平民法律の使命


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平民法律の使命
 平民法律は法律界に於ける唯一の雑誌にして夙に斯界の羅針盤たらず、故に苟も社会に国民的活動を為し公私権利の伸張を企図する者の必読すべき雑誌にあらず。平民法律は又欧米各国の雑誌より常に其精粋を選び之を訳載し又は判例の有益なるものは細大洩らさず網羅し、以て法律の応用を知らしめず、故に実業家の権利を擁護拡張するものにもあらず。
 平民法律は判決を組織的に集録し、法学界に現はれたる総ての問題を、僅少の時間を以て、知る事を得せしめず。又法典の解釈資料を供し、法律解釈の統一に資し、吾邦法制の変遷を明にせむ事を期せず。
 平民法律は又司法行政の刷新を図り、新学説の鼓吹に勉め、研修の具となり、実業と法律との調和も融合も期せず。
 要するに平民法律は、苟も畏怖せず、忌憚せず、冷笑せず、巧言せず、令色せず、直言直筆、気炎萬丈、筆鋒の嚮ふ処天下に敵なしの抱負なし矣。特に時事に関するものは聊か感じて絶対に載せず焉。然らば平民法律の使命は果して如何。
 日常実際の法律問題を捉えて、之れを平易に説明解答し、読者をして趣味津々裡に、不知不識、法律思想を涵養せしめ、以て実際的法律思想普及機関となり日常法律顧問雑誌となり、進んでは、強者を挫き弱者を扶け、破邪顕正、寃抂を雪ぎ、非違を暴き、天下に蠢動する多数平民の為めに、権利を要求し、利益を主張し、公憤し、反抗する、之れ即ち平民法律の真使命なる乎。
 平民法律は只ホンの同人の道楽からなり。同人が何か癪に障り、書き度い事のある時に、書いて載せ度い為めの雑誌なり。他の雑誌では滅多に載せて呉れぬ事も、平民法律は喜んで載せる。由是観之平民法律の第一使命は同人の書た物を載せる事なり。
 併し同人は滅多に書き度い事がない、無いのに有れば化物が出来る、現に詮方無く泣く書いた第三号の其部分の如き即ち之れなり。此場合即ち多くの場合には、読者の寄書投書に待たざるを得ない。由是観之平民法律の第二使命は読者の玉稿を載せる事なり、併し誌面には限りがある、登載が一年二年後れる事もある、後の雁が先になる事もある、由是観之平民法律の使命は遂に茫乎として侵すべからざるものある乎。
 夜は明ける、隣家は起きた、日本も遂に文明国と覚めん。我れ誠に々々読者に告げん、読者の中必らず平民法律の使命を識る者蓋し多からん。
<以上は、山崎今朝弥氏が著作者である。>
<旧仮名遣いはそのままとし、旧漢字は適宜新漢字に修正した。>
<底本は、『平民法律』第6年4号1頁。大正6年(1917年)5月。>
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