セナタク


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「お……おい……ゆ、雪とかあ、有り得ないだろ常識的に考えて……」

 天気自重しろ、とぼやきながら僕はベースを出る。いつもの僕なら当然こんな日は外に出ない。いや、それどころか雪に気付かない事が圧倒的に多いのだ。
 雪に気付いたとしても星来たんのマフラー姿を妄想したり星来たんがお風呂で暖まっているところを妄想しながらニヤニヤしているだけ。
 そう、星来は僕の嫁。嫁に会う為なら雨だろうと雪だろうと、このナイトハルトの行く手を妨げる障壁にはならない。ふひひ、俺キモスwww

「い、いいい今行くよ星来たん!! このブリザードを退け、君の元へ!!」

 心の中で叫ぶだけ叫ぶと星来たんの声が聞こえてくる。「早く迎えに来てよね、このぼけなす♪」って聞こえた気がしたんだ。いや、確かに聞こえた!!
 因みに口ではフバー○、フバ○ハ、と連呼しているけど寒さはちっとも緩和されない。フバーハの数だけ「だがMPが足りない」と呟いてみる、ますます寒い。

「早く星来たんフィギュアを手に入れてなめまわす様に拝まないと……そそ、その後は勿論キャストオフした姿を写真に納めて……ですね、わかります、ふひひwww」

 呟きながら歩くとザクザクと音がする。
 周りでは馬鹿ガキ共がこんな、移動が不便になって、あまつさえ星来たんと僕を断絶しようとする悪魔の白さを嬉しそうに弄って遊んでいた。
 ま、まずい、FES電波が伝染している、もちつけ僕……
 あまりにも寒いのでコンビニに寄る。店員の「いらっしゃいませ」という声に不覚にもビビッてしまったので、「マニュアル乙」と心中で強がる僕。
 @ちゃんねるなら「不覚にも萌えた」というレスが僕にニ、三付く事だろう。
 レジの前にはアイスコーナーがあり、当然ガルガリ君も置かれている。プリン味だけ大量に積まれ、ソーダ味は一つも無い。
 もしや、あの女がここに来たのだろうか……



「ありがとうございましたー」

 店員の声にまた怯んでしまった。
 どうせあの店員も僕の事を「見るからにキモオタwww」とか蔑んでるんだろうな、死ね、氏ねじゃなくて死ね。
 コンビニの外では寒いというのに数人のDQNが輪を作っていた。絡まれない内に逃げる僕Gj。「うまく逃げ切れた!」再び声に出してみる。酷く虚しい。
 早くフィギュアを手に入れて、星来たんに慰めてもらって、暖めてもらおう。も、尤も暖まるのは主に僕の心と体の一点だけどね、サーセンwww

 そう思うと自然と足が弾む――訳が無い。
 それどころか雪に足を取られてただ歩いているだけでもしんどい。
 @カフェで休憩する手もあったが、エセヤンデレに絡まれるのを恐れて止めた。こうして、僕の心安げる場所は日に日に少なくなっていくのかな……アニメエイトまではまだ遠い。
 白い溜息が淀んだ空に消えていく。僕は近道のつもりで公園へと入る。この公園は場所が悪かったのか、子供はおろかDQN共のたまり場にすらなっていない。

「税金の無駄使い乙wまあ僕は払ってない訳だがwww」

 誰も居ない空間は落ち着く。僕は一人が――いや訂正。星来たんと二人が好きだ。
 僕の嫁が顔を赤らめた姿を妄想した時、どこかで何か音がした。
 誰かが雪を踏み締める音が、確かに僕の耳に伝わり、体を硬直させる。
 この時点でかなり精神状況はカオスだ、もちつけ僕。
 確かにDQNとエンカウントした場合は所持金を0にされるくらいの可能性はある、ダンジョンで鉄の金庫を手に入れ忘れたトル○コくらいのピンチと言えよう。
 意を決して音がした方へ向かってみる。気分は威風堂々――ラスボスのグラフィックに向かって持ちキャラを前進させている感じだ。現実の僕は引け腰だけど。
 ――そこに居たのは、ウチの学校の制服を着た長い髪の女だった。

「あ、蒼井…………セナ……?」

 確かに彼女は蒼井セナだ。
 長身の体をせっせと動かして何かを作っている。いつも近くに居るこずぴぃの姿は見当たらない。ど、どうでもいいけどこずぴぃよりセナの方が貧乳なのにはワロタ。
 僕の気配に気付いたのか、セナはようやく振り向いた。



「に、西條!? ち、違う、コレは、コレは……! そう、梢に頼まれて……」

 「苦しい言い訳乙w」ネット上ならそれだけでプギャれるのに現実世界ではそうもいかない。
 セナの背後にある物、それはまごうことなき雪だるまだった。

「ゆゆ、雪だるまなんて作って……ば、馬鹿なの? も、もうすぐ死ぬの?」

 僕にしては珍しい(尤も七海には普段から言うが)強気な発言で攻めた。
 セナは雪だるまから手を離すとディソードを耳障りな音を起てながらリアルブートさせ、僕の喉元に突き付ける。

「じょ、冗談にき、決まってるだろ? こ、これだから、嫌なんだよ、もう」
「…………ふん」

 途中から混乱して主語が抜けている僕の言葉で、何故かセナはディソードを消した。何か知らないけど許してくれるつもりらしい。

「……西條」
「……な、何だよ……」

 来た。ほら来た。
 このパターンはアレだお、金貸せだの寄越せだの言って金を奪われるパターンだお。
 ああ、今日もまたATMからお金を卸す作業が始まるお……
 所詮は三次元、ちょっとでも油断すれば何もかも奪われてしまう。某世界樹よりもよっぽど理不尽な世界、それが三次元なんだ。

「……後、二本なんだ。協力してくれ」

 ああっと! じゃ済まない恐怖、それが三次元…………ほぇ?
 立ち尽くす僕に青いパッケージのアイス――ガルガリ君が手渡される。
 セナはガルガリ君が入れられていたスーパー袋を縛ると、ベンチにゆっくりと腰掛け、そしてさりげなく端の方に詰める。
 こ、これは誰も居ない公園のベンチで二人切りフラグですね、わかりますw……それにしても……さ、寒い……

「こ、この寒さの中でガルガリ君とか……じ、自虐プレイも大概にしろよ……」

 ベンチに座った僕はセナに聞こえない程度の声で呟く。
 口と鼻と眉毛がガルガリ君の棒で作られた雪だるまがこちら向いている。今セナと僕が食べているガルガリ君の棒が目に使われるのだろう。
 一足先にガルガリ君を食べ終えたセナがまた口を開いた。

「……少し寒いな……」

 バカスwwwこの寒い中マフラーも手袋もしないでガルガリ君食ってりゃ寒いのは当然だろ、馬鹿なの? もうすぐ肺炎で死ぬの?


「あ、当たり前だろ、雪が降ってるんだから……顔が赤いし……ルドルフ乙www」

 赤い鼻をしたセナをからかってみる。
 またディソードを突き付けられるかも知れないがそこまで考えなかった。
 そう、僕はイライラしている。こんな所で三次元女にかまけている暇なんて無い、一刻も早く星来たんに会いにいかなくてはならないのだから。

「……私のどこが赤くなっているんだ? ……よく見ろ、赤くなってなどいない」
「つ、強がり乙。どこからどう見ても真っ赤だよ。マフラーくらいしてくるだろ常考、雪が降ること知らずに出て来たのか? 情報弱者www」

 今日の僕はやたら強気だ。自分でも何故だかはわからないが、セナの前では割と素の自分で居られる気がする。
 多分、切ろうとすれば簡単に切れる関係だから……なのか、それとも……逆なのか……
 い、いや、それは無い。気の迷い、気の迷いに決まってる。

「私のどこが赤いんだ? ……もっとよく見ろ」

 そう言って顔を近づけてくるセナ。 まるでキスをおねだりするエロゲのキャラの様だ。
 だ、だが断るwww僕のファーストキス(笑)は、いつか現れるであろう星来たんに捧げるつもりだから――そんなことを考えている間に、唇に何か冷たい物が当たった。

「qあwせdrftgyふじこlp!?」
「……少し甘いな……ガルガリ君か」

 い、今何が起こった!? もちつけ、素数を数えるんだ僕!! 1、3、5、7、9、11、13……って志村ー!! 奇数奇数!!
 もももももちつけ(AA略 僕。

「さあ西條、雪だるまを…………おい、西條……? 」


 そ、そうだもちつけ僕。
 三次元女なんてスイーツ(笑)、ビッチ、腐女子の三パターンしか存在していないんだ。
 セナはきっと「キス程度挨拶みたいなもん」とか考える女で毎晩渋谷を練り歩いては見たことも無い男と平気でにゃんにゃんしたり出来る女に違いない。
 こんなキモオタが好きなんてのは理想卿、つまりは二次元にしか存在しない。

「一つだけ言っておく……私は……お前のことが……」

 三次元女なんてスイーツ(笑)、ビッチ、腐女子の三パターンしか存在していないんだ。
 セナはきっと「キス程度挨拶みたいなもん」とか考える女で毎晩渋谷を練り歩いては見たことも無い男と平気でにゃんにゃんしたり出来る女に違いない。
 こんなキモオタが好きなんてのは理想卿、つまりは二次元にしか存在しない。
 だだだ、大事なことなので二回言いました!!

「………好き……なのかも、しれない……」
「そそ、そんなこと言っても僕は釣られないからな!! せ、セナが僕を好きになる理由が一つも無いしフラグだって立ってない! そもそも僕には星来と言う嫁が居る!! そんなキモオタを三次元女が好きになる訳が無いんだよ!!」

 僕なりの精一杯をセナに告げると、それすらも予想していたかのように笑われた。
しんしんと降る雪の下で微笑するセナは、三次元に興味無い僕でさえわかる程綺麗だ。

「今は信じてもらえなくていい。……こうして二人で、雪だるまを作れるだけでもな」
「だ、誰が作るって言った?」

 強がる僕の手をセナが引いていく。その手は想像以上に冷たくて、そして細く繊細だった。その手を乱暴に振りほどくと、セナは少し悲しそうな顔をする。

「西條……」
「そ、そんな恰好じゃあ風邪ひくに決まってるだろ……常識的に考えて……。せめてマフラーくらい、つ、つけなよ。ほら」

 そんなことを言いながら僕はマフラーをセナに手渡す。
 どうせ嫌な表情するに決まってる。小学校時代のフォークダンスの時みたいなリアクションするに決まってるんだ。
 ――と、思っていたら、セナはあっさりとマフラーを巻いて微笑んだ。アルェー?

「さあ西條、ゆ、雪だるまを作ろう――」

 そう言ったセナの顔は、心なしかさっきよりも赤かった。


fin
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