忌避申請の決定


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忌避申請の決定
 俺れが或る地方裁判所で民事の陪席をしと居た時、部長が病気だと云ふので代理部長として出廷した。前回部長から甚く突つかれた某弁護士の番になると、ツと立て、民訴第三三条以下の規定に従ひ偏頗の恐ある理由を以て裁判官全部に対し忌避の申請をしますと来た。初物の御馳走に面喰らつた俺は、陪席にドウしたものかと相談すると、陪席もドウしたものかと鸚鵡かへし。コンナ時は合議室に限ると心得た俺は早速機転を利かせ、ソレでは合議して決定しますと言残してサツサと合議室へ引揚げ六法全書をクツて見たが解らない、評議の結果所長に聴かうとなつて俺が所長の所へ行つた処、所長は、ソイツは困る俺は一度も忌避された事が無いからドウしてよいか知らんぞと云ふ。愈々困て、大事件が起きたから生命に障らぬ以上大至急一寸来て呉れと部長を迎へにやつた。部長は汗を拭き々々薬瓶持参の後押綱曳で飛んで来た。誠に困つた訳を話すと、ナンノコツタ、忌避なら、ソーデスカと放つて置けばソレでよいとの事、ソコで法廷へ這入つて場を合せる為にソレでは忌避をなさるのですかと駄目を押しソーですかソレでは次の事件を遣りますとヤツと切り抜けたはよいが、此間約一時間半を費したので、書記は綺麗に調書を整頓し、被告代理人は忌避の申請を為したり、裁判長は合議決定を言渡すと宣して退廷して左の決定を言渡したり『然うですか』と記録されたには弱つた。
 之は弁護士岸井辰雄君の築地事務所新築祝の席上で、今度東京地方裁判所の部長判事から弁護士になつた名川侃市君が話した在官当時の失敗談の一節である。名川君の名判官だつた事を知る者も同君の名話家なる事を知らぬ者があるが、同君のは実に天下一品である。余り上手なので此話にも少々付け加へがある様に思へる位である。
<山崎今朝弥著、弁護士大安売に収録>
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