上告部より一筆


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上告部より一筆
           山崎今朝彌
月別  棄却 破毀 取下 被上告 受理
一 民 一二 -二 -一 --〇 -四
  刑 -〇 -三 -〇 --〇 --
二 民 一五 -三 -二 棄却二 -九
  刑 二四 -六 -二 棄却一 --
三 民 一二 -二 -一 棄却二 一二
  刑 一八 -九 -三 --〇 --
四 民 -六 -四 -三 破毀一 -四
  刑 一八 -六 -三 --〇 --
 本年一月より四月迄の上告部言渡統計右の通りに有之候、棄却沢山には候へどコレで中々頗るの自慢に御座候、尤も自慢でもなければ矢鱈に発表致し不申候、表中刑事の被上告は私訴に限り受理は民事に限る事、先刻御承知の通りに御座候。
 民事上告が受理となっても結局は棄却となる事多きは抑々元来なれど我上告部に於ては天地開闢以来未だ曽て被上告側にて破毀の言渡を受けたる事一回も無之勝訴当然と心得居り候処今回初めて大正三(オ)第三六九号上告人代理弁護士伊藤秀雄高野金重氏等との訴訟に於て破毀敗訴の言渡相受け申候表中四月の破毀一とある奴つ即ち是れ也。
 法律新聞は十年一日の如く欄外第一頁に刑事上告被告本人への注意の如く其実上告不慣の弁護士への注意として上告趣意書提出期間に関し種々記載有之候、一寸シヤラクサイ様に感じ候ものの今更乍ら流石成程と感服仕り候、今日に至るも尚多数の弁護士諸君より十五日の期間経過後に公判を延期せいの上告趣意拡張書を提出せよのと申越さるるには真実閉口仕り候、出来ぬ相談計りか無益の業に御座候。
 民事上告事件に於て事実説明の為め態々遠方より本人を上京せしむる事も旅費損失の外は別に必要なき事と存候、遠方態々上京したる被上告代理人が上告理由には答弁もせで第一審以来の事情を詳説し遂に裁判長の注意となる事往々有之候も之れも考へ物と存候。
 兎に角上告は多数の人が多数の頭と目で多くの日数に何回も何回も要所々々を綿密に調査するに限る様考へられ候、全軍匙を投たる後最後の人が最終の日に破毀理由を発見したる例も尠なからず候、由之観是一日も早き委託の手続、即ち之が頗る肝要と存候、尚刑事上告にて期間切迫の場合は電報に依て直ちに仮弁護届を提出し記録閲覧理由書提出の便法も有之候。
 来月迄には上告部の受附件数東京上告専門処以来の通計千に達し候へば罪滅しに自他利益の為め何か紀念仕り度奇抜の趣向目下考案中に御座候、早々。
<以上は、山崎今朝弥氏が著作者である。>
<旧仮名遣いはそのままとし、旧漢字は適宜新漢字に修正した。踊り字は修正した。>
<底本は、東京法律事務所『月報』第9号3頁、大正4年(1915年)5月20日号>
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