い掛けてきた。
深緑の瞳は、俺を見透かしたようにして見ている。


「任務?」

「吸血鬼を狩れ」

「………はい?」


思わず間抜けな声を出してしまった。
俺は缶コーヒーをゴミ箱に丁寧に棄てると、禾を見つめる。

これといって異常は無さそうだが…。
というか、異常が無かったら素で言っている事になるのか。


「断る」

「なぜだ。こんなに愛らしい師匠がお願いしてるのにか?」

「だが断る」

「ほれほれ。服が脱げてくぞ~?」

「────はぁ」


正直、見てられない。
あんな未成熟な身体を見たところで俺が欲情する訳も無く、ただ溜め息を吐くこ
としかできなかった。


「───冗談はさておき、これは強制だ。お前に拒否権は無い」


溜め息を吐かれたのが悔しかったのか、拳をぷるぷると震わせながら真顔になっ
た。


「人権はある?」

「人権?貴様は人間か?」

「ぬぅ。今のは少し傷付いた気がする」


禾は仕返しが出来て満足なのか、ニヤニヤしながら机を物色していた。
引き出しから何かを取り出すと、ソレを俺に投げてくる。


「なんだこれは?」

「私が造った魔斬の効力を持った刀だ」

「魔斬だと?」

「そうだ。魔斬とは…文字通り魔力耐性のある魔力障壁や永続結界、他諸々を断
ち切る能力を持っている」

「これで例の吸血鬼を狩れっていうのか」


俺は、手に握られた銀色の刃を見る。
すらりと延びた、刃は、何やら不穏な気配を漂わせながら存在感を放っている。
凶々しいまでのそのオーラは、まるで血肉を喰らいたくて待ち遠しい餓狼のよう
だった。


「それにな、お前の“力”がなければ、きっと奴には勝てない」

「────?」

「とにかく頑張りなさい。お前はこういう仕事をこなす為の弟子なのだから」

「はいはい。分かったよ」


竹刀などを入れる袋に仕舞った刀の存在を感じながら事務所を出て、家に向
かった。







巨大な門を開くと、視界には広大な庭が広がってきた。
新鮮な水を絶えず流し続ける噴水に、色様々な花が咲き誇る花壇。

約一分、歩き続けるとまたもや巨大な扉が目の前にくる。
ギィ、と木が締まる音と共に、黄昏に染まった我が家のエントランスがあった。

左右にある通路に、リビングに繋がる広い階段。
所謂、“豪勢”な家だった。

家、というより屋敷に近いかもしれない。


「お帰りなさいませ、樹様」

「あぁ、ただいま。ラキ」


靴を脱いで上がるとすぐに、奥から一人のメイドがやってきた。

名前はラキ。
俺に仕えている使用人だ。


「御荷物を」

「荷物は無い。さがれ」

「かしこまりました」


手で追い払うような手付きを見せると、ラキは一礼して奥の部屋へ入っていった


この広すぎる屋敷には、俺を含め、たったの四人しか居ない。いや、“彼”を含
め五人か。


「…………」


殺風景な自室のベッドに横になると、いつもと変わらぬ天井がある。
外はまだ人で賑わっているというのに、この空間だけは完全に音を殺しきってい
る。

脳裏に浮かんでくる音。

血溜まりの部屋。
泣き叫ぶ少年。
飛び散った肉片。

胸が痛い。
金槌でゆっくりと釘を刺されていくような、慎重に突き刺さる痛み。

死にたくない。だから、俺は見捨てた。
死にたくない。だから、俺は手を差しのべなかった。


忘却されたはずの、今は亡き螺旋の記憶。


「…………くそ」


どれぐらいの時が経っただろうか、外はもう暗闇に落ちていた。
そろそろ、行かなければならない。


「………魔斬、ね」


上着を羽織り、袋に入っている刀を取り出した。
魔を断ち、その血肉を糧とする、“異端を殺す”為に造られたもの。

耳鳴りのように聴こえる幻聴は、今も肉に餓えながら俺に呼び掛けてくる。


「行こう」


呼応する俺の力。
最早、ただの吸血鬼狩りが、彼女との再会のきっかけになろうとは今はまだ思い
もしなかった。












希望を通り越して絶望。
 幸せを通り越して不幸。
  羨望を通り越して嫉妬。






人間の欲に限りは無く、また人外の欲も限りは無い。
人外も人間も存在理由は大して変わらない、だが、決定的に違うのは目指し、望
むもの。

人間は自分たちが生き易さを科学という術で生み出していく。

また人外は、元々自分たちが生きていくのに不自由がしない為か、人間とは違う
“永遠の命”を求めた。

不死は未だに、誰もが踏み入れた事の無い未開の領域。
だが、半永久的に生きる事の出来る“人外”は、己の身体を実験体とし、その
未開を開拓していく。

時に現代から約千年前。祖として君臨し、また不死を追い求める吸血鬼ダンテ
・アルフラム・スウェルセイブ。

黒き血を持つ“魔”を宿す者。

実験に実験を重ね、不死の事以外は頭から外れてしまった愚かな吸血鬼。
故に使用人や執事は老いて死に、誰も面倒を見ない城は退化していった。

そして実験を初めてから920年後。
漸く、漸く産まれた一つの生命。
二メートルはあろうカプセルの中、バイオ液に浸かりながら、ゆっくりと紅い瞳
を開く。

その瞬間こそ、世界最高の、幼い殺人姫の誕生だった。







その闇を見て、感じろ。さすれば、やがて己が望むものが見える。

それが、師匠が俺に教えた最初の教訓だった。
当時その言葉をよく理解していなかった俺は、ただがむしゃらに目の前に居た禾
の真似をし続けた。

だが、いつしかその“真似”という行為が自分にとってあまり力を与えない事に
気付くと、俺はいつの間にか始まりの教訓を理解するようになっていた。

“真似”なんか意味は無い。そんなものは自分に技術しか与えない。
だったら、相手の能力も武器も、同じものを“造って”しまえばいい。


「……………」


見渡す限りざっと五十の吸血鬼がいる。
言葉でもない呻き声を発しながら、よろよろと両手を突き出して向かってくる。

全く嘗められたものだ、と溜め息をつきたくなる。
小学生でも、パニックにならなければ逃げられる速度だ。


「………ふん」


刀を構え、走る。
いくら何十と数があろうとも、スピードとパワーさえ圧倒してしまえば苦はなか
った。

五分程で廃虚に居たゴミは片付き、また静けさを取り戻す。


「なんだよ禾め、こんなやつ等の相手なんか押しつけ───」

「あらら、気配感じたと思ったら、誰かさんが片付けちゃったかな?」


俺の声を遮って、不気味な廃虚に渡る美声。
静かに、俺は後ろを向く。


「こんばんは。見知らぬ殺人鬼さん」

「───────」


声が出ない。
恐怖によるものではなかった。

時刻は丁度一日が終わりを告げた頃。
ぞっとするような明るい満月の下、これまた美しい紅い瞳を耀かせて、女は大層
愉快そうに話し掛けてきた。


「ああ、こんばんは」

「よろしい。声は出せるようになったね」


再び、不条理な再会を迎えた俺たち。
女は俺に近寄ってくると、そっと冷たい手を頬に添えた。


「三年振りかな?元気にしてた?」

「………さあ、普通だな」

「ふぅん。それより君、あの頃より強くなったみたいだね」

「あぁ・・・強くなった」

「そっか。じゃあ、大丈夫だね!」


女は俺の手を掴み上下に振り回す。
やがて手を放しこちらをまじまじと見てくる。こう真剣そうで愉快そうな瞳で見
られると恥ずかしかった。


「まあ実は君がここに入る前から尾行してたんだけどね」

「なんで手伝ってくれないんだよ」

「なんで?だって君、まだ私の敵か味方か分からないじゃない」


艶やかに、月下の元妖しく微笑む魔女は、その紅の瞳に殺意を抱いている。
ようやく気付いた俺は、咄嗟に武器を構えた。


「そのカタナ、眼に見える程禍禍しいわね」

「さあ。俺には見えないから分からないよ」


女は大剣をどこからか取り出し、構えた。
武器を持つ、ということは、既に俺を殺す気満々という訳だ。

逃げたい。こんな化け物と戦ったって殺されるのがオチだ。
だが何故か、俺の身体は無理矢理刀を奴に突き立てている。


「逃げないんだ」

「師匠の教えその2。戦いから逃げたら破門」

「………………」


溜め息を吐いて、女は指を元に戻した。


「やらないのか?」

「うん。だって私、君の敵じゃないしね」

「そうか…」

「私の名前はリデリア・アルフラム・スウェルセイブ。吸血鬼だよ。これからよ
ろしくね」


いや、いきなり名乗られたって状況が呑めないのだが…。
そんな思いも察されず、リデリアはニコニコしながらこちらを見ている。


「よろしく…?なぜ、そんなことを言うんだ」

「これから君と私は一緒にこいつらを狩るの」

「ちょっと待て・・・俺は頼まれて殺しただけだ!なんで俺がそんな面倒事に巻き
込まれなければいけないんだ」

「もう遅いよ。君はもう“見つかってる”」




「ここに居ましたか。殺人姫」




また、この静かな廃虚に新たな音が生まれた。
発生源は俺たちの真後ろ。低い声は男性のモノだ。

だが、俺ではなくこの女に呼び掛けた以上、後ろの男は人外だろう。


「あらら。もう来ちゃったんだ。思ったより早かったわね」

「えぇ。彼からの頼みがなければ私もニッポンに来ることはなかった」

「あら、そう。まあ出逢った以上は…殺す気なんでしょう?」

「そうだね。なんの為に、私が此処に居ると思っているのかな」

「そうね。でも私はまだ未完成だから、ここで貴方に殺される訳にはかない
わ」

「笑止。この機を逃す訳などあるまいて。さあ殺人姫、ここで逝け」


訳が分からなかった。
男はいきなりリデリアを殺害宣言すると、俺を見てきた。

見られるだけでこの威圧感。リデリアとは違う、もっと別の意味で“危険”な男
だった。


「逃げるわよ」

「なに───?」

「無駄なことです。不完全体の貴女がいくら足掻こうが、私に勝てる道理は皆無。
大人しく逝きなさい」

「確かに私一人じゃ逃げられないわね。でも、今一人じゃないから」

「その意気やよし。だが、その人間が何の役に立つ?」

「少しでいいわ、樹、時間稼いで」

「よく分かんないけど…やるしかないのか」


俺は奴を凝視する。
二メートルはある長身と、銀髪に純白のロングコート。俺だけじゃない、誰が見
たってこいつはバケモノだ。
異端、そう呼ぶに相応しい程禍々しい気迫が俺を圧倒する。

奴の言葉からすれば、今のリデリアは奴には勝てない。生き延びるには、俺が奴
と戦うしかない、ということらしい。


「一応、名前を聞いとく」

「今から死ぬ者に告げる名は無い。貴方も自分が死ぬと分かっていて何故挑む?
軽率な行動は命を縮めますよ」

「ふん…死なないと思ってるから、俺はあんたに挑む。それに、これから死ぬ奴
の名前ぐらい、知らなきゃ墓が立てられないからな」

「ふふ…無駄な意地だと思いますが、中々に面白い。いいでしょう。我が名はアンゼル。
貴様、名はなんだ?」

「季咲 樹だ。いくぜ、アンゼル」

「────来い」


一瞬、アンゼルの姿がぶれた。
人間が認識出来る動体の動きを超越しているその疾走に、俺は目で追うのではな
く“生”への渇望故の本能がアンゼルの動きに付いていこうとする。
後ろにいるリデリアを気にしながら、俺はアンゼルと剣を交えていった。


「むぅ…。気配自体は人間のものだが…貴方、人間ではないですね?」

「さあ。俺自身もよく分からなくてね」


約六回に渡る斬撃を凌いだ後、アンゼルは俺を人間ではないと判断したのか、廃
虚の端まで後退すると、手に持っていた西洋剣をこちらに見せ付けてくる。


「この剣が、なにか分かる?」

「なに…?」

「遥か昔───魔を切り裂いた聖剣『フラガラッハ』。出来栄えはともかく、そ
の剣は“報復する者”という意味を持つ。神話の時代は魔獣などに対して報復す
るとされていたが…」


月明かりに照らされた魔術士は語る。まるで、今自分がその神話の主人公になっ
たかのように───希望と欲望と殺意に満ち満ちた瞳をよく光らせ、“モルモッ
ト”としてこちらを見ている。


「“意味”など、時が経てばどうにでもなるものだ。分かるかい?報復を人間にへ
と対象を変えてしまえば魔剣の類に相当するのだ」

「何が言いたい。お前は俺に恨みなどないはずだ。“報復する者”ならば、それ
相応の私怨が必然なは、ず…だ、───ろ」


身体が───動かない。
まるで痺れたように、ぴくぴくと震える指が、神経が麻痺しているのを感じとら
せる。


「私怨?そんなもの、在るに決まっているだろう。初めは分からなかったがね、
貴様と闘ってよく分かった。君は充分に報復するべき相手と認識できる。その
麻痺が、なによりの証拠だよ」


とどめだ………と奴は俺に最期の言葉を投げ掛けるが、一向に動く気配はなかっ
た。
それどころか、アンゼルは俺の後ろを驚いたように見ていた。


「捕縛結界、だと───?」


ぎしぎしと、アンゼルは巻き付かれた光りのロープを引き千切ろうと足掻くが、
一向に切れる気配は無い。


「さすがに驚くわよね。魔術的知識を持たない私が貴方でも壊すことの出来ない
結界を発動する…。これで逃げる時間は稼げたわ」

「ちっ…」

「それじゃ、ばいばい」


リデリアは俺を抱える…というか所謂お姫様だっこと呼称されるかなり恥ずかし
い形で、廃虚の外へ連れだした。







「…呪い?これが?」

「・・・えぇ」


アンゼルの襲撃を乗り越えてから、もう半日が経つ。既に夜は更けたものの、学
校はサボるはめとなった。と、いうより…この半日経っても身体がぴくぴくし続ける麻
痺があるため、動こうにも動けない。


「フラガラッハ───神話時代に伝わる聖剣よ。別名アンサラーとも言うわ。効
力は、装備者が呪う敵を斬ると神経系を麻痺させるの」

「ぬぅ…」

「毒ではないの“呪い”だから、簡単には治せないわ。あの剣を壊すか、または
貴方が装備するか、それしかないの」

「装備───?」

「そ。仮にも聖剣だからね、流石に持つだけであらかたの呪いや毒は治ってしま
うわ」

「まあいい。ところで、この呪いを解けるやつに心当たりがあるから、今から言
う場所に向かってくれないか?」


今外を出歩けば、またアンゼルに見つかってしまう可能性がある為、なるべく出
たくなかったのだが…いざ闘っても、俺がこんな状態では仕方がない。

再び恥ずかしい格好で持ち上げられると、リデリアはビルとビルを飛び越えなが
らある場所へ向かった。


「じゃあ、またな」

「ええ。早く呪いを解いてもらってね」

「奴と次戦うのはいつだ?」

「今日の夜よ」

「はあ!?」


バン、と事務所の奥から窓に向かって物を投げる音がした。
あまりうるさくすると、後で怒られそうなので、自重する。


「ちょっとまて。今夜って…呪いが解けるかどうかもわからないんだぞ」

「大丈夫よ。だってこの場所…魔女が住み着いてるし」

「魔女?」


禾のことだろうか、リデリアは事務所の二階を睨みつけた後、ゆっくりと背を向
けて歩いていく。
痺れる腕を抑えることも出来ずに、俺は一日振りに安心出来る場所へ帰ってきた
のだった。







「ほう。では君が言うには、聖剣か魔剣か分からない剣で斬られたら呪いを植え
付けられた、と言いたいわけだな?」

「あぁ。時間が無い。治せるなら早くしてくれ」

「まあ普通に治せるが、それ相応の対価が必要になる」

「あんたは弟子が呪われてるのに金を要求するのか」

「等価交換に上下関係など無い。それは遥か太古より育まれた人の理だ。逆らえんよ


「で、いくらだ」

「まぁそう急かすな。別に金が等価に値するかとは限らないからな」

「・・・じゃあなんだよ」


禾は缶コーヒーを俺に渡すと、豪快に音を立てて飲みながら、俺に死の宣告を告
げた。





「一年ただ働き」





まじですか。









「黒血の末裔が二人…?ありえない、なら私が殺人姫を追い求め実験に実験を繰り
返していた五十年が無駄になる」


齢500にも及ぶうら若き魔術師は、殺人姫たちが去った後、現状を把握する為
に今まで培った知識をフル稼働させていた。

遥か昔───吸血鬼の中で最も強く、不死に近かった男の血を継ぐ姫が生まれた
。その話しを聞いた吸血鬼達は、今や今やとそれを探し求めた。

アンゼル・フランシュタイン・オルドクックも、その一つだった。
黒血を失った男の造り出した娘───そう考えるだけで、血が沸騰するようにた
ぎるのが分かる。

だが私も最強の名を継ぐ者の前にいきなり現れ、あっさり殺されてしまったら今
までの実験に浪費した時間が全て無駄になる。

だから私は、五十年も待ったのだ。
だが、待ちすぎたのか、喉から手が出る程欲しかったモノは、生みの親である吸
血鬼の元から逃げ出した。

それからというもの、我が城を出て、その殺人姫を世界中に飛び回り捜した。



そして漸く見付けた黒血は───二人居た。



殺そう。もう、血さえ手にいれれば構わない。
私が積み上げた実験の全てを使って造り出した物を使ってでも。



不死は、私一人で充分なんだ。







「それじゃ、あいつによろしく言っておいてくれ」

「かしこまりました。どうか…怪我だけはなされぬよう、お気を付けて行ってら
っしゃいませ。樹さま」


巨大な門の前、2日程家を留守にする事を伝えようと思ってきたが、この屋敷の
主である妹は留守のようだ。
というか、通常なら学校に通っている時間なので、居ないのは当たり前なのだが


変わりにラキに言付けを託し、今こうして見送りされているわけだ。



向かうのは生死の境。
異端と異端の宴。

今日、色んなことがありすぎたのかもしれない。翌々考えると、今さらだが足が
すくむ。
まだ、夕方までには時間がある。

俺は、一端禾の事務所に向かう事にした。
繁華街を抜け、薄暗い路地裏に差し掛かろうとした時───ふと、何かの視線に
気が付く。

見るとそこには、黒に黒を塗り潰したような…今にも闇に溶けてしまいそうなロ
ーブを羽織った人が居た。

その存在感は、敵意も殺意も、何も発しないまま立ち尽くしていた。
一分、我慢比べの末に口を開けたそいつは、若い男の声だった。


「こんにちは。黒の王子、哀しみの象徴」

「───誰が、なんだって?」

「君はなんで、こんな面倒事に力を貸すんだい?」

「さあ。俺にも、よくわからなくてね。強いて言うなら…そうだな、あいつが、気に入ったからかな」

「…そう。君なら、きっと上手く殺せるよ」

「あんた、名前は?」

「僕かい?僕は…椋って言うんだ」


椋(りょう)と名乗った黒い青年は、訳の分からないことをべらべらと一方的に話
したら、瞬きと同時に闇に消えた。
気にしても仕方がないので、そのまま事務所に行く。



「というか、お前に頼まれた吸血鬼狩りっていうのがこんなに都合良く嫌な方向
に発展するとお前を疑いたくなるんだが」

「失礼なやつだ。私もあんな奴が出てくるなんて思わなかったんだ」

「あんな奴って、お前…まだ俺は戦った吸血鬼の話しはしてないぞ」

「ふん。今時あんなマイナーな聖剣を使うのはあの神話バカしかいないさ」


幼い魔女は、地団駄をしながら苛立った口調で話している。
どうやら、アンゼルのことを知ってるらしい。


「お前…フラガラッハはもう見たんだな?」

「あぁ…」

「なら、もう造れるよな?」


俺は、無言のまま頷いた。
もう外は朱く染まり始めている。
多くの人々は自分の帰るべき場所へ踵を返していることだろう。


「そろそろ、行く」

「分かった。くれぐれも気をつけろよ」


事務所のドアノブを捻った時、禾はまた俺に言葉を掛けた。


「忘れるな。お前は、魔術師でも魔法使いでも、魔剣士でもない。創造者(クリエ
イター)、それがお前なんだ」


心して掛かれ。
今お前が向かう場所は
  助けの無い闇の中なんだ。

それだけ告げた禾の事務所を後にして、俺はリデリアのマンションへ向かった。







「来たわね」


リデリアは俺を出迎えると、軽い夕食を出した。
シチューに、ハムエッグのサンドイッチ。


「料理、作れたのか」

「まあ、軽いのなら」


それっきり、お互いは食べ終わるまで話さなかった。
この無言の空気が、如何に緊張感をもたらすかは分かるが、聞きたいこともある
のでずっと黙る訳にはいかない。


「黒血って、なんなんだ?」

「ああそれは…なんていうか、黒い血よ」

「俺の血は赤いんだが、というか…なぜ俺があんな奴等に怨まれなければならな
い」

「…いずれ、話すから」

「…分かった。絶対に話せよな、こっちは迷惑してるんだ」


それからまた無言で、しばらく経った。リデリアは立ち上がると、外に出ていこ
うとする。

時計を見たら、丁度深夜になった時間だった。
置いていかれないように、俺も走る。


「奴は強敵よ。私が先行して叩くから、弱ったところに貴方の魔斬で止どめをさ
して」

「大丈夫なのか?」

「これでも人外には恐れられてるんだから、信用なさい」

「…分かった。だがな、危なくなったら助けるからな」


すぐに見えてきた街外れの廃虚は、少し前に一時的に盛んになった街興しの副産
物だった。
流行に乗ろうとしたのかは分からない。無駄にビルを立てようとした阿呆どもの
意味のない結果に過ぎなかった。

だが、ようやく必要価値を見い出された廃虚も、今や吸血鬼の巣窟と化している


そんな場所に、俺達は今───突入する。





「待っていたよ。殺人姫に、殺人鬼」

「……………」


廃虚に突入するな否や、歓迎してきたのは死人の群れだったのだが…リデリアの
爪によって僅か五秒で灰となった。


「嬉しい歓迎ね。貴方を殺した後の掃除が楽になるわ」

「喜んでくれてなによりだよ。ふむ…先にどちらを殺したものかな」


迷っていたアンゼルは、指をリデリアに向けた。どうやら、獲物が決まったらし
い。
一斉に襲いかかる死人たち。それを一掃しようと、リデリアも疾走する。


「リデリア!!!」

「君の相手は私だ」

「アンゼル…」

「先程の呪いは解けたようだなね。さすがに、そう上手くはいかないか」


俺は、残念そうに肩を下ろすアンゼルに向かって疾走する。
人間の領域を超えた、異端の速さ。

アンゼルに向けた矛先は、フラガラッハによって防がれる。
隙を見て、軽く斬り付ける程度しかできない。


「きゃあ!!!」

「リデリア!!」


数が多すぎた。いくら強かろうが、さすがに重い大剣だけでは後方を完全に見切るのは
難しい。

リデリアを助けに行こうとした瞬間───ドスン、と。


どこか聞き憶えのある音がした。
発信源は、どうやら俺の胸らしい。深々と突き刺さった魔を断つ聖剣フラガラッ
ハの刀身が、無惨にも肋骨と肋骨の間を通って貫通していた。


「魔剣士にとって、背中を見せるのは突き刺される覚悟がある、という意味だ」

「……く…そ、…が」


視界が揺らぐ、リデリアは…死人を倒したようだが、足を怪我したのか身動きは
取れていない。

勢いよく引き抜かれた聖剣は、俺の血を滴らせていた。
吹き飛ばされる俺は、古びた工事器具に突っ込む。


「樹!!!」

「無駄だ。時期に麻痺が心臓を止める」


リデリアを見下ろすアンゼルは、軽く鼻で笑うと、口を開けた。


「質問。何故、彼が黒血を持っている」

「そんなことぐらい、貴方なら想像つくでしょう?」

「死ぬ前の遺言と思え。本当に、答える気はないな?」

「ふふ…頭が良いやつ程、己を過信し身を滅ぼす」


窮地に立っているリデリアが微笑すると、アンゼルは苛立ちを見せた。何故、こ
んな状況で笑えるのかと。


「貴方の背中に、死神が乗っているわ」

「な───に?」


ようやく気付いたその異変。咄嗟に後ろを向くと、先程フラガラッハで突き刺し
た少年の姿があった。


「バカな…何故だ、麻痺は心臓に達しているはずだぞ!!!」

「……………」

「……私もやはり、まだまだ未熟か。仮にも貴様も黒血を持つ者。心臓を止めて
肉体的サンプルを取ろうとした私が愚かだったよ」


アンゼルの周りが、異様に重くなるのが分かった。
少し前なら、禍禍しいその気迫に圧倒されているだろう。

だが、今はもう違う。


「もはや…これを使うことになるとわね」


禍禍しい気が、フラガラッハに収束していく。


「古に───月を喰らう竜リヴァイアサンの鱗を斬り裂き、地に沈めた魔剣バル
ムンク。中々どうして良い出来だろう?嫉妬さえ斬り捨てた竜殺しの魔剣だ。黒
血には相応しいだろう」


やがて、姿を変えた聖剣が見えてきた。土煙が消えると共に現れたその大剣は、
二メートルもあろう刀身を高々く振り上げて、存在を示した。

不思議と、恐くはない。むしろ、その魔剣が俺のものになるかと思うと、身体が
疼いて仕方がなかった。


「バカめ!!これだけの刀身ならば、その刀が上がる前に突き刺してくれるッ!!!!」


向かってくる魔剣を、俺は────





聖剣で受け止めた。




「な──に?ぐおッ!!」


フラガラッハで受け止めた俺は、そのままアンゼルを弾き返した。
状況を掴めていないアンゼルが、挙動不審になりならがもこちらを見る。


「何故だ、何故だ!!!なぜ、フラガラッハが貴様の手にある!!私から奪った…?い
や、違う。ならば、何故────」


まさか、と、瞳孔が開いた目で、俺を見た。


「“造りだした”のか」


もはや、俺に問うまでもない。奴は確信した。
この数分の間に、俺がなにをしたのかを。


「くそ・・・ありえない!!そんな馬鹿なことが・・あってたまるかぁ!!!」


再びバルムンクを持ち上げようとしたアンゼルの手が、上がらない。
吹き飛ばされる時に、軽く斬られた傷口から、もう神経麻痺の呪いが渡っていた



「貴様、本当に…生き物なのか?」

「さあ。俺もよく分からなくてね」

「殺人鬼め…」

「俺はただの───異端狩りさ」


俺の手には、バルムンクが握られている。ゆっくりと、その心臓へあてがった


ドスン、と。再び、その静かな廃虚に、心臓に杭の打たれる音が鳴り響いた。







「大丈夫か?」

「うん…なんかごめんね、色々無理させちゃって」

「気にするな。俺も、頼まれていた仕事だしな」


真夜中の、月明かりだけが照らす寝室。
アンゼルを葬った後、俺達はリデリアの住む部屋に帰ってきた。


「それじゃ…俺は帰るな」

「うん。またね」

「ああ…また」


マンションを出た後、そんな留守にしてもいないのにどこか懐かしい雰囲気を漂
わせる帰り道を歩く途中、血で染められたような紅い月を見た。


「異端狩り…ね。くっだらねぇ…そんなの、そんなのは…」


ただの、言い訳でしかないんだ…。


丁度、この街を白銀に染める季節がやって来た頃、殺人姫と殺人鬼のありえない
饗宴は───あっけなく幕を閉じたのだった。



to be next