忌避申請却下決定(5月6日付)


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

      決定
          申請人 山崎今朝彌
 右に対する東京控訴院に於ける懲戒裁判所大正十一年(よ)第一号弁護士懲戒被告事件に付き右申請人より忌避の申請を為したるに付き決定すること左の如し
      主文
 忌避の申請は之を却下す
      理由
 申請の要旨は東京控訴院に於ける懲戒裁判所裁判長判事牧野菊之助判事西郷陽判事遠藤武治は大正十一年四月十九日申請人に対し懲戒裁判開始決定を為し其理由に於て被告山崎今朝彌は東京地方裁判所々属弁護士にして其業務に従事中小川孫六外一名新聞紙法違反被告事件の弁護人として大正十一年二月二十日上告趣意書を大審院に提出したるが其論旨中第一点前段に於て「第二審裁判所の有罪と認定したる事実に係る新聞紙の記事は文詞用語冷静平凡奇矯に失せず激越に渉らず十数年来萬人の文章演説に上り都鄙各所に行はれたる常套の論議なれば毫末も社会の平静を紊り共同の生活を乱すものにあらず」との旨を云ひ更に第二段に於て「若し之をしも強いて安寧秩序を破壊するものなりとせば日毎日常の新聞雑誌は悉く秩序紊乱となり之を不問に付する全国の司法官は原審に関与したる判事山浦武四郎外二名を除くの外皆偉大なる低能児の化石なりと謂はざるを得ず天下豈に此の如き理あらんや然らば原審が之を安寧秩序を紊乱するものとし新聞紙法の罰条に問擬したるは不法も甚しく真に呆れて物が言へずと言はざるを得ず」との語句羅列したるものなり右事実は之を認定するに充分にして前示第二段の論旨は前段の趣旨を述ぶるに付何等必要ならず且当該被告事件の上告趣意書として甚しく不謹慎なる言辞を弄したるものと被認其行為は弁護士の体面を汚すべきものにして東京弁護士会々則第三十九条に違背するものと説明したり此理由中後段の説明は前段の開示に必要ならず且つ有罪の予断を有するものと認められ明かに偏頗なる裁判を為すことを疑ふに足るべき情況あるものなるを以て弁護士法第三十四条判事懲戒法第十一条刑事訴訟法第四十一条第四十二条民事訴訟法第三十五条第三十六条に依り当該三判事に対し忌避の申請を為すと云ふにあり仍而案ずるに申請人に対する懲戒裁判開始決定の末段には其主張の如き章句ありと雖も這は弁護士法第三十四条判事懲戒法第廿条に依り懲戒すべき処為を開示するの必要上叙述したるものにして何等有罪の予断を懐き偏頗なる裁判を為すことを疑ふに足るべき情況無きを以て本件申請は其理由なきものとし主文の如く決定す
 大正十一年五月六日
          東京控訴院に於ける懲戒裁判所
          裁判長判事 立石謙輔
          判事 尾佐竹猛
          判事 名児耶梅三郎
 右謄本也
 大正十一年五月六日
          東京控訴院に於ける懲戒裁判所
          裁判所書記 澤路茂樹
<底本は、法律新聞社編『法律新聞[復刻版]』(不二出版)。底本の親本は『法律新聞』(法律新聞社)大正11年(1922年)5月20日発行、1980号16頁。旧漢字は新漢字に適宜修正した。>
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。