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「じゃぁそこに荷物置いて……手始めにここの掃除してくれるかな?」
「うわぁ………」
そう言って無駄に二枚目な副部長――掛井 朔(かけい さく)先輩は僕を、
並べるとか揃えるとか詰めるとかそういう言葉が欠陥している、グチャッと無造作にサッカー用具が積み重ねられている用具庫に案内した。
「ぁ、場所とかは適当でいいから。何かわかんないコトあったらそこらの1年に聞くか、もしくは俺呼んでくれても飛んでくるからいつでも呼んでなー」
そう言って軽くウィンクする。普通なら寒いんだけど、これがサマになってるから美形って羨ましい。いや、別に僕もしたいとかそういうのじゃないけどさ……
「んじゃ悪いけど俺は練習戻んないといけないから――頑張ってな、マネージャー」
「はい……」
駆け足で模擬試合をしているグラウンドに戻っていった掛井先輩の後姿を見送りながら、はぁーと深いため息をついた。
マネージャーかぁ………あー、僕何のためにこの学校に来たんだろ……
本当ならあそこで、僕もサッカーを楽しんでたはずなのになぁ……………はぁー。
「畜生……今度会ったら菱田マジ絞め殺す」
周りに人がいないことを確認してからボソッと呟いて、気持ちを切りかえて腕先が絞ってあるデザインの長袖を腕まくりする。
「ょっし、こうなったら本格的にやってやる!」
元々A型だし母さんが死んでからは家事とか全部僕がやってたし、こういう面倒な仕事とか、細々したこととかは嫌いじゃない。それどころかむしろ、こんなに散らかっているのを見るとキッチリ片付けたくなる。
それにこの汚れたボールも磨いていきたいよなぁ………
思い立ったら即行動で、蒼翡は布の切れ端を持ってくると泥で汚れたボールを丁寧に磨き始めた。
ついでに単純作業なので、顔を上げてグラウンドでやっている模擬試合を観戦する。
(ゴールキーパー外国人なんだ。ブラジル人辺りかな?さすが如月だな~)
(ぁ、あの4番インターセプト上手いなぁ~、オフザボールも的確だし)
(あれ、1人1年入ってるんだ………あーでもさすが上手いなぁ、ボール取った)
体操服の上に10番のギプスを着てプレーしている選手に目が止まり、しばらく目で追ってからその上手さに感心する。
(わっ無茶プレー!けどあんなフォローしてくれるのか。いいなぁ~)
(うわッ、バイシクルキック!!? ちょ、誰…………掛井先輩ーーーッ!?)
空中で華麗にボールを蹴った掛井はもちろん一度はその場に倒れ伏したものの、すぐに何ともないとでも言うようにヒョイ、と上半身を起こすと蒼翡に向かってVサインした。
そのあと集まって来た部員達に「カッコつけやがって」「できるからってお前なぁ~」「外しときゃ笑ってやるのにキッチリ決めやがってぇ」と頭を小突かれていたが、蒼翡はなかなか動悸の高まりが抑えられなかった。
これはいつものことだ。根っからのサッカーバカで、スーパープレイや凄技を見ると、気分が高潮してしばらく心臓がバクバクしっぱなしになる。
(あー、プレーできないのは納得できないけど、やっぱこの学校来てよかった……!)
そうとまで思ってしまった。


  * Hope Love *