3.26・大団円


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大団円
 どうせ有罪の判決がある。コツソリ会心の控訴理由書でも作成し、時機を見て取下げ、人の騒ぐ頃は停職六ケ月も既に済んだ頃にしよう。控訴はした。弁護は不用になつた。取下てはならない条件はなかつた。言ひ免れはチヤンと出来てる。然るに今日の新聞には悉く五月二十七日もう停職四ケ月の言渡しがあつた事が報道されてる。何処から洩れたかと司法記者に聞いたら書記課だと答へる。書記課なら呉れ呉れも頼んで置いたにと憤慨して見ても後の祭りである。取り敢へず病気になつてユツクリ考へて見ても、どうする事も出来なんだ。取り敢へず書記長への恨み状とはなつたが瓢箪から駒が出て串戯から肺炎が出た。理由は後から名文でと又取敢へず控訴状だけ出して置いたが、よく考へて見れば遺憾は遺憾でも之れも亦バカバカしい。盲人に孔雀は豚に真珠、それより懲戒裁判にも控訴取下の規則があるかどうかを試した方がせめてもの役得と早速六月廿九日に控訴を取下げた。別に条文も規定もある訳ではなかつたが。外の事と違ひ御役人の手数が省け厄介の除ける事である。刑法刑事訴訟法及び民事訴訟法は茲に直ちに弁護士判事検事懲戒法に適用され、停職四月の暑中休暇は病気休養の恩賜休暇となり、善人栄へて悪人亡びたるはどこまでも目出たし目出たし。

 終りに、控訴状に弁護士会長の事が書いてあるのは、当時恰度弁護士会役員選挙の際で、前会長の中川博士と現会長の乾博士とが口を削つて買収の有無と前後とを論難攻撃し合つて居たからそれを皮肉つたのだ。
<山崎今朝弥著、山崎伯爵創作集に収録>
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