双谷島小波の部屋

琴実:不明


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

 シーン「暗闇」

 月の影が冴える晩、夜道を一人歩く。
 うるさいほどの風が通り抜けて、髪を揺らす。

……寒くはない。

 真夏の夜の夜。
 吹き抜けたのは、なま暖かい風。
 肌に当たるけれど、うまく感じ取ることはできない。
 何処か鈍い感覚。

……あまり考えられない。

 よく分かるのは明るい月、瞬く星。
 街の光も明るくて、銀色に輝いて見える。
 彼処くらい遠い場所まで行って、戻ってきた。
 後少し歩けば、家に帰れる。

 外よりも暗い、怖い家。
 でも帰ることができる、わたしの家。
 ふと、誰かが横を通り過ぎた気がして振り返る。

……でも、誰もいない。

 凄く知っている人が通り過ぎたはずなのに、誰もいない。
 見回して見回して、そして見た。
 目の前に広がるのは黒い道、暗い道。
 耳に届くのは白い音、風の声。
 鼻にはいるのは鉄の臭い、錆の臭い。
 わたしが立っているのは赤い海、血の海。

 そして、倒れている人……。

 其れは赤く染まっている。
 自分の腕も、赤く染まっている。

……どうして?

 不思議に思って、もう一度見回して。
 今度は何も見なかった。

……何もない

 ぶらりと手を下げて、わたしは再び歩き出す。
 したたり落ちる滴。

……帰ろう。

 外よりも暗い、怖い家。
 でも帰ることができる、わたしの家に。