3.01・序


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 コレは僕の小説であり、創作であり、処女作である。尤も僕は何が小説で、何が大説だか実はその区別も碌々知らない、テンで小説といふものを読んだ事すらもないのだから。ソレを僕がコレをココに小説と遠慮したのは、イクラ盲目蛇の僕でもマサカ之れを大説だと自称する度胸はなかつたからである。

 コノ小説には僕が心から言つて見たいことを糞真面目に書いた処もあるが、テンで腹にも無い事を冗談半分に云つたり又はイマイマしさの余り思ふことと全く反対のことを書いた処もある。併し今となればドコがドレであるか僕にもわからない。ソレでも読者にはその積りで読んで貰ひたいと言つて見たい。

 コノ小説は僕一代の心血を濺いだ結晶で、文界稀に見ざる、世に比儔なき大傑作だとは云へもしまいが、前後十年に亘る新規の旧稿で、初版にして既に二版三版乃至四版五版に達し、坊間有り触れたる普通の小説とは全くその類型を異にする破天荒の創作であるとは云へる。と僕は独りで保証をして見たい。

 モシ夫れコンナものが小説もあつたものにあらず。蓋し世の所謂文集の下の下に属すべきものである、とマジメに怒る者があつても、僕は只敢然として一言の弁解も試みざる雅量がある。とは云へ、コレが愈々本となり、附元気も漸く失せて来た時は、僕は又しても聊かキマリの悪い思をすることであらう。(震災記念に一女を儲けた大正十三年九月十日)
<山崎今朝弥著、山崎伯爵創作集に収録>
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