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チームαSS2



阿頼耶識ゆま1



「ゆまちゃん、あいつらどんどん近づいて来てるよ――」
「そうね……」

 目前に迫り来る受験者たち。彼らは私たちの命を奪わんとしている。
 だが、ゆまは知っていた。
 今は敵対する私たちと彼らが、ほんの数刻の後には戦闘を止め、互いに肩を抱き健闘を称えあっているであろうことを。それは既に決定された「事実」なのだ。
 事実が既に決定済みであるならば、その順序に如何程の意味があろうか。

「ヴァイシャリー……」

 ゆまが呟くと、彼女は一人、別の場所へいた。
 殺風景な部屋の中。目の前にはソファに腰掛ける禿頭の少女が一人。
 額にトレパネーションを施された彼女は痴人の如く。白のワンピースに涎を垂らし、意志持たぬ瞳は宙空を彷徨うばかりである。

 ゆまは手にしたプリンをスプーンで一掬い。
 少女の口元へと近づけると、プリンはつるんと小さな唇に吸い込まれ、ごくりと喉を鳴らして嚥下される。

「千尋ちゃん、お願いがあるの――。少しだけ、頭の中を弄らせて頂戴ね」

 ゆまは用事を済ませると、再びその場から消える。
 かくして、千尋の脳内における「出来事」の順序は操作された。
 ゆまが戦地に戻った時、おそらく戦闘は終結を迎えていることだろう。
 この運命には名門ぽぽ家の当主であろうと、近い将来、EFB指定能力者となるコバヤシであろうと抗いようはない。彼ら程の魔人であれ、所詮は識家の掌の上である――。


阿頼耶識ゆま2



徒守「ゆま! アンタも逃げるんだ!」
ゆま「フフ、大丈夫よ。後からすぐにいくわ」
猪突「ホントに……ホントに大丈夫なの……。ゆまちゃん?」
ゆま「私も識家の一人。この程度の相手、どうということもないわ」
サーカス「必ず……必ず、生きて会うぞ。ゆま……」
ゆま「ええ、もちろんよ。さあ、もう行って。時間がないわ。…………みんな、さようなら」
深崎「さよ……、ゆ、ゆまちゃあああん!!!!!」




***「あれ? お、おれは……? みんな、どこ……???」


徒守奏太郎



「ぬぅ…皆が闘っているのに我らは見守ることしかできんとは歯痒いのう」

「シットっ、ミーが出ていればωチームの奴らなぞ一蹴してやるというのに」

「しかし、今、一体どうなっておるのかのぉ。こうも戦場から遠くては戦況を確認するのも一苦労だわい」

そんな事をリザーバー達でぼやいている時、隣で戦況を見守っていた仲間の一人がブルブル震えだした。
それに気付き声をかける×××


「む、どうした?化け物でも見たような顔をしおって」


「お、お前もアレを見てみろ。ワ、ワシャは夢でも見ているんじゃろうか?敵の精神攻撃にかかっているのかも知れん」

震える体で一点を指す×××

「何をばかな事を言っておる。んー、どれどれ?あそこか・・・む?むむむ?ゲェーー徒守が消えて○○○が闘場に二人!?これは一体どういうことじゃー」


「ワ、ワシに聞くな。と、徒守と奴は実は双子だったんかのう」

信じがたい異常事態にパニックを起こすリザーバー陣。

「むぅ。あの技は」

「何か知っておるのか?」

「うむ。あれぞ中国拳法で言う独丙流限画亜(ドッペルゲンガー)よもや、あの技を使いこなすものが俺達の仲間にいようとは」


<<独丙流限画亜>>

ドッペルゲンガーとはドイツ語の「ドッペル (doppel)」は、英語の「ダブル (double)」に該当し、自分の姿を第三者が違うところで見るまたは、自分で違う自分を見る現象のことである。
と、されているが、その源流は中国の武術家、独・丙流(どっ・ぺる)である事はあまり知られいない。

中国の殺人拳。相手そっくりに化けて、寸分違わぬ能力を持って敵を打倒する奇拳。
独・丙流がこの技を持って時の転校生を撃破したのはあまりにも有名である。
西欧に伝わる自ら自分の「ドッペルゲンガー」現象を体験した場合には「その者の寿命が尽きる寸前の証」
という民間伝承の真実は、相手にそっくりに成り変ったこの技の使い手がその人物を倒していただけので事であろう。

この技の要諦は 集中力・反射神経を極限までとぎすまし 相手の魂や気を寸分たがわず 一瞬にして模倣することにある
その修行法は数あるが 代表的なものは<<中略>>むろん、卓越した体術が必要なのはいうまでもない
ちなみに現代でも残る格言に『人のふりみて我がふり直せ』とあるのはこの修行訓の名残である。


希望崎書店著「中国の奇拳・危険」より


「うぉぉーーそんな恐ろしい技を徒守を使っておるというのかー!!?」

「うむ。全く俺達は頼もしい奴を仲間に持ったもんだぜ」


3分でわかる精神攻撃(上級)



やる夫で学ぶ精神攻撃
     ____
    / ⌒  ⌒  \
  ./( ―) ( ●)  \
  /::⌒(_人_)⌒:::::  |
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代表的な精神攻撃の例

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     /⌒  ⌒\
   / (●)  (●)\    /⌒\
  /::::::⌒(__人__)⌒::::: \ (    )  アイスだお!
  |     |r┬-|     |  |   υ|
  \    υー'´     /  |    |
                 |υ  |






精神攻撃を使ってみよう!

  / ̄ ̄\
 /   _ノ  \
 |    ( ●)(●)
. |     (__人__)  
  |     ` ⌒´ノ   キモチわるいだろ、常識的に考えて…
.  |         }
.  ヽ        }
   ヽ     ノ        \
   /    く  \        \
   |     \   \         \
    |    |ヽ、二⌒)、          \

×こういう人には効きません


                            あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!

            /⌒Y⌒uヽ        『おれはマリオを運んでいたと
           /(○) (○)ヽ        思ったら崖に落とされた』
        _  /::::⌒`´⌒::::\
       /´  | ,-)     (-、|         な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
     /'    | l  ヽ__ノ l |        おれも何をされたのかわからなかった…
    ,゙  / )  \   `⌒´   /、
     |/_/             ヽ       
    // 二二二7    u' __     ヽ
   /'´r -―一ァ"i         .-‐  \    舌出すためにパンチだとか1UP×99だとか
   / //   广¨´  /'      /´ ̄`ヽ ⌒ヽ    そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
  ノ ' /  ノ   :::/      /       ヽ  }
_/`丶 /     ::i       {:::...       イ  もっと恐ろしい任天堂の片鱗を味わったぜ…


○錯乱している人には効果が期待できます


     ____
     /⌒  ⌒\
   /( ◎)  (◎)\
  /::::::⌒(__人__)⌒::::: \   
  |     |r┬-|     |
  \      `ー'ォ     /


◎そこの木と比べて頭悪そうと思ったら声をかけろです



    .l ::) i |::::   i /::......:::::::/ ::/ / /: //:i:: i i: l
    l :(   |:::: :i :i L フニニ=ー‐‐''フ// / ハ:i: :i i i|
   l :ノ 、i , l::::: i | :| ヽーr‐‐=マ ´ / / >く. |: i: i リ
   .l i:)ト‐ ‐ ヽ::::. i l :l   にんソ  ///ハュ、_> / ノ
   l i i(  小  ヽ:::::i l ヽ ハヾ.ー' / " ノ,にア/:/:      
  l i i )     へ::ヘ    〃      i.  ̄{//|
  l :i i.(     ハ \.__         "  イi  l
 l :i i .).ヽi ィ )::| \      =‐'  // i:  l
. l :i .:i .:( 小  (::」   ` ‐ 、_   _, イ  イ::  i:  l

×自重しましょう

~おわり~


二ツ木真由花



目下に転がる六つの死体。
 私自身信じられないほど、この心は乱れることなく、いたって平静を装えていた。
 あるものは、ナタで自らの頭を叩き割り、あるものは五寸釘で自らのこめかみに釘を打ち付け、失意のうちに命を落とした。
 信じられないとでも言いたげな表情で、彼らは皆目の前の現実を受け入れられず、無残な死に顔をさらしている。
「……こんなものなのか……?」
 追い求めていたはずの敵。その憎悪の対象が、すぐ目の前で、他の者の手にかかって殺された。だというのに、私の中には達成感どころか何の感慨もありはしない。
 この場所で、やつの顔をこの目ではっきり見るまでは、確かにこの身は憎悪に支配されていた。
 しかし、それらが、今ではまるで嘘であったかのように、退いてしまっている。
 やつにあなたと同じ苦しみを味合わせる、そのことだけをどれほど夢見、願ってきたか。しかし、今私の中には何もない。ただ呆然と、やつを殺したオルガノン=カノン――彼女を見ているだけ。
 口元を緩ませ、得意そうな顔で、彼女は死んだ六人を見下ろしている。
 指輪にそっと手を添え、私はあなたの姿を瞼に描く。
 やつは死の間際、涙を流し、空虚な瞳で私を見つめてた。もしかすると、私の存在に気づいていたのかもしれない。
 監獄からの去り際に、やつが見せた笑み、その笑みとオルガノン=カノンが見せた笑みとが、私の中で互いに重なり合っていた。
 いつしか、あの死体の中にあなたがいる、そんな奇妙な感覚さえ湧いてくる。黒く染まった銀のエンゲージリングが、かすかに震えていた。
 そのときになってようやく私は、この空虚の正体に気づいた。 
 それを自覚するとともに新たに噴出した別の衝動が、はっきりとした名前を持って、私の中に現れる。
 それは、あの月の晩、あなたが殺されたときに覚えた、本来私が持つはずのなかった感情。そして受け入れることができず、無意識のうちに拒んだ感情でもある。
 幼いころから、マザーテレサが、私の憧れだった。彼女のようにはなれなくても、私も多くの人を笑顔にし、寂しさの中で過ごす人たちの助けになりたいと思っていた。カウンセラーになったのは、どんな人間にも生きていく価値が、幸せになる権利があることを、彼らにも信じてもらいたかったからだ。
 しかし、この衝動はそれとは矛盾する。私の脳を思考をどろどろと溶かし、私の思いや信念を捻じ曲げる。
 こいつらに生きる資格などないと、私にそう思わせる。
 この衝動を司る、あらゆる感情は声高に叫んでいた。
 人の命を平気で奪い、それに罪の意識も感じないようなやつらに、生きる資格などない。
 それはこの身を突き動かす、新たなリアリティだった。私とあなたの幸せを土足で踏み荒らしたやつらに対する、具体的な意味を持つ憎悪だった。
 あなたが私に見せてくれた笑顔の一つ一つが、今、私を支えるすべて。
 あなたをもう一度この手で抱きしめるために、今度こそ私はこの手を血で染める。
 私はまだあなたに何もしてあげられていない、癒されていたのは私の方だったのだ。
 あなたをあの冷たい牢獄から出してあげたい。
 また家族の暖かさを教えてあげたい。
 瞼の向こう、最期に微笑んだあなたの優しさを、強さを、今度は私が受け継ぐ。
 たとえこの身が引き裂かれようと、この試験を仕組み、あなたを死に追いやったやつらを許しはしない。
 どれほど、遠くへ逃げようと、必ず私の手で殺してやる。
 それを為し遂げて、ようやくあなたの言葉や思いは、私の中の死という冷たい牢獄から抜け出ることができる。こんな風になってしまった私をきっと止めてくれる。

 だから、祈ります。あなたから言葉や思いを奪ったやつらに、悪魔の祝福を。


深崎リク



目前に迫る攻撃。
しかしリクの意識はあくまで冷静に、研ぎ澄まされている。
まず息を整えて、瞼を閉じる。
そして、あのときのことを思い出す。

理刀は、父さんと呼ばれることを嫌った。
父親を名前で呼んでいる人なんて他に会ったことがない。
でもそれも、今思えば、理刀の罪悪感からくるものだったのか。

平凡ながらも幸せな日々は、突然の銃声で終わりを告げた。
自分を庇い崩れ落ちる理刀。現れた見知らぬ男。
止めを刺そうと再び銃を構える男。そして、覚醒。
実際のところ、何をしたのか良く覚えてはいない。
気がつくと、男は倒れていた。
しかしその後のことは、今でも昨日のことのように思い出せる。

「理刀!?しっかりして!まだ大丈夫だよ!」
「……いや。自分の体のことくらい分かるさ」
「だが、これでいいのかもしれない。当然の報いだ」
「……リク、私はお前にずっと嘘をついてきた。私は危険度A級魔人、罪人だ」
「何言ってるの?危険度A級魔人って何!?わかんないよ」
「そしてお前の本当の父親ではない」
「あの頃の私には、憎悪しかなかった。……私から全てを奪った『奴』への、赤黒い感情」
「そんな時にお前と出会った。私はお前を復讐の道具にしようとした……」
「私の部屋に行けば、すべて分かるだろう。私の本性が。そして『奴』のことも」
「理刀……」
「……いや、違うな」
「……?」
「私は疲れていたんだ。憎しみに次ぐ憎しみ。正気ではとても耐えられない修羅の道を歩むことに」
「お前を育てることにしたのは、すっかりやせこけて磨耗した私の良心を、少しでも満足させたかったからだ」
「だから私は…お前の父親など…とは……」
「……そんなことないよ。だって理刀は…」
「……」
「ねえ……」
「……お父さん」

―――瞼を開く。そして自分の手を見る。
人差し指の先には、光がともっている。
それは、他の者から見れば、魔人の能力としてはあまりにも弱弱しく見えたかもしれない。
それは蛍のような、淡く小さな光。
しかしその光には、リクの意志がこめられている。

理刀を亡くしてから、この光が人のためにともることなどもう二度とないだろうと思っていた。
でも、出会えたんだよ。仲間と呼べる人たちと出会えたんだ。
あなたが私にくれたものは、憎しみなんかじゃない。いっぱい、いっぱいの、大切なもの。
それが、今の私の意志になっているんだよ、お父さん。

人差し指を、前に向ける。
空中で光が軌跡を描く。

「あなたの意志は私たちを貫けない……私の意志が皆を守るから」
「そして、あなたはあなた自身の憎しみに、その身を貫かれるの」
「転移……D-トランスファー」


榎本麻美



くわがたならてをはさもう(幸せなら手を叩こう

くわがたなら てをはさもう(ジョキジョキ
くわがたなら てをはさもう(ジョキジョキ
くわがたなら でんぱをはなとうよ
ほら みんなで てをはさもう


紅畑詩衣豚



紅畑詩衣豚と猪突猛進が並ぶ姿を見て、スイガラは感慨に耽っていた。
「豚と猪がくつわを並べるか…!」
徒守奏太郎には、その意味が分からないらしく、何度も詩衣豚と進を見ては悩む。
「え? どのへんが凄いの? 共通項は『獣臭い』ってだけじゃね?」
「猪を家畜にしたのが豚だ。差詰め…豚は…猪の量産型!」
「なん……だと!?」
明かされる事実に衝撃を禁じ得ない奏太郎 。
「お前ぇら、俺に何かあんのか?」
詩衣豚は巨体を揺らして近づいてくる。
どうにも何か悪口の類を言われた思っているようだ。
「『豚が空を飛んだら』…という言葉を知っているか?」
スイガラは詩衣豚に質問をする。
「そりゃ、お前ぇ、俺のことよ。飛べる豚はOSRの塊だかんよ!」
「ハハハハハ。その意志や良し。期待しているぞ。詩衣豚」
奏太郎の言葉に気をよくしたのか、詩衣豚は上機嫌で持ち場に戻った。
「ところで、スイガラよ。『豚が空を飛んだら』というのは、どういう意味で?」
「『有り得ない』……だ!」
奏太郎は詩衣豚の姿をまじまじと見つめ、納得する。
「まあ、『豚もおだてりゃ木に登る』と言うではないか」

――そして、まさに――
詩衣豚が空を飛び、己の肉体を相手にぶつける時が来たのだ。


日照宮日菜子



俺たちは国家刺客になるために戦っていた。
そこに日照宮日南子というエロかわいい女の子があらわれた。
「あら…どうしたのかしら。みなさんの御幣が祈祷をはじめていましてよ?」
「く、もうダメだ。あんたの太陽に当てられて、体が火照ってしかたないんだ。」
「ふふ。こんなにかたくして。まるでダンゲリウムね。」
「あぁ、ダメだ!阿蘇山が!俺の阿蘇山が噴火してしまう!」
「コラ日南子!お前というヤツは嫁入り前だというのに!」
「お父さん…ごめんなさいね。今日はここまで。ばいばい。」
そして彼女は去って行った。やり場の興奮だけを残して。


思井出京四郎1



『夢はつまり思い出の後先 BY 井上陽水』

「はっ……くっ……! はぁ、はぁっ!」
 思井出京四郎は走っていた。
 洞穴特有の湿った空気を掻き分けるように、ただ闇雲に走っていた。
 前方には敵の気配。逃げる場所など何処にあろう。
 しかし京四郎は逃げずにはいられなかった。
 その奇妙な”仲間”から。
「まってぇ……。まってくらさいよぅ……」
 京四郎の遥か後方の暗闇から、まるで洞窟内を通りぬける風のような声が聞こえてくる。
 その声の主はそこから動く気が無いのか、断続的に響くその声は少しずつ小さくなっていった。
 しかし京四郎は足を止めない。なぜなら、それは先程既に行った対処だったからだ。
 だから京四郎は足を止めない。その”仲間”から逃げる為に。
「……うあっ」
 京四郎は声を上げてその場に倒れる。地面に転がる石を踏み、バランスを崩したからだ。
 前のめりに倒れて膝をすりむき、地面へとうつぶせになる。
 京四郎はそのまま倒れていようかと思ったが、すぐさま右足に違和感を感じて体を起こした。
 足首に、違和感。
 京四郎は恐る恐る視線を足に向ける。
「……ひっ!」
 手。
 京四郎は悲鳴をあげ、そのまま這いつくばるように逃げようとした。
「らめれす……」
 手。手。
 その地面から生えた両腕は、京四郎の足首をがっちりと両腕で固定する。
「にげちゃ、らめれすよぅ……?」
 その手は京四郎の右足に絡みつくように徐々に付け根へと這い上っていく。
 両腕が京四郎の右足を抱き抱えるように押さえ付けたと同時に、地面の岩盤がまるで砂のように崩れて彼女の姿が現れた。
 夢見ヶ原、現。
「あ、あ、ああああ……」
 京四郎は恐怖を言語に置き換えることもできず、ただ必死で逃げようと後ずさりする。
 しかし現の腕はそれを捕らえ、離さない。
「だめ。だめ。ぜったいだーめ♪ わらしはあなたのそばにいるんれす」
 くふ、と笑みを浮かべ、怯える京四郎へ体重を乗せる現。
「僕が……!」
 京四郎が絞り出すように声を出した。
「……僕が、いったい何をしたって言うんだよ!」
 京四郎は叫ぶ。
 京四郎はわからない。なぜ彼女に追われなくてはならないのか。
 京四郎はわからない。なぜ彼女に好かれなくてはならないのか。
 京四郎はわからない。彼に彼女の心の中は永遠に、わからない。
「……あなたは私を凌辱しました」
 現は甘えたような今までの口調とは違う、はっきりした口調でそう言った。
「あなたは私を犯しましたあなたは私を辱めましたあなたは私を虐げましたあなたは私を嬲りましたあなたは私を――」
 現は満面の笑みを浮かべる。
「――殺しました」
 現は恍惚に浸るように息を吐き、腰元から包丁を抜いた。
「身も心も犯しつくされた私は、あなたのそばにいることを決めました」
 そのまま現は寄りかかるように京四郎を抱擁する。
 京四郎は震えていた。京四郎は怯えていた。京四郎は恐怖していた。
 彼と彼女は初対面だ。
 試験会場で出会い、握手をして「よろしくね」と微笑んだだけだった。
 京四郎の記憶をいくら手繰っても、彼が彼女にした行為はそれただ一つだった。
 京四郎は恐怖する。目の前の未知の存在に。正体不明の思考能力の存在に。
 次に彼女は自分をどうするのか。犯すのか殺すのか、それともまた別の何かか。
 京四郎の脳裏に今までの記憶が駆け巡る。
 子供の頃の思い出、楽しかった記憶、先程出会った仲間達……。
 彼らならこんなときどうするだろうか。
 あの男ならこんなとき、目の前の現を振り払うだろうか。
 あの少女ならこんなとき、絶望的な苦境にも負けずに笑い続けるだろうか。
 京四郎は思い出という甘露に浸り、弱き己を悔い続ける。
 その時、京四郎の体から青い光が発せられた。
 光は二人の体を包み、その温かみを増していく
 現は笑う。まるでその光に祝福されるかのように。
「末永くよろしくお願いします」
 その頬には一筋の涙。
 二人は眠るようにその場に倒れ、青い光は彼らをこの世界から切り離していった――。


思井出京四郎2



思井出京四郎は瞬間記憶能力者だ。彼は一度見たものを忘れることはない。
いや、忘れることができない。記憶のかなたに忘却したいような、そんな屈辱も彼は忘れることができない。

「おい、京四郎。お前、瞬間記憶能力者なんだってな。」
「う、うん。そうだけど?」
「じゃあ、お前今からうちの担任の物まねやってみろよ。一度みたものを絶対忘れないなら、どんな細かい特徴も再現できるだろ。」
「え、いや、それとこれとはちょっと違う気がするんだけど。」
「なんだと!お前俺に逆らうってのか!俺は人間だけど攻撃力6はあるんだぞ。防御力1体力0のお前なんて一発だぞ!」
「ひ、ひぃ~~。わかったよ。ごほん、じゃあ、張本先生が無駄なフェイントを入れる瞬間。
『じゃあ、この問題を。そうだな、今日は6月20日だから、出席番号20番の福山に、と思わせて6番の岡田にといてもらおうかな。」
……えっと。以上で」
「ぎゃははは、全然似てね~。お前ホントに瞬間記憶能力者かよ。これっぽっちも似てねぇじゃねぇかこのインチキ野郎!」
「ひ、ひえ~~~。ごめんなさい。」

その時彼は誓った。いつか絶対に彼を笑わせるような、いや、世界中の人間を爆笑させれるようなモノマネ芸人になってやる、と。
今まで以上に深く人間観察をするようになった。家では毎日モノマネの練習をし。時には路上で芸を披露することもした。彼は着実に芸人として成長していった。
そして、今、多くの奇人変人が集まるといわれる国家刺客の試験会場へとやってきた。この受験者を観察しきったとき、彼は芸人として大きく変わるだろう。
思井出京四郎が最終試験を生き残ったとき、お笑い界はかつてない衝撃はうけることになる。

思井出京四郎伝説~二代目出川と呼ばれた男~

第一部 完