寧ろ激賞すべき愛国的行為


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寧ろ激賞すべき愛国的行為
          山崎今朝彌
 川崎造船所の罷工団が神戸で「工場管理」を宣言すると、何か事あれかしと機会をネラツてゐた資本家擁護団は待てゐましたと許りに舌を揃へて、其は強盗だ家宅侵入だ赤化だ悪化だと云ひ触し、其を口実にトウトウ出兵となり検挙となつた。僕は初め湯地警保局長が大に憤慨して「裁判所とも協議の上家宅侵入で「彼等」を片ツ端から検挙する」と放言したと云ふ新聞記事を見て法律学校の二年級も卒業したと云はれる人がマサカソンナ無法の事を云ふ筈がないソレは一種の「宣伝だ威嚇だ」と思ふた。依つて其積りで或雑誌の八月号に工場管理が法律上正当の愛国的行為である事を投書したが今になつて見ると彼等は或は真にソウ思ふてゐるかも知れぬ。僕に云はせると問題の工場管理は問題にならない程正確に民法上の「事務管理」である、民法第三編第三章には「事務管理」をして其第六百九十七条には「義務なくして他人の為に事務の管理を始めたる者は其事務の性質に従ひ最も本人の利益に適すべき方法に依り其管理を為すことを要す」七百条には「管理者は本人が管理を為すことを得るに至るまで其管理を継続することを要す」七百二条には「管理者が本人の為めに本人の支出すべき賃金其他有益なる費用を立替へたるときは本人は之れを償還することを要す但し管理者が本人の意思に反して管理を為したるときは本人の利益となりたる費用のみを償還すべし」とある裁判所の判決例や学者の著書は皆一致して以上の条文を根拠として「事務管理とは頼まれもせぬのに勝手に他人の仕事をしてやる事である而して其は本人の意思に反しても構はない何となれば此は一般国家社会の利益を考慮して設けた規定であるから」と定義説明して居る然らば問題の工場管理が適法正当の寧ろ奨励激賞すべき愛国的行為である事論を俟たない。然るに世の所謂資本家擁護家なる者が頻りに之を排斥するは、独り法律の無智に基く計りではなく、他に何か曰く云ひ難しの曰くがあると云ふの他はあるまい。(東京毎日)
<以上は、山崎今朝弥氏が著作者である。>
<旧仮名遣いはそのままとし、踊り字は修正し、旧漢字は適宜新漢字に修正した。>
<底本は、『新神戸・労働者新聞』(日新書房、1969年)、底本の親本は『労働者新聞』(労働者新聞社)第43号1頁。大正10年(1921年)8月15日発行。>
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