平民の法律


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平民の法律
 或靴工の十八才になる息子が丁稚奉公先にて二銭の棒先を切つた事から店の金二百円を盗んだに相違ないと拷問され、其結果親に頼まれ盗んだと云ふ詫状を書いた。店では親を呼び付け其弁償を迫りたる故親は息子に糺したる処、息子は拷問され止むなく書いたので盗んだ覚へはないと泣いた。親の帰宅した後店の親類に当る某署在勤巡査が来て又息子を拷問したが白状しないから、其息子の貯金と着物を渡さないのみならず懐中の財布を取上げて叩き出した、其処で事件が当所平民法律所へ来た、当所は店の主人と巡査は共謀で人を脅迫して詫状を書かした点は刑法二百二十三条の暴行脅迫罪、荷物や貯金通帳等を渡さぬ点は横領罪、財布を取上げた点は窃盗罪と鑑定した。依て当所は先づ第一に其親に息子を連れて店へゆき主人に面会して荷物及び財布並に主人に預けある息子の貯金通帳並に印形の返還を請求せしめた処、主人は面会せず三百を代理に出して、此事件が片付く迄は右の品物は一物も渡さぬと断つた。
 依て此度は当所より其巡査の属する警察署内の其巡査に宛て相当の謝罪を為せば事を穏便に済ますが、謝罪せねば当所が右事件の告発をすると云ふ端書、店に宛て賍品を返却し謝罪をせよ然らざれば告訴をすると云ふ端書を出した処、此事実全部が直ぐと署長に知れ刑事や警部が仲裁に入り、息子の書いた証書を焼き捨て取上げた財布と貯金通帳と荷物は全部返還させ巡査と店とを謝罪らせ萬時目出度解決した。
<山崎今朝弥著、弁護士大安売に収録>
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