警官強盗事件


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警官強盗事件
          本郷区駒込千駄木町二一〇 画工
          原告 望月 桂
          府下巣鴨町一七八六 文工
          原告 橋浦時雄
          右二名訴訟代理人 弁護士
          山崎今朝彌
          京橋区北紺屋警察署 警視
          被告 渡邊鉄三郎
          同所 警部
          被告 中島義明
          同所 巡査
          被告 吉川勝太郎
贓物返還並に強盗損害請求之訴訟
      訴訟の目的
 本訴の目的は一定の申立と同一なる外官吏の暴行若くは直接行動に基く危険思想の伝播を防止するに在り
      請求の原因
 一、原告は訴外同志数十名と共に大正九年十一月二十三日より同二十八日迄黒耀会第二回展覧会を京橋区南伝馬町通り星製薬株式会社第七階に開会し各自の芸術品を会場に持寄り会費を分担する特定の会員に之を展覧鑑賞せしめたり
 二、然るに二十七日被告等は共謀して不法大胆にも白昼公然官服帯剣のまま不逞巡査十数名を語らい、右会場に侵入し原告等の制止を無視し説諭を聴かず却て之れを脅迫威喝し、陳列の絵画四十余点を強取し去りたり
 三、右強取されたる絵画中原告望月桂の所有に属するものは『反逆性』外三点(此価額百七十円)の洋画及び日本画にして原告橋浦時雄の所有に属するものは『ストライキの旦』及び『動乱』(此価額五百円)の二点(水彩画)なり
 四、原告は久しく芸術の革命を主唱し今日漸く会心の作と之れを同好の士に鑑賞せしむるの機会とを得たるものなるに此の突然の盗難略奪に際会し呆然自失、殆んど為す処を知らず、買約の解除入会者の減少等財産上の損害は之れを暫く措くも其蒙りたる精神上の苦痛や蓋し莫大(殆んど数千円)なれば其賠償は賍物の返還と共に之れを請求せざるべからず
 五、茲に於て原告等は先づ悲鳴を揚げて『泥棒々々』を絶叫したるも遂に被告等の顧みる処とならず依て原告は止むなく直ちに走て難を被告等の属する所の警察署に告げ、真正巡査数名は宙を駈けて被告等の逮捕に向ひたるも未だ縛に付かず事件の進行到底覚束なきを以て更に本訴を提起せり
 六、被告或は係争の絵画は風教に害あるものなれば職権を以て之れを撤去したるものなり敢て強盗の意思ありたるにあらず其行為や正当なり合法なり些の過失あるものにあらずと抗弁せん
 七、然れども仮りに右係争の絵画を治安若くは風教に害あるものとして右は決して(一)刑法第百七十五条の猥褻の図画にあらず(二)治安警察法第十六条に所謂街路其他公衆の自由に交通し得べき場所に掲示したるものにあらず(三)黒耀会は帝展と其選を異にするを以て帝国美術院展覧会規則の適用を受くることなく(四)又七階も屋内なれば広告物取締規則若しくは道路取締規則にも違反せず(五)要するに被告には治安に害ある原告所有の絵画を擅に撤去するの職権即ち法律の付与したる権能なきものとす
      一定の申立
 被告等は連帯して原告望月桂に反逆性と題する傑作の西洋画を返還し且つ金四拾円を支払ふべし
 被告等は連帯して原告橋浦時雄に動乱と題する傑作の水彩画を返還し且つ金四拾円を支払ふべし
 訴訟費用は被告等の連帯負担とす
 尚保証を条件とする仮執行の宣言を求む
 大正九年十二月八日    右原告代理人 山崎今朝彌
東京地方裁判所 御中
<山崎今朝弥著、弁護士大安売に収録>
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