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下級判決
(一)労働新聞判決
久板卯之助 和田久太郎
右に対する新聞紙法違反被告事件に付検事金澤次郎干与審理判決する左の如し
主文
卯之助を禁錮五月罰金参拾円に久太郎を発行人として禁錮五月並に罰金卅円編集人として禁錮五月に処す
理由
卯之助は五月一日久太郎は八月一日各自に発行人となり労働新聞と題する新聞紙を発行するに際し正規の届出を為さず
卯之助は前記新聞の発行人久太郎は其編集人として一号に同盟罷工と題し其造船所に於ける同盟罷工の状況を記し暗に同盟罷工を慫慂する趣旨、三号にパンを奪ふ機械と題し機械の発達に反抗を慫慂する趣旨
久太郎は尚前記労働新聞の発行兼編集人として第四号に労働階級の使命と題し資本家と労働者とは相敵手たるを以て労働組合を組織し資本を労働者の手に奪ふ可き趣旨の各安寧秩序を紊乱す可き記事を編集発行したるものなり、右事実は
卯之助の当公判廷に於ける判示第一事実に付労働新聞は出版法に依るべきものなりと信じ出版法により正規の手続を経たりと弁疏する外同趣旨の供述、第二事実に付実際発行編集を為さず発行後記事を閲読したる旨弁疏する外同趣旨の供述
久太郎の当公判廷に於ける卯之助の為したると同一の弁疏を為したる外自己の部分に付き判示と同一趣旨の供述
押収の労働新聞一、二、四号自体
とを綜合して之を認定す
法律に照すに卯之助の判示所為中第一の点は新聞紙法第卅条、第二の点は同法第四十一条、久太郎の判示第一の点は同法第卅条第二の点は発行人及編集人として共に同法第四十一条四十四条に該当するを以て主文の如く判決す
大正七年九月廿八日
区裁判所判事 山崎 佐
(二)青服判決
被告 荒畑勝三 山川 均
被告両名各禁錮四月と荒畑は罰金卅円
理由 立会検事 判決判事労働新聞に同じ
(三)民衆の芸術略式命令
被告 大石七分
被告人は「民衆の芸術」の編集兼発行人として大正七年十一月十日発行の第一巻第四号十月号に「恵まるる政治」「生の反逆」と題する安寧秩序を紊乱する事項を掲載したり
右は新聞紙法第四十一条第四十四条に該当す依て発行人として百円編集人として百円合計二百円の罰金に処す
大正七年十二月十九日(検事は秋山要)
東京区裁判所判事 奈良武一
(四)民衆の芸術判決
被告人 大杉 栄
右に対する新聞紙法違反事件に付検事秋山要干与判決する左の如し
主文
被告人を罰金百円に処す
理由
被告は大正七年九月廿三日頃、毎月一日発行の「民衆の芸術」と題する新聞紙第一巻第四号十月号に掲載せる詩歌の部分の編集を依頼せられ同号掲載の「恵まるる政治」及「生の反逆」なる安寧秩序を紊す事項の編集を実際担当したるものなり右の事実は
被告の当公廷に於ける自分は民衆の芸術に判示詩歌を嵌入せりとの旨の供述
大石七分に対する検事聴取書に自分は毎月一日発刊の判示題号の雑誌を四月号迄四冊発行したる旨の供述
押収第一巻第四号の民衆芸術内容自体を綜合して之を認定す
法律に照すに被告の所為は新聞紙法第四十一条第九条に該当するを以て主文の如く判決す
大正八年一月廿日
東京区裁判所判事 尾立昇三
<山崎今朝弥著、弁護士大安売に収録>