奇人変人ソラツンボ並に変死記事取消請求書(山崎今朝彌)


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 此記事に対して筆者と中外社を相手取り「生存権確認訴訟」を提起し、検証の申請をして裁判所から死んでるか生きてるかを調べて貰ふも面白いが、余り人を馬鹿にした様に誤解される虞れがある。と云ふても損害賠償の訴は真面目腐つてるし、「生存広告請求訴訟」は此記事が人の名誉を毀損しない以上民法第七二三条により出来そうにもない、止むなく新聞紙法により取消請求をした。



奇人変人ソラツンボ並に変死記事取消請求書
          『応用ユーモリスト』 弁護士 山崎今朝彌
 拝啓貴社発行『中外』第二巻第十号(九月号)御掲載『山崎今朝彌の死』と題する、『立派なユーモリスト』貝塚渋六氏執筆の記事中、拙者が(一)奇人変人なる事(二)ソラツンボを遣ふこと、(三)秀逸の変死を遂げた事、の三点は、全く拙者の関知せざる事実に有之、其理由は
 (一)拙者は元来、学問、素養、品性等こそ少しも無之候へ共、従来、物の道理、事の決着、利害の得失だけは、未だ曽て解からざりし試しも無之、到底奇人変人の柄には無之、親友ルーズベルト君、故伊藤公等の極力推賞せられし如く『常識の円満に発達したる、最も弁護士向』の人物に有之候事、内外骨相学大家鑑定の結果が之れを証明して余りある次第に有之候。
 (二)ツンボの儀に付ても、多年民事商事専門の弁護士として折角あれ迄売出し候地位を、愈々耳は駄目と決定するや、タツタ一夕にして忽ち上告事件専門を発明致し、直ちに『日本に於ける世界一』の大家と相成候位の真面目に之有候事、本年七月以来拙者の為したる『拙者久しくツンボを以て自ら任じ居り候処、昨年末沃度治療仕り候結果、近来漸く数年前の原状を回復致し候に付ては、今回御大典記念として、専門の上告事件の外、専ら(一)従前通りの民商事極難事件、(二)聊か先輩大家の煽動に乗つた傾きは有之候へ共、「一種特別の弁護振」にて、社会問題に関する刑事事件の無料弁護、(三)苟も義理人情の如何なるものかを弁へる者の到底為し能はざる類の法律事件、(四)時代の要求に応じたる判検事、弁護士、官吏公吏、新聞社、等に対する告訴告発事件、を専門に取扱申候』との新聞広告に依るも殆んど明白なる事実に有之候。
 (三)若し夫れ不運拙なく、非望を遂げず、変死を遂げたる記事に至つては、自分ながら読むに従ふて愈々真偽に迷ひ、同氏に対し只管同情の念に堪へざる次第。遺族の者も急場の事とて何等の準備も出来申さず、未亡人宛の弔電弔詞、マー再生でお目出度うの御挨拶、事件は至急他所へ廻せの御指図、一々御返答にも差閊へ居り候始末に御座候。仏も流石にオドケも申せず、早速生存広告に営業広告を致させ候も、何しろ、当代第一流の文豪、日本唯一のユーモリストが天下の文芸批評家を驚倒せしめたる八月号『猫の百日咳』の続編として、腕にヨリをかけての名文を、毎月数萬部を売尽す光栄を有する貴誌に掲載されし事とて、チツトやソツトの事にては徹頭徹尾に取消し切れず、誠に弱り切り申候。
 右の如く、今更急に奇人変人ソラツンボ等申され候ては、営業上拙者の迷惑一方ならず。殊に最初は全文読了の決心を以て読み出したる者も、中途忽ち巻を捨てて潜然涙を流し、遂に事件の依頼を遠慮せざるを得ざる底の名文的悪文を書かれ候ては、拙者再生の趣旨も相立ち申さざる義に付、何卒貴誌次号に此全文御掲載の上、至急全部御取消相成度、新聞紙法第十七条の規定に従ひ此段及請求候也。
 追て拙者の事務所が芝区新桜田町十九番地なる事は事実に相違無之候も、電話新橋一九一一番は電話新橋特長二〇七七番の事実相違に付、是亦添へて御取消相成度候也。
 大正七年九月十五日
          右 山崎今朝彌
中外社 御中
<山崎今朝弥著、弁護士大安売に収録>
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