同盟罷工の場合

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同盟罷工の場合       ストライキは不法にあらず  同盟罷工は悪い事であるか不法行為であるか犯罪行為であるか、昔は、と云ふより近年迄は、否な遂ひ昨年又は一昨年頃迄はストライキ同盟罷工と云へばすぐ犯罪の如く考へられていた事は事実である。大正六年十月私の書いた同盟罷工是認論は、可なりの訂正削除を以て雑誌に掲載された。大正元年正月元旦だった。かの東京電車大ストライキ事件即ち片山潜等に対する同盟罷工煽動事件の弁護に於ける私の同盟罷工権利論は公開禁止を以て迎へられた。併し今日では、内務大臣、警保局長でさへも、日本には同盟罷工を禁じた法律はない、治安警察法第十七条は同盟罷工を煽動する事を禁じたのみであると公言しなければならない位、何人と雖も同盟罷工其れ自体を犯罪行為である不法行為である悪い事であると言ひ得る者はなくなつて来た。此一二年間の事であるのに、実に今昔の感に堪へぬ。私も茲に今更仰々しく同盟罷工が犯罪にあらずとか不法にあらずとかの論を為す勇気もない。       ストライキは契約違反義務不履行となるか  働主と雇主との間には兎に角必らず契約がある、此契約は書面によると口約によると又文面に其事が書いてあらうと無からうと、双方互に約束を果し合ふべきものである。然るに同盟罷業は多数合同してバツタリ仕事を罷めて雇主に損害を与ふるものであるから働主が忠実に義務を尽したとは云へぬ、故に契約違反であり約束不履行である。然らばストライキに原因して雇主が損害を蒙つた時は同盟罷工者は民法第四百十五条の債務者(働主)が其債務の本旨に従ひたる履行を為さざるときは債務者は其損害の賠償を請求する事を得との規定に従ひ雇主の蒙りたる一切の損害を支払はざるべからずと云へそうである。が又考へて見ると、今日の社会に於て雇ふ者は雇はれる者より利益の地位にありて約束の時に勝手の事を云ひ、働主は仕方なしに先方の言なり次第なるが実は雇ふ者も雇はれる者も一日も休みなしに必らず就業しようとは思つて居ない、却て時々休む位は承知の上である。世間の人も働主が時々休む事を許すべからざる悪い事とは思つて居ない、否家内労働等に於ては時々休んでも其給料を差引かぬを普通として居る、工場労働等に於ては賃銀を差引かぬ習慣はないにしても其代り時々休む事を前提とした給料の極方をする事を普通として居る。其れを多数で休んだからとて一切合切の損害を負担せざる事は穏当でない正当でない。休業の日当を払はないだけで沢山である。加之民法四百十六条にもチヤンと損害賠償の請求は債務の不履行に因り通常生ずべき損害の賠償を為さしむるを以て其目的とすと規定してある。通常の損害とは此場合日当即ち給料の事であり、給料は此場合民法第六百二十四条の規定に依り当然支払を要せざるもの故同盟罷業の為め如何に雇主が損害を蒙つたからとて之を賠償する義務はない。茲に一言を要す、同盟罷工に関係して起つた暴行脅迫煽動誘惑を矢張り同盟罷工と云ふことがある、此意味のストライキが不法行為であり犯罪である事は論がない。而して此場合其犯罪者は不法行為に基く損害を賠償すべきである。尤も煽動誘惑に就ては色々議論があるけれども法律にチヤンと書いてあるから現行法上之れが犯罪たる事は到底争はれぬ。只私は同盟罷工が既に権利である以上、之を煽動誘惑する者が犯罪人だと云ひ得るには其煽動誘惑は必らず極不正不法のものでなければならないと思ふ、即ち賃金値上や待遇改善の為めに働主が一致共同して休業を断行し、正々堂々と交渉談判を為すべきことを仲間の者に説明主張する如きは法律に所謂煽動勧誘ではない、が無理の目的を達する為めに矢鱈に有る事無い事の嘘八百を並べて働主を激怒挑発させる如きは所謂煽動勧誘であると思ふ。併し此治安警察法第十七条の問題に就ては後日詳細に論ずる積り故茲には省く、尚同盟罷工が雇傭契約の義務不履行となると云ふ事は同盟罷工が法律上正当の権利行為であると云ふ議論と少しも矛盾はないと云ふ事を断つて置く。       同盟罷工と賃銀又は給料  同盟罷工した日数の給料は仮令其給料が月給であり年給でありとするも支払ふを要しない事は前に一言した如く、民法六百二十四条に労働者は其服したる労務を終りたる後に非れば報酬(給料)を請求することを得ずとあるにより明かである。蓋し労働の賃金は労働の代金であるから労働を売らないに其代金を取ると云ふ法はない。ソコで次の問題へ駆けて行く。 <山崎今朝弥著、弁護士大安売に収録>

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