弁護士の品位


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弁護士の品位
          山崎今朝彌
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手数料拾銭以上御思召
自由法律相談所
所長法学士、弁護士 須之内品吉
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 これは東京の真ン中日比谷倶楽部大建築の表に懸けられたる大金看板である、此人は又帝国興信所の内報に手数料鑑定料御思召の広告をして居る、之れに対し、弁ゴ士の品位を汚す者だと憤慨する非難者がある、小生は又其れが茶ン茶ラオ可笑クて溜らない。小生曽て甲府在職中
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   甲府遊郭大門前
弁護士大安売 山崎今朝彌
   旧化物屋敷地跡
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と新聞広告した事がある、弁護士会では弁ゴ士は呉服屋ではない大安売は弁ゴ士の体面に係はるとあつて、[甲野]弁護士がやつて来り詰問され大屋からも又非常の小言を頂戴したから小生は直に其翌日
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   甲府市新青沼町五十七番地
民刑品々 弁護士 山崎今朝彌
   追て旧化物屋敷の儀は今後家賃に障るとて大屋大目玉に付全部取消
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と広告し直した、大屋の方は取消の広告も出さぬ様との依頼があつたが弁護士会からは其後何の咎めも無くなつた、但し以来小生を一膳めし屋と呼んだ。
 一体世間では弁ゴ士と云ふ者の天職を非常に誤解して居る、我田引水かは知らぬが、弁護士と興行師との間には其天職の関係に於て何の差異もない、弁ゴ士は一の商売である、他人に迷惑を懸けず平和に商売して居れば立派の忠良なる臣民である、若し其れ社会の為めとか公共の為めとか云ふに至つては無料安売又は思召の犠牲を払ふ場合に於てのみ有り得べきである、充分の報酬を得て誠実熱心に事件と取扱ふて其れで天下の為めなら電信柱に花が咲く、月給を取て油を売る官吏も陛下の為めとなり、芸者を買ふて儲ける実業家も国家の為となる、兎角批判者は批判サレ者より品格劣等なることは羅馬法以来の原則であるが、弁ゴ士の品位問題に限りては例外がない。彼等非難者の論拠の真善美なるものを煎じ詰めても「と誤解せらるる恐れがあるから」と云ふに過ぎない、併し品位問題は上ツ表の問題ではない、目や口やの問題に非ずして、腹と腹との問題である。
 終りに一言す
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 拙者儀少々「つんぼ」に有之候処今回大いに「つんぼ」と相成候に就ては早速要領を得る為めの電話は堅く御断り申上候、但当方よりは萬事電話にて申上候、終りに記憶と判断とは馬鹿に良く相成、大した不便も無之別して片輪とも何とも感じ不申候
 大正三年十月    山崎今朝彌
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<[ ]内は仮名>
<以上は、山崎今朝弥氏が著作者である。>
<旧仮名遣いはそのままとし、旧漢字は適宜新漢字に修正した。踊り字は修正した。>
<底本は、東京法律事務所『月報』第2号4頁、大正3年(1914年)10月20日号>
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