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「ん……んん―――――ッ!!?」
突然のことで、何をされたのか一瞬分からなかった。
それから掛井先輩が何をしているのか理解して反射的に振りほどくと、壁に腰を打ちつけた先輩は楽しそうに笑っていた。
「わー、蒼翡ちゃんって か弱そうに見えてけっこう力あるんだね」
ぁっ……そうか、女の子は 普通こんな力ないのに………って、
そんな場合じゃないのに。何気にしてんだ僕………!
「まぁ、俺はされるがままの子より抵抗する子に無理やりやる方が好きだからいいんだけどー」
しかも何言ってんのこの人!?
「悪いけど俺、蒼翡ちゃんに一目惚れしたっぽいんだよねー。だから、襲っちゃうねー」
いや、「ねー」とか言われても………っ
そう思ってる間にも掛井先輩は立ち上がってまた近寄ってくる。
どうしよう、逃げるにしてもこの更衣室けっこう狭いし……さっき閉めた扉は立てつけ悪いのか中々動かなかったしっ
「ぅわっ……!」
考えている間に、押し倒されてしまった。
なに、何なにナニこの状況!?
っていうか頭の衝撃を覚悟して目を瞑ったけど、手荒く押し倒したくせにちゃんと頭の後ろに腕を回して受け止めてくれた。なんでこんなに手慣れてるの!?襲うって、オソうって……マジで!?
「怖がってる顔もかわいいけどー……」
そこで言葉をきってほっぺにキスされる。
「蒼翡ちゃんって、まさか処女?」
それから耳元で囁かれて、なぜかカァッと顔が熱くなってしまった。たぶん、息がこそばかったから……だよ、ね!?
「ち……違いますっ!!離してくださいッ」
そりゃ……悪いけど経験はないけどさ。処女、ではないし僕……!
「ふーん?ざんねーん。まぁ、こんなにかわいいから前にも誰かに無理やりやられたでしょ?あ、離すのはイヤだよ」
「なんっ……」
手足をジタバタさせ……ようとしたけど、掛井先輩に巧妙にガッチリ押さえつけられていて、できない。僕だってずっと鍛えてたつもりなのに、情けない………
でも、力で抗えないならっ
「私、彼氏がいるんです!だから先輩とはできませんっ離してください!!」
「………へーぇ?」
諦めてもらおうと思ってそんな嘘っぱちを言ったのに、掛井先輩は逆にますます楽しそうに笑った。
「大丈夫、その彼氏より俺に惚れさせてあげるから。まずはヤったらわかるってー」
「ヤるって……ッ」
そこでじわぁっと涙が出てきた。泣くつもりなんてないのに、なぜか涙が勝手に出てきて……あぁもう僕本当、情けねぇっ………!
と、自己嫌悪していると掛井先輩の方に変化があった。
それまでずっと、奪う宣言とかするくらい余裕ですかした表情だったのに、いきなりボッと顔が真っ赤になって――なに……何があった?
「ぅっわ……ちょっ、もう………っ」
僕の頭の下の手と反対側の手で赤くなった顔を隠すと、微妙な表情でこっちを見てきた。
「なに……ヤバい、蒼翡………かわいすぎ……………」
そしてペロッと僕の涙を優しくなめる。
な……にそれ!?ちょっ、逆に言われたこっちの方が恥ずかし……ってか、蒼翡って呼び捨てだし!!
自由になった左手で僕も思わず顔を隠したけど、強い力でまた元の位置に戻される。
「だーめ、顔隠すな。全部、ちゃんと俺に見せなきゃ」
「そんっ……んーんんッ―――」
今度は口を塞がれるどころか、舌まで入ってきた。ヤバい、掛井先輩……本気で女装してる僕を襲う気だ………っ!!
「ごめん……いつもなら、もっと感じさせてあげるんだけど………俺が、もう限界。いきなりやらせてもらうな」
「や……ダメですっ!!!」
スカートに手をかけた先輩に、精一杯振り絞った制止の声をかける。
だって、僕は男なのに。そんなこと知ったら、掛井先輩がどんな反応するか………っ
今は「男とバレたら退学」という事よりも、こんなに惚れてくれてる先輩のショックを想像する方が嫌だった。
「なんで?……まさかまた彼氏が、なんて言うの?」
「違っ……違います!すみません、嘘です――彼氏がいるって言うのは、ウソなんです!!」
「――嘘ついてまで、そんなに俺にヤられたくないわけ?」
少し冷たさを含んだ冷ややかな声に、コクコク、と必死に首を縦に振る。
そうだよ、それにこれはもう半分先輩のためなんだから……納得してくれよ!
「……………」
掛井先輩が、無言で僕の眼を見つめてくる。僕も強い意志を込めた眼で見つめ返す。
「…………ぁ~もう、くそっ初めてだよこんな気持ち。他のヤツならそれでも無理やりヤるのに……蒼翡には、無理やりヤって嫌われたくない……」
じゃぁ、諦めてくれるのか!?
そんな淡い希望を持ったが、掛井先輩はそう簡単に諦めてはくれなかった。
「まず、理由を聞こうか。………俺のこと、嫌い?」
いや……そりゃ、いきなりキスしてきた事とかは許せないけど、
「サッカー上手いし……好きってコトじゃないですけど、そういう憧れ……って言うか。………嫌い、ではないと思いますよ。たぶん」
サッカーが上手い人は、いつだって僕の憧れだ。
「そ……っか」
それを聞いて掛井先輩は心底安心したような表情になる。
「じゃぁ何。彼氏はいないんでしょ?好きな人がいるとか?」
戸花さん!……って言ったら怪しまれるよな。だって僕今女だし。
「ぁー……いません」
「じゃぁ何!ワケわかんねぇよ、俺……他に何があるんだよ!?」
「それが言えないから困ってるんじゃないですか!」
「――~ッそう言われても諦めれねぇよ!!」
悲痛な声で叫んで、いきなりキスされる。しかも、今度はすごく激しい……!
「ん、んんん んんっ!」
“やめて下さい”って言いたかったのに、そんな吐息にしかならなかった。
っていうか、長い……いきなりだから息吸ってないのに、苦しい………っ
ドンドン、と意思表示で叩いた先輩の胸板は厚い。っていうか、ねぇ、叩いてるの分かってますか?
「――――――ぷはっ……はぁ、はァっ……ん――」
やっと離してくれたと思ったら、もう一回。しかも――
口を塞がれたまま、手がスカートの中にのびてくる。声も出せないし、ヤバい――――!
必死で止めなきゃいけないのに、太股をツツツーと伝ってくる手に感じて力が抜けている自分が情けない。
そして、先輩の手がスパッツ越しに僕のアソコに――
触れた瞬間、先輩の手がピクッと反応したのが分かった。そして、ずっと塞いでいた口を離して
「蒼翡……、ちゃん………?」
色を失った顔で、それだけ呟いた。その震える言葉には「女、だよね?」という意味が含まれていた。
「………これが、理由です……………っ」
初日から、バレてしまった…………
そして、掛井先輩を傷付けてしまった。
でも、勘違いして襲ってきたのは向こうだし、僕に非はない……そう、思いたかった。
「………すみません、僕、もう帰りますね――」
これ以上どんな言葉をかけることもできずに、それだけ言い残して静かに更衣室を出る。
ギィィ………バタン、という重い音だけが、虚しく響いた。


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