怠業の場合


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怠業の場合
      怠業と同盟罷工と業務妨害と背任と
 私の茲で云ふ怠業は所謂サボである日本特有の油売りである、義務の不履行、契約の違反である。仕事を充分為し居る如く見せ掛けて仕事を四分五分或は六分七分しか為さない事である、精出す如く見せて惰け怠る事である、仕事場に於ても仕事に着かず手を拱いて更に仕事を為ない如きは或はストライキと云ひ得るかも知れぬが茲に謂ふサボではない。雇主に損害を与ふる目的を以て機械を破壊し物品を持出し故意に不合格品を作り注文を間違へ出勤日数労働時間製作個数を詐る如きは或は刑法二百三十四条の威力を用ひ人の業務を妨害したる罪、同二百三十五条他人の財物を窃取したる罪、同二百四十六条人を欺罔して財物を騙取し又は財産上不法の利益を得たる罪、同二百四十七条他人の為め其事務を処理する者自己若くは第三者の利益を図り又は本人に損害を加ふる目的を以て其任務に背きたる行為を為し本人に財産上の損害を加へたる罪、同二百五十二条自己の占有する他人の物を横領したる罪、同二百六十一条の他人の物を損壊したる罪等の犯罪行為となるかも知れぬが之等は茲に謂ふ怠業ではない。サボタージユの範囲や其訳語の妨業が正当か怠業が誤りか等の論は茲で論ずべき範囲でない、普通働主特に職工等が口にするサボと云ふ事は私の知る限りでは只怠る事惰ける事録な仕事を為ない事である、私は之れだけに就て少し以下に論じて見る。
 サボは犯罪にならぬと云ふ、此犯罪にならぬと云ふ事はストライキが犯罪にならぬと云ふ事とは違い、ストを煽動誘惑すれば治安警察法十七条に触れるが、サボを煽動誘惑しても治安警察法第十七条には触れぬと云ふ事である。其理由はと云へば、十七条二号には同盟罷工を遂ぐる目的を以て雇人をして労務を停廃せしむる為めに他人を煽動したる者とあるのみで怠業の事に付ては更に規定がないと説明する。併し私は之に反対である、所謂ストライキは業務全部の罷業であるに反しサボは業務一部の罷業であるに過ぎぬ、而して十七条第二号の罷業と云ふ文字中には一部及全部の罷業を含むが故に一部の罷業即ちサボを遂行する目的を以て雇人をして労務の一部を停めしむる為め他人を煽動すれば適切り十七条二号に該当するサボ自体か犯罪でない事は其れ以上のストライキ自体が犯罪でないに依て明かである。
      サボの給料又は賃銀
 雇主の多くは口を揃へて、ストは給料を支払はない故困らない貧乏人である雇人が降参して来るは時の問題であるがサボは給料を給しつつ喧嘩するので到底遣り切れぬとコボす。ストは日本的だ男らしいがサボは外国的だ女らしいと泣く。所謂労働運動者はストは背水の陣を布き勝敗を一挙に決するものである。サボは敵の糧に依りつつ戦ふものであると論ずる。彼等は皆怠業者は怠業しても給料を全部完全に請求し得るものの如く考へて居るらしい。私は之にも反対を唱へる。
 前にも一言した通り契約は総て双方に、自分の仕事の様に忠実誠意を以て事に当る義務がある然るにサボは全く此義務を無視し不誠実極まる仕事を為すが故に、其惰けただけの割合の報酬は請求出来ぬ即ち二分しか仕事を為なければ報酬も二分。五分なら五分払へばよい。ストは全部サボは一部分の給料が取れぬは当り前である。と云へば雇主がサボを心配するは全く理由なき杞憂の如く見へるが、雇主の心配も一応無理がない。其れはサボのサボたる所以から何人もサボを公言し又は明言してサボる者はない、皆熱心誠実に労務する如く見せ掛け内実サボる故雇主には病気疲労其他の理由にて仕事が捗取らぬのか、又はサボるのか判明しない。仮りにサボる事が判明しても何人がサボるのが判明しない。甲は私は精出してると云ふ、乙も私はサボつてないと云ふ、雇主は結局何人が何程サボつてるかを知る事の出来ぬ結果、換言すればサボの証拠を挙げられぬ結果全部の報酬を支払はなければならぬ。
 茲に一つ問題がある。人を欺きゴマカして金を取れば詐欺の罪が成り立つ、力一杯精出して仕事もせずに一生懸命働いたと欺き雇主から給料をとるサボは、詐欺罪であるかどうか。為ない仕事をした如く云ふてゴマカし、為ない仕事の分までの給料を取つたら詐欺罪と云へようが、為ない仕事を為たとゴマカすにあらず、只やればやれるのにやれなんだと事実を明かすのがサボ故、サボは詐欺罪となるものではない。
<山崎今朝弥著、弁護士大安売に収録>
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