事務所で受けた裁判(6)


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事務所で受けた裁判(6)
          山崎今朝彌

■口頭弁論調書鑑定書及び鑑定人訊問調書のみに依つては如何なる鑑定を為したるや不明なりとするも鑑定申立書と対照して鑑定の結果明なる場合には其鑑定の結果を採用したる判決は不法にあらず。(大民一)

■証人の証言に付何等判示する所なきは其証言を採用せざりし事を知るに足るものとす。(大民一)

■根抵当設定契約に因り抵当権を設定したる場合に其抵当権の根抵当権なる事を以て第三者に対抗するには其登記に登記原因として根抵当設定契約の記載あるを要す若し然らずして単純なる抵当権設定契約を以て登記原因と為したるときは其登記は根抵当設定の登記たるの効を有せず(大民一)

■年金証書又は恩給証書の返還を求むる訴訟は所有権に基き証書の返還を求むるものにして財産権上の請求たること疑を容れず然れども貼用印紙は財産権上の請求にあらざるものとして民事訴訟法用印紙法第三条により三円五十銭にて沢山なりとす。(大民二)

■恩給証書を担保の為め受取りたるものは担保契約の無効なる以上之を所有者に返還すべき債務あるものにして該証書を滅失せざる限り唯だ手裡に現存せざるの故を以て返還を拒むを得ず。(大民二)

■民法第百十七条第一項の無権代理人が相手方に為すべき損害賠償は積極的損害の賠償を為さしむるの趣旨なりとす故に又契約が本人との間に効力を生じたる場合と同様に相手方は其受けたる損害及得べかりし利益に付履行に代る賠償を為すべきものとす(大民三)

■原審弁論終結後判決言渡前抗弁要旨と題する書面が調書に添付されたるのみにして当該弁論調書に準備書面が添付せられざるは事実なるも原審第一回弁論調書には「控訴代理人は別紙準備書面に基き事実関係を演術したり」とあり抗弁要旨と称する書面には判示の抗弁の記載あるを以て右抗弁要旨は即ち準備書面にして偶偏綴の次序を誤り当該調書に添付されずして其後の弁論調書に添付されたるものに過ぎず。(大民一)

■民法第百四十五条に所謂当事者は時効の完成に因り利益を受くる者を指称す保証債務は主たる債務者に代り其債務が履行するに在るを以て主たる債務か時効に因り消滅すれは保証債務も消滅すべきは当然にして保証人は主たる債務の時効に因り利益を受くべき者なれば同条に所謂当事者として主たる債務者の時効を援用する事を得る者とす。(大民一)

■動産所有権の移転を第三者に対抗するには其動産の引渡ありたる事を必要とするは当然なるも其旨の抗弁を原審に於て提出せざる以上原審に於て此点に付き判示を為さざるも不法にあらず。(大民一)

■消費貸借の成立するには物件の引渡を必要とし本件に於て其引渡なきこと明にして消費貸借の成立せざるものなること勿論なりとするも上告人は原審に於て右抗弁を提出したる者に非れば原判決に其引渡ありたるや否に付判断する所なきは当然なり。(大民二)

■被上告人が原審に於て主張したる所は西谷勘市が上告人の代理人として甲第二号証の契約を為したりと云ふに在るを以て其主張中には西谷勘市の行為は権限外の行為なるも被上告人は民法第百十条に所謂正当の理由を有したる第三者なるが故に上告人は甲第二号証の契約の責任を負はざる可からずとの主張を当然包含するものとす。(大民一)

■上告理由は民法百十条に所謂第三者が其権限ありと信ずべき正当の理由とは客観的に観察して第三者をして代理人に其権限ありと信ぜしむるに足る事情にして其事情存在が本人の作為若くは不作為に出る者を云ふが故に本件に於ても裁判所が被上告人に其正当の理由ありたる事を断ぜんには必ず被上告人の善意なりしことを認定せざるべからず然るに原判決は此点に付き何等の裁判を為すことなく漫然被上告人に其権限ありと信ずべき正当の理由ありたるものと判示したるは理由不備の違法ありと云ふに在れども原判旨は被上告人が四谷勘市に其権限あることを信じたるものと認めたるに外ならざれば其善意なりしことを認めたるものなるや自明なり(大民一)

■民事訴訟法第四百一条第二項第一号に所謂控訴せらるる判決の表示とは控訴せらるる判決を他の判決と識別し得べき程度に表示することを要し又之を以て足れりとする法意なれば判決の主文を欠き従て勝敗の如何を知る事能はざるときと雖も如何なる裁判所の如何なる判決に対して控訴を為したるかを知るを得れば足るものとす。(大民一)

■一事不再理の原則と確定判決の効力とは全然異なるものなれば保証債務履行の訴に於て確定したる理因に基因して不法行為に因る損害賠償の本訴を確定判決の効力に依り排斥したるは不法にあらず。(大民二)

■大字名義を以て負担する村税は其課税の目的が大字私有の財産に係ると否とを問はず大字の属する村の負担する財務とは独立せる別個の関係に立つべきものなるを以て村の公費を以て支弁すべきものに非ず。(大刑三)
<以上は、山崎今朝弥氏が著作者である。>
<旧仮名遣いはそのままとし、踊り字は修正し、旧漢字は適宜新漢字に修正した。>
<底本は、東京法律事務所『東京法律』第17号9頁、大正5年(1916年)3月1日号>
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