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外廊下に吹き付ける風は強く、キッドのザ ライン オブ サンズを乱している。
乱れた髪を撫でつけてもすぐに次の風が吹き、彼は諦めると漸く口を開いた。
「風が強いな」
「飛ばされて行くなよ」
「…」
「…なんのよう…?」
暗く抑揚のない声が帰ってくる。
「何が合った」
「…別に、何もないよ…。…何も、…あ、あるわけがない…」
振り向きもせずにそう言うクロナの背中にキッドは強い視線を送ると、クロナの見ている方向へ目をやった。
時は夕刻に近づき、落ちていく太陽が空を赤く染めている。
「…」
「なら、いい」
その声に一瞬だけ彼に視線を向けるとクロナは再び、地平線へ姿を隠しつつある太陽の光に目を戻した。
この廊下は建物の影になっていて日が当たることがない。クロナはこの廊下の端から明るい中庭を見るのが好きだった。
「キッドは優しいね…」
「…僕は意地悪だよ。…だって、ど…どうやって人に優しくしたらいいのか…判らないんだ」
優しくされたことがなかったから…
クロナは胸でひとりごちた。それから感情のこもらない声で続ける。
「…ぼ僕が知っていることと言えば、人を傷つける事だけ…」
「――マカも、…君のことも、僕はいつか、傷…つけてしまうかもしれない」
クロナを一瞥すると、キッドはさも馬鹿馬鹿しいといった様に返す。
「俺が、お前ごときに傷を付けられる様な男だと思うか?」
「…一人は良かったな」
しかしクロナは構わずに話を続けた。
「さ…最初から一人なら、寂しさなんて感じなくても済むから…」
クロナは強い風の音にかき消されてしまいそうな小さな声で呟き、夕闇が徐々に空を浸食してゆく様を見つめる。
それはクロナの心の中の軌跡の様だった。
マカと出会い初めて外の光を浴びた。しかし再びメデューサにより暗闇へと戻されようとしている。
昼の明るさを知ってしまった今となっては夜の闇に耐えられるのかどうか、クロナには判らなかった。
「…だから僕はラグナロクですべてを壊してしまうんだ」
何故か最後の言葉だけは、いつもの様にどもる事もなくするりと口から出てきた。
キッドはポケットへ両手を突っ込んだまま風に吹かれてクロナの繰り言を聞いている。
それはとても絵になる姿だとクロナは思った。クロナの視線を感じ、キッドがクロナに目を戻す。
沈黙の後キッドが口を開いた。
「言いたいことはそれだけか?」
風が吹いて複雑に柱が立つ廊下を走り抜け悲鳴の様な音を立てる。クロナはキッドへ向き直った。
「キ…キスをして。唇を吸って」
言い終わる前に、クロナは強く引き寄せられ噛みつくように口づけられた。
「んむ、んっ…」
濡れた音がするのも構わずに舌を突きだし絡め合い
重ねた口の端からあふれた唾液が顎を伝っていく。
暗い学園の廊下の端で、小さな二人は年齢に相応しくない口付けを貪り合った。





著者コメント


真夜中に薄暗いキックロを失礼