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キッド×クロナ016」(2009/03/17 (火) 17:54:35) の最新版変更点

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前提としてクロナはメデューサと再会後ですが、原作時系列を間違え 何となくクロナが学校に慣れる前(キッド宅パーティ前)みたいな雰囲気になってしまっています。 ................. 深夜、学園の図書館へ向かう途中、キッドは視線の端を動く影に足を止め、通路の両脇を続く窓に様に目をやった。 夜の闇に浸食され鏡の様になったガラスに、背を丸めのろのろと進む細い姿がある。 対称に走る渡り廊下の通路を行くクロナだった。キッドはすぐに踵を返すとその姿を追い駆けて来た道を引き返す。 「おい」 突然暗闇から掛けられた声にクロナは肩を揺らすと、おそるおそる振り返った。 キッドはクロナの豆鉄砲を食らったような顔に、存外驚かせた事に気付く。しかし間を開けずこう尋ねた。 「…何をしているこんな夜中に」 「あ、あの僕…眠れなくてその」 「ごごごごめんなさい、へ…部屋にいるとあの、こ、ここは、通っても良い廊下だと…」 しどろもどろに言い訳をするクロナを見て、咎めるような言い方になってしまったことを後悔しながら キッドは、未だ続く言い訳にかぶせる様に言った。 「いや、お前は捕らえられている訳ではない。自由にしていて当然だ」 「…う…うん、…」 クロナはほっとした表情をするとそのまま自分を見ているキッドの視線を避けるように顔を逸らせ それからもう一度キッドを伺うとささやく様な声で言った。 「じゃ…じゃあ、僕、部屋に…」 しかし、そそくさと少年の脇を抜けようとしたクロナの背にキッドは再び声をかける。 「待て」 びくりと身体を震わせて振り返るクロナにキッドは意外な提案をした。 「少し話をしないか」 「この先に教員詰め所がある。今は使われていないが、コーヒーぐらいは出せる」 親指で部屋の方向を示すと、クロナを見た。 いい機会だと思った。 もしかすると会えるかもしれないなどと意識下では考えていたのかもしれない。 キッドは促すように言葉を足した。 「眠れないのだろう?」 「…う、うん、…いいよ」 やましい思いを抱えるクロナにはその申し出を断る理由が思いつかなかった。 ................. 「は、話って…何?」 クロナは不安そうな視線をカップを持つキッドへと向けて尋ねた。 キッドはコーヒーの注がれたカップをクロナの前に置くと一瞬困ったような顔をした後、珍しく、歯切れ悪い様子を見せる。 「…別に、取り立ててこれと言う訳ではないが…」 「その…学校は慣れたか」 「う…うん…な慣れは…しないけれど、…と、時々、楽しいよ」 「そうか」 真正面から見返してくるキッドの鋭い視線にクロナは何もかも見透かされているような不安を覚える。 クロナは、なんの迷いも見せない、この金の瞳が苦手だった。 「うん…」 クロナは俯くと、もう一度、そう返事をした。 それから再び沈黙が流れる。 話しかけてもらわなければ間が持たない。かといって話しかけられたい訳ではない。 クロナは首を竦め、目の前に置かれたカップの中を覗いた。コーヒーに写る自分と視線を合わせ考える。 自分はもしかすると疑われているのではないか、すでにメデューサとの繋がりを知られているのではないか。 あらゆる可能性に自問自答を繰り返すがクロナには彼の意図を読むことが出来なかった。 両手でカップを包み込むと冷えていた指先がしびれながら感覚を取り戻してゆく。 夜を歩き回り冷え切った身体はいずれ熱を取り戻すが、クロナの心は再び冷たい氷に覆われようとしていた。 クロナは母親の死を伝えられては居なかった。姿を見せたメデューサに何があったのかも知らず、 母が自分の事を忘れていなかった事を、ただ嬉しく感じた。 しかしメデューサは、クロナに学園へ残りスパイ活動をすることを強要し、マカや、クロナを保護してくれた 学園への裏切り行為をさせようとしている。まだ一緒に来いと言われた方がましだったのかもしれない。 コーヒーカップの中にマカの顔が浮かぶ。 与えられるのを待つだけでは何も変わらないことは判っていたが、クロナには目の前にさしのべられる手を 選別する自主性は無かった。 結論のでない思いを振り切るようにふいに視線をあげたクロナは、クロナを見ていたキッドと目が合う。 するとクロナが視線をを背ける前にキッドは、すっと顔を逸らせた。 その仕草に違和感を感じる。 そのまま彼の横顔を見ていると視線を感じたのか、キッドは勢いよく顔を戻すと言った。 「なんだ」 「えっ…ご、ごめんなさい」 クロナは謝りあわてて俯く。 キッドが再び顔を横に向けたのを感じ、クロナは上目遣いに彼を盗み見た。 キッドはわずかにその白い頬と耳を染めている。 身体の奥でクロナの身体に住まう魔が低い声でざわめき始める。  なんてこったクロナ、こいつは面白い事になったぞ  このお坊ちゃんはお前に興味があるようだ 胃の府があがってくる様な嫌な音を出しながら黒血は続けた。  得意だろう?身体を使ってたらし込め  やれよ、簡単な事じゃねえか  メデューサに褒めて貰いてえんだろ? 身体の中で響く声に、弾かれるようにクロナはキッドを見た。クロナと再び視線が合った彼は不自然に顔を背け、そして席を立って部屋にある窓に寄ると外を伺う。 その背中を呆然と見つめるクロナは誰に語りかけるでもなく、強く想った。 駄目だ、彼はマカの友達なんだ。 マカを裏切りたくない…。 しかし黒血はそんなクロナを一笑に付する。  何言ってやがる  友達?笑わせるな  とっくにおまえは裏切ってんじゃあねえか… 低く笑う声は内側から響いていて、耳を塞いでも遮ることが出来ない。 それはクロナに物心が付いた時からクロナの中に当然と存在していたもので クロナにはもう、この声が自分のものなのか、自分以外の誰かの声なのか判らなくなっていた。 黙れ黙れ黙れ、もう嫌なんだこんな事は…。 そう、大きな声で喚き散らしたい感情を喉元で抑え込み、クロナはカップを握る手に力を込める。 再び顔を上げたクロナの瞳には暗い影が落ちていた。 窓の外を見ているキッドに力無く視線を向けると、クロナは口を開き、暫くしてから声を発した。 「…ねえ君、…も、もしかして僕とエッチなことがしたいの」 クロナの台詞に一瞬時が止まったようにキッドの動きが固まる。それから猛烈な勢いでキッドは声を荒げた。 「ばっ…馬鹿者が…っ勘違いをするな!」 キッドの剣幕にクロナが怯えたように身を引くと、キッドは慌てて言い直す。 「ご、誤解だ!そうじゃない」 少年は意外なほどに狼狽え身体の前につきだした手をクロナに向かって振りたくる。 「俺はただ…こ、こここここの、か、関係者としてだな」 「こっ…ここに連れてきたことだって別に、他意は、無い!!」 ゼスチャーを交えながら必死に弁解をするキッドにクロナは静かに言葉をかぶせる。 「な…何でも良いけど」 「止めた方がいいよ…。ぼ、僕は女の子じゃないし」 息をのむキッドはクロナに向き直り絞り出すように言う。 「!…お前はやはり、…男なのか?」 彼だけでなく誰もが確信を抱けずにいるクロナの性別に、面と向かってどっちですか、と尋ねるものはいなかった。 しかし、どちらと言われても腑に落ちるだけの要素はあった。 クロナは両手に包んだカップに視線を落としたまま、小さく呟く。 「…お、男…でもないけど…」 「どう言うことだ」 真剣な顔つきでこちら見つめる少年に、クロナは突然、悪戯を仕掛けたい気持ちがわき上がってくるのを感じた。 クロナは自分の中にそう言った妖婦の様な部分があると言うことを自覚していた。 そんな事をしてはいけないと自戒する自分と、何もかも壊してしまいたくなる破壊衝動、これが魔女の血のなせるものなのだろうか。 クロナは自嘲するように思う。もう赤い血なんて一滴も流れていないのに。 「どうした。キッチリハッキリせんか」 キッドが落ち着かないように、そう急かしてくる。 「…」 僅かな逡巡の後に立ち上がったクロナは、靴を脱ぐとその脇に立ち、かがみ込んで両手をスカートの中へくぐらせた。 スカートの両脇をあがった腕はやがて足に沿って下がってゆく。 動きからクロナが下着を降ろしていると言うことが判り、程なく足を抜いた手には果たして小さな布が握られていた。 「…」 キッドは驚きの表情を張り付かせたまま、立ちつくし声を発することも忘れている。 クロナはそれを床へ落とすと詰め襟のボタンを外し、再び身を屈めスカートの裾をめくり始めた。 徐々に晒される白く細いすね、ランプの光を柔らかく反射するももが現れた後、足の付け根には少年の様な小さな陰茎が存在していた。 たくしあがる裾はそのまま進み、やがて滑らかな腹くびれたウエストの脇あばら浮く胸が見え そこには幼い乳房の膨らみがあった。 腕を交差させ、服を首から抜いてしまうと、クロナは手を両脇へ、だらりと力無く落とす。 「こ、この通り、…僕は、…お…男の子でも女の子でもない…」 暗い瞳でそう告白すると目の前のキッドを見ることが出来ずに俯く。夜の冷気に肌が粟立ち、クロナは片手をもう片方の腕に掛けた。 とたん猛烈に後悔が沸いてきて消えてしまいたくなる。 それから、無言でクロナを見つめるキッドの視線を避けるように指に引っかけていた服を身体の前で抱え、痩身を隠すように覆った。 突然身体を晒したかと思うと今度は急に恥じらって泣きそうな顔をする。 その落差がキッドには理解が出来なかった。 我に返った彼は、とっさに上着を脱ぐと近寄ってクロナの肩に掛ける。 「風邪を引くぞ」 自分が的外れな事を言っているのは判っていたが彼にはそれしか掛ける言葉が思いつかなかった。 クロナはただ身をすくめると自ら晒した肌を恥じるように、かけられた上着をかき合わせる。 俯き黙り込んでしまったクロナに、まるで自分がクロナを辱めてしまったような気分になり、キッドの中に罪悪感がこみ上げてくる。 「その…悪かった」 謝ってくる少年を見もせずにクロナは抑揚のない声で返す。 「…なんで?」 「き…君は何もして無いじゃないか」 「お前にしなくても良い告白をさせた」 何か言いたげに視線をやるとクロナは再び目を伏せた。そしてこのまま自分に呆れて彼が出て行ってくれることを願った。 返事を返さないクロナに対しキッドは再び口を開く。 「クロナ、お前は男でもなく女でもないと言ったが」 「そうではなく、お前は男でもあり、女でもあると言うことだ」 俯くクロナを覗き込み、キッドは続ける。 「1より2の方がいい。片方より両方の方がいいに決まっている」 「お前はその点、俺達よりも、より完璧に近いといえる。素晴らしい事だ」 女の身体を見たことは有った。むろん他人の少年の身体を見たこともある。 初めて見る異形の身体を美しいとキッドは感じた。 ただそれを伝えるすべを知らない少年は、詭弁を弄して落ち込むクロナを慰めようとする。 「何も恥じることはないぞ」 横目でキッドを伺うとクロナはつまらなそうに返した。 「い…いいよ、そんなことは…」 「…それに、き君には関係ないじゃない」 「…」 とりつく島のないクロナに、掛ける言葉を窮しキッドは黙った。 重く被さる沈黙に困りはて視線を漂わせるが、ふと露わになったクロナの白い尻がキッドの視界に入る。 丈の短い上着はクロナの肌をすべて隠すには至らず、抱え込んだ服の隙間から見える白い脇腹とももや 細い割にボリュームのある腰がランプの明かりをうけて柔らかなラインを描いていた。 ふと見てはいけないものを見てしまった気がしてキッドは目をすぐに背けたが ショックによって抑え込まれていた、ごく自然な性衝動がわき上がってくるのを感じた。 考えまいとするほど意識は集中し、13歳の少年には酷な我慢を強いられる。 目の端にどうやっても写り込んでくる白い肌に、一旦天井を仰ぎ考えると、キッドは何かを決したように視線をクロナへと戻すと言った。 「クロナ」 「お前は俺に抱かれる気はあるか」 「ぼ…僕はそんなつもりで脱いだ訳じゃないよ」 自分に恥をかかせまいとして彼が言い出したのかとクロナは思った。 そんな目的もありはしたが、哀れまれるのも恥辱を受けるのも慣れていたし それよりも早く一人になりたい気持ちの方が大きかった。 「気にしないで」 「判っている、お前を侮辱するつもりはない。ただ俺がお前を抱きたいと欲望を覚えてしまったと言うだけだ」 「だから、お前さえよければ…その、」 キッドの言葉を受けてクロナは俯くと、自分の、素肌に靴下だけを履いた間抜けな足と、キッドの黒い革靴を見ながら呟く。 「……誘うの下手だね…」 「そ、そんなんじゃどんな女の子もついてきてくれないと思うよ」 しかしキッドは、至ってまじめに返す。 「当然だ、こんな駆け引きはしたことがない」 「…そうか、街で女の子を口説かなくたって不便はしてないよね」 肩をすくめそう呟くクロナにキッドは言った。 「いや、俺は女を抱いたことがない」 その告白にクロナは驚いたように、自分より少し高い位置にあるキッドの顔を振り仰いだ。 「し…したことないんだ…?」 「ああ」 別段恥じることもなくキッドが答える。クロナは目を丸くしたまま、言った。 「あんなキレイな女の人二人と暮らしているのに…」 「ん?…リズとパティの事か?」 まるで思いもつかないことを言われた時の様にキッドは聞き返し、それから判らぬものに言い聞かせるような口調で返した。 「あいつらは俺のパートナーであり家族のようなものだ」 「男女が共に暮らしていれば必ずしも肉体関係があるとは限らんだろう」 下世話な考えを揶揄されたようでクロナは俯き顔を赤らめる。それに気づきキッドは続けた。 「いや、そうだとしても不自然では無いことは判っている。ただ俺のケースは違っていただけだ」 「一般的に見れば、そんな関係になってもおかしいことはない。実際異性パートナーと夫婦関係にある組も珍しくはないからな」 「…」 育ちの良い彼はクロナが恥ずかしい思いをしないように、そう付け足した。 「…したいと思わないの」 「俺も男だ。思わない訳はない」 まるで自分とは関係の無い話をするようにキッドは胸を張る。 「だが急ぐことでもあるまい」 「いずれ時が来くればと考えていた」 「や…やめなよ僕なんて、普通じゃないし…それに、ふ、ふさわしくない」 「どう言う意味だ?」 メデューサ様の言うままに僕がどれだけの人間に身体を任せて来たと思う? そんな言葉を彼にぶつけ、潔癖なキッドの顔を歪ませてみたい、そんな意地の悪い感情がわいてくる。 しかしまた、そう言ってしまってから後悔をするに決まっているのだ。 クロナはキッドの顔を見れず俯いたまま自棄になってこう続けた。 「こ…言葉の通りだよ」 「意味がわからんが…」 「俺は何が有ろうと気にはしない」 その言葉にクロナはキッドを伺い見た。一瞬だけ視線が絡んだがすぐにクロナは俯いてしまう。 生まれた時から何もかもを手にしている彼にとって、そんなことは取り立てて重要な事でもないのだ。クロナは思った。 急に自分が、彼の気持ちや体面を案じていることや、自分との差を気にしている事などすべて、馬鹿馬鹿しくなってくる。 クロナは僅かに顔を上げると呟いた。 「そうだね…君には関係ないか」 「なんのことだ?」 その囁きのような言葉をキッドが聞き挟み、尋ね返す。 「ん…、判ったよ」 キッドの続く言葉を遮るようにクロナは唐突にそう言うと俯いたまま呟くように続けた。 「…判った…いいけど…」 「文句は言いっこなしだよ」 可笑しいじゃないか。 一点の曇りもない次代の死神の最初の相手が、僕のような存在だなんて。 クロナは視線を床に向けたまま胸に抱いた衣服を引き寄せてかすかに口元を歪めた。 「クロナ」 仮眠室にもなっているこの部屋の奥には簡素なベッドが備え付けられている。 クロナは胸に服を抱え込んだままそこへ向かい、抱えていた服を脇にある椅子に掛けると、ベッドへ腰を下ろした。 「いいよ。おいでよ…」 部屋の奥まで照らすにはランプの光は弱く、薄闇に白い肌がぼんやりとシルエットを浮かばせ それは絵画のようでもあり、すらりとした細い手足と幼い胸が少年の眼にひどく淫らに映る。 キッドは自分がアプローチの方向を誤ってしまったことに気づいていた。 だが、この誘いをはねのけられるほど老獪してはおらず、彼の若い身体も相手の気持ちを気遣う余裕がなかった。 「クロナ」 キッドはもう一度名前を呼ぶと意を決したように死神の紋章をつけたループタイへ手をかけた。 重なってきた少年はクロナの身体へ目を落とし言った。 「…すばらしい。シンメトリーな身体だ」 あさってな賛辞を送ってくるキッドにクロナは戸惑ったように視線を漂わせる。。 「…そんなことが嬉しいの?」 「ああ、もっとも重要なことだ」 そう言うとキッドは手をあげクロナのささやかな乳房に軽く触れる。 「く…くすぐったいよ」 「…すまん」 今度はしっかりと手の中に膨らみを包み込むと力を込めた。 クロナの乳房はやっと膨らみかけた少女の様な大きさしかなく、しかし、まだ掌の小さい少年にはぴたりとはまった。 戯れに女の胸を掴むこともあったがその時とは明らかに違う、身体の奥を突き上げるような熱を感じる。 動いても居ないのに鼓動は早く打ち、顔が紅潮しているのが判った。 欲情しているのだと彼は冷静に考える。痛みを訴えるほど勃起した股間が何よりの証拠だろう。 キッドは眼下の、自分を見上げてくるクロナをもう一度見つめた。 暗闇に色を濃くした鳩羽色の瞳には怯えた色が見つけられなかった。すべてを諦めたような無感情の絶望しかみえない。 痛々しいほどに痩せた細い身体にざんばらな髪、青白い頬とうすく隈のうかぶ目元に暗い瞳。 人目は引くが、決して、クロナはキッドが心を奪われる様な存在ではない。 完璧を冠する少年は、クロナのように自分自身に負ける弱い精神を許容することが出来ない。軽蔑すらしていた。 しかしキッドは、あの時触れそうなぐらいに近づいたこの瞳が忘れられなかった。 彼の周囲には魅力的な女がたくさん居たが、少年がそう言った事に心が乱されることは今まで無く これがもし、クロナの中に潜む魔女の技なのだとすれば、自分はまんまと掌中に嵌ってしまったのかもしれない。そんなことを考えた。 「な…何?」 「いや…」 キッドの返事にクロナは合わせた視線を逸らすと力無く暗闇へ目を向ける。 キッドは手にした膨らみに視線を戻すと、寒さで立ち上がった小さな乳首へ唇を落とした。 挟み込み子供のように吸ってみる。報告通りのつたない愛撫に、クロナは胸に顔を埋める彼の頭を抱いた。 さらさらと癖のない黒髪が指の間をぬけていく。 お返しの様にキッドに胸を強く吸い上げられ、クロナは刺すような快感をそこに覚えて小さく声を上げる。 「あ…っ」 声に気をよくしたキッドは、白い肉ごと口いっぱいに含み口内で転がすように舐め、小さく山を作った掌でかすかな乳房を覆った。 ささやかな膨らみは揉んだところで何が起こる訳ではないが、その感触が妙に心地よく胸をまさぐり続ける。 キッドが顔を上げたあとには唾液にまみれた乳首が冷えて疼く感覚をクロナに返した。 身体を離したキッドに間が持たずクロナは口を開く。 「ず…随分落ち着いてるよね…初めてなのに」 「気にするな。性格だ」 座った目でそう言うと、キッドは胸元から優美な曲線を描く腰を往復させ感心したように続けた。 「お前はどこも柔らかいな」 きっと、君が一緒に暮らしている女の人たちはもっと柔らかいよ。 そう言いかけてクロナはやめた。 自分の身体の貧弱さををわざわざ知らせることはない。そう思い直すと身体をまさぐり続けるキッドの好きにさせた。 すべらかな肌の感触を楽しんでいた掌は下腹をすぎ、そこから下は経験のない彼にもどうすればいいのか判った。 手が触れるとクロナの身体が一瞬強張り、息をのむ。 構わずキッドはまだ柔らかいペニスを掌に納めると優しく揉みこみ扱いてみた。 与えられて行く刺激にクロナは緩慢に首を振ると途切れがちに言う。 「はぁ…っ、あ、ねえ、それ、はいいよ…」 「何故だ」 「あっ…、い、いっちゃうから…」 「いけばいい」 「これなら俺も知っている」 掴んだものをリズミカルに扱き立て、先端からにじみ出してきた先走りを頼りに大きく掌を動かした。 「ねっ…やめて…、あっ…んっ」 キッドはクロナのあげる声に興奮していく自分を感じた。調子に乗って赤くなった先端を親指で擦ると、クロナが腰を浮かせて大きくあえぐ。 「は…ぁん、やめ…て」 「気持ちいいのか?」 顔をのぞき込むともう片方の手で胸元を撫で回す。鈍い疼きを残していた乳首がぞんざいに刺激されて快感が相乗していった。 初めて他人の感覚をコントロールする征服感に、キッドは、性欲とは別の部分が熱くなる自分を感じる。 彼の動く手にクロナの掌が重なり、頼りなく小さな爪が立てられた。 「やめ…て、あっふ、ああ、やぁっ…」 焦らすだけの動きに眦に涙が溜まって行く。逼迫した喘ぎは悲鳴のように響き、細い身をくねらせ身悶える姿は幼くも淫らでキッドの腰の奥の方にしびれる様な熱を生んでゆく。 「だっ…だめだめ、いっ…ちゃう…」 切迫した訴えの後、キッドの強く上下させた手によってとうとうクロナは身体を震わせて達してしまった。 「や…ひゃぁんっ…あぁ…」 細いペニスが脈打ちながら力を失ってゆくのを見てキッドは我に返る。先端より溢れた粘りけのある液体が手を伝っていった。 「うーっ…」 仰向けに力無く横たわるクロナの瞳には大粒の涙が浮かんでいる。 キッドは慌て、とっさに謝った。 「あっ…すまん、つい…悪かった」 「クロナ…大丈夫か?」 ぐったりと弛緩した身体は徐々に落ち着いてきた呼吸により薄い胸が上下し、痛々しさと淫らさの狭間にいた。 キッドは思わず息をのみ、そして再びクロナへ目を向ける。 「うじゅぅ…ひどいよ…」 恨みがましい視線を返されたがキッドはそれをむしろ可愛らしく感じてしまう。 軽く微笑むともう一度謝った。 「すまん…」 しかしますますクロナは拗ねたような顔をして横を向き、そんなクロナを見てキッドは身体を寄せると再び下半身へ手をむかわせる。 びくりとクロナの身体が跳ねたが構わず足の間に手を差し込んでそこを探った。 「濡れているな」 赤く紅潮した頬をさらに赤く染めてクロナが横に向けた顔を強く背けた。足の間をまさぐる指はやがて窪みへと達しそこをくぐる。 「…ここか?」 キッドはクロナの秘裂に指を軽く埋めて尋ねた。 クロナは顔を背けたまま、瞼を閉じて返事を返さなかったがキッドは埋めた指を動かし深さを確かめるように前後させる。 粘る水音が響き、偶然かすめた弱みに腰が揺れ、膝が曲がり寄せられていく。 「ぁん、…ん、はっ…」 「もういいか」 余裕のない声に瞼を上げると、暗闇に見えるキッドの白い貌が赤く染まり、いつも自信に満ちた金色の目が、まるで伺うように クロナを見つめていた。なぜだか可笑しくなって、クロナは頷く。 「うん…」 キッドは身体を起こし、クロナの足の間に身体を納め、細い足を抱えなおした。 それから性急に、限界まで反った自分自身に手を添えクロナの中へと沈めてゆく。 「うく…」 「は…っ…苦しいのか」 「大丈夫…」 亀頭を過ぎたペニスは勢いあまり、ぬるりとすべてを奥まで納めてしまう。 「あ、あっ」 二人は同時に声を上げて、身体を震わせた。 十分に興奮を見せていた互いの性器は待っていたかのように粘膜をなじませてゆく。 「は、あっ…、熱い…」 キッドは絞り出すようにそう呟くと本能に急かされるがごとく身体を動かし始めた。 「あっ、ああ、あうん」 身体が前後するたびにクロナから声が漏れていく。 手練もなく、ただ揺すられるだけだったが、慣れたクロナの身体は十分に快感を紡いだ。 「はっ、はぁっク、ロナ…ッ」 一端動き出した腰は、キッドの思いとは別のところで律動を繰り返していく。 「うっ、アッ、クソ、…」 眉を寄せて喉を反らせると堪えきれない感覚に毒づき 一端姿勢を持ち直したキッドだったが、しかしすぐに背を丸め、身体を震わせる。 「ハァッ、う、く、出る…っ」 身体の中のペニスが体積を増したと思われた後、断続的に精を吐き出した。 あっけない性行だったがクロナは強く瞼を閉じてそれを受け止め、その後すぐに力の抜けた身体が落ちてくるのを 胸を重ね合わせるようにクロナはその背に手を回した。 「は…はぁ…は…」 嬲られもせず、痛い思いをすることも無かったが、彼は勝手に動き勝手に達してしまったので快感も薄かった。 しかしクロナは今まで感じた事の無い、とても穏やかな気持ちになり、汗の浮かぶその背を キッドの呼吸が整うまでの間優しく、ずっと、撫でていた。 #back(left,text=前ページへ戻る) ---- 著者コメント .................end この後6回しました ----
前提としてクロナはメデューサと再会後ですが、原作時系列を間違え 何となくクロナが学校に慣れる前(キッド宅パーティ前)みたいな雰囲気になってしまっています。 ................. 深夜、学園の図書館へ向かう途中、キッドは視線の端を動く影に足を止め、通路の両脇を続く窓に様に目をやった。 夜の闇に浸食され鏡の様になったガラスに、背を丸めのろのろと進む細い姿がある。 対称に走る渡り廊下の通路を行くクロナだった。キッドはすぐに踵を返すとその姿を追い駆けて来た道を引き返す。 「おい」 突然暗闇から掛けられた声にクロナは肩を揺らすと、おそるおそる振り返った。 キッドはクロナの豆鉄砲を食らったような顔に、存外驚かせた事に気付く。しかし間を開けずこう尋ねた。 「…何をしているこんな夜中に」 「あ、あの僕…眠れなくてその」 「ごごごごめんなさい、へ…部屋にいるとあの、こ、ここは、通っても良い廊下だと…」 しどろもどろに言い訳をするクロナを見て、咎めるような言い方になってしまったことを後悔しながら キッドは、未だ続く言い訳にかぶせる様に言った。 「いや、お前は捕らえられている訳ではない。自由にしていて当然だ」 「…う…うん、…」 クロナはほっとした表情をするとそのまま自分を見ているキッドの視線を避けるように顔を逸らせ それからもう一度キッドを伺うとささやく様な声で言った。 「じゃ…じゃあ、僕、部屋に…」 しかし、そそくさと少年の脇を抜けようとしたクロナの背にキッドは再び声をかける。 「待て」 びくりと身体を震わせて振り返るクロナにキッドは意外な提案をした。 「少し話をしないか」 「この先に教員詰め所がある。今は使われていないが、コーヒーぐらいは出せる」 親指で部屋の方向を示すと、クロナを見た。 いい機会だと思った。 もしかすると会えるかもしれないなどと意識下では考えていたのかもしれない。 キッドは促すように言葉を足した。 「眠れないのだろう?」 「…う、うん、…いいよ」 やましい思いを抱えるクロナにはその申し出を断る理由が思いつかなかった。 ................. 「は、話って…何?」 クロナは不安そうな視線をカップを持つキッドへと向けて尋ねた。 キッドはコーヒーの注がれたカップをクロナの前に置くと一瞬困ったような顔をした後、珍しく、歯切れ悪い様子を見せる。 「…別に、取り立ててこれと言う訳ではないが…」 「その…学校は慣れたか」 「う…うん…な慣れは…しないけれど、…と、時々、楽しいよ」 「そうか」 真正面から見返してくるキッドの鋭い視線にクロナは何もかも見透かされているような不安を覚える。 クロナは、なんの迷いも見せない、この金の瞳が苦手だった。 「うん…」 クロナは俯くと、もう一度、そう返事をした。 それから再び沈黙が流れる。 話しかけてもらわなければ間が持たない。かといって話しかけられたい訳ではない。 クロナは首を竦め、目の前に置かれたカップの中を覗いた。コーヒーに写る自分と視線を合わせ考える。 自分はもしかすると疑われているのではないか、すでにメデューサとの繋がりを知られているのではないか。 あらゆる可能性に自問自答を繰り返すがクロナには彼の意図を読むことが出来なかった。 両手でカップを包み込むと冷えていた指先がしびれながら感覚を取り戻してゆく。 夜を歩き回り冷え切った身体はいずれ熱を取り戻すが、クロナの心は再び冷たい氷に覆われようとしていた。 クロナは母親の死を伝えられては居なかった。姿を見せたメデューサに何があったのかも知らず、 母が自分の事を忘れていなかった事を、ただ嬉しく感じた。 しかしメデューサは、クロナに学園へ残りスパイ活動をすることを強要し、マカや、クロナを保護してくれた 学園への裏切り行為をさせようとしている。まだ一緒に来いと言われた方がましだったのかもしれない。 コーヒーカップの中にマカの顔が浮かぶ。 与えられるのを待つだけでは何も変わらないことは判っていたが、クロナには目の前にさしのべられる手を 選別する自主性は無かった。 結論のでない思いを振り切るようにふいに視線をあげたクロナは、クロナを見ていたキッドと目が合う。 するとクロナが視線をを背ける前にキッドは、すっと顔を逸らせた。 その仕草に違和感を感じる。 そのまま彼の横顔を見ていると視線を感じたのか、キッドは勢いよく顔を戻すと言った。 「なんだ」 「えっ…ご、ごめんなさい」 クロナは謝りあわてて俯く。 キッドが再び顔を横に向けたのを感じ、クロナは上目遣いに彼を盗み見た。 キッドはわずかにその白い頬と耳を染めている。 身体の奥でクロナの身体に住まう魔が低い声でざわめき始める。  なんてこったクロナ、こいつは面白い事になったぞ  このお坊ちゃんはお前に興味があるようだ 胃の府があがってくる様な嫌な音を出しながら黒血は続けた。  得意だろう?身体を使ってたらし込め  やれよ、簡単な事じゃねえか  メデューサに褒めて貰いてえんだろ? 身体の中で響く声に、弾かれるようにクロナはキッドを見た。クロナと再び視線が合った彼は不自然に顔を背け、そして席を立って部屋にある窓に寄ると外を伺う。 その背中を呆然と見つめるクロナは誰に語りかけるでもなく、強く想った。 駄目だ、彼はマカの友達なんだ。 マカを裏切りたくない…。 しかし黒血はそんなクロナを一笑に付する。  何言ってやがる  友達?笑わせるな  とっくにおまえは裏切ってんじゃあねえか… 低く笑う声は内側から響いていて、耳を塞いでも遮ることが出来ない。 それはクロナに物心が付いた時からクロナの中に当然と存在していたもので クロナにはもう、この声が自分のものなのか、自分以外の誰かの声なのか判らなくなっていた。 黙れ黙れ黙れ、もう嫌なんだこんな事は…。 そう、大きな声で喚き散らしたい感情を喉元で抑え込み、クロナはカップを握る手に力を込める。 再び顔を上げたクロナの瞳には暗い影が落ちていた。 窓の外を見ているキッドに力無く視線を向けると、クロナは口を開き、暫くしてから声を発した。 「…ねえ君、…も、もしかして僕とエッチなことがしたいの」 クロナの台詞に一瞬時が止まったようにキッドの動きが固まる。それから猛烈な勢いでキッドは声を荒げた。 「ばっ…馬鹿者が…っ勘違いをするな!」 キッドの剣幕にクロナが怯えたように身を引くと、キッドは慌てて言い直す。 「ご、誤解だ!そうじゃない」 少年は意外なほどに狼狽え身体の前につきだした手をクロナに向かって振りたくる。 「俺はただ…こ、こここここの、か、関係者としてだな」 「こっ…ここに連れてきたことだって別に、他意は、無い!!」 ゼスチャーを交えながら必死に弁解をするキッドにクロナは静かに言葉をかぶせる。 「な…何でも良いけど」 「止めた方がいいよ…。ぼ、僕は女の子じゃないし」 息をのむキッドはクロナに向き直り絞り出すように言う。 「!…お前はやはり、…男なのか?」 彼だけでなく誰もが確信を抱けずにいるクロナの性別に、面と向かってどっちですか、と尋ねるものはいなかった。 しかし、どちらと言われても腑に落ちるだけの要素はあった。 クロナは両手に包んだカップに視線を落としたまま、小さく呟く。 「…お、男…でもないけど…」 「どう言うことだ」 真剣な顔つきでこちら見つめる少年に、クロナは突然、悪戯を仕掛けたい気持ちがわき上がってくるのを感じた。 クロナは自分の中にそう言った妖婦の様な部分があると言うことを自覚していた。 そんな事をしてはいけないと自戒する自分と、何もかも壊してしまいたくなる破壊衝動、これが魔女の血のなせるものなのだろうか。 クロナは自嘲するように思う。もう赤い血なんて一滴も流れていないのに。 「どうした。キッチリハッキリせんか」 キッドが落ち着かないように、そう急かしてくる。 「…」 僅かな逡巡の後に立ち上がったクロナは、靴を脱ぐとその脇に立ち、かがみ込んで両手をスカートの中へくぐらせた。 スカートの両脇をあがった腕はやがて足に沿って下がってゆく。 動きからクロナが下着を降ろしていると言うことが判り、程なく足を抜いた手には果たして小さな布が握られていた。 「…」 キッドは驚きの表情を張り付かせたまま、立ちつくし声を発することも忘れている。 クロナはそれを床へ落とすと詰め襟のボタンを外し、再び身を屈めスカートの裾をめくり始めた。 徐々に晒される白く細いすね、ランプの光を柔らかく反射するももが現れた後、足の付け根には少年の様な小さな陰茎が存在していた。 たくしあがる裾はそのまま進み、やがて滑らかな腹くびれたウエストの脇あばら浮く胸が見え そこには幼い乳房の膨らみがあった。 腕を交差させ、服を首から抜いてしまうと、クロナは手を両脇へ、だらりと力無く落とす。 「こ、この通り、…僕は、…お…男の子でも女の子でもない…」 暗い瞳でそう告白すると目の前のキッドを見ることが出来ずに俯く。夜の冷気に肌が粟立ち、クロナは片手をもう片方の腕に掛けた。 とたん猛烈に後悔が沸いてきて消えてしまいたくなる。 それから、無言でクロナを見つめるキッドの視線を避けるように指に引っかけていた服を身体の前で抱え、痩身を隠すように覆った。 突然身体を晒したかと思うと今度は急に恥じらって泣きそうな顔をする。 その落差がキッドには理解が出来なかった。 我に返った彼は、とっさに上着を脱ぐと近寄ってクロナの肩に掛ける。 「風邪を引くぞ」 自分が的外れな事を言っているのは判っていたが彼にはそれしか掛ける言葉が思いつかなかった。 クロナはただ身をすくめると自ら晒した肌を恥じるように、かけられた上着をかき合わせる。 俯き黙り込んでしまったクロナに、まるで自分がクロナを辱めてしまったような気分になり、キッドの中に罪悪感がこみ上げてくる。 「その…悪かった」 謝ってくる少年を見もせずにクロナは抑揚のない声で返す。 「…なんで?」 「き…君は何もして無いじゃないか」 「お前にしなくても良い告白をさせた」 何か言いたげに視線をやるとクロナは再び目を伏せた。そしてこのまま自分に呆れて彼が出て行ってくれることを願った。 返事を返さないクロナに対しキッドは再び口を開く。 「クロナ、お前は男でもなく女でもないと言ったが」 「そうではなく、お前は男でもあり、女でもあると言うことだ」 俯くクロナを覗き込み、キッドは続ける。 「1より2の方がいい。片方より両方の方がいいに決まっている」 「お前はその点、俺達よりも、より完璧に近いといえる。素晴らしい事だ」 女の身体を見たことは有った。むろん他人の少年の身体を見たこともある。 初めて見る異形の身体を美しいとキッドは感じた。 ただそれを伝えるすべを知らない少年は、詭弁を弄して落ち込むクロナを慰めようとする。 「何も恥じることはないぞ」 横目でキッドを伺うとクロナはつまらなそうに返した。 「い…いいよ、そんなことは…」 「…それに、き君には関係ないじゃない」 「…」 とりつく島のないクロナに、掛ける言葉を窮しキッドは黙った。 重く被さる沈黙に困りはて視線を漂わせるが、ふと露わになったクロナの白い尻がキッドの視界に入る。 丈の短い上着はクロナの肌をすべて隠すには至らず、抱え込んだ服の隙間から見える白い脇腹とももや 細い割にボリュームのある腰がランプの明かりをうけて柔らかなラインを描いていた。 ふと見てはいけないものを見てしまった気がしてキッドは目をすぐに背けたが ショックによって抑え込まれていた、ごく自然な性衝動がわき上がってくるのを感じた。 考えまいとするほど意識は集中し、13歳の少年には酷な我慢を強いられる。 目の端にどうやっても写り込んでくる白い肌に、一旦天井を仰ぎ考えると、キッドは何かを決したように視線をクロナへと戻すと言った。 「クロナ」 「お前は俺に抱かれる気はあるか」 「ぼ…僕はそんなつもりで脱いだ訳じゃないよ」 自分に恥をかかせまいとして彼が言い出したのかとクロナは思った。 そんな目的もありはしたが、哀れまれるのも恥辱を受けるのも慣れていたし それよりも早く一人になりたい気持ちの方が大きかった。 「気にしないで」 「判っている、お前を侮辱するつもりはない。ただ俺がお前を抱きたいと欲望を覚えてしまったと言うだけだ」 「だから、お前さえよければ…その、」 キッドの言葉を受けてクロナは俯くと、自分の、素肌に靴下だけを履いた間抜けな足と、キッドの黒い革靴を見ながら呟く。 「……誘うの下手だね…」 「そ、そんなんじゃどんな女の子もついてきてくれないと思うよ」 しかしキッドは、至ってまじめに返す。 「当然だ、こんな駆け引きはしたことがない」 「…そうか、街で女の子を口説かなくたって不便はしてないよね」 肩をすくめそう呟くクロナにキッドは言った。 「いや、俺は女を抱いたことがない」 その告白にクロナは驚いたように、自分より少し高い位置にあるキッドの顔を振り仰いだ。 「し…したことないんだ…?」 「ああ」 別段恥じることもなくキッドが答える。クロナは目を丸くしたまま、言った。 「あんなキレイな女の人二人と暮らしているのに…」 「ん?…リズとパティの事か?」 まるで思いもつかないことを言われた時の様にキッドは聞き返し、それから判らぬものに言い聞かせるような口調で返した。 「あいつらは俺のパートナーであり家族のようなものだ」 「男女が共に暮らしていれば必ずしも肉体関係があるとは限らんだろう」 下世話な考えを揶揄されたようでクロナは俯き顔を赤らめる。それに気づきキッドは続けた。 「いや、そうだとしても不自然では無いことは判っている。ただ俺のケースは違っていただけだ」 「一般的に見れば、そんな関係になってもおかしいことはない。実際異性パートナーと夫婦関係にある組も珍しくはないからな」 「…」 育ちの良い彼はクロナが恥ずかしい思いをしないように、そう付け足した。 「…したいと思わないの」 「俺も男だ。思わない訳はない」 まるで自分とは関係の無い話をするようにキッドは胸を張る。 「だが急ぐことでもあるまい」 「いずれ時が来くればと考えていた」 「や…やめなよ僕なんて、普通じゃないし…それに、ふ、ふさわしくない」 「どう言う意味だ?」 メデューサ様の言うままに僕がどれだけの人間に身体を任せて来たと思う? そんな言葉を彼にぶつけ、潔癖なキッドの顔を歪ませてみたい、そんな意地の悪い感情がわいてくる。 しかしまた、そう言ってしまってから後悔をするに決まっているのだ。 クロナはキッドの顔を見れず俯いたまま自棄になってこう続けた。 「こ…言葉の通りだよ」 「意味がわからんが…」 「俺は何が有ろうと気にはしない」 その言葉にクロナはキッドを伺い見た。一瞬だけ視線が絡んだがすぐにクロナは俯いてしまう。 生まれた時から何もかもを手にしている彼にとって、そんなことは取り立てて重要な事でもないのだ。クロナは思った。 急に自分が、彼の気持ちや体面を案じていることや、自分との差を気にしている事などすべて、馬鹿馬鹿しくなってくる。 クロナは僅かに顔を上げると呟いた。 「そうだね…君には関係ないか」 「なんのことだ?」 その囁きのような言葉をキッドが聞き挟み、尋ね返す。 「ん…、判ったよ」 キッドの続く言葉を遮るようにクロナは唐突にそう言うと俯いたまま呟くように続けた。 「…判った…いいけど…」 「文句は言いっこなしだよ」 可笑しいじゃないか。 一点の曇りもない次代の死神の最初の相手が、僕のような存在だなんて。 クロナは視線を床に向けたまま胸に抱いた衣服を引き寄せてかすかに口元を歪めた。 「クロナ」 仮眠室にもなっているこの部屋の奥には簡素なベッドが備え付けられている。 クロナは胸に服を抱え込んだままそこへ向かい、抱えていた服を脇にある椅子に掛けると、ベッドへ腰を下ろした。 「いいよ。おいでよ…」 部屋の奥まで照らすにはランプの光は弱く、薄闇に白い肌がぼんやりとシルエットを浮かばせ それは絵画のようでもあり、すらりとした細い手足と幼い胸が少年の眼にひどく淫らに映る。 キッドは自分がアプローチの方向を誤ってしまったことに気づいていた。 だが、この誘いをはねのけられるほど老獪してはおらず、彼の若い身体も相手の気持ちを気遣う余裕がなかった。 「クロナ」 キッドはもう一度名前を呼ぶと意を決したように死神の紋章をつけたループタイへ手をかけた。 重なってきた少年はクロナの身体へ目を落とし言った。 「…すばらしい。シンメトリーな身体だ」 あさってな賛辞を送ってくるキッドにクロナは戸惑ったように視線を漂わせる。。 「…そんなことが嬉しいの?」 「ああ、もっとも重要なことだ」 そう言うとキッドは手をあげクロナのささやかな乳房に軽く触れる。 「く…くすぐったいよ」 「…すまん」 今度はしっかりと手の中に膨らみを包み込むと力を込めた。 クロナの乳房はやっと膨らみかけた少女の様な大きさしかなく、しかし、まだ掌の小さい少年にはぴたりとはまった。 戯れに女の胸を掴むこともあったがその時とは明らかに違う、身体の奥を突き上げるような熱を感じる。 動いても居ないのに鼓動は早く打ち、顔が紅潮しているのが判った。 欲情しているのだと彼は冷静に考える。痛みを訴えるほど勃起した股間が何よりの証拠だろう。 キッドは眼下の、自分を見上げてくるクロナをもう一度見つめた。 暗闇に色を濃くした鳩羽色の瞳には怯えた色が見つけられなかった。すべてを諦めたような無感情の絶望しかみえない。 痛々しいほどに痩せた細い身体にざんばらな髪、青白い頬とうすく隈のうかぶ目元に暗い瞳。 人目は引くが、決して、クロナはキッドが心を奪われる様な存在ではない。 完璧を冠する少年は、クロナのように自分自身に負ける弱い精神を許容することが出来ない。軽蔑すらしていた。 しかしキッドは、あの時触れそうなぐらいに近づいたこの瞳が忘れられなかった。 彼の周囲には魅力的な女がたくさん居たが、少年がそう言った事に心が乱されることは今まで無く これがもし、クロナの中に潜む魔女の技なのだとすれば、自分はまんまと掌中に嵌ってしまったのかもしれない。そんなことを考えた。 「な…何?」 「いや…」 キッドの返事にクロナは合わせた視線を逸らすと力無く暗闇へ目を向ける。 キッドは手にした膨らみに視線を戻すと、寒さで立ち上がった小さな乳首へ唇を落とした。 挟み込み子供のように吸ってみる。報告通りのつたない愛撫に、クロナは胸に顔を埋める彼の頭を抱いた。 さらさらと癖のない黒髪が指の間をぬけていく。 お返しの様にキッドに胸を強く吸い上げられ、クロナは刺すような快感をそこに覚えて小さく声を上げる。 「あ…っ」 声に気をよくしたキッドは、白い肉ごと口いっぱいに含み口内で転がすように舐め、小さく山を作った掌でかすかな乳房を覆った。 ささやかな膨らみは揉んだところで何が起こる訳ではないが、その感触が妙に心地よく胸をまさぐり続ける。 キッドが顔を上げたあとには唾液にまみれた乳首が冷えて疼く感覚をクロナに返した。 身体を離したキッドに間が持たずクロナは口を開く。 「ず…随分落ち着いてるよね…初めてなのに」 「気にするな。性格だ」 座った目でそう言うと、キッドは胸元から優美な曲線を描く腰を往復させ感心したように続けた。 「お前はどこも柔らかいな」 きっと、君が一緒に暮らしている女の人たちはもっと柔らかいよ。 そう言いかけてクロナはやめた。 自分の身体の貧弱さををわざわざ知らせることはない。そう思い直すと身体をまさぐり続けるキッドの好きにさせた。 すべらかな肌の感触を楽しんでいた掌は下腹をすぎ、そこから下は経験のない彼にもどうすればいいのか判った。 手が触れるとクロナの身体が一瞬強張り、息をのむ。 構わずキッドはまだ柔らかいペニスを掌に納めると優しく揉みこみ扱いてみた。 与えられて行く刺激にクロナは緩慢に首を振ると途切れがちに言う。 「はぁ…っ、あ、ねえ、それ、はいいよ…」 「何故だ」 「あっ…、い、いっちゃうから…」 「いけばいい」 「これなら俺も知っている」 掴んだものをリズミカルに扱き立て、先端からにじみ出してきた先走りを頼りに大きく掌を動かした。 「ねっ…やめて…、あっ…んっ」 キッドはクロナのあげる声に興奮していく自分を感じた。調子に乗って赤くなった先端を親指で擦ると、クロナが腰を浮かせて大きくあえぐ。 「は…ぁん、やめ…て」 「気持ちいいのか?」 顔をのぞき込むともう片方の手で胸元を撫で回す。鈍い疼きを残していた乳首がぞんざいに刺激されて快感が相乗していった。 初めて他人の感覚をコントロールする征服感に、キッドは、性欲とは別の部分が熱くなる自分を感じる。 彼の動く手にクロナの掌が重なり、頼りなく小さな爪が立てられた。 「やめ…て、あっふ、ああ、やぁっ…」 焦らすだけの動きに眦に涙が溜まって行く。逼迫した喘ぎは悲鳴のように響き、細い身をくねらせ身悶える姿は幼くも淫らでキッドの腰の奥の方にしびれる様な熱を生んでゆく。 「だっ…だめだめ、いっ…ちゃう…」 切迫した訴えの後、キッドの強く上下させた手によってとうとうクロナは身体を震わせて達してしまった。 「や…ひゃぁんっ…あぁ…」 細いペニスが脈打ちながら力を失ってゆくのを見てキッドは我に返る。先端より溢れた粘りけのある液体が手を伝っていった。 「うーっ…」 仰向けに力無く横たわるクロナの瞳には大粒の涙が浮かんでいる。 キッドは慌て、とっさに謝った。 「あっ…すまん、つい…悪かった」 「クロナ…大丈夫か?」 ぐったりと弛緩した身体は徐々に落ち着いてきた呼吸により薄い胸が上下し、痛々しさと淫らさの狭間にいた。 キッドは思わず息をのみ、そして再びクロナへ目を向ける。 「うじゅぅ…ひどいよ…」 恨みがましい視線を返されたがキッドはそれをむしろ可愛らしく感じてしまう。 軽く微笑むともう一度謝った。 「すまん…」 しかしますますクロナは拗ねたような顔をして横を向き、そんなクロナを見てキッドは身体を寄せると再び下半身へ手をむかわせる。 びくりとクロナの身体が跳ねたが構わず足の間に手を差し込んでそこを探った。 「濡れているな」 赤く紅潮した頬をさらに赤く染めてクロナが横に向けた顔を強く背けた。足の間をまさぐる指はやがて窪みへと達しそこをくぐる。 「…ここか?」 キッドはクロナの秘裂に指を軽く埋めて尋ねた。 クロナは顔を背けたまま、瞼を閉じて返事を返さなかったがキッドは埋めた指を動かし深さを確かめるように前後させる。 粘る水音が響き、偶然かすめた弱みに腰が揺れ、膝が曲がり寄せられていく。 「ぁん、…ん、はっ…」 「もういいか」 余裕のない声に瞼を上げると、暗闇に見えるキッドの白い貌が赤く染まり、いつも自信に満ちた金色の目が、まるで伺うように クロナを見つめていた。なぜだか可笑しくなって、クロナは頷く。 「うん…」 キッドは身体を起こし、クロナの足の間に身体を納め、細い足を抱えなおした。 それから性急に、限界まで反った自分自身に手を添えクロナの中へと沈めてゆく。 「うく…」 「は…っ…苦しいのか」 「大丈夫…」 亀頭を過ぎたペニスは勢いあまり、ぬるりとすべてを奥まで納めてしまう。 「あ、あっ」 二人は同時に声を上げて、身体を震わせた。 十分に興奮を見せていた互いの性器は待っていたかのように粘膜をなじませてゆく。 「は、あっ…、熱い…」 キッドは絞り出すようにそう呟くと本能に急かされるがごとく身体を動かし始めた。 「あっ、ああ、あうん」 身体が前後するたびにクロナから声が漏れていく。 手練もなく、ただ揺すられるだけだったが、慣れたクロナの身体は十分に快感を紡いだ。 「はっ、はぁっク、ロナ…ッ」 一端動き出した腰は、キッドの思いとは別のところで律動を繰り返していく。 「うっ、アッ、クソ、…」 眉を寄せて喉を反らせると堪えきれない感覚に毒づき 一端姿勢を持ち直したキッドだったが、しかしすぐに背を丸め、身体を震わせる。 「ハァッ、う、く、出る…っ」 身体の中のペニスが体積を増したと思われた後、断続的に精を吐き出した。 あっけない性行だったがクロナは強く瞼を閉じてそれを受け止め、その後すぐに力の抜けた身体が落ちてくるのを 胸を重ね合わせるようにクロナはその背に手を回した。 「は…はぁ…は…」 嬲られもせず、痛い思いをすることも無かったが、彼は勝手に動き勝手に達してしまったので快感も薄かった。 しかしクロナは今まで感じた事の無い、とても穏やかな気持ちになり、汗の浮かぶその背を キッドの呼吸が整うまでの間優しく、ずっと、撫でていた。 .................end #back(left,text=前ページへ戻る) ---- 著者コメント この後6回しました ----

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