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プロローグ 其処は、真っ白い世界だった。 何も無くて、叫び声すら雪のように千切れていくようなーーー そんな世界。 いつから此処に居たとか、いつ此処が出来たとか、全部曖昧で・・・全部信じられない世界。 そう、光あるところには必ず闇が生まれる。 此処にはそれすら無いんだ。 だから、此処は〝無〟しかない場所なんだって、きずいた時のことさえ忘れてしまった。 声も上げられないし、身動きも取れない。 だが、確かにこの場所で考えた思考は覚えている。 これは俺の脳が記憶しているものなのか、それともーーー録音されているものなのだろうか。 そこは、〝誰も〟居ない場所。 真っ白な、無限に連なる無音の雪原。 ~Valentine Of Night World~ 1995年 八月二十日  強いて言うならば〝それ〟は絶対的な畏怖の象徴だろうか。 暗い路地裏に佇む人影は、豪快に肉を貪る獣のような音を立てて、そこに居た。 鼻を劈くような生暖かい肉の臭い、飲み溢した大量の血。 息をすることすら止めたくなる程の風景と圧倒的な恐怖が、目の前にある。 どこからこんな得体の知れない世界に迷い込んだ? それはーーーただ、いつもと違う道を行ってみようって路地裏に入っただけだった筈・・・ ようやく食べ終わったそれが、ゆっくりと立ち上がってこちらを見た。 「もうお腹いっぱいなのに・・・」 満足気な表情を浮かべながら、彼女はゆっくり歩いてくる。 死体なんて見慣れたつもりだった。 殺し合いなんて馴れたはずだった。 死にたくないのに、殺されたくないのに、どうして俺は突っ立ったままなんだよ。 「さあ、なにか言い残すことは?」 「ーーー」 死にたくない。 ただ、その一言だけ言いたかった。 だが、その意思さえ、彼女の前では無意味だった。 「へえ・・・ふふ、好い眼ね。絶望して、恐怖して、それでも〝生〟への執着、気に入ったわ」 そっと、彼女は俺の頬へ手を添えた。 そしてそのまま・・・ 唇を、俺の唇へ当てた。 彼女の口から溢れた血が、流れて、思わずそれを飲んでしまう。 「楽しい夢は終わって、嫌いな現実がやってくる。それって嫌な事?ううん、私はそうは思わない よ・・・楽しい事もそうじゃないことも、全部ひっくるめて明日はくる。それを生きるだけの覚悟 を人間(貴方達)は持ってる」 俺はその場に倒れた。 意識が飛ぶ・・・そして最後に、彼女の言葉を聴いた。 〝磔にされた鬼の亡骸を背に、悪魔は狼の呻きのようにすすり啼く。  紅き吸血鬼は語る。  生と死、不と嬉のカルマを繰り返し幾星霜…人の肉と血と魄…その断末魔の悲鳴  を子守唄に、我々は今日も空を渡る。  それは生きる為の術か、それとも欲望を満たす為の術か。  それはカタルシス。  深き底に眠る、甘い甘い死神たちの誘いの手。  それに乗れば最後───それは堕天、甘い甘い誘惑の先は死か、それとも仄暗き  闇の底か。  決めるのは汝の選択のみ。  人の死を糧に心を強く。  人の血を糧に我が剣をより強く。  汝の名は嫉妬(エンヴィー)  不滅を穿つ、心亡き夢跡。 fin
プロローグ 其処は、真っ白い世界だった。 何も無くて、叫び声すら雪のように千切れていくようなーーー そんな世界。 いつから此処に居たとか、いつ此処が出来たとか、全部曖昧で・・・全部信じられない世界。 そう、光あるところには必ず闇が生まれる。 此処にはそれすら無いんだ。 だから、此処は〝無〟しかない場所なんだって、きずいた時のことさえ忘れてしまった。 声も上げられないし、身動きも取れない。 だが、確かにこの場所で考えた思考は覚えている。 これは俺の脳が記憶しているものなのか、それともーーー録音されているものなのだろうか。 そこは、〝誰も〟居ない場所。 真っ白な、無限に連なる無音の雪原。 ~Valentine Of Night World~ 1995年 八月二十日  強いて言うならば〝それ〟は絶対的な畏怖の象徴だろうか。 暗い路地裏に佇む人影は、豪快に肉を貪る獣のような音を立てて、そこに居た。 鼻を劈くような生暖かい肉の臭い、飲み溢した大量の血。 息をすることすら止めたくなる程の風景と圧倒的な恐怖が、目の前にある。 どこからこんな得体の知れない世界に迷い込んだ? それはーーーただ、いつもと違う道を行ってみようって路地裏に入っただけだった筈・・・ ようやく食べ終わったそれが、ゆっくりと立ち上がってこちらを見た。 「もうお腹いっぱいなのに・・・」 満足気な表情を浮かべながら、彼女はゆっくり歩いてくる。 死体なんて見慣れたつもりだった。 殺し合いなんて馴れたはずだった。 死にたくないのに、殺されたくないのに、どうして俺は突っ立ったままなんだよ。 「さあ、なにか言い残すことは?」 「ーーー」 死にたくない。 ただ、その一言だけ言いたかった。 だが、その意思さえ、彼女の前では無意味だった。 「へえ・・・ふふ、好い眼ね。絶望して、恐怖して、それでも〝生〟への執着、気に入ったわ」 そっと、彼女は俺の頬へ手を添えた。 そしてそのまま・・・ 唇を、俺の唇へ当てた。 彼女の口から溢れた血が、流れて、思わずそれを飲んでしまう。 「楽しい夢は終わって、嫌いな現実がやってくる。それって嫌な事?ううん、私はそうは思わない よ・・・楽しい事もそうじゃないことも、全部ひっくるめて明日はくる。それを生きるだけの覚悟 を人間(貴方達)は持ってる」 俺はその場に倒れた。 意識が飛ぶ・・・そして最後に、彼女の言葉を聴いた。 〝磔にされた鬼の亡骸を背に、悪魔は狼の呻きのようにすすり啼く。  紅き吸血鬼は語る。  生と死、不と嬉のカルマを繰り返し幾星霜…人の肉と血と魄…その断末魔の悲鳴  を子守唄に、我々は今日も空を渡る。  それは生きる為の術か、それとも欲望を満たす為の術か。  それはカタルシス。  深き底に眠る、甘い甘い死神たちの誘いの手。  それに乗れば最後───それは堕天、甘い甘い誘惑の先は死か、それとも仄暗き  闇の底か。  決めるのは汝の選択のみ。  人の死を糧に心を強く。  人の血を糧に我が剣をより強く。  汝の名は嫉妬(エンヴィー)  不滅を穿つ、心亡き夢跡。 to be next

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