双谷島小波の部屋

[琴実:不明]の変更点

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 シーン「暗闇」  月の影が冴える晩、夜道を一人歩く。  うるさいほどの風が通り抜けて、髪を揺らす。 ……寒くはない。  真夏の夜の夜。  吹き抜けたのは、なま暖かい風。  肌に当たるけれど、うまく感じ取ることはできない。  何処か鈍い感覚。 ……あまり考えられない。  よく分かるのは明るい月、瞬く星。  街の光も明るくて、銀色に輝いて見える。  彼処くらい遠い場所まで行って、戻ってきた。  後少し歩けば、家に帰れる。  外よりも暗い、怖い家。  でも帰ることができる、わたしの家。  ふと、誰かが横を通り過ぎた気がして振り返る。 ……でも、誰もいない。  凄く知っている人が通り過ぎたはずなのに、誰もいない。  見回して見回して、そして見た。  目の前に広がるのは黒い道、暗い道。  耳に届くのは白い音、風の声。  鼻にはいるのは鉄の臭い、錆の臭い。  わたしが立っているのは赤い海、血の海。  そして、倒れている人……。  其れは赤く染まっている。  自分の腕も、赤く染まっている。 ……どうして?  不思議に思って、もう一度見回して。  今度は何も見なかった。 ……何もない  ぶらりと手を下げて、わたしは再び歩き出す。  したたり落ちる滴。 ……帰ろう。  外よりも暗い、怖い家。  でも帰ることができる、わたしの家に。 ----
 シーン「暗闇」  月の影が冴える晩、夜道を一人歩く。  うるさいほどの風が通り抜けて、髪を揺らす。 ……寒くはない。  真夏の夜の夜。  吹き抜けたのは、なま暖かい風。  肌に当たるけれど、うまく感じ取ることはできない。  何処か鈍い感覚。 ……あまり考えられない。  よく分かるのは明るい月、瞬く星。  街の光も明るくて、銀色に輝いて見える。  彼処くらい遠い場所まで行って、戻ってきた。  後少し歩けば、家に帰れる。  外よりも暗い、怖い家。  でも帰ることができる、わたしの家。  ふと、誰かが横を通り過ぎた気がして振り返る。 ……でも、誰もいない。  凄く知っている人が通り過ぎたはずなのに、誰もいない。  見回して見回して、そして見た。  目の前に広がるのは黒い道、暗い道。  耳に届くのは白い音、風の声。  鼻にはいるのは鉄の臭い、錆の臭い。  わたしが立っているのは赤い海、血の海。  そして、倒れている人……。  其れは赤く染まっている。  自分の腕も、赤く染まっている。 ……どうして?  不思議に思って、もう一度見回して。  今度は何も見なかった。 ……何もない  ぶらりと手を下げて、わたしは再び歩き出す。  したたり落ちる滴。 ……帰ろう。  外よりも暗い、怖い家。  でも帰ることができる、わたしの家に。 ----

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