山崎の忌避申請書(5月1日付)


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      忌避の申請
         申請人(被告弁護士) 山崎今朝彌
         被申請人(裁判長判事) 牧野菊之助
         同(判事) 西郷 陽
         同(判事) 遠藤武治
 右当事者間の東京控訴院に於ける懲戒裁判所大正十一年(よ)第一号弁護士懲戒被告事件に付申請人は弁護士法第三十四条判事懲戒法第十一条刑事訴訟法第四十一条第四十二条民事訴訟法第三十五条第三十六条に依り左の申請を為す
      主文
 被申請人を忌避す
      理由
 被申請人は東京控訴院に於ける懲戒裁判所の判事にして其の職務に従事中曩に大正十一年四月十九日申請人に対し懲戒裁判を開始すべきや否やを決定するに当り弁護士法第三十四条判事懲戒法第十七条に基き其決定書主文に於て「弁護士山崎今朝彌に対し懲戒裁判を開始す」と決定し其理由に於て『被告山崎今朝彌は東京地方裁判所々属弁護士にして其業務に従事中曩きに広島地方裁判所に於て新聞紙法違反被告事件に付有罪の第二審判決を受けたる被告人小川孫六同丹悦太の選任に因り該事件に於ける上告審の弁護人と為り大正十一年二月二十日上告趣意書を大審院に提出したるが其論旨中第一点前段に於て「第二審裁判所の有罪と認定したる事実に係る新聞紙の記事は文詞用語頗る冷静平凡奇矯に失せず激越に渉らず十数年来萬人の文章演説に上り都鄙各所に行はれたる常套の論議なれば毫末も社会の平静を紊り共同の生活を乱すものにあらず」との旨を云ひ更に第二段に於て「若し之をしも強ひて安寧秩序を破壊するものなりとせば日毎日常の新聞雑誌は悉く秩序紊乱となり之を不問に付する全国の司法官は原審に関与したる判事山浦武四郎外二名を除くの外皆偉大なる低能児の化石なりと謂はざるを得ず天下豈此の如き理あらんや然らば原審が之を安寧秩序を紊乱するものとし新聞紙法の罰条に問擬したるは不法も甚しく真に呆きれて物が言へずと云はざるを得ず」との語句を羅列したるものなり
 右事実は大審院検事局裁判所書記松原武一郎作成に係る被告今朝彌の上告趣意書謄本及検事三浦栄五郎作成に係る山崎今朝彌の聴取書に徴し之を認定するに充分なり』と弁護士法第三十四条判事懲戒法第二十条に基き懲戒すべき所為及証拠を開示し更に第二段に於て「前示第二段の論旨は前段の趣意を述ぶるに付何等必要ならず且当該被告事件の上告趣意書として甚しく不謹慎なる言辞を弄したるものと被認其行為は弁護士の体面を汚すべきものにして東京弁護士会々則第三十九条に違背す」との語句を羅列したるものなり
 右の事実は本件懲戒裁判開始決定書に徴し之を認むるに充分なり
 前示第二段の判旨は前段の開示を為すに付何等必要ならず且当該懲戒裁判の開始決定書として甚しく不謹慎なる有罪の予断を弄したるものと被認其行為は疑ひもなく明かに偏頗なる裁判を為すことを疑ふに足るべき情況あるものにして判事懲戒法第十七条並に第二十条の権限を超越し刑事訴訟法第四十一条後段の場合に該当するを以て今後将来の為めと一は唯々諾々たる他の被告の到底企及し能はざる処なるとの為め不本意ながら止むを得ず本申請に及びたる次第に有之候
 追て申請人は判示羅列の語句が頗る常套を越へ多少矯激に走りたる傾きは之れ有りとするも畢竟は之れ皆慨世の余憤遂に反省を促す警世の文字となりたるに過ぎざれば寧ろ其為め其地位を向上せしむる憂ひこそあれ毫も弁護士の体面を汚すべきものにあらずと信じ候されど強ひて無罰を希望するものに無之候へば五月十一日の口頭弁論期日には出廷も仕らず本案に付ては一言の弁論も仕らず只一日も早く和気靄々裡に裁判の決定せられんことを希望するものに有之候
 大正十一年五月一日    右山崎今朝彌
東京控訴院に於ける懲戒裁判所 御中
<以上は、山崎今朝弥氏が著作者である。>
<底本は、法律新聞社編『法律新聞[復刻版]』(不二出版)。底本の親本は『法律新聞』(法律新聞社)大正11年(1922年)5月5日発行、1974号17頁。旧漢字は新漢字に適宜修正した。>
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