日比谷警察人権蹂躙告訴状


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日比谷警察人権蹂躙告訴状
          告訴人 望月 桂
          告訴人 久板卯之助
          右両名告訴代理人 弁護士 山崎今朝彌
          日比谷警察署勤務 被告人(署長) 増田伝次郎
          被告人 吉川警部
          被告人 福田警部補
          被告人(高等主任) 網島巡査部長
      傷害罪の告訴
 被告等は他の氏名不詳の巡査十数名と共に大正九年十二月九日夜十一時半頃日比谷警察署内拘留部屋にて告訴人等を殴打し別紙診断書の如き療養十数日を要する負傷を与へたり
      告訴事実の詳細
 一、大正九年十二月十日は日本社会主義同盟の創立大会当日なりしを以て、頑迷乱暴市内に冠たる日比谷署は政府の意を忖度迎合し、独り其功を専にせんと欲し、九日朝先づ手初に前貴族院副議長侯爵黒田長成二男長七郎を検束し次で其釈放方交渉に来れる日比谷洋服店主服部濱次及び其子麦生(十五歳)を初めとして、九日十日に渉りて三四十名の男女社会主義者を検束したり。
 二、告訴人等は同志七名にて九日夜十一時頃前記服部方に立寄りたる所を其所に張番せる被告福田以下十数名の巡査に取押へられ、途中打たれ殴られ蹴られ踏まられて、当時既に検束中の数名の同志と共に別紙図面(住所氏名位置等を明記す)の如く拘留部屋に打込まれたり。
 三、此際被告増田は自宅にて大杯を傾け僕婢妻等を相手に大に天下を論じ形勢を語り居りしものならんが、告訴人等の新入を聞き直ちに出署、酒気満面、一杯気嫌にて望月告訴人の居房に侵入し『貴様等の様な生意気野郎を人間扱にしてたまるものか』と怒号しながら告訴人等の官給されたる布団全部を取り払ひ室外に持出し故意に告訴人等を虐待侮辱したり。
 四、之れに激憤せる望月桂は思はず大声を挙げ被告に向て其不法を難詰せるに被告は『何! 生意気な!』と大喝一撃又一撃、望月及び仲裁に出たる原澤と吉田とを殴打したる上、尚被告加勢のため房内に侵入したる他被告三名及十余名の巡査と共に約七八分間前記三人を目茶苦茶に打擲殴打し、望月は別紙診断書の如く負傷して遂に人事不省に陥りたり。
 五、平素温順柔和羊の如く神の如き告訴人久板は隣室に在て被告等の乱暴を目撃し、激憤の極血相を変へて狂ひ出し天地も崩れん計りの大音声にて『増田野郎殴つたな!!!』と絶叫したるに、増田は酔尚醒めず被告三人及巡査約十名を引卒して久板の房に侵入し又之れを殴打折檻し尚之れに飽き足らず久板を廊下に引ずり出し、約十分に渉り殴打折檻し遂に別紙診断書の如き創傷を与へたり。
      告訴の申立
 右の所為は被告等の職務行為にあらざる結果刑法第百九十五条の暴行又は陵虐罪には該当せざるも、情状此重罪より重き普通の傷害罪と存候条何卒至急御捜査の上相当の御処分相成度公平極まる司法権の独立に信頼し敢て誣告罪の制裁を保証に茲に告訴提起仕候。
      参考の事実
 一、警官が良民を殴打することは従来公許されたる所なりしも過般総監の訓示以来西神田、錦町及び日比谷署の外は皆之れを改良せりと聞く、故に被告等が陰に陽に今回の暴挙は政府の高等政策に基く快挙なりと揚言するは蓋し自己弁護に過ぎざるものと信ず。
 二、被告は又錦町署が正服私服の巡査二千五百名と振舞酒に酔ひ自働車に乗り白昼公然兇器を携へて社会主義者を殺せとの恐喝びらを警官及び群衆に散布せる横道会員数百名との応援を得て乱暴狼藉したる事実を挙げ自己弁護の用に供するも、錦町署の場合にありては警官も亦群衆心理に支配されたるものとして多少恕すべき点あり、(横道会員多数に兇器を携帯させたる儘検束者の室に入れ故意に脅迫せしめたる点は之を除く)被告等の場合は全く之に異るが故に如何にしても許しがたき野獣行為なり。
 三、若し本件が三井三菱にあらず又は富豪と云ふ程にあらずとするも兎に角有産階級の人に起りたるものとせば如何、弁護士会の如きは直ちに蟻の甘きに集ふ如く得たり賢しと、民事大家迄が平素売名家と冷笑する常連を推し退け人権蹂躙を絶叫し委員を挙げ調査を初めん、無産階級なるが故に弁護料なきが故に本件を不問に付すとせば司法権の独立も司法官の公平もあつたものにあらず、暴行に対するに暴行、復讐に対するに復讐、其結果の戦慄すべく重大なる豈赤旗事件に於ける其の結果の比にあらんや、現に今回の被害者は皆直接自救、ちつとたつとを高調し、告訴代理人の勧告を容れ法律の正義と公平とを信用したるは只本件告訴人等二人のみ、希くは一切の情実を排し涙を揮て法を執り告訴代理人をして先見の明を誇らしむるなからん事を。
      立証方法(中略)
      付属書類
委任状一通診断書写二通拘留部屋図解一通
 大正十年一月一日    山崎今朝彌 印
東京区裁判所検事局 御中
<山崎今朝弥著、弁護士大安売に収録>
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