正常分娩
妊娠・分娩に関する用語
- 経産婦
- 妊娠22週以降の分娩経験を持つ女性。
- 初産婦
- 初めて分娩する女性。
- 分娩
- 胎児とその付属物が陣痛や腹圧によって子宮から母体外に排出される生理現象。
- 胎児付属物
- 胎盤・卵膜・臍帯・羊水 のこと。
- 流産
- 妊娠22週未満の分娩(妊娠の中断)のことを流産という。
- 正期産
- 妊娠37週以降42週未満の分娩のことを正期産という。
- ちなみに、流産と正期産の間は早産、正期産以降の分娩は過期産という。
- 胎芽・胎児
- 妊娠8週までは「胎芽」と呼び、妊娠9週以降は「胎児」と呼ぶ。
- 陣痛
- 不随意に反復する子宮の収縮のこと(特に分娩時の陣痛には痛みを伴うが、陣痛という用語は痛みそのものを指す言葉ではない)。胎児を子宮から押し出すために子宮は周期的に弛緩と収縮を繰り返す。
- 妊娠陣痛
- 妊娠期に起こる不規則で弱い子宮収縮のことを①妊娠陣痛と言い、痛みは無い。
- 前駆陣痛(偽陣痛)
- 妊娠末期に起こる不規則な子宮収縮を②前駆陣痛(偽陣痛)といい、痛みはあることもある。
- 分娩陣痛
- 分娩時に起こる陣痛は③分娩陣痛と言い、10分間歇に規則的に起こる、あるいは1時間に6回起こることをもって分娩開始とする。
- 分娩第1期の陣痛のことを開口期陣痛といい、この時期に子宮口が開大していく。
- 分娩第2期の陣痛のことを娩出期陣痛といい、この時期に胎児が娩出される。
- 分娩第3期の陣痛のことを後産期陣痛といい、この時期に胎児付属物が娩出される。
- 後陣痛
- 胎盤娩出後の陣痛のことをいい、この子宮収縮によって産褥子宮は復古される。
- 陣痛発来の機序
- 現在の所まだ特定はされていないが、一番有力な説として内分泌的原因説がある。この説ではPGやオキシトシンの刺激によって陣痛が誘発されるのではないかと考えられている。
- 破水
- 卵膜が破れ、羊水が流出すること。通常、第2期の胎児娩出直前に起こり、これを適時破水という。分娩の前に破水が起こることを前期破水(PROM)、分娩開始から子宮口全開大までの間に破水が起こることを早期破水という。前期破水が起こった場合、子宮内感染の予防のためシャワーや入浴は禁忌。
- 分娩の前兆
- 分娩が近づくと分娩開始徴候(前兆)がみられる。分娩の前兆には前駆陣痛・胎児の下降感・産徴(血性分泌物)・子宮頸部の熟化(内診による確認)などがあり、これらは分娩数日前からみられる。
- 排臨
- 陣痛発作時には陰裂に児頭が見え、間歇時時には見えなくなるという状態。
- 発露
- 陣痛間歇時にも陰裂から児頭が見えること。
- 妊娠末期の胎盤の大きさ
- 直径15~20cm、厚さ2~3cmの円形、重さは500gであり、胎児体重の約1/6
- 卵膜って?
- 羊水を包んでいる膜のこと。三層構造になっている。胎児側から、羊膜・絨毛膜・脱落膜。
- 臍動脈・臍静脈
- 臍動脈には静脈血(2本)が、臍静脈(1本)には動脈血が流れる。
- 分娩の3要素
- 産道・娩出物・娩出力
- 産道
- 骨産道(骨盤)と軟産道(子宮頸部・腟)を合わせて産道という。
- 娩出物
- 胎児およびその付属物(付属物=胎盤・卵膜・臍帯・羊水)
- 娩出力
- 子宮収縮(陣痛)と腹圧(=いきみ=怒責)
- この3要素が全て適切な状態であることが経腟分娩の条件となる。
分娩第1期
経過
陣痛発来(陣痛が10分間歇 or 6回/H以上)から子宮口全開大までを分娩第1期と言う。つまり、陣痛が10分間歇になった(陣痛発来)の時点で分娩は開始されている。子宮口が10cmまで開いたら全開大とみなす。陣痛発来から子宮口全開大までの所要時間は初産婦でおよそ10~12時間。経産婦で5~6時間。経産婦の場合は内子宮口と外子宮口が一気に開き開く速度も速い。また、子宮口全開大になる時までに胎児は第2回旋の状態になっていく。
- 分娩第1期の大まかな流れは、陣痛発来→①産徴(血性分泌物)→②胎胞形成(→③破水)
- 胎児の回旋
-
- 第1回旋
- 横向きのまま顎を引く(頚部屈曲)
- 最初、児頭の矢状縫合は骨盤の横径に一致しており、小泉門と大泉門は同じ高さにある(つまり頚部やや伸展状態にあるということになる)。この状態で陣痛が起きると、児頭は屈曲し、屈位の姿勢になる。児頭が前面に屈曲したため、小泉門が大泉門に比べ先に出る形になる。
- 第2回旋
- うつ伏せ(内回旋)
- 屈曲胎勢のまま、側方にあった小泉門が前方へと回旋する。児頭の矢状縫合は骨盤の横径から斜径、縦径へと一致するようになる。
- 第3回旋
- (第1回旋で)引いていた顎を伸展させ、頭部を外に出す(伸展)
- 児の項部は母体の恥骨結合下縁に支えられ、頭部が胸部を離れ、反屈伸展姿勢へと変化する。
- 第4回旋
- 元の向きに戻りながら肩を外に出す。
- 児頭の娩出に続き、児は母体の後方を向いているが(要するにここいらで肩が引っかかって回旋を始める)、肩の回旋に伴い母体の大腿内側を向く(第1胎向では母体の右側、第2胎向では母体の左側)。肩甲は出口部の前後径に一致する。→肩甲娩出となる。
看護
看護目標
- 母児の安全・心身の安楽
- 分娩進行状況の観察・異常の予防と早期発見
- 感染予防
- 産痛の緩和
- 体力保持
- 産婦・家族への支持的ケア
アセスメント
子宮収縮・腟分泌物・胎児の下降度・産婦の状態などを総合的に判断し、母児の異常の早期発見に努める。
留意点
- 食事とか睡眠とか?
- 可能。この時期では体力の温存の為の睡眠や、子宮収縮のための栄養補給(特に糖質)は重要。特に陣痛間歇時にはリラックスさせて睡眠を促せるようにする。食事に関しては、帝王切開の可能性がある場合には禁飲食となることに注意。また、脱水状態はショックの危険性を増加させるので水分の補給も大切。炭酸飲料は悪心の誘発を招くので注意。
- 分娩第1期で排尿とか?
- 膀胱の充満は微弱陣痛を招きやすく、分娩進行を妨げる可能性がある(遷延分娩の原因となる)ので、3~4時間程度で排尿を促す。
- いきみたくなる!
- 子宮口が全開大になるまで怒責は禁忌!
- いきんでも子宮口は開かない。怒責を繰り返すと児頭が圧迫されたり頚管裂傷になったり、体力を消耗したりする。
- →いきみをかけても子宮口が全開大に至っていないために胎児を分娩できないことを説明する。
- →呼吸法、弛緩法、マッサージ、体位の工夫、気分転換などで怒責感を回避する。
- 受容的傾向?
- この時期は受容的傾向がみられる。「与えてもらいたい」
分娩第2期
経過
子宮口全開大(10cm)から胎児娩出までを分娩第2期という。最も危険が起こりやすい時期。また、陣痛が強度となるのもこの時期。この期の始めには胎児は母体の背側を向いていて、分娩の進行と共に第3回旋~第4回旋と進行していく。
- この時期では、①娩出陣痛と胎児下降が起こり、②排臨・発露の後に③胎児娩出という流れになる。
- 所要時間は、初産婦では2~3時間・経産婦では1~1.5時間。
看護
看護目標
- 母児の安全・心身の安楽
- 分娩進行状況の観察・異常の予防と早期発見
- 感染予防
- 医療チームとの協力
- 産婦の主体的分娩の進行
- 苦痛緩和
- 効果的な呼吸法・怒責の誘導と腹圧の調整
- 産婦・家族への支持的ケア
- 母児の早期接触
留意点
いきむ際には骨盤誘導線に沿って、肛門に向かっていきむ。
児頭が会陰を通過する際には全身の力を抜き短息呼吸を行うと良い。
アセスメント
出産に備えて外陰部洗浄を行う。また、陣痛や怒責が有効かを情報収集し、タイミングや体位を工夫する。
分娩第3期
経過
胎児娩出から胎盤娩出までを分娩第3期という。胎児が娩出されると後産陣痛が起こり、子宮壁から胎盤が剥がれて子宮の外へと押し出される。また、この時の子宮収縮によって子宮内膜の血管が閉じ、余分な出血も防ぐ。
- 流れは、①後産陣痛→②胎盤剥離→③胎盤娩出
- 所要時間は初産婦では15分~30分。経産婦では10~20分程度。臨床的には5~10分くらいらしい。
- 胎盤が母体面から娩出された場合はダンカン式、胎児面から娩出された場合をシュルツェ式という。シュルツェ式の方が出血が少なくてすむ。
看護
アセスメント
出生時間、児の性別などを記録しながら、胎盤の自然剥離を待つ。胎盤娩出時間、娩出方法を記載する。
- 1~3期までで500ml以上の出血がある場合は弛緩出血とみてよい。正常量は250ml未満。
- 分娩直後の子宮底の高さの平均は臍下三横指(=恥骨結合上縁から大体12cm)程度。
最終更新:2007年07月15日 08:25